レティーシアside
きっと女子の友達がイリス以外にいたなら私の恋なんて小馬鹿にされるレベルかもしれない。
え、召喚獣?!マジで?受けるんですけどー!
ないない、それはないわー。恋愛対象としてはないわー。
とかなんとか言われそうである。イリスならそれもありだよ!なんて喜んでくれるかも。あの子結構マイペースのとこあるから。いないから想像だけど。でもうちんとこの男子も似たような反応をした。私がオーディン様に恋をしたことを恥ずかしながら打ち明けると、イグニスが真面目な顔をして
「レティ、熱でもあるのか」
と私のおでこに手を当ててきたので、すぐに叩きおとした。
プロンプトが笑いながら
「姫ってば、冗談上手いんだからー」
とバシバシ人の背中叩いてきたのでトードかけてカエルにしてやった。ゲコゲコ鳴いてる(泣いてる)カエルプロンプト軽くいじめてたら、グラディオラスがたしなめながらカエルプロンプトを取り上げた。
「カエルはダメだカエルは……。それにしても相手が召喚獣とは……さすがというべきか…」
と困った顔していうので大丈夫だと自信満々に言った。
ますます困った顔をしたのはなぜだろう。そしてノクト。なぜ、そんな死んだ顔しているのか。
「レティが、恋をした…?レティが……ぶつぶつ」
ちょっと怖すぎて近寄りにくい。というか近づきたくない。こちらまで負のオーラに当てられそうだもん。なので、私はノクトをスル―。
カエルプロンプトはちゃんと戻してあげた。
まるで少女のように心は踊った。軽やかに踊るようにステップさえ踏めた。襲撃してきた魔道兵らを蹴り倒しながら。普段の私なら魔法だけを連発しているけどこの時ばかりは気分が高揚してしまって体が勝手に踊りだすのだ。
恋。ここまで人を変えることができるなんて、その効力に圧倒される。
自分で体験することでなおのこと実感できた。
またオーディン様に会いたいと強く願った私だけど、いざ召喚しようとしてみるとなかなか勇気がでなくて呼ぶことが叶わない毎日が続いた。でも私はこのままではいけない!と自分に叱咤してオーディン様を御呼びした。戦闘中でないにも関わらず、彼は嫌な顔一つせず現れてくれた。私が、恥じらいながらも挨拶をすると、スレイニプルから降りて騎士の振舞いで挨拶をしてくれた。手の甲にキスをされた時には昇天しそうなほど舞い上がった。
あまつさえ、暇そうな私に遠乗りに出かけないかと手を差し出してエスコートしてくれた。私は言葉を詰まらせながらも頷きその手を取ってスレイニプルに同乗させてもらった。
本で得た知識のスレイニプルは神聖なもののように感じたけど、オーディン様の愛馬、スレイニプルは人懐っこい性格をしていて顔を摺り寄せて甘えてきた。
これが俗にいうデート……。
私にとって人生初となるデートのお相手が、オーディン様で本当に良かった。
何より、こんなに楽しいだなんて。
浮足立つ心を止められない。私たちがたどり着いた先は、私が知らない花がたくさん咲き誇る群生地だった。スレイニプルから降ろしてもらい、私はその花の多さに圧倒され言葉を失った。そっと私の手を取ってオーディン様は私を花畑へと誘った。
私はその花が欲しくて手を伸ばして一輪手折ろうとした。でもそれを制したのがオーディン様。
懸命に生きているのは人間だけではない。全ての生き物がそうであるように、この花もまた生きようと花を咲かせている。主もそうではないのか?と。
静かに諭された。
私も生きるためにもがいている。知識という知識を吸い取って生きていくための術を学ぼうとした。それは今も同じ。この手でできることは全部やっておきたい。今のうちに。王女という特権を逆に利用してやるために。
そしていつの日にか、自分の手で大輪を咲かせてやるのだ。
あの国から、逃げることで。
オーディン様の言葉がすんなりと私の中に入り込んでいく。
他人から言われた言葉なら突っ返してやるのに、どうしてオーディン様には?
……きっと、オーディン様の言葉だから。受け入れられたんだと思う。
私は、頷いて確かにそうですねと微笑んだ。オーディン様は、代わりにまたここに連れて行こうと約束してくださった。
味わったことのない体験に心躍った。それよりもなによりも、オーディン様が共にいらっしゃるということだけで私の心は浮かれ舞い上がった。春の陽気のような気持にさせられた。楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていき、帰り道、もう少しだけ共にいられたらと願った。オーディン様は、そんな私の些細な願いさえお気づきになり、少しだけ遠回りして皆が待つキャンプ地へと送り届けてくださった。私に顔を寄せて、別れがたいと可愛く訴えるスレイニプルを撫でて、オーディン様に礼を言った。オーディン様は静かに首を振って、我も有意義な時間を過ごせた、また会いたいと言ってくださった時には、ボン!
顔が湯気が出そうになった。
同じ気持ちでいてくださる……!
ただ共にいたいと願いすら彼は簡単に叶えてくださる。
まるで本当に私の騎士様、だと思った。
それから私とオーディン様は、何度かデートを重ねた。と言っても行く場所は同じところだったけど、私は全然構わなかった。ただ一緒に同じ穏やかな時間を過ごす。
こんな贅沢でゆっくりできた時間は、あまり経験がなかったもの。
ノクトが相変わらず生気の抜けきった顔してたし、イグニスも暗い影背負っていたけどそんなの気にしてられなかった。二人は兄貴であるグラディオラスに任せた。
でも、ついに私は思い切ってこの気持ちを知ってもらいたくて、人生初の告白をした。
自爆するんじゃないかってぐらい、緊張して喉はカラカラ、ガタガタと手足が震えるくらいだった。
でも、私の初恋はあっけなく散った。
彼がこういったからだ。
主として敬い慕うことはあっても、そこに恋愛感情はない。守るべき仕えるべき主として大切に想っている、と。
頭が真っ白になった。一瞬で。
好きだという感情が、私の中だけでいっぱいになって苦しかった。
でも、私を大切に思ってくれている気持ちはたくさん伝わって、嬉しかった。
だから、私はありがとうと言葉だけで足りないけど、感謝の気持ちをオーディン様に伝えた。オーディン様は、また共に出かけようとおっしゃってくださった。
気が重くなるような責任重大な旅の中、窮屈な想いをしている私を案じてくださってだと思う。
私は、ええ、喜んでと笑顔で答えた。
これが初恋。最初の恋は実らないと聞いていた。まさに私は大人の階段を上がったのだ。
きっともっと私は素敵な女性になれる。辛い恋を経験してもっとより素敵な召喚獣に出会えると信じているから…。
「そこは人間の方がいいクポ」
聞こえないわ、クペ…!貴方の励ましの言葉は聞こえない…。
前を向こう。顔を上げて歩いていこう。私は、苦しい恋を乗り越えて、新たな私となった…。
「前よりも妄想度があがったクポ」
言わないで、クペ!貴方が、私のためと思っていっていることも私には必要ないの!
私はこの恋をちゃんと終わらせた。オーディン様を妖精さんとして、良き友人として今後もよい関係が築けたらと思う。
さようなら、私の初恋。
【こうして私は成長していく】