レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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プリンセスサイキョー伝説、沈・黙!

クペのテントにて、レティは自分のベッドで寝込んでいた。強烈な臭さに精神的に追い込まれながら。同じく被害を受けたクペが専用の小さなベッドで寝込みながら鼻を抑えて、

 

「レティ、アレはダメクポ……。クペも鼻が曲がりそうクポ……くさっ!」

 

と夢の中で魘されながら必死にレティの無謀な行動を止めようとしているのがあまりに痛々しい。そして猛烈に臭いらしい、夢の中でも。おでこに冷えたタオルを乗せられたレティはノクトが見守る中、真っ青な顔色でただひたすら

 

「うぅ、はにゃが……はにゃがぁぁ~」

 

と苦しそうに呻いている。

 

「相当、……臭かったんだな」

 

憐みの視線でレティの手を握りしめて見守るノクト。

でもオレが身代わりになってたら!なんて言わないのがノクトの正直な本音である。

ずばり、自業自得。

 

「……姫をもってしても懐かないモンスター……。恐ろしい」

「哀れだな、レティ」

 

レティに攻撃を仕掛けたということは=懐かなかった=変種という事実。プロンプトはレティのベッドに腰かけながら、その臭さに恐怖を抱いてはぶるりと身を震わせて思わず己の腕を掻き抱いた。グラディオはまさかここまで馬鹿だとは思わなかった事と、レギスになんだか申し訳ない気持ちになりいたたまれなくてレティから視線を逸らした。イグニスだけは、平然としておりレティに飲ませた常備薬に効果がそれほどないことを知ると、

 

「薬が効かないな、少しレティを見ていてくれ。別の薬を買ってくる」

 

と部屋を出て行こうとした。プロンプトが「あ」と声を上げて

 

「オレも行くよ」

 

とベッドから腰を上げてイグニスの後を追った。イグニスは思い出したように、

 

「ノクト、氷を桶に足しておいてくれ。ぬるくなっているから」

 

とノクトに指示を出すとノクトは、

 

「わかった」

 

と片手を上げて二人を送り出した。グラディオはソファにドカリと座り込むと、あまりのレティの情けない姿についに目頭抑えて「クッ」と小さく呻いてしまった。

やれやれとノクトはため息をつくと、レティの手を離して「ちょっといなくなるぞ」と一声掛けて氷を求めて桶片手に冷蔵庫を目指すため部屋を出て行った。

 

どうしてこんなことになっているか。

 

それはある油断から始まった―――。

いつものごとく、レティによる乗れるモンスター探しを実行したされたある日のこと。

 

どっかの巣に野良モンスターが現れると聞いちゃあ黙ってられないのがうちのプリンセスでぇ!

 

モルボル。

臭いモンスター№1を誇る最強モンスターと言っても過言ではない。その臭さ故にその匂いを少しでも嗅いだ者は死に至るとさえ言われている。そんなモンスターに近づくのは単なる野次馬か勇気あるハンターか、真の馬鹿である。最悪臭いモンスターに目を付けた真の内の馬鹿と言えるレティは、やっぱり単身乗り込んだ。そして、クペを巻き添えにしてノックダウン。瀕死の所を愛しのオーディン様に救われ、無事レティが脱走したことに気がついて探し始めたノクトたちの元へ帰ってこれた、というわけである。

 

やっぱり、馬鹿である。

 

 

「リベンジだわ!」

 

皆の甲斐甲斐しい介抱により、すっかり元気になったレティはまたモルボルへチャレンジすると言って皆の制止をまったく受け入れようとしない。それどころか、ちゃんと作戦を考えているから信じて?とノクトとイグニスにだけ効く小悪魔モード全開でお願いしたところ、仕方ないと肩を落とす二人にしてやったりと隠れて笑みを浮かべていたのを、プロンプトはしっかり見ていた。

 

宣言通り、しっかりレティはモルボルにリベンジを果たした。

絶対誰も近づかなさそうなモルボルの巣へ、レティの先陣によりぞろぞろと後に続くノクトたちを連れてやってきたレティは一人でモルボルの元へ向かった。

だが秘策があったのだ。

 

サイレスをかけてなおかつ用心には用心を重ね、防護ガスマスク装着の上、戦闘に挑み、モルボルの足場を絶対零度のブリザラで串刺しにしてなおかつ氷状態にし動けないよう固定。上にはジャボテンダー(髭)を召喚して逃げようとしたら串刺しにしろと命令をさせて待機させて、自分はガスマスクという異様な格好で

 

「モルボル!死にたくなかったら私を乗せなさい!」

 

と再度要求をするも「グァァアアアアア!」と拒否られてムカついたので

 

「ジャボテンダー!(髭)」

 

と声高らかに叫ぶと、かくかくと手足を動かして応えたジャボテンダー(髭)が容赦なく針ン千本を空からお見舞い。

あえなく穴あき状態となったモルボルはレティの手(召喚獣)によって倒された。

なお、ノクトたちは一切戦闘には参加しておらず、遠く離れた場所で高みの見物と洒落こんだ。これも立派に経験を積んでこその行動である。すなわち、モンスターに目を付けたレティには近づくな、が教訓。クペも今回ばかりはノクトの肩に乗っかって便乗していた。どんな時も一緒クポ!といつもの口癖も今日は引っ込んでしまうというもの。

 

よっこらしょと座っていたノクトが腰を上げた。

 

「あ、倒した」

「圧勝だな」

 

やり方はえげつないが、と改めて女の怖さを思い知るグラディオ。

 

「しかしビジュアル的にガスマスクは……いや、これでこれはアリか?」

「イグニス、ちょっとキモイ」

「何か言ったか」

「イエナニモアリマセン」

 

レティ関連だと人が変わったようになるイグニスにプロンプトは引き気味だった。

暢気にやり取りをしていると、レティが下の道からゆっくりと上がってきてノクトたちに手を振った。

 

「皆ー、終わったよ」

 

ノクトも手を上げて出迎えようとした。

 

「おう、やった、な…」

 

が、猛烈な匂いが突如嗅覚を襲い、思わず言葉を詰まらせた。それはほかの仲間たちも同様のようで、皆一斉に、

 

「「「「くさっ!」」」」

 

と叫ばずにはいられない臭さだった。ガスマスクの効果により自身が放つ悪臭に気づかないレティは、

 

「え?」

 

と不思議そうに首を傾げるしかなかった。そんなレティを

 

「来るなレティ、マジくさっ!」

「おお!鼻が、鼻が曲がるっ」

「……うげっ」

「……」(イグニスは今にも吐きそうで誰よりも早く駆けだした)

 

ノクトたちは鼻を抑えて一斉に駆けだした。一人レティを置いて残して。

 

「……え、臭い?もしかして、最後のあの苦し紛れのアレ?」

 

モルボルが最後の抵抗と言わんばかりに放った濃い緑色の息。どいやらモルボルの一矢報いた攻撃にしっかりとやられてしまったレティ。

ちゃんと防護マスクしているから臭くはない。臭くはないが。我先にと一目散に蜘蛛の子散らすように逃げていく男たちの背を見送りながら、

 

「ムカツク!」

 

キーと喚きながら地団太踏んでは悔しがるレティ。ジャボテンダー(髭)がそっと寄り添うに手足をカクカクさせて、ドンマイ!と慰めた、ようにみえた。

最後までモルボルの脅威、恐るべし。

この時、レティは心に誓った。また見つけたら徹底的に潰してやる、と。

 

【諦め悪いのが私なの】

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