レグルスの子供たち   作:サボテンダーイオウ

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わたしの友達

レティーシアside

 

 

写真とか電話とかでなんとなくイリスだっていうのは知ってたよ。でも私は彼女と面と向かって会ったことは一度としてなかった。

会いたくても会えなかった。私の環境はいくらグラディオラスの身内だとしても容易に面会を許すものじゃなくて、レギス王の側近もしくは信用にたる人物のみに面会を許された。そりゃクレイだってイリスの父親。娘の願いを叶えてあげたい気持ちもあっただろうけど、それとこれは別、なんだってさ。

 

王都が陥落したって新聞で知って、立っていられなくて私、呆然とへたり込んだんだよ。自分の身近な人の、死。突然いなくなる恐怖が蘇ってきて私、混乱しちゃった。

母上の時と同じ。絶対帰ってくるって思ってた人が帰ってこない恐怖がまたやってきたんだもの。……恨んだわ。帝国を、全部壊してやるって。私が望めば、きっとバハムートは力を貸してくれる……。なんて、怖いこと考えてたんだよ。あれだけ、世界に干渉するようなことしないって決めてたのに。私って単純だよね。

でもさ、そんな怖いこともイリスの顔見たら吹っ飛んでた。レスタルムの町に着いてすぐ、町から駆けてきた一人の少女。本当は宿で待ち合わせって言ってたのに、ノクトがイリスにもうすぐ着くって連絡入れたら外で待ってる!って切られたみたい。それで今か今かと期待膨らませて待っててくれたイリス。

 

「「イリス!」」

「レティ!クペ!」

 

私達は初めて出会って、初めて腕を伸ばしてお互いの体を抱きしめ合った。

クペも私達の間に挟まれるように再会を喜び合った。

 

意外と私と似たような身長だってこと。

髪が癖毛だってこと。

やっぱり黒系の服を好むってこと。

前にイリスから友達の証だってもらったお揃いのペンダントをしていること。

私も肌身離さずしてるよ。

 

お互い無事の姿を確かめられた。こんなに嬉しいことはない。

熱く抱擁を交わす私とイリスそしてクペに、ノクトと事情を知らないプロンプトだけは、目を白黒させて驚いてた。

 

「お前ら、マジで知り合いだったのか?いつの間に」

「グラディオの妹ちゃん、だよね。姫の友達だったんだ……」

 

イグニスとグラディオラスが状況がのみこめない二人に分かるように代わる代わる軽く説明した。

 

「ノクトは知らなかったかもしれないが、レティの文通相手がイリスだったんだ」

「そうそう、結構昔だよな。イリスからレティを紹介しろってしつこく迫られてたっけ。レティに関しては、面会とか厳しかったから無理だったけどな。手紙だけはお許し頂けたからそこから文通スタートってわけだ。」

「レティにも同性の友人を、とのレギス様の御配慮もあってのことだ。しかし、無事で何よりだ」

 

イリスは兄であるグラディオラスそっちのけで、眉を下げて私の身を案じていたと泣きそうな顔をした。

 

「レティ、本当無事で良かった!ホントに心配したんだよ!?っていうか電話してよ!ずっと待ってたのに……。クペもよく頑張ったね」

「それは私の台詞だよ!ゴメン、ちょっと立て込んでて…。それよりもイリスこそ、ほんと、無事で……っ」

「クペはずっとレティを守ってたクポ!」

 

イリスからのねぎらいの言葉に誇らしげに胸を張るクペ。

私は込み上げる感情を制御できなくて嗚咽を抑えられずに口元を抑えぎゅっと瞼を閉じた。涙がこぼれそうだったから。

 

「泣かないでよ!私だって泣きたくなってくる……」

「ゴメ、ごめん……」

 

でももう限界だった。結局私とイリスはボロボロ嬉し泣き。

 

「もう、レティ……」

「イリス…」

「クペも泣いていいクポ?」

「「いいよ」」

 

私たち二人と一匹は互いの体温をしっかりと感じるようにまたきつく抱き合った。

大切な友達。私がどうやってイリスと知り合ったかは、十年以上前に遡ることになる。

 

 

私はルナフレーナ嬢本人と会ったことは一度もない。

あの事件、でノクトの療養のために訪れたテネブラエに私は同行を許されなかったのだ。レギス王は徹底して私を外に出すことは拒んでいたもの。ノクトは私が一緒じゃないと行かないと駄々をこねて付き人を困らせていたっけ。けど私は無理して笑顔でノクトを送り出した。お土産期待してるねって。そうしたら、ノクトは悲しそうな顔してわかったと頷いて部屋を出て行った。

 

私は、意地でもあの人とノクトの乗る車を見送ることはしなかった。

あの人が私の存在を無視する瞬間を味わいたくなかったから。

 

社交辞令なんか知らない!赤の他人に家族ごっこなんてしてやらない!

 

羨ましさ、妬ましさ、自己嫌悪。

様々な負の感情に支配され、やるせない気持ちでいっぱいになって気持ち悪くなりそうだった。私は八つ当たりに自室の中で思いっきり魔法連発させて滅茶苦茶にしてやった。使用人が恐れて近づいてこないのを利用してそれはもう、見るも無残にね。でも、それで私の気持ちが晴れることはなかった。むしろ、惨めで馬鹿らしくて、クペが「レティ、泣いていいクポ」って頭撫でられて初めて、ああ、そういえば泣けばよかったんだって思った。クペ抱きしめて声押し殺して泣いたよ。

 

……ああ、話がそれた。まぁ、テネブラエでルナフレーナ嬢と心に残るふれあいをした結果、ノクトはルシスに帰ってきてからも彼女の身を心配ばかり。私がどんな想いでノクトの無事を祈っていたかも分からないで。

 

ルーナがどうした。ルーナがああだった。ルーナが心配だ。そればっかり。

 

幼い私には、あの頃ノクトが全てだった。あの人から受けられない愛情に飢えていた、だから兄として慕っているノクトだけが私の心を支えていた、ってのは大げさかな。

まぁ、ノクトから私以外の名前が出ることが許せなかったのは確か。何より耳にタコだったし。

私はついにある日、今までの怒りが爆発してノクトに怒鳴ってしまった。

 

『ルーナルーナルーナ!!ノクトはその子ばっかり!わたしはノクトのことずっと心配してたのに、一緒に行けたらノクトを守れたかもしれないのに!……ノクトはわたしのことなんかどうでもいいんだ!あの人と一緒でわたしなんか、家族じゃないんだ!!』

『レティ!?』

『ノクトの、ノクトのバカっ!』

 

私は瞳に涙を溜めて睨み付け、動転するノクトから逃げるように部屋を飛び出した。

 

ノクトのばか、ノクトのばか!

 

私は無我夢中で場内を走って、私を呼び止める使用人を無視して逃げて逃げまくって気が付いたら母上が眠る墓所にたどり着いていた。

よろよろと母上の墓前で私は力なくへたり込んでは縋りつくように眠る母上を求めた。

 

「母上、……母う、え、…わたし、ははうえの所にいきたい……。もう、やだ……わたし、やだよぉ……」

 

ポツ、ポツと冷たい雨が降ってきてわたしは一人、寒さの中泣きじゃくった。

そんなわたしに傘を差し出してくれた子、クペだった。一生懸命わたしのために小さな体、小さな羽根で傘を持ち上げて濡れないようにしてくれた。

 

「…レティ…」

「ひっく……、クペ?」

「クペは、レティの家族クポ。レティはそれだけじゃ嫌クポ?」

「ううん、……クペがいい……!」

 

私は首を振って傘を持つクペを抱き寄せた。傘は地面に落ちて、私とクペはぬれねずみ。

でも、温かかった。濡れてるのに、クペは召喚獣なのに温かかったの。

 

「いつか、一緒に世界を見るクポ」

「うん」

「そうすれば、いつか、レティはレティだけの家族に会えるかもしれないクポ」

「わたしだけの、家族」

「レティだけを愛してくれる人間クポ」

「……クペも一緒だよ」

「当たり前クポ!」

 

この日、私とクペは必ず二人で世界に飛びだしてやるって誓った。

 

 

ノクトがルナフレーナ嬢と交換日記するようになって、私は遠巻きにその様子を見つめる日々が続いた。あの一件から少しだけノクトと距離を取るようになった私。ノクトから私に声を掛けようとすると私がそれとなく自室に引きこもるって感じ。話し相手がクペとクレイと限られた人だけになったのは仕方ないね。グラディオラスはノクトの護衛があったから挨拶はするけど仕事も忙しそうだったし。

でもさ、ノクトが幼いイリスを連れて城の外に勝手に出たとかであの人から謹慎を受けたって使用人から聞いた時、絶対それは嘘だ!って直感したもの。その時は、あの人と距離を取っていることも忘れてあの人に執務室に怒鳴り込んだ。

 

『ノクトは悪いことなんかしてない!』

『レティーシア様!どうかお部屋にお戻りくださいっ』

 

私を部屋から出させようとする親衛隊の一人に蹴り入れて必死に抵抗した。

 

『ノクトの父上のくせして、どうしてノクトの話をちゃんと聞いてあげないの!』

『……』

『きらいになるなら、わたしだけでじゅうぶんだもんっ!ノクトを放してっ』

 

あの人はじっと私の言葉を黙って聞くだけで何も言わなかった。結局、私は無理やり抱っこされて部屋を追い出されることに。

 

……ノクトは、やっぱりイリスを連れ出してはいなかった。

ノクトに会いに来たイリスが部屋で待たされている時に庭の隅で見つけた猫を追いかけているうちに城外へでてしまったらしく、その姿を偶然見つけたノクトが後を追いかけてイリスを連れ戻したってことらしい。

イリスからその告白を受けたグラディオラスはあの人に報告することはなく、ノクトは謹慎を終えて普通の生活へと戻った。私があの人に啖呵切って怒鳴り込んだことがすでにノクトの耳に入っていて、そりゃもう大げさなくらい嬉しそうに部屋に飛び込んできた。満面の笑みで無抵抗な私に抱きついてきたっけ。

 

『レティに嫌われてるかと思ってた。でも僕の為に言ってくれたんだね!』

 

でも私はぶっきらぼうに返すだけ。ハグしてやんない。

 

『……別に…』

『違うの?』

『……わたし、調べものあるから図書室行ってくる』

『レティ?』

 

素直になれない私は、戸惑うノクトから逃げるために図書室に向かった。それから連日してノクトは私の部屋を訪れるようになった。チャンスさえあれば一緒に行動しようとさえした。でも、ノクトを見ているとまだ見ぬルーナと親しみを込めて呼ばれる少女がちらついて苛立ちを感じてしまうから。ノクトを傷つけたくないし、私も話したくない気分だったから私は徹底して逃げまくった。

ノクトが、悲しそうな顔してるの一瞬だけ、見てしまった。

 

胸が切なくなってすぐに視線逸らしたけど。

 

ホント、当時の私ってバカなことしてるよねって思うよ。

 

そんな時よ、グラディオラスからある頼まれごとをお願いされたのは。

いつも通り雪崩が起きそうな本に囲まれて本を読んでいると、グラディオラスが『よ!』と軽い挨拶でやってきた。ちゃんと罠は設置済み。ドア開く場所の上にはブリザドで出した氷の塊が何個かふよふよ漂っていたもの。あれ頭に落ちたら痛そうだった。グラディオラスはその罠に気づかないで勝手に入ってきたものだからすごく驚いてたっけ。でもそこはクレイの息子。ちゃんとギリギリで避けてました。わたしがパチパチと拍手をしてあげると『オレだったら良かったものの、他の奴だったら避けられないだろ?危ないからやめろ!』って軽く拳骨されたっけ。

優しくされたから痛くはなかったけど、素直じゃない私はわざと痛がって見せた。

構ってもらえることが嬉しかったから。グラディオラスもそのことになんとなく気づいていたから、何か企むような笑み浮かべて私にこちょこちょ攻撃して構ってくれたっけ。ひとしきり二人で笑いあったってようやく本題へ。

 

『イリス、ちゃんと、文通?』

『ああ。ノクトからレティのこと聞かされたらしくてさ。最近やかましいんだ』

『……いいよ、暇だし』

『助かる!』

『……ノクトも文通してるんだもん。わたしだって』

 

その時の私は、文通したいって気持ちよりもノクトに負けたくない!って気持ちの方が強かったね。グラディオラスは呆れた顔してた。

 

『……まったく、いちいち面倒なやつだな』

『グラディオラスに言われたくない!』

『はぁ、父上が苦労なされるわけだ』

『クレイは関係ないの』

 

そっぽをむいて拗ねる私にグラディオラスは苦笑しながらぶにーと頬を伸ばしてきてまた構ってくれたっけ。ほんと、良いお兄ちゃんだわ。

 

イリスと文通を始めたのはそれから。最初は当たり障りのない挨拶から。

 

”初めまして、イリスさん。わたしはレティーシア・ルシス・チェラム。

貴方のお兄様に頼まれて文通の相手を務めさせてもらうことになりました。

これからしばらくの間、よろしくお願いします。”

 

私は王族らしく粗相のないよう気を遣った文章で送った手紙にイリスは、嬉しい!って気持ちがあふれるくらい素直な文章で返してくれた。

 

”初めまして!わたし、貴方にとっても会いたかったの!

でもお兄ちゃんに頼んでも会わせてもらえないって言われたからこうして文通ができてすごく嬉しい。ねぇ、貴方のこと愛称で呼んでいい?貴方もわたしのことはイリスでいいよ!”

 

私はその手紙を読んだ時、面食らった。だって初めてだったもの。これが普通の女の子が書く文章なんだって驚かされたから。でも私は顔も見知らぬ少女相手に同じ文章が書けるほど器用じゃなかったから、また畏まった文章で送ったら

 

”こんにちは、レティ。駄目だよ?わたしたちもう友達なんだからもっと仲良くしようよ。ね?

そういえばこの間お兄ちゃんがレティは勉強熱心だって教えてくれた。すごい!レティって難しい本をたくさん読めるんだね。レティはどんな本を読んでるの?前にね、女神様が出てる本があるってお兄ちゃんが言ってたの。ねぇ、どんな絵本?レティは知ってる?知ってたら教えて!

 

だって。脱帽したよ。私にはなにもかも初めての体験で戸惑うなという方が無理だ。

 

ただの手紙のやり取りで、友達だって言ってくれるイリスの真っすぐさ。純真で穢れを知らない子。

 

私は、どんどんイリス・アミシティアという少女に興味を持っていった。

少しだけ素を混ぜて文章を綴ってみたらイリスはすぐに反応して喜んでくれた。

それから私は徐々に【自分】を曝け出していった。イリスも私を王女としてではなく、ただのレティとして、友達として扱ってくれた。

 

ただの暇つぶしから始まった文通は、私にとって欠かすことのできない大切な繋がりへと変化を遂げ、逆にノクトと接する時間が減っていった。お互い気まずい空気になってしまい、なんと声を掛けていいのかわからなかったから。ノクトも私を避けるようになってたしね。

 

『レティ、お前ノクトとどうなってんだ?最近の稽古に全然集中できてねぇんだよ、アイツ』

『……わたしのせいじゃないもん』

『まだ喧嘩してんのか?』

『喧嘩じゃないもん、……たぶん』

『……ハァ……』

 

グラディオラスからさっさと仲直りしろと怒られたけど、私は意固地になって嫌だと突っぱねた。でも、内心じゃノクトと話したい、ノクトと遊びたいって叫ぶ私がいて、でもどうやって仲直りできるかわからなくて困ってた。

 

そのことをイリスに相談したら、ちゃんと謝らなきゃだめ!って叱られた。

レティが寂しいって思ってるようにノクトだって寂しいんだからって。

 

イリスに叱られて私はようやく素直になれる気がした。

私がきっとノクトを傷つけてしまったから。

 

だから、ちゃんと謝らなきゃって。

 

そこからはもう速攻ノクトがいつも鍛錬してる部屋に向かったよ。ただ謝らなきゃって思いだけで突っ走ってた。

バンッ!と扉を蹴り開いて(しっかりグラディオラスに叱られた)私は大声でノクトの名を叫んだ。

 

『ノクト!』

『……レティ……?』

 

丁度グラディオラスと稽古中だったノクト目がけて突進するように飛びついた。

 

『いた!?』

 

ノクトは私が飛びついたことで勢いに負けて背中から床に倒れ込んだ。私はノクトの首にしがみ付いてひたすら謝った。

 

『ごめんなさいノクト!ごめん!』

『わたし、わたし、ノクトを傷つけた!』

『レティ…』

『……ごめんなさい……』

 

ノクトはそっと泣きそうな私の頬に手を当てて弱弱しく微笑んだ。

 

『ううん、僕の方こそゴメン』

『ノクト…』

 

私とノクトはイリスのアドバイス通り無事に仲直りすることができた。

その後自分のことのように嬉しがるグラディオラスに

 

『ようやく仲直りだな。よし!ついでにレティも稽古つけてやる。二人まとめてかかってこい!』

『『ええ!?』』

 

とビシバシ稽古つけてもらことになるなんて予想もしなかったけど。

まぁ、いい思い出だよ。

 

……イリスは私にとって大切な存在になった。

それから手紙から電話のやり取り、プレゼントの交換などできる限りの手段で交流を続けた私達は唯一無二の存在へ。クペも届け物をしてくれるうちにイリスと仲良くなった。

召喚獣だって打ち明けた時は、しゃべるぬいぐるみだって疑わなかったらしいよ。そう電話口で聞かされたときは、イリスらしくて思わず吹いちゃったけど。

 

……イリスは、私の事情を知る数少ない人だ。

正直、打ち明けようかどうしようか悩んだんだ。でもいずれ私の素性は明るみに出る時がくるはず。遅かれ早かれ知られることになるんだって、覚悟決めて私はイリスに打ち明けた。

 

私は、ノクトと血が繋がっていないこと。

いずれ私の存在はルシスにとって邪魔になること。

機会をみてルシスを出奔し身を隠すから連絡が取れづらくなること。

 

話せる限り、私はイリスに伝えた。

イリスは、電話口でずっと沈黙を守っていた。

 

そして、全部話し終えての彼女が言った言葉。

 

『辛かったね、苦しかったね、レティ』

 

って嗚咽交じりにイリスはそう言ってくれた。

 

私の為に、涙してくれた彼女。

 

その言葉を聞いた瞬間、ぽろりと涙が私の瞳から流れた。

 

誰にも言えなかった秘密。王族としての重圧。自分の曖昧な立ち位置。理解されない苦しみ。あの人から受けられない愛情。

ノクトへの複雑な感情。ルナフレーナ嬢への嫉妬と羨望。孤独の中で自分を奮い立たせて、ただひたすら外の世界を目指し続けなきゃって。

 

ずっと、抱えてたものが一気になだれ込んだ。そう、私は辛かった。苦しかった。

 

『レティは頑張ったんだね』

 

そう、私は、頑張った。

 

『レティは、すごい、すごいよ』

 

そう、私は、誰かに認めて欲しかった。褒められたかった。私の存在をちゃんと受け止めて欲しかった。

 

『イリ、ス……私、辛かったの。ずっと苦しかった……ほんとは、誰かに助けてほしかった』

『うん』

『イリス、私、少しだけ弱音吐いても、いいのかな?』

『いいよ。私が受け止める』

 

イリスは、私が欲しかった言葉を全部くれた。私はしばらくの間イリスがくれる優しさに包まれて涙した。

 

イリスは私が本当は泣き虫だって知っている。

皆の前で強がっているだけで本当はイリスの前じゃ度々感情を吐露して涙する私。

 

「レティは相変わらず泣き虫だね」

「それは言わない約束でしょ?」

「クペはもう知ってるクポ」

 

私と、イリスと、クペは顔を寄せ合って一緒に泣き笑いした。

事情を知らない男子諸君は頭上にはてなマークだして不思議そうな顔をしていたけど教えてあげない。

これは、私達だけの秘密の話だから。

 

【彼女の存在にどれだけ救われたか、貴方は知らない】

To Be Continued--

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