いやはや、ちょっと調子に乗って飛ばしすぎましたかね?
やっぱり、仕事が終わってからの投稿をずっと続けるのは無理がありました。
ま、それでも可能な限り頑張るつもりなんですけどね。
第二アリーナのステージにて、お互いに専用機を纏った一夏と鈴が試合開始を前に向かい合っていた。
(すげー人の数と歓声だな……)
今までの人生の中で、これまでの数の人間に見られるのは初めてな一夏にとって、この状況はなんとも新鮮だった。
(弥生も観客席でこの試合を見てくれている……。絶対にカッコ悪い姿は晒せないな……)
たった一人の女性の為に戦う。
お前はいつから、そんなに偉くなったのか。
「もうすぐ試合開始ね。一夏」
「そうだな」
何気なく返すが、心の中では初の大舞台に緊張をしていた。
このぶっきらぼうな返事は、それを隠すためのポーズだ。
(あれが鈴の専用機か……。白式と同じように、接近戦に強そうだな……)
鈴の手にしている二振りの青龍刀のような武器を見て、即座にそう判断した。
(だからと言って、俺に出来る事なんて限られてるんだけどな)
そう。一夏の白式にある武装は『雪片弐型』のみ。
否が応でも近づくしか、彼にダメージを与える術はない。
「丁度いい機会だし、ここらで弥生にあたしの実力も知って貰おうかしら」
「俺を踏み台にして……か?」
「あら。鈍感な一夏にしては鋭いじゃない」
「誰が鈍感か」
お前だ、お前。
他に誰がいると言うのだ。
「もしかしてとは思うけど……一夏、あたしに勝つ気でいる?」
「当然だろ? 何を今更……」
「ふ~ん……。セシリアとの試合に負けたって聞いてたけど、どうやら、全然懲りてないみたいね」
「懲りるって……何がだよ?」
「あんたの、その上から目線の事よ」
「は? 俺がいつ上から目線になったって言うんだよ?」
「現在進行形でよ。あんたさ、専用機を手にしたからって、ちょっと調子に乗ってるんじゃない?」
「べ…別に調子になんて……」
「乗ってるわよ。じゃなきゃ、特例で専用機を受領した程度で代表候補生に本気で勝とうだなんて、そんな思い上がった考えは普通は出来ない筈だもの」
「……………!」
鈴の目は全く笑っていなかった。
彼女は本気で怒っている。
「あたし達代表候補生はね、文字通り血の滲むような努力を必死にこなしてきて、それで今の場所に立って専用機を手にした。それを、男だから……特別に専用機を手に入れたから……世界最強の弟だから……そんなふざけた理由で……」
鈴の怒りのボルテージが上がっていっている途中でアナウンスが聞こえ、同時に試合開始のブザーがアリーナ全体に鳴り響いた。
「あたし達のこれまでの努力を全否定されちゃ!! たまんないのよ!!!」
「なっ!?」
試合開始と同時に、鈴の姿が一瞬で一夏の視界から消え去った。
「ど…どこに行ったっ!?」
「ここよ」
「!!!」
後ろから声が聞こえ、急いで振り向くと、そこには既に青龍刀を振りかぶった鈴がいた。
「しまっ……」
「遅いっ!!」
雪片でガードしようとするも、時すでに遅し。
咄嗟に動いた一夏よりも、最初から攻撃態勢に入っていた鈴の方が圧倒的に早く、ガードが間に合わずに、そのまま斬撃を胴体に受けながら派手に吹っ飛んだ。
「ぐぁぁぁぁぁぁあぁっ!!」
「はい。まずはファーストアタックいただき。これはハンデよ」
「ハ…ハンデ?」
なんとか体勢を整えた一夏が、疑問符を浮かべながら構える。
この時、本来ならセシリアから事前に習った『
「こう言った試合はね、基本的に先制攻撃をしてしまった方が不利になるの。何故なら、自分の手の内を相手に早々に曝け出してしまうから」
「つっても……いきなり過ぎて何が何だか分からなかったぞ……」
「つまり、それがあんたの今の実力って事よ。ここでそこそこな成績を取ってる連中なら、今のを見ただけでも多少の分析は出来るでしょうね。弥生ならきっと、もうこの甲龍の基本スペックまで割り出してるんじゃないかしら?」
「弥生なら本当に出来そうだ……」
二人の弥生に対する評価は上がる一方。
試合中故に二人の会話は観客席からはよく聞き取れないが、もしも本人が聞いていたら、間違いなく顔を真っ赤にして悶絶していただろう。
それはそれで見てみたい気もするが。
「来なさい。今度はアンタに攻撃させてあげるから」
「ちくしょう……舐めやがって……!」
「いや……普通に舐めるでしょ」
それもそうだ。
ISに乗り始めて一か月で、知識も技術も未だに素人の領域から抜け出せてしない。
そんな相手に、どうして本気になれようか。
以前にセシリアは『獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす』と言ったが、生憎と鈴は『獅子』ではない。
今の彼女は紛れもない『龍』。
弱者を嫌い、強者を友と呼ぶ気高き存在。
そんな龍が、己の部も弁えない弱者に、己の全力を尽くして戦うだろうか?
答えは否。断じて否である。
(悔しいけど……鈴は強い。俺よりもずっと……! でも、だからと言って……何も出来ないまま終わるのだけは御免だ! もう……あの時の二の舞だけはしたくないんだ!)
その決意は本当に立派だ。
そこに実力が伴えばもっとよかったのだが、今の彼にそれを求めるのは余りにも酷と言うもの。
「せめて……」
「ん?」
腰を低くしてから、一気に加速して鈴に接近。
そこから雪片弐式で斬りかかる!
「一撃ぐらいは当ててやるよ!!」
「はぁ……」
雪片弐式の刃が鈴に近づくが、彼女はそれをジッと見据えてから、徐に両手に持った大型ブレード『双天牙月』を上空に大きく投げ飛ばした。
(な……なんだっ!?)
意味不明な行動に一瞬だけ警戒するが、もう振り下ろし始めた刃は止まらない。
このまま相手を攻撃するまで、全力を尽くすのみだ。
だが、そう簡単に事が上手く運べば、誰も苦労はしない。
「がはぁっ!?」
いきなり、一夏の腹部に強い衝撃が走った。
目線だけを下にやると、鈴が腰を低くした状態で一夏の懐に潜り込み、この腹に掌底をぶちかましていた。
「アンタって……真正の馬鹿ね」
そこから更に、顎に向かっての掌底!
「ぐっ……!」
一夏の脳が大きく揺さぶられ、一時的に体が麻痺してしまった。
ISの操縦者保護機能によって、すぐに回復はするが、それでも確実に数秒間のラグが存在する。
実戦における数秒間の隙は、間違いなく致命的だ。
「真正面から馬鹿正直に突っ込んできて!」
動けない一夏の胸に肘打ち!
「そんなの!」
更にそこからの膝蹴り!
「あたしに『どうぞカウンターをしてください』って言ってるようなもんじゃない!」
トドメの顔面に向けての正拳突き!!
「がああぁぁぁぁあぁぁっ!!」
再び吹っ飛ばされる一夏。
試合を開始してから、まだ10分程しか経過してないが、試合の流れは完全に鈴の方に向いていた。
一夏がステージの壁に激突した直後に上に投げた双天牙月が戻ってきて、それをナイスキャッチ。
「弥生に勉強を教わって、その上であいつ等に訓練して貰ったって聞いてたから、もう少しぐらいは善戦すると思ってたけど……流石に高望みしすぎたわね」
「なん……だって……!」
いくらISとは言え、操縦者に向けられる衝撃や痛みは緩和出来ない。
フラフラとしながら浮かび上がり、なんとかして雪片を握りしめて鈴と対峙する。
「まさかとは思うけど、あたしが中国でISの操縦だけをひたすらに頑張ってきた……とか、アホな事を考えてたんじゃないでしょうね?」
「……違うのかよ?」
「弥生が教えてくれなかった? ISは体面上は『スポーツ』って事になってるのよ? スポーツにおいて最も重要で基礎的な事は何か……流石の一夏でも分かるでしょ?」
「それは……」
その時、一夏の脳裏に弥生から教えて貰った事が頭をよぎった。
『ISはあくまでスポーツ……だから……まずは体力作りから……始めればいい…と思う…よ…?』
一筋の汗が一夏の頬を伝って地面に落ちた。
「理解した?」
「あ……あぁ……」
鈴は、中国にて何か武道のようなものを会得して帰ってきた。
一夏はそう推測した。
「セシリアも言ってたんじゃない? 代表候補生たる者、あらゆる状況を想定して訓練を行っているって」
「言ってた……」
「それはあたしだって例外じゃないって事。まぁ、もうすぐ終わる一夏には関係ないでしょうけど」
「なんだt……ぐあっ!?」
一夏が言葉を言いかけた時、甲龍の肩部アーマーがスライドして、その中心部にあった球体が発光した瞬間、彼は三度吹っ飛ばされた。
「はぁ……はぁ……。見えない何かに殴られた……?」
「どう? 不可視の龍の
ニヒルな顔で笑った後、またもや見えない一撃を受ける。
「ぬぁぁあぁああっ!!」
今度は壁ではなくて地面に叩きつけられる。
衝撃と痛みが全身に走り、白式のSEを確実に削っていた。
(やばい……これは冗談抜きでヤバい……!)
一夏、男の見せどころである。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
あ~らら。
見てられないぐらいにボコボコじゃないのさ。
まさか、ここまでの実力差があったとは思わなかったな~。
「一夏の奴め……言った矢先にこれか……」
「いくら鈴さんが実力者とは言え、もう少し攻めようがあるでしょうに……」
「おりむ~の動きって、まるで猪さんみたいだね~」
「猪…突猛…進……って…こと……?」
「そうそう。ちょとつも~しん」
ちゃんと意味を分かってて言ってるのか……?
「あれならばまだ猪の方がマシだ。あれの全力の突進の威力は本当に凄まじいからな」
「おまけに立派な牙もありますしね」
ありゃりゃ。遂には一夏が猪以下の存在に格下げされてしまった。
「しかし……まさか本当に鈴が武道を修めていたとはな。道理で普段の生活の中からも隙が見当たらない訳だ」
「彼も昔は剣道をしていたのでしょう? それなのに、武道家相手に真正面から何の策も無しに突っ込むなんて……」
「ワンパターンだよね~」
言われてるぞ、原作主人公。
にしても、もうちょっとどうにかならないもんか?
少し冷静になって考えれば、策の一つや二つぐらいは思いつきそうなもんだけど。
少なくとも、私はすぐに対策が一つ思いついたよ。
「それよりも、あの一夏を吹き飛ばした一撃はなんだ? まるで見えない拳に殴られたようだったが……」
「あ…れは……衝撃砲……だよ」
「「衝撃砲?」」
本音と箒がこっちを向いて小首を傾げる。
そうだよね。衝撃砲なんて普通は聞き慣れないよね。
「衝撃…砲……は……空間自…体…に圧力……をかけてから…砲身……を形成し…て……その余剰…で生み…出され……た衝撃……を砲弾にして……発射する……んだよ……」
「「おぉ~…」」
な…なんか照れるな……。
箒と本音だけじゃなくて、周囲の子達からもパチパチパチと拍手を貰ってしまったし。
「よ…余談だけ…ど……あの…衝撃砲…は……射角の制限……が殆ど無い……らしくて……その気…になれば……正面を向いた…まま……真後ろ……を攻撃する……事…も可能……みたい……」
「それはもう…普通にチートじゃないのか?」
「そうでもありませんわよ? 衝撃砲の威力と射程は精々、アサルトライフルと同程度ですから」
「一長一短だね~」
セシリアが補足をしてくれて、なんだか本人は嬉しそうだ。
そんなに皆に褒められたかったのだろうか?
「おりむ~……勝てるかな~……」
分かんないけど、このままじゃ難しいだろうな~。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「意外と粘るじゃない。てっきり、すぐにやられると思ってたわ」
「男の意地ってもんがあるんだよ……!」
などと強がってはいるが、機体も本人も満身創痍だった。
白式のSEは風前の灯で、衝撃砲の雨に晒されて思うように接近できず、攻撃を当てる以前の問題になっている。
そのもどかしさと悔しさと焦りで、一夏の精神はガリガリと削られていった。
「男の意地……ね。意地だけで勝負をひっくり返せたら、どれだけいいか」
「うっせ」
頭をフル回転させて、なんとかして逆転の策を考えていた。
(なんとかして攻撃を当てないと、本当にこのまま終わってしまう……! いくら目を凝らしても全く見えないし、見えない以上は回避も出来ない……。もう少しSEに余裕があれば、多少のダメージなんか無視して無理矢理にでも自分の距離にするのに……!)
雪片を握る手に力が籠る。
(現状で俺が一発逆転することが出来る方法があるとすれば、『これ』しかない……)
白式の最強にして唯一の切り札。
『バリアー無効化攻撃』の効果を持つ、自らのSEを消費して放たれる一撃必殺の攻撃。
それこそが、白式の『
かつて千冬の愛機だった『暮桜』と全く同じ能力だ。
(これも弥生が教えてくれたっけ……。攻撃力は間違いなく最強だけど、その代償が大きいと……。だけど、これを完全に使いこなせたからこそ、千冬姉は世界一にもなれたんだって……)
因みに、その際に射撃戦について少し聞いてみたが、見事に完全論破されてしまい、それ以降は射撃戦でなんとかしようと言う考えは捨てた。
(いくら不利でも、気持ちで負けたら本当に終わりだ……! 某有名バスケット漫画でも言ってたじゃないか! 『諦めたら、そこで試合終了だよ』って!)
折れそうにある心を奮い立たせて、頭を切り替える。
「へぇ~……やっといい目になったじゃない」
「そりゃどーも。……ここから捨て身でいくからな」
「捨て身……ね」
一夏にトドメを刺すために衝撃砲が放たれるが、それを偶然にも間一髪で回避。
それに動揺すること無く鈴は再び衝撃砲を発射しようとするが、その一瞬の隙を狙って、一夏は習得したばかりで成功率も2割にも満たない技術『
「これは……!」
これまで余裕の表情を崩さなかった鈴が、初めて真剣な顔になる。
凄まじいスピードで迫ってくる一夏を迎撃しようと双天牙月を連結させて構える。
「この一撃でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「その気合は認めるけど……どれだけ速度があっても、発動の瞬間と軌道が丸見えなら、全くもって意味が無いっつーの!!」
一夏にとって最後の一撃。
これが決まらなければ、彼の敗北は決まったも同然。
しかし、実力差と言うものはどこまでも非情に立ちはだかるものであって……。
「そ…んな……」
「まるで闘牛士にでもなった気分ね」
一夏の渾身の一撃を、鈴は体を横にずらしただけであっさりと回避。
「んじゃ、終わりね。ご苦労様。敢闘賞ぐらいはくれてやるわ」
「くそ……!」
鈴のフィニッシュ・ブローが一夏に迫る。
その刃が白式の装甲を無情にも切り裂く……瞬間。
「な…なにっ!?」
「あれは……!?」
突如として、アリーナ全体をつんざくような衝撃と音が走り、二人の背後……ステージ中央付近から土煙とも違う煙がアリーナの一番上まで立ち上っている。
「なんなのよ……あれは……」
動きを完全に止めた鈴は、いきなりの出来事に戦慄し、一夏は思考停止していた。
そして、この時の出来事が様々な者達のターニングポイントになろうとは、この時は誰もが予想すらしていなかった。
そう、原作知識を持っている弥生でさえも……。
一夏君ボコボコ。
いい場面が一つもありませんでした。
でも、これが普通だと思うんですよね。
だって、これってプロ野球選手と小学生の野球クラブがガチンコの試合をするようなものですよね?
いくらアドバイスや練習、勉強をしても、そう簡単に実力差が埋まるわけないですよ。