……どこにも出かける予定なんて無いんですけどね。
きっと、前半と同じように、一日中パソコンの前に座っていると思います。
「それでは、今からISの起動及び歩行訓練を開始する」
「「「「「はい!」」」」」
遂に始まりました、弥生ちゃんの初めてのIS実習。
実況はこの私、板垣弥生でお送りしま~す。
今日は一組だけじゃなくて二組の皆もいるから、返事一つだけでも結構な迫力があるね~。
と言っても、二組の生徒の数は一組に比べて僅かに少ないけど。
こうして見ると、改めて退学者が出たんだなって実感する。
「マジで痛い……」
「だ…大丈夫?」
「なんとかな……。これが初めてじゃないし……」
「初めてじゃないんだ……」
だよね。呆れますよね。
そのお気持ち、よ~く理解出来るよ。
「まずは目の前で実戦でもして貰おうか。丁度、専用機持ちがいることだしな」
あ、これはアレですね。山田先生の大活躍するヤツですね。
私も早く山田先生の勇姿を見てみたい。
普段は可愛い人がふと見せるカッコいい姿って、かなりキュンってするよね。
これも立派なギャップ萌え。
「そうだな……。オルコット、それから凰。二人共前に出ろ」
「「はい」」
はい。ご指名入りました~!
「あの……実戦って、私達でするんですか?」
「別に私はそれでも構いませんけど……」
「そう慌てるな。お前達の相手はちゃんといる。もうそろそろ来ると思うんだが……」
ど…どこから来るんだ?
やっぱり、上空からの自由落下?
「ん……?」
この耳を劈くような音は……?
「わ…きゃぁぁあぁぁぁぁっ!? そ…そこをどいてくださ~~~い!!」
急いで上を見ると、来ましたよ! 山田先生が緑色のIS…『ラファール・リヴァイヴ』を纏った状態で絶賛落下中!!
早く一夏の傍から離れないと……あれ? なんか方向が違くない?
なんか慌てている山田先生と目が合って………って! 私の方に落ちてきてない!?
「姫様!!」
「「弥生!!」」
「弥生さん!!」
「やよっち!!」
皆が私の名を叫ぶ中、私自身は恐怖のあまり、足が竦んで動けなくなり、思わず目をギュッと瞑ってしまった。
「弥生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
その時、眩い光と共に私の体が誰かに抱えられて、少し離れた所に行った。
「あ……あれ……?」
「大丈夫か? 弥生……」
「い…一…夏……?」
いつの間にか白式を纏っていた一夏が私をお姫様抱っこをして、ホッと一安心していた。
「怪我は……無いみたいだな。よかった……」
こ…怖かったぁ~…(泣)
今のは割とマジで怖かったよぉ~!
「嘘でしょ……?」
「一瞬でISを展開して、弥生さんを救出するなんて……」
「そんな馬鹿な……」
ド…ドキドキしたぁ~……。
まだ心臓がバクバクしてるよぉ~……。
「あ……!」
ん? 一夏がこっちを見てる?
(急いでいたから、思わず弥生の事を抱きかかえちまったけど……弥生の体って細くて軽いんだな……。あ、ISを装着してるから軽いのは当たり前か)
出来れば早く降ろしてくれませんかね?
皆が私達に注目してるんですけど。
(ヤ…ヤバイ……。俺……今すっごいドキドキしてる……。顔を赤くしている弥生って滅茶苦茶可愛いな……。それに、このスーツもとてもセクシーで……。俺、やっぱり弥生の事を……)
少しだけ向こうを覗き見ると、ついさっき落下してきた山田先生は、見事に地面にクレーターを形成していた。
勿論、皆はちゃんとその周囲から退避している。
あ……先生がこっちに来た。
「いつまでそこでイチャついているつもりだ」
「ぐぇっ!?」
うわぁ~…! まさかの出席簿を縦にした一撃が炸裂した……。
これはISで守っていても痛そう~……。
「無事か? 板垣」
「は…はい……なん…と…か……」
「そうか」
やっと私は一夏の腕から降ろして貰えた。
まさか、こいつに助けられるとは思わなかったな……。
「しかし……」
ん? なんか織斑先生が微笑んでいる?
「先程の動きは悪くなかった。よく板垣を助けたな」
「え? あ……ははは……」
で、一夏は一夏で珍しく照れてるし。
学校ではアレでも、やっぱり弟の事は心配なんだな。
素直じゃない大人だ。
(でも……家族を大事にする人は嫌いじゃないかな)
その気持ちは私もよく理解出来るしね。
うん。家族は大事。これ絶対ね。
列まで戻ると、ラウラを含めたいつものメンバーが急いで寄って来た。
「ひ…姫様! お怪我はありませんでしたか!?」
「う…うん……。大丈夫……だよ……」
「よかったですわ……」
「やよっちぃ~!」
「にしても……」
白式を解除して戻ってくる一夏を一瞥する。
「まさか、あの一夏があんな動きを見せるなんてね……」
「少し驚いたぞ……」
もしかして、今のが一夏の秘めた潜在能力の片鱗なのかもしれないね。
これを機にやる気が出ればいいんだけど。
「山田先生。今回は偶然にも誰も怪我などが無かったからよかったものの、次からはこのような事が無いようにしてほしい」
「はいぃ~……本当にすみませんでしたぁ~……」
背中を丸めてシュン……となっている様子からすると、本当に反省しているみたい。
確かに今回は危なかったけど、次回から気を付けてくれれば十分だと思う。
「さて、時間もあまりない事だし、早く始めるか」
「は…始める?」
「それってまさか……」
「そのまさかだ。お前達の相手は山田先生だ」
「「わぉ……」」
「なんかその反応酷くないですか!?」
二人仲良く同じリアクション。
そりゃ、数秒前に目の前に墜落した人間と試合をしろって言われたら、誰だって似たような反応するわな……。
「五月蠅いぞ。とっととしろ」
「「「は…はい!」」」
セシリア、鈴、山田先生はこれ以上もたついて織斑先生の逆鱗に触れる前に、急いで上昇して試合を開始した。
「さて……あの三人が試合をしている間に……そうだな。デュノア、山田先生が使用しているISの説明を頼む」
「わ…分かりました」
私達の頭上で繰り広げられている試合を眺めながら、シャルル君が丁寧に説明を始めた。
この辺は教科書に書いてある通りの説明だったから、ここで言う必要は無いと思うから割愛する。
え? それでも知りたい? だったら自分で調べるがよろし。
三人の試合は思っている以上に拮抗していて、原作のようにセシリアと鈴の代表候補生コンビが圧倒される…なんてことは無かった。
山田先生も地味に慌てている様子だし。
「あれがあの山田先生か……?」
「まややん先生……すごいね~……」
「ほぅ……。最初見た時はどうかと思ったが、どうしてなかなか……。それに、あの二人もやるな……」
おぉ? ラウラが彼女達を褒めてる? これはまた珍しい。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」
セシリアのレーザーライフルの銃身が山田先生の顔面に突きつけられて、同時に山田先生が両手に持っている二丁のアサルトライフルがそれぞれにセシリアと、背後から斬りかかろうとしている鈴の眼前に向けられていて、鈴の近接ブレード『双天牙月』の刃が山田先生の首元に当たる直前で静止していた。
「「「……………」」」
三人が三人共動けなくなった状態で完全に硬直。
私達もその空気に当てられて、誰も言葉を発しない。
「そこまで!」
織斑先生の一言によって、ようやく時間が流れ出す。
試合をしていた三人はゆっくりと降りてきて、列の傍に着地した。
「凄かった……」
「山田先生……カッコよかった……!」
「うんうん! なんか見直しちゃったかも!」
どうやら、織斑先生の目論見は大成功みたいだ。
この人、山田先生の試合を見せて、普段からちょっと生徒達に舐められている彼女に対する態度を改めさせようと考えたんでしょ?
多分、私だけじゃなくて、実際に相手をしたセシリアと鈴もその事は分かってたんじゃないのかな?
だからこそ、二人も本気で試合をしたんだと思うし。
「これぐらいは出来て当然だ。これでも山田先生は元日本の代表候補生だったからな」
「候補生止まりでしたけどね……」
「何を言う。お前は私の補欠だったじゃないか」
「「「「補欠っ!?」」」」
えっと……補欠って事は、万が一にで試合の前に織斑先生が怪我をしたり体調不良に陥った場合は、代わりに山田先生が試合に出ていた可能性があるって事?
「山田先生って……」
「実は、物凄い人だった?」
「あはは……」
皆の前で色々と暴露されたから、照れくさそうに頭を掻いている。
まぁ……可愛いからよし!
「では次に……」
おや? 織斑先生がこちらを見てる?
……こんな時は大抵が碌な事じゃない……。
でも、授業中のこの人に逆らうなんて、素手でマジンガーZEROに挑むのと同じぐらいに無謀な行為だ。
だから、私は流れに身を任せます。 それが一番だと信じて。
「板垣。少しいいか?」
「は…い……?」
案の定、今度は私をご指名ですか。
はいはい、行けばいいんでしょ、行けば。
「一度、お前の専用機の事も全員に見せておいた方がいいと思ってな。構わないか?」
「それぐ…らいなら…別…に……」
「ならば、早速展開をしてくれ」
「分かりま…した……」
心を集中させて……!
(来て! アーキテクト!)
私が頭の中で念じると、すぐにアーキテクトの待機形態である鉛色の腕輪が反応し、自分の体に装甲が展開、装着されていく。
「出来ま…した……」
「展開まで約0.4秒程か。見事だ」
「ど…どうも……です……」
何かある度に頭を撫でるのは止めませんか?
「あ…あれ? ちょっと待ってよ。 弥生のその機体って……」
「嘘……ですわよね?」
「これって……」
「なんと……」
予想通り、代表候補生組はこれを見て驚きを隠せないか。
他の皆は『なんのこっちゃ』って顔をしている。
本音だけは例外で、一人だけ唸り顔でこっちを見てる。
「これが板垣の専用機。機体名は『アーキテクト』だ」
「「「「やっぱり……」」」」
四人でハモったし。
「ど…どういう事だ? 鈴達は弥生の専用機の事を知っているのか?」
「知っているって言うか……」
「なんて言えばいいのでしょうね……」
言葉に迷っている感じ?
私が説明をしてもいいけど、それだと時間が掛かっちゃいそうなんだよな。
「ふむ……ボーデヴィッヒ」
「はっ!」
「板垣の機体について説明してみせろ。無論、お前が分かる範囲で構わん」
「了解であります!」
ラウラが列から一歩前に出て、皆に説明を始める。
「アーキテクト。正式名称は『アーキテクト・フレーム』と呼称される代物で、普段はISの基本フレームとして使用されています」
「き…基本フレームだと? 弥生のISはちゃんとしたISではないのか?」
「本来ならばな。だが、見た限りだと、姫様のアーキテクト・フレームには本来ならば無い筈の装甲が幾つか追加されている。恐らく、これらの増加装甲はフレームを本格的なISとして使用するにあたって後付けで装備されたんだろう」
にゃんと。その慧眼の通りだよ、ラウラ。
流石は軍人さんだ……。見事な目をしているね。
「フレームと言っても、この状態でもちゃんとISとしての最低限の機能は備わっている。絶対防御やシールド・エネルギー、PIC等がな」
「それじゃあ、板垣さんの機体でも、ちゃんと他のISみたいに空中飛行は可能なの?」
「無論だ。ただし、他の専用機や訓練機とは違って、そこまで速度は出ないと思われるが、増加装甲を見る限り、他の機能も何らかの形で強化されている可能性があるな」
これまた大当たり。
この『アーキテクト』は、フレームとして使われている他の『アーキテクト』とは違って、おじいちゃんの手によって強化改造が施されている。
そこまでずば抜けた魔改造は流石にされていないけど、IS学園に配備されている訓練機よりも僅かに上……ぐらいの性能はあると思う。
「この『アーキテクト・フレーム』は現状、全てのISに共通規格として正式採用されていて、第1世代、第2世代、第3世代の全てに使われている」
「って事は、オルコットさんのティアーズも、凰さんの甲龍も、織斑君の白式も、一度装甲を外せば板垣さんが纏っているヤツと同じ物が出て来るって事?」
「そうなるな。それと、これはあくまで噂ではあるが……」
ラウラが一息入れてから、再度話し出す。
「このアーキテクト・フレームは、全てのISの元祖とも言うべき『白騎士』にも使用されていた……と言う話もある。本当かどうかは不明だがな」
ほぇ~……私も知らないような情報が次々と飛び出してきたし。
にしても、ラウラが普通に説明をして、皆と話している光景が信じられない。
この子もある意味でコミュ症じゃなかったっけ?
「………もういいぞ。よくやってくれた」
「はっ!」
来た時と同様に敬礼をして、ラウラは列に戻っていった。
「これでお前達も板垣の機体がどのような物かは理解した筈だ。他のISとは毛色が違うからと言って、決して変な目で見ないように。いいな?」
「「「「「はい!」」」」」」
うぉっ!? ここから皆の返事を聞くと、凄い迫力だな……。
耳がキーンってした……。
「武装は……今はいいか。時間がない」
よかった……。
ここから更に武装まで展開してみろって言われたら、どうしようかと思ったよ。
このアーキテクトには、前に見せた『インパクト・ナックル』以外にも多数の装備が拡張領域内に格納されている。
拡張領域の大きさだけなら、全ISの中でもトップクラスじゃないのかな?
だって、実際にかなりの数の武装があるからね。
例えば、インパクト・ナックル専用の換装装備とか。
「さて、では今から各班に分かれてISの実習を行う事にする」
あ~……あの、面倒臭そうなアレね。
確か、専用機持ちがグループリーダーをするんでしょ?
それって私も該当するのかな?
仮にする羽目になったとしても、私のグループに集まる人なんて一人もいないだろけど。
丁度よさそうなので、ここで一旦区切ります。
実習後半は次回に。
それと、アーキテクトの説明は完全にオリジナルです。
ここで問題です。
今回の話の中で、実はあるキャラがこの物語の根幹に関わるレベルの非常に重要な発言をしているのですが、皆は分かるかな?
勘のいい読者の皆さんならばきっと分かると思いますけど。
仮に分かっても、その答えは心の奥深くに閉じ込めてくれると助かります。
下手をすると、芋蔓式にネタバレしちゃいますから。