なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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はい、ゴールデンウィーク最後の日をガッツリと休んで英気を養った私です。

似たようなタイトルが続きますが、つまりはそう言う事です。

あまり深く気にしたら負けです。











弥生ちゃんの添い寝ボイス(ラウラ編)

 まさか、生徒会室で寝落ちしてしまうとは……。

 我ながら情けないと言いますか……。

 

 楯無さんが辛そうに見えたから、少しでも癒し効果になればいいと思って耳かきをしてあげたんだけど、彼女の眠気に釣られて私まで眠ってしまった。

 しかも、私の隣ではラウラと本音まで一緒に寝ている始末。

 いつの間にか虚さんはいなくなっているし、結局、生徒会室にはソファーで眠っている私達だけが取り残された。

 

「不覚……。よもや、あのような形で眠ってしまうとは……」

 

 で、起きた頃にはもう外が暗くなりかけていたから、急いで部屋まで戻ってきたわけだけども……。

 

(まさか……ラウラが私と同じ部屋になっているとは……)

 

 いやね? この部屋にいつの間にかもう一台のベッドが運び込まれていた時点で、なんとなく想像はしていたんだよ?

 でもさ、希望的観測ってしたくなるもんじゃない?

 

 部屋に戻る前に偶然出会った山田先生曰く、『キチンとした部屋割りが完了するまでは、一時的にラウラを私と同じ部屋にしてほしい』…とのこと。

 

 ラウラがこっちに来ているって事は、シャルル君は一夏の部屋にいる訳か。

 でも、彼の部屋って隣だよね……?

 つまり、転入生が二人揃って同じ方角に来たのか……。

 

「少し遅れましたが、これから暫くの間、ご一緒させていただきます。どうか、よろしくお願いします! 姫様!」

「う…うん……よ…ろしく……」

 

 暫く……ね。

 それがどれだけの間、続くかは未定だけど。

 

「しかし、これで姫様の護衛もしやすくなります。姫様をお守りする為には、常日頃からご一緒するのが一番ですから」

 

 それはアレか? 私の前で堂々とストーカー宣言ですか?

 

(……同じストーカーでも、一夏よりかは遥かにマシか)

 

 いくら顔がよくても、向こうは男。

 私だって、付き纏われるなら、男よりもラウラみたいな美少女の方がずっといいに決まっている。

 

(にしても、ラウラの荷物……少ないな~)

 

 今、この部屋の中にあるラウラの荷物は、彼女が持ってきたキャリーケースに入っている物と、少し大きめなギターケースのような入れ物だけ。

 

「荷物…はそれだ…け……なの……?」

「はい。必要以上に荷物を持ってきて、いざという時に身動きが取れないなど論外ですから」

 

 あら、素敵な考えですこと。

 

「持って来たのは、学園から所持を許された幾つかの銃火器と、後は制服の予備と軍服……後は普段から使用しているノートパソコン等の機器ぐらいですね」

 

 うん。見事なまでに娯楽系の荷物が皆無です。

 それに、着替えが制服の予備と軍服って……私服は無いんかい。

 

(これは……私の想像以上の世間知らずかもしれない……)

 

 ラウラが来た事によって、私はヒッキーから苦労人に性格変更ですか?

 別に特殊な本なんて読んでませんけど?

 って言うか、それは本来、隣にいるシャルル君(仮)の役割なんじゃないんですかね?

 

「ところで、姫様はお食事はどうなされますか? 今からでは食堂も開いていないと思われますが……」

 

 その通り。

 窓から見える空はすっかり暗くなってきていて、この時間帯になると食堂は閉まってしまう。

 こればっかりは完全に私達の自業自得だから、誰も責める事は出来ないんだけど。

 

「適当……に作る……よ……」

「姫様は料理が出来るのですか?」

「一応……ね……」

 

 料理と言っても、殆ど我流なんだけどね。

 少しはネットや本とかで調べはしたけど、基本は自分の匙加減で作ってるかな?

 

「すぐに作る……から……ちょっと待って…て……ね…?」

「え? まさか、私の分も……?」

「う…ん……。一人分……も…二人分……も……作る量…は大して…違わない……から……」

「あ…ありがとうございます!」

 

 はい。いい返事いただきました。

 

 と言うか、ラウラの事だから、軍から支給された栄養補助食とか普通に夕食として食べそうなんだよね。

 そんなものを食べているのを横目に食事なんて出来ないでしょ。

 だったら、私の手で食事管理をすればいいだけの話。

 私がいる限りは、彼女にちゃんとした食事をさせますよ!

 

 さて……何を作ろうかな? エプロンエプロンっと……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ごちそうさま……でし…た……」

「ご…ごちそうさまでした?」

 

 食事を終えて、ラウラが見よう見まねで私と同じように手を合わせる。

 

「実に美味でした……。姫様は勉強や指導能力があるだけでなく、料理も出来るのですね」

 

 お口に合ったようでなにより。

 私が作った夕飯は、ラウラに合わせてオムライスにした。

 彼女の好みが分からなかったから、万人受けするオムライスをチョイスしてみました。

 そうしたら、彼女は喜んで食べてくれた。

 私? 私は勿論、自分用に超巨大オムライスにしたけど?

 お蔭で買い込んでいた食料が一気に無くなってしまった。

 また機会を作って買いに行かないと。

 

「ん?」

 

 ラウラの口の周りにケチャップがついている。

 本人は気が付いていないようだ。

 

「じっと……して…て……」

「はい?」

 

 ティッシュを一枚取ってから、ラウラの口についたケチャップを拭っていく。

 

「す…すみません……」

 

 顔を真っ赤にして俯いてしまったラウラ。

 軍人として堂々たる立ち姿を見せていた彼女から一変、まるで年相応、いや…それ以下の少女のような表情を見せた。

 

(……あれ? この子ってこんなにも可愛かったっけ?)

 

 いや……ラウラが美少女なのは認めるけど、こんなあどけない顔って見た事が無いような気が……。

 

(もしかして、ラウラは私次第では原作のような暴力キャラから脱却出来るのでは?)

 

 ラウラは生まれた時から軍の中で育ってきたせいか、良くも悪くも世間を知らない。

 謂わば、彼女は真っ白なキャンパスのような存在なのだ。

 このまま原作のような道を歩めば、原作のような性格になるかもしれないが、ここで私の手によって少しでも普通の女の子のようにしていけば、あるいは……

 

(可能性はある……よね?)

 

 幸いな事に、なんでか彼女は私に凄く懐いてくれている。

 私も嫌な気分はしないし、特別な事をせずに今みたいな普通の生活を継続していければ……。

 

(よし! これはもうやるっきゃない!)

 

 上手く行けば、原作のようにセシリアと鈴に暴力を振るう事も無くなるかもしれない。

 今日見た感じでも、二人とは普通に話していたし。

 

(そうと決まれば、早速……)

 

 食べ終わった後のお皿洗いだ!

 え? 食事の後に片づけをするのは当然でしょ?

 考え事をして忘れかけていたけど。

 

「お皿……を洗ってい…る間……に……シャワー…を浴びてきていい……よ…」

「そ…そんな訳には! 皿ならば私が洗います! 姫様がお先にどうぞ!」

「ラウラ……は転入したて……で疲れている……でしょ…?」

「しかし……」

「いいか…ら……ね?」

 

 彼女の頭を少しだけナデナデしてあげると、ラウラは観念したのか、大人しく荷物の中からタオルなどを取り出してシャワーへと向かった。

 

 ラウラがシャワーを浴びている間に、パパッと終わらせますか。

 

 ……あれ? そう言えばあの子……着替えはちゃんと持っていったよね?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ここ最近で割とマジで慌てた。

 だって、シャワーから戻ってきたラウラが一糸纏わぬ姿になって出てきたから。

 本人的にはOKなのかもしれないが、日本では…と言うか、どこの国でも普通はアウトだよ!

 だから、私は急いで彼女に私の持っている服を適当に着させた。

 

「夕飯を作って頂いただけでなく服まで……。姫様にはお世話になってばかりで申し訳ございません……」

「き…気にしない……で……」

 

 善意と言うよりは、私が普通に耐えられなかっただけだから。

 いくら同性とは言え、越えてはいけない一線ぐらいは弁えているつもりだよ?

 寧ろ、同性だからこそ超えてはいけないと言いますか……。

 

 因みに、彼女に渡したのは【タ○リの音楽は世界だ】と書かれた白いTシャツ。

 どこで手に入れたかは……忘れた。

 流石に下着は履かせたから、今のラウラはTシャツと下着だけという、世の男子を欲情させるような格好になっている。 

 

「次……は私…が行ってくる……ね?」

「はい。ごゆっくりどうぞ」

 

 別にこんな時まで敬礼をしなくてもいいのよ?

 

 ラウラがいるから、シャワーを浴びた後も腕袋や靴下とかを忘れないようにつけないとな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 姫様がシャワーを浴びている間、私はベッドに座って今日の事を振り返っていた。

 

(まだ初日だと言うのに、色々な事があったな……)

 

 忌々しいと思っているあの男を見つけた矢先に、姫様の姿を発見して、すぐさま挨拶に行った。

 あの方は驚いていらしたが、無理も無いだろう。

 しかし、護衛の任を受けた以上は、必ずやり遂げる!

 それがドイツ軍人としての生き様だ!

 

 資料にもある通り、姫様は間違いなく、この国における重要な位置におられる人物。

 故に、私が姫様の事をなんとしてもお守りしなくては!

 

 姫様は単純に上流階級に属する人物であるだけでなく、様々な才能にも溢れている人だった。

 午前の実習で見せた教練の上手さ。

 食事の時も気を抜かずに大量にエネルギーを補給し、あの男にすら優しさを見せる広い心。

 そして、放課後に生徒会室で見せた義理堅さ。

 トドメに、先程の調理スキル。

 

 ……どれも、私には致命的に欠けているものばかりだ。

 

 更には、姫様は非常に多くの交友関係を持っていた。

 いや……あの方ほどの人物となれば、あれぐらいは当然かもしれないな。

 あの人ぐらいなものだろう。各国の代表候補生達とああも親しくなれるのは。

 昼食時も、あの男も一緒にいたと言うのに、姫様がいただけで不快さが消えていた。

 それどころか、いつの間にかアイツの事を頭の中から忘れていたほどだ。

 

「なんなんだろうな……これは……」

 

 姫様と一緒にいると、不思議と胸がポカポカしてくる。

 この服を着させてもらった時や、頭を撫でて貰った時は、何故か本当に嬉しかった。

 こんな気持ちは今まで感じた事が無い。

 教官にすら抱いた事のない気持ちだ。

 

「けど……不快じゃないな……」

 

 寧ろ、心地がいいと言うか……。

 クラリッサなら、この感情がなんなのか知っているのだろうか?

 

「ふぅ……」

 

 私が物思いに耽っている間に、姫様がシャワーから戻ってこられた。

 姫様は青いジャージを上下に着て、タオルで頭を拭きながら出てきた。

 よく見たら、その手にはシャワーを浴びる前と同じ腕袋が装着されていて、それは足も同様だった。

 首元までジャージのチャックが閉められているから、事情は知らないが、姫様は人前にあまり肌を晒す事を好まないようだ。

 そういえば、ISスーツも肌を露出しない全身を覆うタイプだったな。

 

 タオルで長い髪を纏めながら、姫様がこっちに寄って来た。

 

「髪……は乾かし…た…?」

「あ……」

 

 そう言えばまだだった。

 考え事に夢中ですっかり忘れていたな。

 

「後ろ……向い…て……」

「は…はい……」

 

 言われた通りに後ろを向くと、なにやら温かな風が吹いてきた。

 

「ジッとしてて……ね……」

 

 ドライヤーで私の髪を乾かしてくれているのか……。

 また胸がポカポカしてきた……。

 本当になんなのだ? これは……。

 

 暫くして、すっかり乾いた私の髪を数回触って『よし』と呟いた後、今度はタオルを外して自分の髪を乾かし始める。

 い…いや、ちょっと待て! 私だけが乾かして貰って、姫様に何もしないなんて有り得んぞ!

 

「ひ…姫様! 姫様の髪は私が乾かします!」

「え……?」

「大丈夫です! お任せください!」

「ん……」

 

 姫様は黙って私にドライヤーを手渡してくれた。

 これは、私の事を信じてくれたと言う事か……。

 ならば、絶対にヘマだけは出来ない!

 

 恐る恐るドライヤーのスイッチを入れて、姫様の髪を触りながら乾かしていく。

 

(なんて触り心地がいい髪なんだ……)

 

 濡れているせいもあるのか、姫様の黒曜石のように黒光りする髪は、部屋の灯りに美しく反射していて、その肌触りはスベスベで素晴らしかった。

 

 貴重な芸術作品を扱うように、慎重に髪を乾かしていく。

 私の乾かし方に何か不備は無いだろうか……。

 今はそれだけが心配だ。

 

「……………」

 

 姫様は気持ちよさそうに目を閉じたままで微笑を浮かべていた。

 なにも問題は無い……と見てよさそうだ。

 

「お…終わった……」

 

 初めての事だったので、かなりの時間が掛かってしまったが、それでもどうにかして姫様の髪を乾かす事に成功した。

 ここまで緊張したミッションは久し振りだ……。

 私がドライヤーを使っている間、姫様は何も言わずにずっと私に体を預けてくれた。

 それが何故か嬉しくて仕方が無かった。

 

「ありが…とう……ね……」

 

 美しく微笑みながら、また私の頭を撫でてくれた。

 今度はポカポカだけでなくドキドキもした。

 おかしいな……。なんだか顔が熱いぞ……。

 

「少…し早い……けど……今日…は疲れた……から……もう休もう……か……」

 

 そう言われて時計を見てみると、もう21時を回っていた。

 

「了解しました」

 

 流石は姫様。

 早寝早起きは生活の基本だからな。

 教官もいつもそう仰っていた。

 

 だが……なんでだろうな……。

 もっと姫様のお側にいたいな……。

 

「あ…あの! 不敬を承知でお願いしたい事があります!」

「ん……? どうし…た…の…?」

「そ…その……」

 

 どうした私! しっかりしろ! 一言言えばいいだけじゃないか! 簡単な事だ!

 

「い……」

「い?」

「私も姫様とご一緒に寝てもいいでしょうか!?」

 

 言った……言ってしまった……!

 なんて答えられるだろうか……。

 やっぱりダメ……かな……。

 

「ふふ……」

「姫様?」

 

 姫様が微笑みながら私を手招きししている。と言う事は……。

 

「いいよ……。一緒……に寝よう……?」

「………! はい!」

 

 嬉しくなった私は、早足で姫様のベッドまで向かって、そのまま彼女が入っているシーツの中へと潜り込んだ。

 これが姫様の温もりか……。

 

「電気……消す…ね……?」

「はい」

 

 リモコンを使って姫様が室内の灯りを消す。

 途端に部屋が真っ暗になるが、それでも姫様の温もりは消えていない。

 

「おやすみ……」

「おやすみさない……姫様……」

 

 お互いに向き合うように寝て、暗闇の中で姫様はそっと目を閉じた。

 普段から夜目に慣れているお蔭か、この暗さの中でも姫様の顔がよく見える。

 

 少しして、姫様から穏やかな寝息が聞こえてきた頃を見計らって、私は思い切って姫様の体に静かに抱き着いた。

 

(最高の温もりだ……♡)

 

 生徒会室でも寝たと言うのに、こうして姫様の事を直に感じているだけで、瞬く間に二度目の眠気がやってくる。

 その本能に逆らおうとせず、己の睡眠欲に意識を委ねた。

 

 今日は……いい夢を見れそうだ……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ラウラが抱き着いてきた直後。

 実は弥生はまだ起きてきて、いきなりの事に心の中で驚いていた。

 

(う…うわぁ~……。え? なに? マジでこの子が可愛いんですけど?)

 

 ラウラの純粋無垢な寝顔に、心臓をバクバクさせていた。

 

(もしかして私は、本音に簪、山田先生に続く第4の癒し系キャラに出会ったのかもしれない……)

 

 まさか、原作第一期のヒロインの一人に癒される日が来るとは、流石の弥生も完全に想定外。

 

 そっと弥生の方からもラウラの事を抱きしめて、お互いの温もりを肌で感じながら、深い眠りへと落ちていく。

 

 抱き合いながら眠る弥生とラウラは、まるで本当の姉妹のように仲睦まじく見えた。

 

 

   




まさか、部屋での出来事だけで一話を丸々使う羽目になるとは……。

これこそ完全に想定外です。

でも、今回の話は今までで一番の癒し回だったような気がします。

これを読んで、少しでも読者の皆様も癒されてくれたら幸いです。

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