なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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少し本筋からズレますが、今回の話はある意味で欠かせないと判断した為、ここで書かせて貰います。

本当は、前回の話の最後にちょこちょこっと書こうと思ってたんですけどね……。

なんでか書いている内にキャラが勝手に動き出して、気が付けばまたいつのも悪い癖が出てしまって……。





舞台裏の役者達

 更識家屋敷 夜

 宵闇と静寂に包まれている屋敷内に、一際大きな男の声が聞こえてくる。

 

「先代様!! 先代様!! 大変でございます!!」

「どうした?」

 

 黒服を着た声の主は、急いだ様子で楯無の父親である先代楯無がいる部屋へと入ってきた。

 

「はぁ……はぁ……あ…あの連中が……」

「何があったのかは知らんが、まずは落ち着け」

「は…はい……」

 

 数回の深呼吸の後、男は汗を垂らしながら静かに報告した。

 

「先代様……。我々が拘束していた例の映像を撮影していた連中が、何者かによって拉致されました……」

「なんだと!?」

 

 普段は冷静沈着を地で行く先代が、目を見開くほどに驚いた。

 

「……一体何処の馬鹿がそんな事をした? あそこは我らの中でも特に手練れの連中を警備として回していた筈だが……」

「それが……」

 

 黒服は少しだけ言い淀んでから、素直に話し出す。

 

「襲ってきたのは……ISです」

「ISだと……!?」

 

 予想外の襲撃者の正体に、驚きばかりが続く。

 

「どこの機体だ?」

「漆黒の体躯に異常なまでの腕の長さ……。機体の特徴が一致している事から、以前にIS学園を襲撃したと言う例の無人機の同型機だと思われます……」

「無人機か……!」

 

 無人の機体ならば、仮に捕える事に成功したとしても、口を割らせることは不可能。

 機体の解析ぐらいならば出来るかもしれないが、そう簡単に出処を分からせるとは到底思えない。

 

「分かった……。で? 怪我人などはいるのか?」

「いえ……それが、ISはこちらには殆ど見向きもせずに、施設だけを破壊して連中を捕縛、そのまま逃走をしました。僅かに軽傷者がいますが、それだけです。少なくとも、死傷者は誰一人もいません」

「不幸中の幸い……か」

 

 ISに襲撃を受けて誰も死なずに済んだ。

 普通ならば『運がよかった』とか『奇跡的』と喜ぶところだが、先代はそんなにも楽観的な性格はしていなかった。

 

(間違いなく、襲撃者の目的は連中の拉致だけ。それ以外の事は眼中にすらなかったと見るべきだ。しかし、それだけの事を易々とやってのける奴とは…一体何処のどいつだ……?)

 

 現役時代の眼力を見せて思案し始める先代に、黒服がある物を差出した。

 

「それと、現場にはこんな物が落ちていました」

「なんだこれは……兎?」

 

 黒服が見せたのは、黒いカードに白い兎が書かれた物だった。

 

「この事はお嬢様には……」

「いや。報告はしなくてもいい」

「よろしいのですか?」

「構わん。そもそも、アイツはこちらが連中を確保していた事すら知らないんだ。ならば、黙っていた方が賢明だろう。他の連中にも箝口令を出しておけ。いいな?」

「しょ…承知しました。では、失礼します……」

 

 丁寧なお辞儀をした後、黒服は静かに部屋を退出していった。

 

「例の無人機の同型に兎の書かれたカード……。まさかな……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「よしよし……作戦大成功! 流石は束さん! ブイ!」

 

 篠ノ之束の移動式ラボ。

 その研究室にて、束が一人で飛び跳ねながら作戦の成功を喜んでいた。

 

「や~っとゴーレムが役に立ったよ~。どこかの無粋な馬鹿がレプリカなんか作ったせいで、活躍の場が無くなっちゃからね~」

 

 彼女の背後では、まるで守護者のように無人機『ゴーレム』が鎮座していて、その真紅のカメラアイが怪しく暗闇の中で光っていた。

 

「束さま」

「お? お疲れ様~クーちゃん」

 

 奥の方から銀髪の髪を持つ幼さを醸し出す、束が『クーちゃん』と呼んだ少女である『クロエ・クロニクル』がやって来た。

 

「あの蛆虫共はちゃんと飛ばした?」

「はい。束さまの言いつけ通りに、あの連中は段ボール箱に詰め込んでから、束さまが暇潰しで製作なされた使い捨ての片道限定のロケットにて、各国に点在している様々な違法研究所に送りました。勿論、『実験台としてどうぞ』と書いたメモと一緒に」

「お~! よくできました~!」

 

 嬉しさを全身で表現しながら、クロエの頭を撫でまくる。

 

「飛ばされる寸前、あの男達は泣きながら何回も『助けて』と訴えてきましたが、それを聞く道理は全く無い為、無視しておきました」

「それが正解だよ。あいつ等は人命を無視どころか、自分達の性欲の発散させる道具ぐらいにしか思ってないからね」

 

 笑顔でそう言う束だったが、その心の中はマグマのように憤怒に染まっていた。

 

「それならば、殺した方がよかったのでは?」

「ノンノン。クーちゃんは分かってないね~」

「……? どういう意味ですか?」

 

 疑問符を頭に浮かべながら小首を傾げるクロエ。

 それを見て、自分の指を指揮棒のように振るいながら説明をする。

 

「あ~んな糞虫連中の血で自分達の手を汚すなんて絶対に嫌じゃん。それに、あいつ等には死なんて生温すぎるよ。連中は私の大事なやっちゃんに人として最低最悪の事をしたんだよ? だったら、同じような目に遭わせないと気が済まないじゃん」

 

 嬉々として話す束の目にはハイライトが無く、完全に狂気が宿っていた。

 その目を見て、少しだけ束が恐ろしくなったクロエ。

 

「そう……ですね。あのような輩には、もはや人権など必要ないでしょう。この世に生を受けた事を後悔しながら、永遠に生き地獄を味わったほうがよろしいかと」

「うんうん! クーちゃんも分かってきたじゃない! えらいぞ~!」

 

 本当は分かった振りをしているだけなのだが、それも時間の問題かもしれない。

 

「早くやっちゃんに会いに行きたいな~。箒ちゃんに負けず劣らずの美少女だし、オッパイも大きいし……グヘヘ~……」

「束さま。顔が思いっきりド変態です」

「だってだってだって~! ここのモニターで見る限りじゃ、やっちゃんの女子力と言うか母親力って半端ないよ? もしも、やっちゃんのお胸にフワッ…って抱きしめられたら、私でも思わず『お母さん』って呟いちゃうかも」

「それはちょっと大袈裟じゃ……」

「そんな事無いって。クーちゃんもきっとやっちゃんの母親力の虜になっちゃうから」

「そうでしょうか……?」

 

 クロエから見ても、確かに件の少女…やっちゃんこと弥生は魅力的な少女だが、束のほめ言葉は過剰な気がした。

 

(いずれにせよ、直に遭えば分かる事ですか……)

 

 束とクロエが弥生と出会う日は何時になるのか。

 それは誰にも分からない。

 

 因みに、クロエによって放り出された『糞虫達』は、二人の思惑通りに違法研究所に掴まり、そのまま未来永劫、実験動物として生きることとなった。

 これから先、彼らは死ぬことすらも許されず、人の姿を失い脳髄だけになっても猶、永遠に人体実験に使用され続けるだろう。

 永遠に……永遠に……。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「………………」

 

 机の上にあるパソコンのディスプレイから漏れる光だけが室内を照らし出す。

 褐色肌の少女はショーツだけを穿いた格好で椅子に座り、マウスを動かしながらボ~っとしていた。

 その後ろでは、彼女が『姉』と呼んでいた黒髪の美女がベッドの中で横になり、寝息を立てている。

 

「おや?」

 

 突如、パソコンにメールが来た。

 

「これは……諜報部? もしかして、前に依頼していた例の少女の事が分かったのでしょうか……」

 

 メールに添付されていたファイルを開くと、そこには彼女が望んでいるデータが表示されていた。

 

「流石は諜報部。仕事が早い」

 

 机の引き出しの中から棒付きキャンディーを取り出して、口に咥えて、画面を下へとスクロールさせていく。

 

「名前はヤヨイ・イタガキ。なんとなく予想はしていましたが、やっぱりジャパニーズでしたか」

 

 目を動かしながら、画面に映し出される情報を一字一句漏らさずに読んでいく。

 

「現在はIS学園の一年一組に在籍。ほぅ……? 担任はチフユ・オリムラ……ブリュンヒルデですか。これはまた……」

 

 キャンディーを舐めながらマウスを動かしていく。

 

「同じクラスにはイギリスの代表候補生に天災兎の実妹、更には噂に聞く男性操縦者君も一緒……と。最近になってフランスとドイツからも転入生が……。ドイツの方は例の黒兎部隊の隊長が……。これは別に問題は無いですが、フランスの方は……」

 

 マウスをクリックして、シャルルの情報を画面全体に表示する。

 

「どっからどう見ても女でしょう……。こんなお粗末な男装でどうにかなると本気で思っているのならば、私はデュノア社の社長に脳を検査した後に即座に入院を勧めますね」

 

 思わずジト目になる少女。

 彼女がそうなるのも無理は無いが、先程までのシリアスが一時的にどこかに去ってしまった。

 

「っと、今はこんなバカの事はどうでもよかったんだった。どうせ、遅かれ早かれバレるでしょうし。どうなったとしても私には関係無いですから」

 

 確かにその通り。

 画面を元に戻してから、スクロールを再開する。

 

「なんと……。どこかで聞いた名だと思ったら、彼女は彼の娘でしたか。いや……よく見たら養女でしたね。しかし、血の繋がりは無くても娘は娘。重要人物である事には違いない」

 

 更に下へと進んでいくと、そこで彼女が無表情になった。

 

「……成る程。納得しました。この情報が確かならば、彼女が姉さまの攻撃を砕いた事も頷ける」

 

 咥えていたキャンディーを無意識の内に噛み砕く。

 破片が膝や机の上に落ちて、少しだけ散らかった。

 

「ヤヨイ・イタガキ……。これが貴女の『正体』ならば、間違いなく彼女こそが我々の最大の障害になる確率が高い。それに……」

 

 最後に咥えていた棒も、口から吐き出してゴミ箱へと直行させる。

 

「裏切り者の『雨』と『秋』もきっと近いうちに動き出すでしょうね。一応、私達は彼女達の粛清も命じられていますが、そんなのは二の次です」

 

 一番下まで画面を動かして、彼女の顔が怪しい笑顔に変わる。

 

「専用機の情報までは探れませんでしたか。ま、見ただけでなんとなく分かるからいいんですけど。それよりも……」

 

 まるで得物を見つけた獣のように目を細めて、ペロリと舌なめずりをする。

 

「どうやら、面白い経歴(・・・・・)の持ち主のようですし……。これはいいカードを手に入れましたね……」

 

 『姉さま』が寝返りをうち、それを見て彼女が微笑んだ。

 

「少し気分を変えましょうか。念の為にデータをコピーして……っと」

 

 パソコンにUSBを挿し込んでからデータのコピーを開始する。

 それを見届けてから、彼女は裸になって姉が寝ているベッドに潜り込んだ。

 

 パソコンが静かに動く中、二人の女性の艶めかしい喘ぎ声が室内に響いていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 都内某所にあるビジネスホテル。

 その一角にある部屋にて、二人の女性が話し合っていた。

 

「その情報は確かなのか? スコール」

「間違いないわ。信用出来る情報屋から教えて貰ったから」

 

 バスローブを着た金髪の見目麗しい女性『スコール』が真剣な顔で対面している女性の顔を見る。

 

「『あの子』がずっと探していた『彼女』はIS学園に在籍している」

「その担任が千冬とはな……。皮肉っつーかなんつーか……」

「気持ちは分かるけど、言っちゃ駄目よ。オータム」

「わーってるって」

 

 スコールに『オータム』と呼ばれた女性は、苦笑いを浮かべながら手をひらひらさせた。

 

「いつ動く? 出来れば早い方がいいと思うけど……」

「慌てちゃ駄目よ。下手に行動すれば、間違いなくアイツ等も動き出す」

「……だな。連中は裏切り者であるアタシ等を殺す事に躍起になってるからな」

 

 手に握っていた缶ビールをグイッと一気飲みして缶を握りつぶすオータム。

 そのまま潰れた缶はゴミ箱へとポ~イ。

 

「おし! ……で、アイツにも知らせるのか?」

「一応ね。言わなかったら、絶対に後で面倒くさい事になると思うから」

「……だな」

 

 今度はテーブルの上にある煙草の箱を手に取ってから、一本だけ取り出して火をつける。

 

「プハ~……。アタシ等の後任って……」

「『R』と『A』の二人らしいわ」

「あのレズ姉妹か」

「レズの部分に関しては、私達もあまり人の事は言えないけどね……」

 

 この二人も立派なレズビアンだった。

 

「けど、近いうちに接触する必要はあると思う。そうしないと五月蠅そうだし」

「同感」

 

 煙草を口から出して灰皿に押し付ける。

 

「けどよ、そうすれば確実に連中も動き出すんじゃねぇか?」

「かもね。その時は私達で迎撃すればいいだけじゃない?」

「簡単に言うなよ……」

 

 げんなりしながら缶ビールをもう一本取ってからプルタブを開ける。

 

「タイミングを計る必要はあるでしょうね。念の為に『レイン』に連絡して『あの子』と接触して護衛みたいなことをさせておこうかしら?」

「それがいいかもな。仮にもアメリカの代表候補生なんだし、それぐらいは楽勝だろ」

「IS学園の3年生でもあるしね。……普通に可愛い後輩として食べちゃう可能性もあるけど……」

「アイツもそれぐらいの分別はある……と信じたい」

「そのセリフだけで、貴女がレインの事を普段からどう思っているのかが丸分りよ」

「本人には言うなよ?」

「はいはい」

 

 そこからは、普通に雑談をしながら二人っきりの時間を楽しんだ。

 この穏やかな時間が、逆にこれから起こる出来事の前触れである事を、この時の二人は知る由も無かった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 IS学園を遠くから見渡せる高台。

 そこに、美しい金髪を風に靡かせながら佇んでいる一人の『吟遊詩人』がいた。

 

「今はまだ……『その時』じゃない。ですが、時が来ればいずれは……」

 

 ポロン……と竪琴を奏でて、空を見上げる。

 

「少女達よ。今だけは一時の日常を楽しんで、その心の中に沢山の『幸せ』を溜めこんでください。いずれ来る『その時』に備えて……心が折れてしまわないように……そして……」

 

 踵を返し、吟遊詩人が歩き出す。

 その顔にはどこか決意が満ちていた。

 

「必ずや貴女達の事を止めてみせる。間違った道を歩む『妹達』を止めるのは……『姉』として当然の義務ですから……」

 

 彼女の穏やかな顔からは想像も出来ない程に真剣な顔。

 

 こうして、彼女達が知らない所でも、舞台は止まることなく進んでいく。

 この世界の行く末は……誰にも分からない。

 例え……『神』であったとしても……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




取り敢えず、書きたい事は書けました~……。

弥生達が普通に暮らしている間も、世界は回っていく。

その中心にいるのは……?
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