なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

4 / 107
主人公の弥生は、悪い意味で原作知識やISアンチ系二次小説の影響を受けています。

タグにもある『思い込みが激しい面々』には、原作キャラ達だけでなく弥生も含まれています。

と言うよりも、彼女こそが筆頭です。






一夏ハーレム崩壊の瞬間

「「………………」」

 

 突如として弥生の部屋に入って来た一夏。

 弥生は一番会いたくない人物に一番見られたくない秘密を見られて、一夏は目の前にいる少女の裸を見てしまった事に加え、その体に無数に刻まれた傷跡を見て、お互いに時が止まってしまったかのように呆然となってしまった。

 

 この状況でどうすればいいのか混乱している弥生は、未だにその場で棒立ちになっている。

 そんな彼女を見て、いきなり一夏が動き出した。

 

「お…おい! その体はどうしたんだ「ひっ……!」……え?」

 

 突然、自分に迫ってきた一夏に恐怖を覚えた弥生は、反射的に顔をひきつらせてから……

 

「キャァァァアァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァアアアァァッ!!!!!」

 

 両手で思いっきり一夏の体を押し出して、そのまま開いたままになっている扉から彼を追いだした。

 一夏も、その勢いに負けて廊下の壁に軽く体をぶつけてしまった。

 

「いてて……」

 

 一夏が廊下に出た瞬間、弥生は急いで部屋の扉をバンッ!と力強く閉じた。

 

「あ……ちょっと!?」

 

 思わず扉に向けて手を伸ばしながら叫ぶが、部屋からは何も返事が無い。

 唯でさえ原作キャラを避けている弥生から返事が来る筈も無いのだが。

 

「……一体何なんだよ……」

 

 本当に自分のしでかした事を理解していないのか。

 鈍感もここまで来れば、もう一種のスキルではないだろうか?

 

「……そこで何をしている」

「げ」

 

 そんな一夏に一人の少女が近づいてくる。

 一夏のルームメイトであり、同時に幼馴染でもある少女『篠ノ之箒』だ。

 彼女は剣道着を身に纏っていて、その手には木刀が握られていた。

 

「先程、隣の部屋から出てきたように見えたが?」

「そ…それは……」

 

 気まずくなって目を逸らす一夏。

 彼は自分に与えられた部屋にて、図らずも箒のあられもない姿を見てしまい、その結果として彼女の怒りに触れてしまって、つい先程、箒の木刀攻撃から逃げてきたのだ。

 だが、逃げた先が最高に拙かった。

 

「何故に目を逸らす?」

「べ…別に?」

 

 彼の態度に不審なものを感じた箒は、目の前にある扉をノックしてから、軽い挨拶と一緒に少しだけ扉を開いた。

 そして、箒の目に映ったのは……

 

「う……うぅぅ……」

 

 ベッドに顔を埋めて泣き声をあげている弥生の姿だった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 一夏を部屋から追い出した後、弥生は速攻で部屋着へと着替えた。

 下着を着た後に二の腕まで覆い尽くす腕袋にニーソックス。

 その上から中学時代に着ていた紺色のジャージを身に纏った。

 基本的に部屋にいる事が多い彼女にとって、この恰好こそが最も落ち着くのだ。

 

(見られた……見られた……見られた……見られた……見られた……)

 

 弥生が体の傷を見られたくなかったのは、見られたから嫌われるとか、イジメに遭うとかと言った理由ではない。

 

(あの偽善が服を着て歩いているような男に見られたら……絶対にこれから先、ずっと付き纏われる……)

 

 これである。

 原作キャラと関わらず、その上でボッチ生活を満喫するには、体の傷跡を隠し続けて自分の特異性を秘匿する事が必須事項である……と弥生は思っていた。

 

(それなのに……よりにもよってあの野郎に見られてしまうなんて……もうおしまいだ……)

 

 初日から早くも詰んでしまったと半ば絶望していた弥生は、涙を流しながらベッドにうつ伏せながらシーツを濡らしていた。

 

「う……うぅぅ……」

(最悪だ……完全に終わった……)

 

 そんな時だった。

 

「失礼する。少しいいか?」

 

 ノックと共に再び部屋の扉が開かれた。

 しかし、泣いている弥生はその事に全く気が付いていない。

 

「な…泣いている……のか?」

 

 部屋に入って来た箒は、弥生の様子を見てただ事ではないと悟った。

 普段は気丈な彼女も、目の前で涙を流している同級生を見て、無粋な態度をするような酷い少女ではない。

 

「見られた……見られた……」

「見られた?」

 

 弥生が発した言葉を聞いて、箒は自分の中で現在の状況を推理する。

 

(この部屋は彼女の部屋であり、そこから一夏が飛び出してきた。そして、彼女は『見られた』と言いながらここで泣いている……)

 

 瞬間、箒の頭脳に一つの答えが舞い降りた。

 

「まさか……!」

 

 自分の考えが正しいか確かめるため、急いで廊下にいる一夏の元に戻った。

 その際に扉は開いたままになってしまったが、それがまた余計な混乱を招く事になる。

 

「一夏ぁっ!!」

「ほ…箒!?」

「貴様ぁ……彼女に何をした……!」

「彼女……?」

「部屋の中で泣いている彼女の事だ!!」

「え……?」

 

 箒に言われて、一夏も立ち上がって部屋の中を覗いてみる。

 そこには、未だに泣き続けている弥生がいた。

 

「あ………」

 

 お人好しが服を着て歩いているような男である一夏にとって、守るべき対象である女性を泣かせるなど論外であるが、現にさっき裸を見てしまった少女…弥生が目の前で泣いている。

 いくら鈍感と言えども、流石に一夏の心にも罪悪感が生まれて、室内に気まずい雰囲気が流れ出す。

 

「ふぇ……?」

 

 その時だった。

 少しだけ涙が収まった弥生は、部屋の中に自分以外の声が聞こえたのを感じ、思わず顔を上げた。

 

「…………!?」

 

 一夏だけでも一杯一杯なのに、その上、箒まで目の前にいる。

 弥生の心を追い詰めるには充分すぎる程の状況だった。

 

(し…篠ノ之箒ぃぃっ!? なんでこいつもここにいるのっ!?)

 

 思わず目を見開いて箒の姿を見る。

 

(篠ノ之箒と言えば、織斑一夏を常に最優先に考えて、口よりも先に手が出る剣道を暴力行為に使う女じゃないか!!!)

 

 弥生の中では、基本的に原作ヒロインは一夏をいつも中心に考えていて、彼の気を引いたり、周囲に女性がいたりする時は手段を選ばず暴力を振るう最悪の存在として強く認識されている。

 故に、ある意味で弥生にとって一夏以上に近づきたくない存在でもあるのだ。

 そんなヒロインの筆頭とも言うべき少女が自分の部屋にいる。

 弥生にとって、絶対に有り得てはならない地獄のような光景だった。

 

(ぼ……木刀持ってる!? って事は……)

 

 弥生の頭の中に最悪の光景が過る。

 

(『よくも一夏をたぶらしたな! 成敗してくれる! 死ねぇぇぇぇぇっ!!!』とか言われて殺される!!!)

 

 剣道の有段者(篠ノ之箒)が木刀を持って自分に殺意を向けている(と思い込んでいる)のを見て、弥生は激しく混乱した。

 

「ひ…ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 悲鳴をあげながら尻餅をついた状態で後ずさりをして、壁にぶつかってから頭を抱えて体を震わせながら、また泣き出してしまう。

 

「お……おいっ!?」

 

 尋常ではない弥生の様子に一夏は心配になって近づくが、声を震わせながら泣いている弥生を見て、その動きが止まった。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいお願いだから打たないで殺さないでおじいちゃん助けて……」

 

 一夏が接近しただけで怯えた弥生を見て、箒の堪忍袋の緒が切れた。

 

「一夏ぁぁぁっ!!! お前と言う奴は!!!」

「箒……俺……」

 

 鬼の形相で近づいてきた箒に胸倉を掴まれた一夏であったが、それを振り払う事もせず大人しく受け入れていた。

 

「私の裸を見ただけに飽き足らず、見ず知らずの少女にここまで怯えさせるほどの仕打ち……お前は男として! いや……人として恥ずかしくないのか!!!」

「俺は………」

 

 実際には箒と木刀に怯えているのだが、真実を知らない当人達は弥生の涙の理由を完全に勘違いし、全ての原因は一夏にあると思い込んでいる。

 

 ここで余談であるが、この箒と言う少女は昔は確かに一夏に対して恋心を抱いていたが、転校して彼と長い間離れていた結果、その恋心は年月と共に薄れていって、こうして再会した今では完全に冷めきっている。

 現在の箒の中での一夏は『昔一緒に過ごした幼馴染』程度の認識でしかなく、少なくとも『数年振りに再会して初恋再び!?』なんてことは無いと本人は思っている。

 

「参考書を捨てたり、自己紹介すらちゃんと出来ない時点でもしかしてと思っていたが……暫く会わない間にお前はどこまで落ちぶれれば気が済むんだ!!!」

「ごめん……」

「私に謝ってどうする!! お前が謝るべきは彼女だろう!!!」

「そう……だな……」

 

 箒の手が離れて、一夏はまだ体を縮こませて恐怖に震えている弥生の傍に近づいて目線を合わせる為に腰を低くする。

 

「えっと……その……本当にごめ「何を騒いでいますの?」……え?」

「お前は……」

 

 この部屋での騒ぎに気が付いてやって来たのは、教室で一夏に啖呵を切ったイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットだった。

 よく見れば、彼女の他にも野次馬と化している生徒達が部屋の前に押し寄せていた。

 

「……本当に何をやってますの?」

「実は……」

 

 箒はセシリアに(自分がそうと思い込んでいる)これまでの出来事を説明する。

 話を聞いていく内に、セシリアの心にも怒りが込み上げてくる。

 

「貴方と言う人はどこまで……!」

 

 ズンズンと部屋に上がり込んで一夏に近づいていくセシリア。

 目の前まで行くと、まずは蹲っている弥生を見て、その次に一夏を見た。

 

「確か……板垣弥生さん…でしたわね……」

「…………ぇ?」

 

 またまた聞き覚えのある声に反応して目だけを動かして声のした方を見る。

 

(セ…セシリア・オルコットまでいるぅぅぅぅぅぅっ!? アイエェェェェッ!? ナンデッ!? イギリス人ナンデッ!?)

 

 三度の乱入者に、もう弥生の頭はパンク寸前。

 頭の中がグルグルと回りだし、ネガティブな考えだけが頭を支配する。

 

(この時期のこいつは女尊男卑で日本人を見下していた筈……。こんな姿を見られたら……)

 

『なんて無様なお猿さんなんでしょう。目障りだから、せめて苦しまずに逝かせて差し上げますわ。慈悲深い私に感謝しなさい……この薄汚いイエローモンキー風情が!』

 

(とかなんとか罵倒されながら撃ち殺される!!!)

 

 んなわけねーだろ。

 もしかしてそれはギャグで言っているのか?

 思わずそうツッコみたくなる程のネガティブシンキングだが、人と言うのは一度でも後ろ向きな考えが始まると、そう簡単には立ち直れない不器用な生き物。

 それが人一倍コミュ症でヘタレな弥生ならば猶更だ。

 

「お願いしますすみませんでした許してください私が悪かったです死にたくありません……」

「なんて可哀想に……こんなにも体を震わせて……」

 

 弥生のイメージとは裏腹に、セシリアは心の底から心配そうに弥生を見つめる。

 実は彼女、部屋に戻ってから少し自分の発言を振り返り、冷静に考えた結果、流石に自分が悪かったと反省していたのだ。

 故に、今のセシリアは女尊男卑思考はそのままであっても、日本人を見下したりはしていない。

 

「織斑一夏……貴方と言う人は……!」

 

 セシリアの方を振り向いていた一夏に向かっての全力ビンタ。

 バチンッ!といい音が部屋に鳴り響いた。

 

「恥を知りなさい! この最低男!!」

 

 この瞬間、セシリアフラグが完全に折れてしまった。

 

 ビンタをされた一夏は、自分がどれだけの事をしてしまったのか改めて思い知り、無言でふらふらと歩いて部屋を出て行ってしまった。

 

「お…おい! まだ謝罪が……」

「放っておきなさい。今の状況で下手に謝られては、却って逆効果ですわ」

「そうだな……」

 

 部屋に残ったのは弥生と箒とセシリアの三人。

 しかし、まだ弥生は怯え続けている。

 それもそうで、弥生にとっての恐怖の対象は箒とセシリアであって一夏ではない。

 この二人が部屋にいる限りは弥生の心に平穏は訪れない。

 

「一夏が去っても、まだこんなに怯えて……」

「あの男は板垣さんにどんな酷い事をしたんですの……!」

 

 二人の中で一夏の評価が急降下していった。

 哀れ原作主人公。

 様々な偶然と勘違いの末に、君の嫁候補が二人もいなくなってしまった。

 

 だがしかし、ここで弥生の精神にトドメを刺す存在が降臨する。

 

「お前達。ここで一体何をしている……」

 

 我らが偉大なる担任様、織斑千冬先生のお出ましである。

 

 優れた観察眼を持つ彼女は、すぐに部屋の状況を見て何かがあったと察した。

 

「……何があった?」

「その……」

 

 自分が把握している部分だけを事細かに説明していく箒。

 そう……彼女が把握している部分だけ(・・・・・・・・・・・・・)を。

 

「あの馬鹿者が……!」

 

 思わず頭を抱える千冬。

 女子達の中に男が一人混ざるのだから、何かあるとは思ってはいたが、まさか初日から問題を起こすとは予想もしていなかった。

 しかも、その当事者である弥生の様子が尋常ではない。

 

「後で織斑には事情を聞きつつも話をするとして……」

「問題は板垣さんですわね……」

 

 一人の教師として、同じ女として、ここまで怯えている少女を目の前にして何もしないなんてことは千冬には出来なかった。

 

「板垣……」

 

 出来るだけ優しく千冬は弥生の事を抱きしめた。

 最初はビクッ!となっていたが、人肌の温もりを感じて安心したのか、体の震えは収まった。

 

(この様子……真耶の言った通り、過去に何者かからとても酷い事をされたに違いない……。それも、私達が想像すら出来ない程の所業を……)

 

 そっと弥生の頭を撫でながら、千冬のある決意をした。

 

(私達教師がこいつの事を全力で守ってやらねば……! 大人として…いや、教師として教え子の笑顔を守るのは当然の義務だ!)

 

 教師として非常に立派な考えであるが、弥生にとっては最悪のフラグが立った瞬間でもあった。

 そんな事はつゆ知らず、彼女は千冬の抱擁を堪能しながら、ある事を思った。

 

(なんだろう……凄くいい匂いがする……。暖かくて安心するけど……これって誰なのかな……)

 

 僅かではあるが警戒心が溶けつつある弥生。

 自分を抱きしめている人物の顔を見ようと顔を上げるが、その顔は一瞬で凍結する事となる。

 

 さて、ここで読者諸君に質問だ。

 弥生は全身に傷跡を抱えてはいるが、それでも誰もが認めるレベルの美少女だ。

 片目を隠しているミステリアスな雰囲気を抱えた美少女が、自分の胸の中で涙目になりながら上目使いで己の事を見つめてきた。

 もしも、そんな状況に遭遇したら大抵の人は一体どうなると思う?

 答えは……

 

「はぅ……?」

「「「はぅわっ!?」」」

 

 こうなる。

 ズキューン! と言う効果音がどこからともなく聞こえてきて、この場にいる三人の心を直撃した。

 天使のラッパが鳴り響き、キューピットがハートの形をした矢を三人の胸に突き刺す。

 

(((か…可愛い!!!)))

 

 一方、当の弥生はと言うと?

 

(お…織斑千冬ですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!? マジで殺されるぅぅぅぅ!!)

 

 最大最悪の存在に抱きしめられていると言う事実が弥生の精神に最強の一撃をぶちかました。

 その結果、弥生は……

 

「キュウ……」

 

 ぱたりんこ。

 完全に白目を剥いて気絶し、そのまま千冬の胸に飛び込むような形になった。

 

「大丈夫だ。私はここにいるからな」

 

 とても優しい笑顔で弥生を撫でる千冬であったが、抱きしめられている本人は絶賛気絶中である。

 その事に誰も気が付いていないのが、なんとも皮肉な事だ。

 

(ぷりーず……へるぷみ~……)

 

 美少女ヒッキー弥生ちゃんの魅力に取りつかれた三人と、艱難辛苦の毎日が約束されてしまった弥生、色んな意味で不憫な目に遭っている一夏。

 彼等、彼女等の明日はどっち~?  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちゃんと出来ているのかな……?

非常に不安が大きいです。

あと、この作品は別に一夏アンチじゃないのであしからず。

ちゃんと弥生からの各ヒロイン達の印象は少しずつ改善していく予定です。

それと人見知りが治るかどうかとは全くの別問題ですけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。