絶望の世界に希望の花を   作:Mk-Ⅳ

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第十二話

戦闘態勢を取ったアインに対して、小比奈は持ち前の脚力を用いて懐に飛び込もうとし――アインの姿がブレた瞬間、視界がロングソードを振り上げたアインで埋め尽くされる。

 

「!?」

 

本能的に右斜め前へと飛び込むと、背後スレスレを刃が通り過ぎていった。体を丸めて前転しながら起き上がると、ソードを振るった勢いを殺さず両手を広げ、駒のように回転しながらアインが迫ってきた。

小比奈は小太刀を交差させて受け止めるのと同時に、後ろに跳んで衝撃を軽減するも、殺しきることができず腕に痺れが走り顔を顰める。

 

『セィッ!』

 

追撃しながら、今度はルガーランスとソードを地面突き刺し、それを支点に逆立ちした勢いを利用して体を丸めて縦回転しながら突撃するアイン。

小比奈が跳んで回避すると、足場にしていた卓の一部が、アインの振るったソードとランスが叩きつけられ砕け散った。

 

「やぁぁぁあああ!」

 

僅かにできた隙を逃さず、小比奈は右手の小太刀で刺突を放つ。完璧なタイミングで放たれた突きは、吸い込まれえるようにアインの喉元目がけて迫り――空を切った。

 

「ッ!」

 

気配を追って視線を下げると、両膝を床に突いた態勢のまま、頭部が床に着く程に上半身を後ろに折り曲げたアインがいた。

その態勢からアインは、再びランスとソードを地面突き刺し体を固定させると、逆上がりの要領で彼女の顎目掛けて両足を同時に蹴りだす。

首と上半身を後ろに逸らしながら後方に跳び退く小比奈。爪先が顎を掠めて空を切ると、腕の力だけで跳び上がるアイン。

互いに着地すると同時に駆けだし、同時に振るわれた刃がぶつかり合い火花を散らす。

 

「(こいつの動き、あいつ(・・・)みたいで気持ち悪い!)」

 

余りに変則的な機動をするアインに、嫌いな男の姿を重ねる小比奈。

 

「(でも、あいつよりは遅い!)」

 

だが、圧倒的だったあの男に比べれば、アインの動きはまだ粗かった。嵐のような連撃を繰り出すアインの動きを、徐々に見極めながら反撃を挟んでいく小比奈。

 

「……」

 

そんな光景を蓮太郎ら民警はただ見ていることしかできなかった。蓮太郎を除けば、この場にいるのは序列上位に位置する東京エリアでも実力者ばかりなのだが。誰もが目の前で繰り広げられる異次元の戦いに、割り込むことに二の足を踏んでしまっていた。

 

『アイン時間切れだ。プランBでいく』

 

ガトリングで影胤を抑えていたツヴァイが、やむなしといった様子で指示を出す。その姿は反射された弾丸によってボロボロになってしまっていた。

 

『了解』

 

それを合図に、アインは小比奈が放った左右からの斬撃を天井に届く高さまで跳んで回避し、天井にソードとランスを突き刺し足をつけると、天井を蹴って小比奈目掛けて砲弾のような速度で突撃しながら、縦回転斬りを放った。

だが、大振りなため容易く見切られ、1歩後ろに退がられただけで刃は空を切って床を砕き、粉上になったコンクリートが飛散し視界を塞ぐ。

 

「そこッ!」

 

明確にできた隙に、今度は両手小太刀を同時に突き出す小比奈。対してアインは両手を武装から離し、手を広げたまま迫る小太刀へと突き出した(・・・・)。そして、小太刀はその手の平を貫いた。

アインは激痛を無視して(・・・・)さらに腕を押し出し、刃をより深くまで突き刺していき、小太刀を握る小比奈の手を掴んだ。

 

「!?え!?」

 

予想外過ぎる事態に、思わず間抜けな声を漏らして小比奈。その間にアインが屈んだ状態から立ち上がると、身長の関係で小比奈の足が床から離れ宙にぶら下がる状態となる。

 

「この、離せ!離せってばぁ!」

 

小比奈は拘束から逃れようと暴れるも、手は掴まれており、蹴りを放つもアインには届かず虚しく空を切るだけだった。

 

『捕まえたよツヴァイ』

 

小太刀の刺さった手の平からは、血とオイルとが流れ続け激痛が走っているも、アインは気にした様子もなくツヴァイに告げる。

 

「小比奈!?」

 

娘が捕らえられたことに、今まで余裕綽々だった影胤が動揺し、視線ごと意識を完全にツヴァイから外してしまった。

その瞬間、ツヴァイはガトリングを投げ捨て、ブースターを全開に吹かし影胤へと突撃した。

 

『隙を見せたな』

 

ツヴァイが左腕のシールドをパージすると、シールドの下に隠していた物が姿を現す。

 

「!」

 

視線をツヴァイに戻した影胤が見たのは、杭とそれを撃ち出す射出機――パイルバンカーだった。

 

『撃ち抜く!』

 

ツヴァイがアッパーの要領でバンカーの先端をフィールドに押し付けると、射出機を起動させ杭が高速で撃ち出されフィールドに叩きつけられる。左腕の装甲が衝撃に耐えられず無数の亀裂が走り、その衝撃は内部の肉体にまで及びズタズタに引き裂いた。

撃ち出されたバンカーはフィールドを貫通し、その衝撃で影胤の体が宙を舞い天井に叩きつけられめり込む。

 

「ガハッ…!」

 

影胤の口から血が吐き出され、貼り付けられた体が重力によってゆっくりと引き剥がされて落下し、床に叩きつけられる。

 

「…終わったのか?」

 

民警の誰かが呆然と呟く。床に倒れ伏す影胤とアインに捕まりもがいている小比奈、誰もが勝負は着いたと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ、お見事」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思った瞬間、影胤が手を使わずに起き上がると、飄々とした態度でツヴァイへと拍手を送り出した。

 

「素晴らしいこの痛みッ、今私は生きているッ、素晴らしきかな人生!ハレルヤ!」

 

爪先で立ちながら一回転して歓喜の声を上げる影胤。

 

『チッ』

 

血とオイルが流れて混ざり合う左腕から走る激痛に、顔を顰めて舌打ちしながら、使い捨てのバンカーをパージするツヴァイ。想定では今の一撃で仕留められる筈だったのだが、想定よりもフィールドの強度が高かったのか、十分なダメージを与えられなかったようだ。

 

「ここまで追い詰められたのは久しぶりだ。あのような手段で小比奈を捕らえることといい、流石は()の教えを受けていただけのことはあるね」

 

『彼』という言葉が出た瞬間、ツヴァイから殺気が放たれ小比奈を優しく宥めていたアインは、言い知れぬ気配を纏いだした。

 

『そうか、貴様には話してもらうことが増えたな、特別にこの場で話させてやろう。話せないっていうなら話しやすいように手伝ってやる、安心しろ今の時代手足の1本や2本すぐに生やせるからな』

 

冷え切った声を出しながら、右手で膝のウェポンバインダーからガルム44を取り出し、銃口を影胤に突きつけるツヴァイ。

 

「申し訳ないがそれは遠慮させてもらうよ。さて、十分楽しめたし今回はこれでお暇させてもらうよ」

『逃がさん!』

 

ツヴァイがライフルを発砲すると、フィールドを発生させて防ぐも、その輝きは先程までよりも弱弱しくすぐに消えてしまった。

 

「あいつ、もしかして弱ってるのか?」

「あれだけの衝撃を受ければ当然ね。多分、フィールドの発生装置である臓器がいくつか傷ついているのよ」

 

それを見た蓮太郎は影胤に違和感を覚える。飄々と振舞っているも、実際は余裕がないのではと。そして、木更の指摘でそれが確信へと変わる。

だが、イニシエーターは捕らえられ、自身も少なくない負傷をしている状況であっても、影胤からは余裕が感じられていた。

ツヴァイもそれを感じ取っているのか、影胤の一挙手一投足を見逃すまいと警戒している。

 

「できればこうしたくなかったが、致し方ないか」

 

やれやれといった様子で右手の親指と人差し指を合わせてパチンと鳴らすと、窓を割って無数の細長い物体がツヴァイへと殺到してきた。

 

『何!?』

 

予想外の事態に動揺しつつも、跳び退いて回避すると、物体が次々とツヴァイのいた床に突き刺さっていく。

 

『投げ槍だと!』

 

突き刺さったのは投擲用の槍――いわゆる投げ槍と呼ばれる物であった。それも、図鑑で見たことのあるアイヌ民族が用いてものと酷似していた。発射点を探ると、どうやら向かいのビルの屋上のようである。

突き刺さった槍の1本には太いワイヤーが結びつけられており、それを足場にフードで全身を覆った者が駆けてくるではないか。

 

『チィッ!』

 

ツヴァイがその者に向けてライフルを発砲すると、フードの者は右腕だけをフードから晒し、手にしていた短い一対の木製の棒を短い紐で繋いだ――所謂ヌンチャクと呼ばれる武器を振るい弾く。

それを見たツヴァイは、足場にしているワイヤーをフルオートから単発へ切り替え狙い撃つも、特殊な金属で作られたのか数発同じ個所に直撃して切断できない。ならばと、着弾の衝撃で振り落とそうとワイヤーを狙い続けるが、フードの者は驚異的なバランス感覚を持っているようで、ブレることもなく走り続けている。

そしてツヴァイ達がいる部屋まで近づいたフードの者は、軽く跳躍しながら侵入してくる。

 

『アイン!』

『ッ!』

 

その軌道からフードの者の行動を予測したツヴァイが叫ぶ。本能的に狙われていることを察知したアインは、小比奈を捕らえたまま着地地点に移動すると、フードの者が着地しようとするのと同時に、脚部のブースタを吹かしながら顎を蹴り上げる。

フードの者は迫る脚に対処しようとし――たが顔の真横を通り過ぎた。

 

「!?」

 

そのことにフードの者から困惑の色が浮かぶ。首を傾けて回避しようとこそしたが、明らかに蹴りの軌道を変えて外されたからである。フェイントにしても違和感が感じられたのだ。

だが、アインが踵落としへと繋げてきたので、片膝立ちの態勢からヌンチャクを振り上げアインの左脇腹に叩きつける。

木製とは思えない打撃音と共にヌンチャクは装甲を砕き、その衝撃が内部まで伝達しアインの肉体にもダメージを与える。

 

『――ッ!』

 

流石に堪えたのか、吐血したアインは小比奈を掴んでいた手が緩んでしまう。その隙を逃さず小比奈は小太刀を手放すと後ろに跳んで距離を取った。

 

「それでは諸君さらばだ」

 

窓際まで移動していた影胤が飛び降りると、小比奈がそれに続き最後にフードの者が飛び降りていった。

アインが手の平に刺さっている小太刀を迷いなく引き抜くと、傷口から血が溢れ出すが、気にした様子もなく手放していた武器を回収し彼らを追いかけようとして――ツヴァイに蹴り飛ばされた。

 

『イった!?何するんだよツヴァイ!』

 

床に倒れ込んだアインが、素早く起き上がりツヴァイに詰め寄りながら怒鳴ると、ツヴァイは悪びれた様子もなくアインを睨みつける。

 

『あん?テメェこそ何してんだ』

『追いかけるんだよ!今ならまだ間に合う!』

 

興奮した様子で進言するアインに、ツヴァイは盛大に溜息をつく。

 

『自分の状態をよく見ろボケ。くたばりかけでどうにかできる相手じゃねぇよ』

 

影胤らを助けた者達は、少なくとも自分らと同等の実力を持っているとツヴァイは見ていた。仮に追撃したとしても、消耗した今の戦力では勝機はないだろう。

特にアインはフードの者から受けた脇腹のダメージが酷く、臓器に深刻な損傷が出ている状態である。誰が見ても今すぐにでも治療が必要なレベルであり、本来なら安静にしているべきなのである

 

『問題ない!ここで彼らを逃がすくらいなら死んでも構わない!!』

 

にもかかわらず戦い続けようとするアインに、その場にいた民警達は恐怖すら感じられた。

 

『蒼希3尉』

 

そんな彼にモニター越しに聖天子が呼びかける。

 

『追撃は中止し、治療に専念しなさい』

『聖…天子様!僕はまだ戦える、戦えるんだ!!』

『これは命令です』

 

悲痛さすら感じられるアインの叫びに対し、聖天子は表情1つ変えず告げる。

 

『聖――!』

『アイン!』

 

それでもなお食い下がろうとするアインの肩をツヴァイが掴む。

 

『これ以上、あいつを泣かせるな』

『ッ――了解』

 

接触回線でアインにだけ聞こえるようにして語り掛けるツヴァイ。モニターに映る聖天子は悠然と佇んでいるが、その体は側に控えている菊之丞ですら気づかない程僅かに震えていた。それに気がついたアインは、握り締めていた拳を緩めて俯いた。

 

「(最後に現れた連中…)」

 

そんな彼を横目に、ツヴァイは辺りを見回す。床に突き刺さっていた無数の槍は、まるで最初からなかったかのように跡形もなく消えていた。記憶にある槍の形状やその事実から思い当たることが1つあった。

 

「(これは想像以上に面倒だな…。やはりジョーカーを切るしかないか)」

 

これから起こるだろう事態を予測し、陰鬱な趣きになりながらも、呆然として立っている蓮太郎に視線を向けるツヴァイ。

窓の外に広がる東京エリアでは、何気ない日常が続いていた――

 

 

 

 

防衛省から逃亡した蛭子親子は、協力者であるフードの者達と共に東京エリアの外周区にいた。先導しているフードの者達に連れられとある廃屋に入ると、その内の1人が古びた本棚にあるいくつか本を軽く押し込むように触れていき、ガコンッという音が響くと何もなかった壁から隠し扉が姿を現す。

その先には下へと続く階段があり、再びフードの者達が先導し降りていくと開けた空間へと出た。

その空間には様々な家具や最新の家電が置かれ清掃も行き届いており、建物の外観に反して真新しさを感じられた。

 

「お、お帰りギンバイカ、ペチュニアお疲れさん」

 

そしてその空間には数人の人間がおり。その中で、キャスターつきの椅子の背もたれを前にして持たれかかっている青年と、その隣で座布団に座った褐色肌ではつらつそうな少女がテレビに向き合って、格闘ゲームをしており、青年がフードの者達を方へ体ごと向けて労いの言葉をかける。ちなみにコントローラを握る手は淀みなく動き続けている。

 

「ただいま戻った道陽」

「ただいま~」

 

そういって、ギンバイカとペチュニアと呼ばれたフードの者達が、どちらも少女と言える声でそれに応じる。

 

「お前達は部屋で休んでていいぞ、飯の時間になったら呼ぶから」

「分かった」

「それじゃひと眠りしますかにゃ~」

 

青年――日野道陽の言葉にギンバイカと呼ばれた方は頷き、ペチュニアと呼ばれた方はあくびを噛み殺しながら答えると、空間の奥にある通路へと消えていった。

それを見送ると道陽はさて、と蛭子親子に視線を向ける。

 

「ようこそ我らがアジトへ。盛大にはできんが歓迎しよう」

「お招き頂き光栄だよ。できれば君の手は借りたくなかったがね」

 

負傷している影胤を見て愉快そうな笑みを浮かべる道陽に、影胤は肩を竦めながら応じる。

 

「どうよあいつらは、強かったろ?」

「ああ、実に楽しませてもらったよ。流石は君の教えを受けただけのことはあるね、元Alvis隊長殿。いや、今は人類革新連盟特殊作戦部隊『Fuhren(フューレン)隊長日野道陽殿と言うべきか」

「そうやろそうやろ、天塩にかけて育てたけぇのう」

 

皮肉を隠そうとしない影胤に、ゲラゲラと道陽は高らかに笑う。

 

『KO』

「あぁぁあああ!また負けたぁ!!」

 

そんな折、置かれていたテレビから音声が流れると、道陽の隣に座っていた少女が絶叫共に後ろに倒れた。

テレビには格闘ゲームが映し出されており、少女の操るキャラのライフが尽き倒れ、道陽が操るキャラが勝利ポーズの決めていて、KOとい文字がデカデカと表示されている。ちなみに道陽が操るキャラのライフは全く減っていない。

 

「なんで画面全く見てないのにハメコンできるのさ!?」

「ファーハッハッハッハッハッ!ナクリーよ年季が違うのだよ、年季が!」

 

ジタバタ暴れながら憤慨している少女――ナクリー・オルフレッドに、道陽が勝ち誇った笑みを浮かべている。

 

「大人気ねぇ…」

 

ソファに寝ころんでいるナクリーと同じく褐色肌で勝気そうな少年――クロヴァン・オルフレッドが、そんな道陽に呆れた目を向けていた。

 

「覚えておけクロヴァンよ、獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすのだぁ!」

「もう1回、もう1回だかんね!次は勝から!」

「よかろう!かかってこいやぁ!」

 

体を起き上がらせて訴えかけてくるナクリ―に道陽が応じると、再度対戦が始まった。

 

「道陽、準備ができた」

 

すると、奥の通路から現れた褐色肌で少女――ネサット・オルフレッドが告げてくる。名が示すように彼女とクロヴァンは姉弟であり、ナクリーは彼女らの親戚なのだが、とある事情で彼女も同じ姓を名乗っており血の繋がり関係なく家族の絆を持っている。

 

「おう、ネサット。んじゃ影胤、彼女に着いていきな。破損した臓器変えるから」

 

影胤に視線を向けて促す道陽。その間にもコントローラーを操作する手は止まらない。

 

「彼女が、かね?」

 

影胤はネサットに訝し気な目を向けた。彼のメンテナンスには高度な技術が必要であり、執刀医以外に行える者などほんの一握りしかおらず、彼女が行えるとは思えなかったからだ。

 

「だからなんでそんな話しながらハメコンできるのさ!?」

 

そんなやり取りをしている間にも、ナタリーの操るキャラが一方的に攻撃されている。

 

「ネサットは俺の親父の直伝でな。お前さんの執刀医からもお墨付き貰ってるよ」

 

そういってネサットに視線で促すと、彼女は影胤に1枚の書類を差し出す。それを受け取って目を通すと、彼の執刀医のサインに、ネサットにメンテナンスを任せても問題ない旨記されていた。

 

「失礼した。それではよろしく頼むよ」

「なら、こっちに来て。それとあなあたにはこれを」

 

ネサットが手にしていたアタッシュケースを小比奈に手渡す。ケースを開けると、彼女の武器である小太刀が2本納められていた。小太刀を手に取り構えると軽く素振りをすると、以前使用していたのよりも軽量でありながらも強度もあり、なにより彼女の手によく馴染んだ。

 

「私が造った、どう?」

「使いやすい。これならあのファフナー斬れそう」

「よかった」

 

小比奈の答えに満足そうに頷くと、ネサットは影胤を連れて通路の奥へと消えていった。

 

「また負けたぁぁぁぁああああ!!」

 

そうしている間に、再び完敗したナタリーが仰向けに寝ころんで手足を投げ出した。

 

「クロヴァン、ご飯までその子とトレーニングルームで遊んであげなさい」

「あ?なんで俺が…」

 

道陽の指示に面倒くさそうな目をするクロヴァン。

 

「暴れたい暴れたいって騒いでただろ」

「まあ、そうだけどよ…」

「その子の新しい武器の慣らしついでに体動かせ」

 

道陽の言い分に、どこか不満そうに小比奈を見るクロヴァン。

 

「こいつ斬っていいの?」

「あ?」

 

指さしながら言い放つ小比奈に、ビキリッと額に青筋を浮かべると、ソファから降りて歩み寄り睨みつけるクロヴァン。

 

「やれるもんならやってみろチビ」

「チビじゃないもん小比奈だもん」

 

暫く睨み合うと、クロヴァンが来い、と言いながら顎をしゃくると、小比奈と共に通路の奥に消えていった。

 

「ねえ道陽」

「なんや?」

 

寝転がったままナクリーが問いかけてくる。

 

「今回の任務ってさ、あたしらだけで十分じゃん。なのに何であんな奴ら使うのさ」

「スポンサーの意向だよ。今回の騒動は『子供達』が絡んでないと意味がないのよ」

「大人の都合ってやつ?」

「Yes]

 

椅子を回転させながら答える道陽に、メンドくさとぼやく。

 

「もうすぐお前達の出番だけど、嫌なら降りても構わんぞ?」

「でも道陽の『夢』に必要なことなんでしょ?」

「ああ」

「ならやるよ。あたし達は皆道陽に『救われた』んだから。少しでも役に立ちたいもん」

「ありがとうよ」

 

上半身を起き上がらせてニカッと笑うナクリーの頭を優しく撫でる道陽。

 

「それで昔の部下と戦うことになったら、殺しちゃってもいいんだよね?」

「おう。遠慮なくぶっ殺しな」

 

ナタリーからの問いかけに、カッカッカッと豪快に笑いながら答える道陽。

 

「そんじゃもう1戦しよ!」

 

コントローラーを手にし再戦を望むナクリーに、道陽はフッと笑みを浮かべる。

 

「悪いなナクリー。今日は俺が料理当番なのでな。勝ち逃げさせてもらう!」

 

フハハァハハハッ!!と悪役のような笑い声を上げながら台所に去っていく道陽。

 

「ズっる!大人ズッッる!」

 

ナクリーは仰向けに寝転がると、手押しを投げ出して全力で悔しがるのだった。

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