絶望の世界に希望の花を   作:Mk-Ⅳ

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第二十話

『なる程、連絡不備への貴様の言い訳。100歩譲って認めてやらんでもない』

「…できれば5発ガトリングで同じ場所を的確に殴る前に聞いて欲しかった」

 

仁王立ちするツヴァイの前に正座している優の頭部には、5段重ねのたんこぶができていた。

 

『殴った上での100歩の譲歩だが何か?』

「寛大な裁量誠にありがとうございます」

「いやいや許してないよなそれ?」

 

深々と頭を下げる優に、球子ツッコミが入る。

 

『無論、続きは帰還してからだ』

「ワータノシミダナー」

「で、でも私を助けたからだから、そんな怒らないであげてよ!」

 

平坦過ぎる声音で涙目になる優に、友奈がフォローしようとする。

 

「それとこれとは話が別よ高嶋さん。連絡を怠ったのは彼の責任よ」

「そうそう気にしなくていいよ~」

 

千景の言葉に同意する優。それでも友奈は納得しきれないのか、でも…、と反論しようとする。

 

「友奈、優は己の職務を全うしたんだ。それを否定することは侮辱にしかならない」

「…うん、そうだね。助けてくれてありがとう蒼希君」

 

肩に手を置いた若葉の説得に、友奈は心からの礼を述べた。が、当の優は職務?と、疑問符を浮かべてポカーンとしていた。

 

『彼女らの警護だ!仕事内容を忘れてんじゃねぇよ!!』

「さっきと同じ所を的確に殴らないでッ!」

 

ツッコミを入れながらツヴァイがガトリングで優の頭部を殴ると、たんこぶが6段重ねとなった。

 

「素でああいうことをしちゃうのが優君らしいわね」

「つまり大馬鹿ってことか」

 

微笑ましく笑う歌野の言葉に、蓮太郎が呆れた様子を見える。

 

「それだと蓮太郎も大馬鹿ってことになるぞ?」

「うるさい」

 

余計なことを言う相棒の頭を、乱雑に撫でて黙らせる蓮太郎。

 

「あの…」

「伊熊将監のイニシエーターだな。部下が大変失礼をした。こいつは昔引きこもっていて、人との関りが少なかったせい距離感が極端でな。気に入った相手には深く考えず、とことん詰め寄っていきやがる」

「引きこもってないよ~出れる時はお外にでてたよ~」

「なので、こいつの戯言は本気にしない方がいい」

「は、はぁ…」

 

部下の抗議を軽々と無視して話を進めるツヴァイに、その清々しさに夏世は困惑の色を見せる。

 

『さて、傷は粗方治ったな馬鹿』

「君にやられた分以外は問題ないよ。後馬鹿じゃなくて優だよ」

『そうか、ならば問題ないな馬鹿』

 

体を軽く動かしながら優が再度抗議するも、綺麗に流すツヴァイ。

 

「ああ、蒼希が回復するの待ってたのか」

「そうだよ~土居さん。ツンデレだからね僕の上官は、場を和ませるために敢えて茶番を演じていたのさ!」

『は?』

 

優の言葉に、ツヴァイ何言ってんだお前?と言いたそうな顔をする。

 

「え?」

 

そんな彼の反応に。嘘だと言ってよ、と言いたそうな顔をする優。

 

『は?』

「え?」

『は?』

「え?」

『いや、お前は馬鹿だろ?』

「ウソダドンドコドーン!」

「お前らのコント、ホント面白いわ」

 

互いに馬鹿なといった反応をする両者に、思わず関心する球子。

 

『いいから、さっさと機体を装着してこいや』

「あの、作戦中にこんなゆっくりしている場合ではないのでは?読んだ本には『兵は拙速を尊ぶ』と言いますし、急いだほうが…」

 

優に蹴りを入れているツヴァイに、杏が疑問を呈する。

その言葉に、ほう、とツヴァイは興味深そうに反応した。

彼女は他の仲間より身体的に劣る部分を補うため、戦略家としての知識を身に着けようとしており。ツヴァイはそういった面で彼女に強い関心を持っていたのだ。

 

『孫子のことか。確かにその通りだ。だが、それは万全の状態であることが前提の話であり、十全の力を発揮できない状態で戦おうとするのは下策に過ぎん。いいか伊予島、俺達の戦いはこれからも続く、故に戦力の損耗を抑え先を常に見据えることが策を練る上で求められるのだ』

「!なる程、勉強になります!」

 

杏と意気投合するように話しているツヴァイを、千景はどこか複雑そうに見ていた。

 

「どうしたのぐんちゃん?」

「いえ、何でもないわ」

 

友奈が気に掛けるように声をかけると、千景は誤魔化すように答える。

 

「(どうして彼に嫌な感覚が?それに昔のとどこか違うような…)」

 

心に沸いた不快感、その答えを見出せず困惑する千景。

 

「…何か困ったことがあったら相談してね。いつでも聞くから」

「ええ、ありがとう高嶋さん」

 

友奈は彼女の様子に何か思い当たる節があるも、今はその時でないと敢えて踏み込まなかった。

そうしている間にアインが戻ってくる。

 

『さて、君はどうするかね?よければプロモーターと合流するまで共に行動すべきだと思うが?』

「はい、よろしくお願いします」

 

ツヴァイからの申し出を夏世は快諾する。プロモーターである将監は彼らを毛嫌いしているも、彼女個人としては彼らの判断は正しいと考えており、反感といった感情は持っていなかった。

そんな折、夏世の持ち物である無線機からノイズと共に野太い男の唸り声が聞こえてきた。

彼女は飛びついてつまみのようなものを回すと、音は鮮明になっていき、Alvisの面々には聞き覚えのある声になる。

 

『き…ろよ。おい!生きてんだったら返事しろよ!』

 

夏世がツヴァイらに静かにしていてくれ、と目配せをする。共にいる理由を説明するのは骨が折れるので当然と言えよう。反論する理由がないので代表してツヴァイが頷く。

 

「音信不通だったので心配していました。ご無事で何よりです、将監さん」

『たりめぇだろ!んなことより夏世、いいニュースがある』

 

そこで将監はもったいぶるように一旦言葉を区切る。

 

『仮面野郎を見つけたぜ』

 

その言葉に、ツヴァイと夏世は顔を見合わせ。他の者達は息を吞む中、アインだけは平然としていた。

 

「どこでですか?」

 

ツヴァイはモニターに地図を表示させる。将監が告げたポイントは海辺の市街地であり、現在地に近かった。

 

『今、近くにいる民警が集まって総出で奴を奇襲する手筈になっている。ホントは出し抜いてやりてぇところだが、まあ仮にも序列が上の相手だし、肝心のイニシエーターがいやがらねぇ。今荒れていた手柄の話がようやく纏まったところだ。仲良く山分けだとよ、面白くねぇ話だ。お前もとっとと合流しろ」

 

夏世の返答を聞かずに無線は切られた。会話中にも将監の後ろから蛮声や笑い声聞こえており。襲撃計画が進みつつあるのは間違いないのだろう。

 

『よし、出発するぞ。遮蔽物のある丘から回り込むぞ』

『僕達の到着を待ってもらった方が良かったんじゃないの?』

 

指示を飛ばすツヴァイに、アインが疑問を挟む。

協力して当たった方が成功率が上がるので、当然と言えよう。

 

『言ったところで頭に血が上って判断力を鈍らせるだけだ。それどころか、手柄を取られまいと俺達に襲い掛かってきかねん。好きにやらせた方がまだ楽だ。ま、彼らだけで片がつくなら儲けものだな』

 

やれやれと言いたそうに息を吐くツヴァイ。最後の方は特に期待していないようだった。

 

 

 

 

夏世を加えトーチカを出た一行は、街へ続く平野部に到達した。

そこから道なりに進めば数キロで街に入れるが、ツヴァイは敢えて遠回りをして小高い丘を目指した。

街までの直線には身を隠すものがなく、サベージの砲撃等の的になるだけであり。時間をかけてでも損耗を抑えることを優先したのだ。

海に近づいていることもあり、歩くにつれ鼻孔に潮の匂いが運ばれてくる。

途中、周りを背丈の高い下草が囲んだ場所に夜営の跡があり。煙が出るのを恐れてか、煮炊きした形跡はないも、携帯食料の袋が散らばっていた。数からして二十人は軽くいたのだろう。

どうやら既に民警らの作戦は始まっているらしい。時間から見ても、もうじき夜が明ける頃であり。人とは夜が深まる深夜よりも、夜明けの方が眠りが深く最も無防備になり、夜襲する上で最適なのである。

 

「よぉ、やっと来たか。待ちくたびれたぜ」

 

不意に頭上から声がし一同が顔を上げると、Fuhrenのクロヴァンが木の枝の上に立ちながら猟奇的な笑みを浮かべながら見下ろしていた。

彼は飛び降りながらハンドレッドを展開し、着地するのと同時に他の面々も茂みの中から戦闘態勢を取りながら姿を現す。

 

『ふん、奴の子飼い共か』

 

予想通りと言った様子で戦闘態勢に入るツヴァイは、肝心の道陽の姿を探す。

 

「道陽ならいないよ。あんたら程度あたしらだけでお釣りがくるし」

 

ナクリーがチャクラムを指で回しながら嗤う。

その発言にツヴァイは眉を潜ませる。

 

「(奴にとっての(・・・・・・)目的は、既に果たされているということか?)」

 

前回の戦闘時の発言からして、最早この状況は余興であり、高みの見物をするつもりなのかと思考を巡らせる。

そんな折、街のある方角から銃声や金属同士がぶつかり合う音が響き始めた。

 

「おい、始まっちまったぞ!?」

『落ち着け土居。敵は奴らだけではないッ!』

 

ツヴァイがガトリングを振り上げると、背後から球子に突進してきた影に叩きつけた。

それは鹿型のガストレアであり、上半身の皮膚を突き破って至る所から角が生えていた。

どうやら一同を尾行しており、隙を見せてしまった球子を狙ったようだが。巨大な鉄の塊であるガトリングに押しつぶされた肉塊となった。

球子が礼を述べようとするも、それを阻むように、森から獣の鳴き声が響き渡る。街からの銃声で目を覚ましたバアルが様々な周波数帯域で仲間と交信を始めたのだ。

 

「ここは我々が引き受けます。蓮太郎さん、延珠は先行して民警の援護を」

 

ツヴァイの指示に、蓮太郎らは迷うことなく従い駆け出す。人革連の妨害が入ることは確実であったので、その際の行動を事前に決めていたのだ。

 

『バアルは俺が抑える。アイン奴らは任せるぞ。千寿君はこちらを手伝ってくれ』

「分かりました」

 

ショットガンを構えながら、森へと向かうツヴァイに続いていく夏世。

 

「さて、んじゃぁ、こっちも始めようやぁ!!」

 

クロヴァンが大剣を肩に担ぎながら、アインら目がけて駆けだす。

一瞬で弾丸の如き速度まで加速すると、跳びながら横回転を加えて加速させた斬撃を放ってくる。

それを、仲間を守るように前へ出た若葉が居合で繰り出した刀が迎え撃ち、刃がぶつかり合い互いその勢いで互いの体が弾かれるが、共にすぐに体制を立て直し武器を構え駆け出す。

それに続くように、両陣営とも戦闘を開始するのであった。

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