絶望の世界に希望の花を   作:Mk-Ⅳ

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第二十一話

長きに渡って人の営みが消え、人工的な灯が消えて久しい房総半島。既に日が沈み空高く昇る月の光のみが光源となったこの地の一角が、煌々と光輝いていた。

そして、その光源に群れるようにバアルが群れを成して押し寄せていた。異形の怪物が辺り一面を埋め尽くす百鬼夜行が如き、見る者を恐怖のどん底に突き落とさんばかりの光景が。次の瞬間には爆音と轟音と共に爆炎に焼かるか粉砕されていく。

 

『……』

 

その光景を生み出しているツヴァイは、淡々とした動作で生き残りがいないか確認していると、レーダーが次の集団を捉える。頭に叩き込んだ地形データから最適なポジショニングを瞬時に選択し、ホバー移動すると同時に全ての火器を起動させる。

展開した装甲から露出したミサイルが撃ち出されると、次々とバアル目掛け着弾し、爆炎がその身を焼き、粉末状に加工され封入されていたバラニウムがガストレアの傷口に触れると、再生を阻害し更に毒として体内を蝕んでいく。

背部から展開した2門のレールキャノンは、戦車砲すら容易く弾くサベージを紙のように貫通していき、両腕で保持したジャイアント・ガトリングが轟音と共に無数の弾丸を吐き出し、バアルを次々と粉砕に肉片に加工していく。

サベージが放ってきたビームが直撃するも、装甲表面に塗装された特殊塗料が拡散させて無力化させ、無傷のままツヴァイは反撃を加え撃破していく。

小型のガストレアが小回りを生かし側面から襲い掛かると、左腕に装備された火炎放射器が文字通り火を噴き消し炭と化していく。更に、炎は周囲の木々に燃え移っていき、壁となってバアルの進路を塞いでいく。

小型のガストレアが、濃密な弾幕を突破するも、背後に控える夏世がショットガンで丁寧に処理していく。

 

『千寿君、そちらは問題ないかね?』

「あ、はい。こちらは大丈夫です」

 

夏世を気に掛けるツヴァイ。とはいっても、彼女が対応しているのは爆炎や火炎に炙られ弱っていた小型のガストレアのみであり、その身にはかすり傷一つついていなかった。

強いて言えば、圧倒的なまでの戦闘力を見せつけるツヴァイへの心理的に圧倒されていることだろうか。

 

『さて、次の客人がお出ましだ。出迎えてやるとしようか』

「わかりました」

 

新たに現れた集団に対応すべく、ツヴァイらは行動していくのであった。

 

 

 

 

「ウオラァ!!」

 

クロヴァンが横回転しながら跳びかかり、大剣を若葉目掛け振り下ろす。

それを軽く横に跳んで躱すと、刃は地面に叩きつけられ。その威力は地面を優に砕き、その衝撃は波紋のように広がり、反撃に出ようとしていた若葉を体を押し出し出鼻をくじいた。

 

「(この威圧感ッ。なんという剛力だ!)」

 

衝撃波を受けただけでヒリつく肌の感触に、内心相手の技量に驚嘆しながらも、若葉は怯むことなく果敢に攻めかかる。

 

「ハァッ!」

「アメェよ!」」

 

瞬時に肉薄し刀を横薙ぎに振るうと、大剣で弾かれるも。その勢いを利用し連撃を繰り出すと、クロヴァンは身の丈を超える長大な獲物を難なく操って防ぎ、逆に反撃を加えてきた。

 

「(わかってはいたが、やはり手強い!)」

 

以前遭遇した時に感じられた圧迫感から、相手の技量をある程度予測していたが。実際に刃を交え、それ以上の強敵であることを感じ取るのであった。

 

 

 

 

「くらえチビ!」

「お前に言われたくないわ!このドチビがァ!!」

 

ナクリーがチャクラムを投げつけると、旋刃盤で渾身の力で打ち返していく球子。

木々を飛び移りながら、ナクリーは手元に戻って来たチャクラムを再び投げつける。

 

「じゃあ、このちんちくりん!」

「一緒やろがい!」

 

互いにの罵り合いながら、同じような攻防を繰り広げる両者。

他者から見れば、どんぐりの背比べとしか言えないれべるなのだが…。

 

「タマっち先輩!挑発に乗らないで!」

 

熱くなっている珠子を落ち着かせるため、杏がボウガンから矢を放ち牽制すると、ナクリーは一旦距離を取り枝の上に乗る。

そして、杏の全身を観察するし始める。体のラインに沿うデザインの勇者服は、彼女の年齢に反し豊かに発達した肉体を浮かび上がらせていた。

長年努力しているにも関わらず、実りを感じさせない己との差に。絶望と敗北感を植え付けられたナクリーは、親の仇でも見るかのような目で木々を飛び移りながら杏に襲い掛かった。

 

「あたしと大して変わらない歳のくせに、デカいチチ見せつけんなァァァァ!!!」

「ふぇぇ!?」

 

予想外の発言に戸惑っている杏に、チャクラムで直接斬りかかるナクリー。

そこに珠子が割って入り、旋刃盤を盾にして受け止めると押し返す。

 

「あんずはタマの大切な後輩で妹分だ!傷つけることは許さんッ!」

「タマっち先輩…」

「例えひなたに劣らぬけしからんチチをしていようともだ!!」

「怒るよ先輩!?」

 

キリっとした顔でセクハラをかましてくる姉貴分に、どつきそうになるのを辛うじて堪える杏であった。

 

 

 

 

「ハァッ!」

「……」

 

千景が振り上げた鎌とネサットが振り下ろした槍がぶつかり合い火花を散らす。

千景が手首を捻ると鎌の刃が槍に引っ掛かかり、腕を引くとネサットの手から奪い取る。

対してネサットは飛び退くと、ミサイルランチャーを展開しミサイルを放ってくる。

 

「くッ…!」

 

追尾してくるミサイルから逃げながら、地面や木々に誘導してやり過ごそうとするも、一発だけ避けられず鎌で切断するが、爆風で吹き飛ばされて態勢を崩してしまう。

直ぐに態勢を立て直そうとするも、長剣を手にしたネサットが背後から迫っていた。

 

「ぐんちゃん!」

 

千景を押しのけた友奈が突き出された長剣を、両手を交差させた手甲で受け止めた。

 

「やめて下さい、こんなこと!人同士で争うなんて…!」

「日向しか歩いたことのないあなたにはわからない。人間がいかに醜く野蛮であるかということを…!」

 

冷淡としていた瞳に憤りの色を見せながら、力を込めて長刀を押し込んでいくネサット。

友奈は相手の気迫に気圧され押し込まれていくも、千景が振り下ろした鎌を避けるためネサットは跳び退いた。

 

「高嶋さんは下がっていて。奴の相手は私がするから!」

「あ…」

 

獲物を構え直し敵に向かって行く親友の背を、友奈はただ見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

ギンバイカと対峙した歌野は。どちらが仕掛けるでもなく睨み合った状態のまま互いに出方を伺っていた。

 

「ねえ、できれば手を引いてもらえないかしら?アイン君程じゃないけど、私も人同士で争うのは好きじゃないの」

 

突然の歌野からの提案にギンバイカは、首を振って拒絶の意を示す。

 

「それはできない。我らには成さねばならない『使命』がある。そのためにお前達と戦わねばならん」

「そう、残念ね。なんとなくだけど仲良くできそうな気がしたのに」

「…そうだな」

 

互いに本当に残念そうな顔をしながらも、ギンバイカが先手を取り歌野目掛け突進していく。

対する歌野は得物である鞭をしならせると、上段から振り下ろした。

それをギンバイカは横にステップを踏んで躱し、地面に叩きつけられた鞭は大地を紙のように引き裂いた。

歌野はすぐさま鞭を引き戻し、速度を緩めず向かってくるギンバイカを迎撃する。

上下左右に繰り出された鞭を、左右にステップしたり、上半身や首を逸らしながら進んでいくも。右から来たのを避けた次の瞬間には左から鞭が襲い掛かっており、それを避けている間下から迫ってくる技の速度に、息つく間も対応していくギンバイカ。

距離を詰める程連撃の密度は高まっていき、遂には避けきれなくなり足を止め獲物であるヌンチャクで防御に徹し始める。

 

「流石は3年に渡り孤立無援の長野を護り続けた戦士。手強いかッ」

 

歌野の洗礼された技量に感嘆の念を抱きながらも、相手の呼吸や技の癖を分析していき、鞭の軌道を僅かながら予測していく。

 

「そこ!」

 

軌道に合わせ片手を伸ばすと鞭を掴みとるギンバイカ。衝撃で掴んだ手の皮膚が裂け血が飛び散るも、鞭を引っ張り歌野を一気に引き寄せると、無事な方の手に持ったヌンチャクを叩きつけようとする。

それに対し、歌野は鞭を手放すと寄せられた勢いのまま回し蹴りを放ってきたので、急ぎ鞭を手放し両腕を交差させ受け止めるも、勢いに押され足裏で地面を削りながら押し出される。

受け止めた箇所が痺れ感覚が鈍る程の威力に、僅かだが顔をしかめるギンバイカ。

 

「こう見えても農作業で鍛えてるから、脚力には自信があるの」

「…そのようだ」

 

得意顔で見せつけるように片足を軽く上げる歌野に、どこか楽し気に応えたギンバイカは、獲物を構え直すと再び突撃を開始する。それを、歌野は足元に転がっていた自身の獲物を、軽く蹴り上げると手にし迎え撃つのであった。

 

 

 

 

「ああ、もう!ちょろちょろと鬱陶しいっての!」

 

苛立った声を発しながら、ペチュニアが投げ槍をアイン目掛け投擲し、アインは周囲の木々を足場にしながら跳んで避ける。

無手となったペチュニアの手に、新たな槍が生み出され次々と投擲していく。次々と飛来する槍を軽々と避けていくも、アインは反撃どころか武器を手にすらしておらず。その姿に苛立ちを募らせていくペチュニア。

 

「戦う気が無いなら、戦場に出てくるなッ!」

 

1本の槍をアインにではなく、上空へと投擲するペチュニア。放たれた槍はある程度まで上昇すると、無数に分裂し豪雨のようにアインへと落下していく。

目前へと迫って来た槍の1本を掴んだアインは、それを振り回して直撃する射線の槍だけを次々を払い落としていく。

 

「そこッ!」

 

その間にペチュニアは地面に片手を触れると、アインの足元から槍が無数に突き出して串刺しにしようとする。

それをアインは読んでいたように、降ってくる槍を弾きながら悠々と跳んで回避した。

必殺のコンビネーションを涼しい顔で対処されたことに、無意識に歯ぎしりしているペチュニア。

 

『もう十分理解できたよね?これ以上の戦いは無益だ。だから投降してくれないか?僕は人とは戦いたくはないんだ』

 

攻撃を受けていたと思えない程冷静に語り掛けるアイン。まるで敵とさえ認識していない態度に、ペチュニアのフードの奥に隠れた目が、視線だけで射殺さんばかりに鋭くなり。返答と言わばかりにアインの周囲に無数の槍を生み出し、更にその槍から新たな槍を生み出していき、アインを包み隠す檻のごとく囲みを形成していく。

 

「死ね」

 

ペチュニアは死刑宣告をするかのように冷え切った声で発すると、槍1本が辛うじて通れる程度のいくつかの隙間に槍を突き刺していく。

暫しの沈黙の後、槍の隙間から血が漏れ出していき、確実に敵を貫いたことを確認すると、槍を解除していくペチュニア。

 

「(馬鹿な奴。なんであんなのに隊長は…)」

 

あっけなく骸となった愚か者の末路に、内心で唾棄するペチュニア。上官である道陽が自分の後継者になりえると語っていたこともあり、余りの期待外れに憤りさえ感じてしまうのであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が。血塗れになりながらも、何事もなかったかのように佇んでいるアインに。思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。

急所こそ外しているも、至る所に槍に貫かれてできた風穴が空き、そこから止めどなく血が流れ出ており、本来であれば立っていることさえ不可能な状態であるにも関わらず、アインは悠然とペチュニアへと歩み出すと、背部のパイロンからロングソードとルガーランスを左右の手にそれぞれ持つ。

 

『マーク・アイン、これより戦闘を開始するッ!』

 

そう宣言すると同時に。アインの姿がブレた瞬間姿が消え、咄嗟に気配を感じ視線を上に向けると、こちらに向けてランスを構えながら落下してくるアインが視界を埋め尽くすのだった。

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