絶望の世界に希望の花を   作:Mk-Ⅳ

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第七話

ブリーフィングルームに移動した優達。モニターの前に優が立ち、その前に椅子に腰かけた若葉達勇者と巫女組がおり、部屋の隅には光輝と菫が立っていた。

 

「…あの、他の方々もお聞きになるので?これっぽっちも面白くないですよ?」

 

当たり前のように、話を聞こうとする友奈らに問いかける優。

 

「個人的に色々気になるし、なぁ」

 

そういいながら球子が視線を向けると、他の者達がそれぞれ同意した。

 

「まあ、それなら別に「ゴホンッ」…そのように希望されるのなら構いませんが」」

 

優の言葉を遮るように、光輝がわざとらしく咳払いする。すると、優はヤベッと聞こえそうな顔で自身の口を抑えると、慌てた様子で言い直した。

そんな彼らを見ていた球子が、腕を組んで不思議そうな顔をしている。

 

「てかさ。お前らなんで敬語なの?話しにくいなら普通にすればいいじゃん」

「え、う~ん」

 

球子の言葉が意外過ぎたのか、思わず困惑の声が漏れる優。そんな彼の声をかき消そうとするように、光輝が数回咳払いした。

 

「あのねタマっち先輩。私達国賓だから、皆さん配慮してもらってるの。だからそういうこと言っちゃ駄目なの!」

 

杏が慌てて窘めるも、球子はうーむと腕を組んだまま納得していない様子であった。

 

「だからって、こういう時までかたっ苦しくされると、正直背中が痒くなるんだよ」

「あ、それ分かるな。私もなんかムズムズした感じがするんだよね」

「高嶋さんまで…」

 

球子に同意する友奈に、千景も困惑している。

勇者に選ばれたとはいえ、一般的な感性を持っている彼女らには特別視されることに違和感があるのだ。

 

「でも、蒼希は若葉とひなたとは普通に話してるじゃん」

「え?まあ、幼馴染だしな」

 

寧ろ優に敬語で話されたら、若葉は正気を疑ってしまうだろう。

 

「若葉とひなたの友人ならタマの友人ってことになるしさ。こういう時くらい普通に話してほしいじゃん」

「立場上そういう訳には…」

 

光輝としては公務員である以上、やはり国賓に軽々しい口を聞くことに躊躇いがあった。そんな彼の肩を菫が突っつく。

 

「何です博士。今クソ忙しいんですけど」

「いや、言い忘れてたことがあってだね」

「はい?」

 

もったいぶるように話す菫にイラっとくる光輝。

 

「君が彼女らを迎えに行っている間に。聖天子様から、こういった話があれば、彼女らの意思を尊重するようにとの命令がきたんだが

「なぜ、すぐに報告しなかった…!」

 

国のトップからの命令を本気で忘れていた公務員に、本気で頭を抱えたくなった光輝。

 

「君が必要な時以外喋るなと言うから」

「なぜ、死体云々言う前に報告しなかった…!」

「真面目にやろうと思ったんだがね。彼女らを見てムラムラしてしまって」

「このド変態がッ!」

 

キリっと最低なことをほざく菫を、光輝は力の限り罵倒した。

 

「で、どうすんのさ光輝?」

「…希望者には合わせてやれ。もう、俺は知らん」

 

疲れ切った顔で投げやり気味に告げる光輝。今にも帰りたそうである。

 

「じゃあ、土居さんはそれでいいんだね」

「おう!後、杏もそれでいいぞ!」

「別にいいんだけど、せめて一言くらい言ってよぉ…」

 

右手の親指を立てて答える球子に、杏がやれやれといった様子ツッコミを入れる。

 

「他の方は?」

「はいはい!私もそれがいい!」

 

友奈が右手を上げて申し出る。

 

「私も一向に構わない」

「私もです」

 

若葉とひなたも同意し、残った千景に視線が集まった。

 

「…私も、それでいいわ。仲間外れみたいだし…」

 

照れくさいのか、横目でボソボソとした声で話す千景。

 

「じゃあ、決まりってことで。さて、何から話そうかね」

「その前に1つ気になっていたのだが。優、お前体は大丈夫なのか?これだけ起きていても、発作が起きていないようだが…」

 

若葉の知る優は、持病によって長時間起き上がっていることができず、定期的に体を休ませる必要があった。とてもではないが、自衛隊員に、ましてファフナーに乗れる体ではなかった。

だが、今の優はそのような兆候もなく、至って健全なようにしか見えない。

 

「ああ、それ?もう、治ったよ」

「!本、当なのか?」

 

その言葉を聞いて若葉は思わず立ち上がると、優に詰め寄ると体に触れる。医師の話では、現代の医学では治療は困難だと聞かされていただけに、その喜びと驚きは大きかった。

 

「うん。今ならバク転でもなんでもできるよ」

「そうか、よかった」

 

まるで、自分のことのように喜ぶ若葉。

 

「だが、どうやって?」

「そこら辺もこれから話すよ。てか、顔が近いよ?」

 

そういわれてハッと現在の自身の状況に気づく若葉。傍から見ると、まるで自分から優に抱き着いているようにも見える。

しかも、互いの身長が近いこともあって、見つめ合っているかのような状態になっていた。

そして、そんな2人を球子や友奈と菫はおー、興味深そうに見ており。杏はキャーキャーと興奮気味に目を輝かせ、光輝と千景は何やってんのお前ら?とてでも言いたそうな顔をしていた。

 

「~~~~~」

 

火を噴くのではないかと思えるくらい顔を真っ赤にした若葉は、脱兎のごとく自分の席へと戻った。

 

「おい、若葉」

「何も言うな」

「いや、でも…」

「い・う・な!」

「ア、ハイ」

 

球子がからかおうとするも。若葉の鬼のような形相に、身の危険を感じて大人しくすることにした。

 

「…脱線してんぞ優」

「ああ、ごめん。それじゃ本題入ろうか」

 

呆れ顔で光輝が指摘すると、頬を掻きながら優は語りだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――3年前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徳島にある病院の一室にて。優はベット上で上半身だけ起こし、窓の外の景色を生気の感じられない瞳で見つめていた。

神社での一件の後、優は疲労の余り体調を崩して意識を失い、この病院へと搬送されたのだ。

備え付けられているテレビからは、全世界で新たに出現した怪物について様々な分野の学者による討論が行われる番組が流れていた。

 

――サベージともガストレアとも異なる未知の生物。

――理由は不明だが、バラニウムやスレイヤーによる攻撃のみ有効であったこと。

――この新たなる脅威に対する今後の対策。

 

様々な意見が飛び交わされているも、優はまるで興味を示した様子もなく。ただ景色を眺めているだけであった。

 

『次に、四国エリアに新たに出現した巨大植物についてですが――』

 

討論は次に移り。今回の騒動の最中、四国の中心に突如現れた神樹を呼ばれるものと、それを奉祭する組織についての議論となったが。これにも優は反応を示さなかった。

 

『それで、その大社とやらから発表された少女達についてですが――』

 

ある学者が、大社が報じた神樹から力を託されたと言われる少女ら――『勇者』の話題になると、優はようやくテレビに視線を向けた。

大社は彼女らこそ、神に見初められた選ばれた存在であり、この世界の希望であると告げたが。番組に出演している学者らは、選らばれたのが年端もいかない少女であることや、ついこの間まで只の一般人であったこと等を理由に懐疑的な意見が多かった。

 

「若葉、ひなた…」

 

無意識に大切な幼馴染達の名を呟く優。入院してから彼女らとは一度も会っておらず、あの後どうしているのかさえ知ることができないでいた。恐らくだが、あの日2人が見せた超人的な力は、勇者と神樹の代弁者である巫女に選ばれたからなのだろうと優は推察している。

きっと若葉はこの先バアルと戦わされるのだろう。ただ神とやらに選ばれたからという理由だけで。彼女の性格からしてそのことに迷いはないだろうが、それでも優の心には釈然としない思いが渦巻いていた。

やりきれない気持ちを静めようと毛布を力強く握っていると、部屋のドアがノックされた。

 

「…どうぞ」

 

軽く息を吐いて無理やり心を落ち着けて話すと、ドアが開かれ自衛隊を纏った見知らぬ男性と少年が入ってきた。いや、男性の顔には見覚えがあった――

 

「日野道陽さん?」

 

優は呆然とした顔で男性の名を呟く。そう、彼の前に現れたのは神社で助けられた命の恩人であり。日本を、いや、世界を代表するエースである人物であった。

 

「おりょ?俺のこと知ってるんかい?」

「あ、はい。テレビとか雑誌で何度も見てますから。それに、あなたみたいになりたいってずっと思ってて…!」

 

憧れの人物を目の当たりにし、先程までの陰鬱さが嘘のように興奮した様子で早口で語る優。そんな彼に、道陽は、いやー照れるな~と恥ずかしそうに頭を掻いている。

 

「今まで散々言われてきたことだろうが、今更照れてんじゃねぇよ」

 

そんな道陽に隣にいた少年が呆れ果てた目を向ける。その声から、彼が道陽共にいた重装型メガセリオン・モデルの搭乗者らしい。

 

「いやぁ、だって俺なんかにそんな憧れてるなんてさ~大袈裟だって~」

「…もういい。早く本題に入るぞ」

 

やけに自己を過少評価している道陽に、溜息をつきながら話を進めようとする少年。

 

「せやな。改めて、俺は東京エリア駐屯陸上自衛隊所属、国家代表直属遊撃小隊Alvis隊長の日野道陽1尉だ。よろしくな。んで、こっちの不愛想ヅラしてんのが、いって」

 

道陽に指をさされると、少年は不機嫌そうにその手を払う。

 

「同隊副隊長の天童光輝准尉です」

 

それだけいうと少年――光輝は黙る。そんな彼に、道陽はやれやれと言いたそうな顔で溜息をついた。

 

「おいおい光輝。せっかく同い年の子と知り合ったんだから、もうちょっとなんか言えよ。そんなんだから友達が1人も、痛い」

 

道陽が指摘しながら光輝の肩に手を置くと、彼はより不機嫌そうにその手をはたき落とす。

 

「(もしかして、気にしてるのかな?)」

 

そんな光輝の様子からなんとなく感じ取る優。

 

「さっさと要件を言え」

「はいよ。さて、蒼希優君だよね。今日は君にお話が合ってお邪魔させてもらったんだよね」

 

今までの軽い雰囲気から、少しだけだが張り詰めた様子を見せる道陽に。思わず姿勢を正す優。

 

「言っとくけど、ここで聞いたことは他言無用でお願いね。万が一話しちゃうと豚箱行きになっちゃうからさ」

「は、はい」

 

軽い口調で話しているも、道陽の目は本気だった。言い知れぬプレッシャーに思わず息をのむ優。

 

「俺達の隊は、次世代型のファフナーのテストをするために編成された訳なんだけどさ。1つ問題があるのよ」

「問題、ですか?」

 

道陽の言葉に首を傾げる優。その話題から、何故自分を訪ねてきたのかが繋がらないからだ。

 

「そ、その問題ってのがー―光輝任す」

「あ?」

 

いきなり真面目な雰囲気を優るめた道陽が光輝に振る。彼は突然のパスに、露骨に不機嫌そうに反応する。

 

「いや、こういった話はお前の方が得意じゃん。それと同年代の子と話せる機会だしさ」

「ただ単に面倒くさいだけだろうが」

「いいからやりなさい。命令です」

「このクソ上官めが」

 

肩に手を置いて告げる道陽に、光輝は力の限り吐き捨てるように言うと、優に向き直る。2人のやり取りを見ていると、上司と部下というよりも、まるで兄弟のように優は思えるのだった。

 

「次世代型にはあるシステムが導入されます。『コアシステム』と呼ばれるガストレアの心臓を加工した新型の動力です」

「ガストレアの心臓を?」

 

光輝の言葉に驚愕する優。そんなことをして大丈夫なのかと思わず不安になる。

 

「ええ。それによって、従来の物より高い出力を得ることが可能となるのです。他にも様々な新技術が投入されるのですが…ある問題点が浮き彫りになりした」

「問題点、ですか?」

 

専門的なことは正直よく分からないので、疑問符しかでてこないが。光輝もその点は重々承知してるのだろう、特に気にした様子もなく話を進める」

 

「間もなく2体試作型が完成するのですが。その新型ファフナーを扱うには、ある条件をクリアできた者だけとなってしまったのです。『シナジェティック・コード』と呼ばれる、ファフナーとの一体化に際して理想的な脳を形成で可能であり。コアとの接触媒介となる、ガストレアウィルスから抽出した『ガストレア因子』を投与し定着可能な者です」

「…それって大丈夫なんですか?」

 

話を聞くだけでも、危険だと分かる内容に冷や汗が額から滲み出る優。

 

「無論誰でも因子が定着する訳ではありません。最悪拒絶反応を起こし死に至ります。試算ではこの条件をクリアできる者は、20歳未満の中で10万人に1人とされています。理由としては、高齢になる程シナジェティック・コードの形成が難しくなり、因子が定着しにくくなるからです」

「ちなみに、東京エリアでその条件をクリアできたのはこいつだけね」

 

そういって光輝を指さす道陽。

 

「えっと、つまり搭乗者が1人足りないってことですか?」

「そ、だから同盟エリアの方も探してみようって話になった訳。まあ、でも先に行った長野では見つからなかったけどね」

 

まいっちゃうよね~と頭を掻きながら、困ったように笑う道陽。

 

「で、残る希望をかけてこの四国に来たのよ。そして、1人だけ見つけることができた」

 

そういって真っすぐに優を見つめる道陽。そこで優は1つの結論に行き着くと同時に、彼らが見ず知らずの自分に会いに来たことに合点がいく。

 

「僕が、その適合者なんですか?」

「正確には適合できる可能性が高い、だね。条件をクリアしたからといって、処置が必ず成功するって訳でもないのよね」

 

震える声で問いかけると、道陽が訂正するように答えた。

 

「君の場合、光輝と比べると成功率は低い。ぶっちゃけると失敗する確率の方が高いね」

 

そういいながら道陽は、優の側まで歩み寄り姿勢を下げて優と目線を合わせる。

 

「保護者である乃木代表からは、君の意思を尊重するよう言われている」

 

優の両親は既にこの世を去り、親交のあった若葉の父である大葉に引き取られて以降は、彼は乃木家で暮らしているのだ。

 

「個人的に言わせてもらうと、こんな賭け事みたいなことはしたくない。でも、世界に残された時間は余りに少ない。だから、君の力を貸してもらいたい。俺達と共に明日を切り開くために戦ってほしい」

 

その言葉に優は俯き、何も答えずに押し黙る。そんな彼を見て、道陽は光輝に視線を向けると頷く。いきなりこんな話をされて戸惑うのは当然だろう。元よりこの場で決断してもらうつもりは彼らにはなかった。

 

「何も今すぐ決めてくれとは言わない。代表らともよく相談「やります」してぇん?」

 

道陽が優の肩に手を置いて優しく語りかけると。その言葉を遮って優が顔を上げ、決意に満ちた目で話す。

 

「その適合処置受けます!だから、僕をファフナーに乗せて下さい!」

 

道陽の腕を掴みながら縋るように懇願する優。その姿に道陽も光輝も思わず困惑する。

 

「いや、でも死ぬかもしれないしさ。じっくり考えた方が…」

「必ず適合してみます。だから、僕に戦う力を下さいッ!」

 

どうにか落ち着けようとするも、今にも泣き出しそうな程掠れた声で優は懇願し続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――てまぁ訳で、因子の定着やらなんやら上手くいって、ファフナー乗りになったのさ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

優が一通り説明を終えると、若葉が勢いよく立ち上がる。

 

「父さんはそのことを知っていたのか?だったらなんで私に…」

「教えてくれなかったのかって?僕が黙っていてもらうようお願いしたからね。君が知ったら心配するだろうから」

「そんなのは当たり前だ!」

 

優の言葉に憤慨した若葉が再び詰め寄る。

 

「どうしてだ。どうして、そこまで私を遠ざける?私のことが嫌いになったのか?」

「違うよ若葉。君がこのことを知れば戦いに支障が出るかもしれない。もう、僕のせいで君に傷ついてほしくなかったんだ。3年前のように」

「ッ!気にしていたのか、あの時のことを?」

 

若葉の目が驚愕で見開かれる。

 

「優は何も悪くない!私がそうしたいから、お前を守りたかったからしたことだ!」

 

若葉は上着を捲り、右脇腹の傷跡を晒す。それを見た優の目が今度は驚愕で見開かれた。今の時代、傷跡なら消そうと思えば簡単に消すことができるからだ。

 

「その傷、どうして…」

「この傷は私の誇りだ。あの時お前を守れた証だ。だから、自分を責める必要はないんだ」

「そっか。やっぱり若葉は優しいね」

 

そういって笑みを浮かべる優。しかし、その表情は悲しそうだった。

 

「でも、僕は自分を許せないんだ。あの時、君の側にいる資格はなくなったんだよ」

「勝手に決めるな!そんなものなくても、私はただお前が側にいてくれればそれでよかったんだ!」

「それは無理だったろうよ」

 

思いを吐露する若葉に、今まで静観していた光輝が口を挟んできた。

 

「大社はお前達勇者を神聖化しようとしている。奴らにとって、ただの一般人でしかなかったこいつのことは目障りだったろうよ。あのまま四国に残っていても、あの手この手でお前さんから遠ざけていただろうな」

「な、そんなこと…!」

「ならば聞くが。お前さんら大社から可能な限り、身内意外とは会うなと言われなかったか?」

「あーそういや、そんなこと言われたなぁ」

 

光輝の言葉に球子が思い出したように反応する。

 

「でも、それは私達の安全を守るためだからって…」

「ま、それもあるが。お前さんらを無暗に世間に晒すと、『神に選ばれた神聖なる存在』ってイメージを崩したくないのが本音だろうな。最も、俺の勝手な憶測だがな」

 

光輝の語った内容に押し黙る勇者達。そう言われてみると、大社の発言に違和感が感じられ、ただの個人の感想とは言い切れなかったのだ。

 

「別に大社のやり方が悪いとは言わん。だが、個人的に大社と神樹のことを俺は信用していないってだけだ。なあ、優」

「そうだね。僕は神樹も大社も、勇者も嫌い(・・)だ」

「え?」

 

優のカミングアウトに、思わず固まる若葉。

 

「嫌いってなんだよ!タマ達のどこが気に入らないんだよ!」

「おい、それじゃ喧嘩撃ってるだけだぞアホ」

 

憤慨した球子が抗議し、光輝が呆れたように優にツッコミを入れる。

 

「ん?ああ、ごめん。勇者(・・)が嫌いなだけであって、別に君達のことは嫌いじゃないから」

「???」

 

優の言っていることが理解できず、友奈は疑問符を浮かべまくっている。

 

「要は神に選ばれたからってだけで、お前さんらが戦わされているのが気に入らないと、そうこいつは言いたいのさ」

「それは…」

 

光輝の説明に若葉が反論しようとして口ごもる。責任感の強い彼女は、それを当然のこととして当初から受け入れていた。しかし、友奈達は簡単には受け入れられず、初めての実戦では戦いに支障をきたすこともあったのだ。

 

「仕方のないことだっていうのは分かるよ。でも、それで納得しろと言われても、僕はそれでいいとは思わない。だから僕は戦う道を選んだんだ、若葉が戦わくてもいい世界にするために」

「それは、ただの自己満足じゃないか!私はそんなことお前に望んでなんかいない!」

「そうだよ、これは僕のただの我が儘だ。それでも君を守れるなら、それでいいんだ」

 

そういって微笑む優を思わず睨みつけてしまう若葉。不穏な雰囲気になってきたことに、友奈達はどうすべきか困惑し、光輝や菫は予想通りといった様子で静観していた。

 

「…蒼希3尉(・・・・)

 

すると、今まで沈黙を保っていたひなたが口を開いた。

 

「ひな、た?」

 

優への呼び方に違和感を覚えた若葉が呼びかけるも、ひなたは無視した。

 

「あなたが何も言わず東京エリアへ行ったと知った日、どれだけ若葉ちゃんが悲しんだと思いますか?」

「覚悟はしていたよ」

 

責め立てるようなひなたの視線を、逸らすことなく受け止める優。その姿はまるで、裁きを待つ罪人のようであった。

 

「私は若葉ちゃんを悲しませたあなたを許せません。今までも、これからもずっと」

「許しを請うつもりはないさ上里さん(・・・・)

 

幼馴染からの拒絶の言葉を、優は躊躇いなく受け入れるのであった。

 

「優、ひなた…」

 

そんな2人を、若葉はただ見ていることしかできなかった。

優に会えれば、また昔のように戻れると信じていた彼女の希望は、無残にも崩れ去っていくのであった。

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