☀︎月♤日 育成日記30日目
昼ちょっと前に海を凍らせながら自転車をキコキコ漕ぐ器用なのっぽさんが無人島にやって来ました。
どうやら海軍の最高戦力の一角である三大将の内の一人、大将『青雉』のクザンさんというそうです。
何しに来たのかを聞いたところ、ここ最近この無人島から氷の塊が出現したり、鎌鼬の様な風が吹き荒れたり、複数の人の呻き声が夜な夜な響き渡ったりしていると海軍に連絡が相次ぎ、偶々近くにいたクザンさんが様子を見に来たそうです。
へぇーと話を聴いていると何をやっているのか聞かれたので、麦わら海賊団のメンバー諸君を鍛えていると答えると青雉さんの目が鋭いものになりました。
危険やら何やら、芽が出ない内に潰した方がいいかとか何とか。ぶつぶつ呟き始めた怪しさ満点のクザンさん。
リィナが「ママの魅力にヤラレたか」とか呟きながら、私を後ろから抱きしめて避難を開始。
それと同時にシンが修行を中断して「このロリコン下郎めがっ……」と口にしながら、私達を守る様に前に立って戦闘準備。
コウタロウはさり気なくクザンさんの少し後ろに立って、少しでも何かすれば即座に斬り捨てられる様に構えています。
三人から発せられる殺気や威圧を感じたのでしょうか、クザンさんの頬に一筋の汗がたらりと流れるのを見ながら私はふと考えました。
モンキー・D・ルフィ達の修行相手にいいのでは、と。
ずっと私達と修行するのはそれはそれで良いのでしょうけど、それでも鍛える私側がマンネリを感じ始めて来ているのは事実。
ふとした拍子に殺っちゃおうかなと思う位には飽きてきているのです。やっぱりリィナを鍛えるのとは違いますね。
だからこそ、麦わら海賊団の命を守る為に、そして私のやる気を高める為にもこのクザンさんにはゲストメンバーとして修行相手になってもらいましょう。
何故かクザンさんも戦う気満々みたいですし、早速戦わせましょう。
そんな訳で麦わら海賊団に募集を掛けたところ立候補者はモンキー・D・ルフィとロロノア・ゾロ、サンジの三人でした。
寧ろそれ以外の4人は悪魔と出会った様な形相で震えてました。
特にニコ・ロビンの怯え様は異常と言えるもので恐らくですけど、過去にクザンさん絡みで何かしらのトラウマがあるのでしょうね。
特に興味ないのでスルーしましたけど、克服しないと色々大変な思いをしそうではあります。
無理矢理クザンさんの前に立たせて荒療治するのもいいですけど、大の大人の女性が顔面蒼白のガクブルで涙がちょちょぎれているの見ると流石に良心の呵責があるというか何というか……。
取り敢えず今回はニコ・ロビンの意思を尊重しましょう。
で、結果はクザンさんの勝利。
私と同じ氷雪系の能力者であるクザンさん。油断も慢心もせずに挑んだだろう戦いで、モンキー・D・ルフィ達三人は予想以上の粘りを見せました。
手足を凍らされた三人はそれぞれの方法で氷を溶かし、勇猛果敢にクザンさんに攻撃。息を吐かせぬ連係でクザンさんをバキバキ壊し、クザンさんが氷から人型に戻ろうとした瞬間に攻撃してバキバキにするのを5回程繰り返したのです。
それがクザンさんの警戒度を上げて本気を出し、瞬きする間に三人は氷像になりました。
結果だけ見れば三人の惨敗ですが、それでも敢闘賞ものだと思います。
だって海軍という一大勢力の最強格の内の一人の本気を引き出したんですもの。覇気も習得していないのにですよ?
客観的に見てみると随分強くなっていた事が分かって、私もほくほくにっこりです。
今回の結果に満足した私はクザンさんをがっしり掴んで空の彼方にぶん投げてから、三人を解凍して頑張ったねとそれぞれ抱き締めました。
モンキー・D・ルフィはにししと笑い、ロロノア・ゾロには物凄い抵抗され、サンジは鼻血ぶーと三者三様の反応が返って来ました。
普段麦わら海賊団の面々を半殺しにしていますが、だからと言って憎くてやってる訳ではないのです。そもそも憎かったら修行なんてしないですし。
言うなれば、獅子が子供を千尋の谷に突き落とす様なものです。
厳しくする時は只管厳しく、優しい時は滅茶苦茶優しくするのが私の修行方針。ちなみにリィナは娘ですから別枠です。
あ、リィナで思い出しました。私が三人を抱き締めてからというもの、眠りに就くまで三人に対する当たりが物凄い事になっていました。
はい、書き記す事にかなり戸惑いを感じる位には酷かったです。
一体何処であんな事を覚えたのか不思議で仕方ないですが、それを聞くとまた何時かの様に泣いてしまうでしょうから聞きません。
今度からは褒めるにしても抱き締めたりしない様にしようと密かに決意した私でした。
☀︎月£日 育成日記40日目
クザンさんをぶん投げてから十日程経った今日、今度は軍艦に乗ってガープさんがやって来ました。
何でもクザンさんが海で溺れて死に掛けているのを海軍の巡回船が発見して、本部の方に護送。
クザンさんから事情を聞いた海軍元帥はこの事態を重く見て、海軍の英雄であり伝説と謳われているガープさんを派遣したのだとか。
そんなガープさんはモンキー・Dルフィに一発拳骨をしてから、私を見て一言言いました。
七武海に入らんか?と。
どうやらクロコダイルという人がモンキー・D・ルフィに倒されて七武海の席に空きが出来たんだそうです。
そしてその空席がまだ埋まってないし、どうせなら面識があって腕っ節のある海賊を七武海に入れようとガープさんは思ったらしいです。
勿論私の答えはいいえ。
組織に縛られて自由に出来ない未来がありありと見えますからね。
私が断る事自体は想定の範囲内みたいだそうで、七武海に入らないのなら仕方ない。今ここでインペルダウンに送ってやろう。とガープさんは言い放ちました。
武装色を両手に纏い私に突貫するガープさん。私も彼に倣って武装色を両手に纏い突貫しました。
右手と右手がぶつかり合い、周囲に影響を齎す程度の衝撃を起こしながらガープさんは海軍船の近くの海に吹っ飛びました。
直ぐに海から飛び出て来たのを見計らって彼の首から下を凍結させ、海軍船に届けて帰ってもらいました。
儂は諦めんからなぁ!
そうガープさん叫んでましたけど、もしかしてまだ七武海に入れようとしてるのでしょうか。
絶対入りませんからー!
と返してから麦わら海賊団の修行を再開しました。