俺がクー・フーリンなのは絶対に間違っている   作:神崎真

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原作のセリフを何処までいれるか……そこが問題だ。


第5話 未知との遭遇 3

 クー・フーリンは槍を高速で回し、扇風機の様に風を起こして鱗粉をモンスターに返却する。

 

「【AUSUZ(アンサス)】!」

 

 粉塵爆発を狙って放たれる火のルーン魔術は、使用者の目論見通り着火剤となるが、本人の思惑以上の爆発が巻き起こってしまう。更に敵には回避されるというおまけ付きで。

 

(チョッ、粉塵爆発の火力じゃねえぞ。……あの粉自体に爆発性があるのか)

「ーー総員、撤退だ。

 速やかにキャンプを破棄、最小限の物資を持ってこの場から離脱する。リヴェリア達にも伝えろ」

 

 フィンは団長として、今取れる最善の手を選択する。それにベートとティオナが待ったをかける。

 

「おい、フィン!?逃げんのかよ!」

「あのモンスターを放っとくの?!」

「僕も多いに不本意だ。でも、あのモンスターを始末して、被害を最小限に抑えるのには、僕達は邪魔になる(・・・・・・・・)

 

 フィンは忌々しそうにモンスターを睨み、この現状を打破出来る男へと向き直る。

 

「クー頼めるかい?」

「任せな」

 

 クー・フーリンは肩に朱槍を置きながら、笑ってみせる。真紅の双眸は倒すべき敵を捉えて離さない。

 

「……私も残る。私の魔法ならーー」

 

 アイズは名乗り出る。確かにアイズの魔法である【エリアル】ならば、風を使い腐食液にも対抗できるだろう。しかし、フィンは首を横に振る。

 フィンが理由を口にする前に、クー・フーリンが口を開く。

 

「侮るなアイズ」

 

 普段のクー・フーリンからは想像も出来ない程の低い声、息苦しくなる程の重圧(プレッシャー)。クー・フーリンは無意識にそれを出していた事に気がつくと、直ぐに引っ込め、安心させる様に、アイズの頭に手を置く。

 

「心配すんな、あの程度の雑魚直ぐに片付ける」

「………うん」

「行くぞ、急げ。

 十分距離をとったら信号を出す。それまでは」

「みなまで言わなくても分かってるよ」

 

 ロキファミリアが撤退する。クー・フーリンは自分の仕事をすべく、槍を構えた。

 

 

 

 

 第5話 未知との遭遇 3

 

 

 

 走り去る仲間を背にして、新種に向き合う。

 

 邪魔になる外套とローブと盾を捨て、身軽になり、一瞬で間合いを詰めて槍を大振りにスイングする。

 叩いた感触は思った以上に硬くて重いが、殺れないことはない。槍本来の使い方である、突きを見舞おうとするも、至近距離で鱗粉を放ってきたので、後ろに飛ぶ事で回避する。

 

 ゲイ・ボルクの真名を解放すれば、おそらく一撃で倒せるだろうが、既に一回発動し、人形も使っている。その為、次使えば魔力の枯渇で精神疲弊(マインドダウン)不可避である。

 ただでさえ相手はイレギュラーだ。精神疲弊(マインドダウン)になって動けなくなると不味い。極力宝具は使わない方向で行きたい。

 

「そんじゃ、上げていこうか」

 

 加速のルーンを自身に施し、自身の俊敏の能力値を引き上げる。下手に倒せばあの醜い腹に溜め込んでいるであろう、腐食液が飛び出す。合図があるまでは持久戦だ。当たらなければどうという事はない。

 

 発射された腐食液を躱しながら接近し、鱗粉を飛ばす悪い腕を突き落とす。醜い悲鳴をあげながらも残った三本の腕で殴りかかって来るので、しっかりガードを……重ッ!

 

 想定以上のパワーに正面から打ち合うのは面倒だと察し、ガラ空きな胴体を蹴りつけ、反動で離脱する。

 

「………チッ!」

 

 舌打ちを漏らしながら、追撃の腐食液を槍で弾き飛ばす。

 事前に仕込んでいた探索のルーンが、撤退組と俺の距離を大まかに教えてくれる。撤退にはまだ少し時間が掛かるみたいだ。

 

「……もうちょい距離を開けるか。

 鬼さんこちら、手の鳴る方に」

 

 バックステップで後ろに下がりながら、手を叩いて怪物の気をひく。予想通りに、怪物はこちらに誘導され、少しずつ撤退組から距離が離れて行く。

 このまま下がりながら、時間を稼ぐ……って、何でコイツ急に止まった?

 

『アァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 怪物は急に咆哮をあげて、脱兎の如く走り出した。

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 怪物は、クー・フーリンに背を向けて、撤退組の方向へと走り出す。当然、それを彼が黙って見ている訳がない。クー・フーリンはすぐさま追いかけようとして、地面に体を伏せた。その彼自身でさえ理解できない行動は、結果的に背後から放たれた、腐食液を交わすことになった。

 地に伏せた隙だらけのクー・フーリンを、再び背後から腐食液が襲いかかる。

 

「クッ、【AUSUZ(アンサス)】!」

 

 火のルーンで相殺して、飛び起き、背後の襲撃者の姿を認識する。背後にいたのは、今彼が相手にしている新種と同種の個体だった。

 

「もう一体いたのか」

 

 逃げた方を追えば、背後から。背後を片付けていては、逃げた方が撤退組に追いついてしまう。

 

(先に倒すべきは今目の前にいるコイツから。槍の真名を解放する?精神疲弊(マインドダウン)で動けなくなる可能性が高い。使うなら、逃げた方にのみ)

「……迷ってる暇はねえか」

 

 新たに刻まれるルーンが、クー・フーリンのステータスを上昇させる。筋力、俊敏、耐久を強化した肉体を持って、突っ込む。

 

「食らいなァ!!」

 

 全力の突きが、怪物の腹を貫く。傷口から腐食液が溢れ出し、クー・フーリンの体に降り注ぐ。身体を溶かす腐食液の痛みを、クー・フーリンの固有スキルが、痛覚の機能をオフにする事で無にする。

 

『アアアアアアアアアア!!』

 

 怪物は苦しみながら槍を掴み、クー・フーリンに腐食液を吐きかけようとするが、もう遅かった。

 

「汚ねえ手で、俺の槍に触れてんじゃねえ」

 

 クー・フーリンは渾身の力で、怪物に刺さっている槍を持ち上げて、怪物を傷口から真っ二つに両断してみせた。

 致命傷を受けた怪物は、生き絶える。

 

「グッッッ!」

 

 一先ずの戦闘が終了した為に、発動中のスキルが停止する。痛覚が機能し始めて、腐食液を浴びた身体が溶ける痛みに苛まれる。

 直ぐにポーションを流し飲み、治癒のルーンを刻む。彼は休むわけにはいかない。逃げた怪物を追う為に走り出した。

 

 

 

 ***

 

 

 最小限必要な物資を持ち出した、ロキファミリアは十分な距離をとったことで、撤退完了の閃光弾を上げようとしていた。

 

「団長、大変です!さっきの新種が凄まじい勢いでこちらに向かっています!!」

「何!」

 

 伝令に来た団員の言葉に、フィンは自分達が撤退した方向を見た。確かに団員の言う通り、怪物は遠くの方に見えた。追いつかれるのも時間の問題だ。

 

「クーの奴、油断したか」

 

 リヴェリアはそう呟くも、内心では信じられないでいた。状況を知らない彼らからすれば、あの怪物はロキファミリア最強(クー・フーリン)を突破して来た様に見えるからだ。

 

「ーー仕方ない。総員!迎撃の準備だ!!」

 

 フィンの一声で、彼らは戦闘態勢をとろうとし、一人の少女によって待ったをかけられる。

 

「まって」

 

 制止を呼びかけたのはアイズだった。

 何故と問う前に、彼らの耳に雄叫びが届き、自ずと理解した。

 

 新種の後方。傷は無いものの全身ボロボロの格好で、彼は新種を追いかける。すでに新種の未来は決まっていた。

 

 彼は地面を蹴って、宙を舞う。

 脈打つ魔力が、槍の存在を知らしめる。

 

「『刺し穿つ(ゲイ・)

 

 空を蹴って更に加速し、一瞬で距離を詰め、

 その必殺の一撃をーー

 

 

死棘の槍(ボルク)』!!」

 

 ーー解き放った。

 穿つは心臓(魔石)、狙いは必中。故に、怪物の体から腐食液が飛び出す前に、怪物の魔石を穿ち貫く。

 

 先ほどまで、怪物がいた場所に降りたった、彼はあっけらかんと笑ってみせる。

 

「ワリィな、ちょっとヘマした」

 

 精神疲弊(マインドダウン)に陥り、麻痺した体を引きずりながら、クー・フーリンは考える。

 

(一時のテンションに身を任せると、本当ロクな目に遭わねぇな)

 

 と。




次話の更新は未定です。

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