そしてお待たせしました、例の蟹2匹がどんな仲になっているかをご覧あれ!
原生林。草木と水と毒沼が豊富なハンターの狩猟地が1つ。
近年発表されたG級モンスター出没に合わせ各地にG級が出揃っているが、ここだけは比較的穏やかな生態系を築いている。
原因は昨今に起こった粉塵爆発。当時の原生林を縄張りにしていた大型モンスター2匹を爆破したためだ。
そんな原生林の現在の支配者は、あの粉塵爆発に耐えて生き残った毒怪鳥ゲリョス。
生き延びた彼はたくましく成長し、見事G級となって上位級の大型モンスターを退かせ続けたのである。
どういうわけか他のG級モンスターが寄ってこないのが不思議だが、ゲリョスにとっては好都合であり、のびのびと暮らしていた。
そして彼は、目の前にいるキラキラ輝くモンスターを見て、賢いが故に記憶力の良い脳裏にフラッシュバックを走らせた。
―――
ゲリョスはキラキラ光る物に目がなく、ハンターから無断で拝借することも多いという。
全身を宝石のような輝きで覆ったオウショウザザミからしたら、欲しい欲しいと言わんばかりに嘴を小突いてくるゲリョスは溜まったものではないが。
滝が流れ、ズワロポスが屯っているこのエリアに、オウショウザザミは居た。
旧砂漠を後にしたオウショウザザミは、のんびり歩きながら原生林に辿り着いた。
餌の取り合いが激化している旧砂漠より、元々ザザミ種の好む温暖な気候である原生林が良いと判断したからだ。
それに現在の原生林は目立った脅威もなく、古龍種独特の静けさも無いこともあって好物のキノコ類をゆっくりと食べていた。
んで、どこかで見たことのある(気がする)ゲリョスに見つけられて小突かれまくっていると。
オウショウザザミの薄くも高硬度の甲殻にとっては微々たるダメージでしかないが振動は伝わってくる為に非常にウザい。
かといってG級とはいえ毒を吐かず小突くだけのゲリョス相手では攻撃する気にもなれない。この蟹は危険度で攻撃するしないを決められる蟹なのだ。
なので振り向いて水をブシューっと吐いておく。いきなり水をぶっかけられたゲリョスは驚いて逃げ去っていく。
ギャアギャア騒いで走るゲリョスを、煩いなぁ、と言っているように姿を現すモンスターが居た―――紫色のザザミだ。
このダイミョウザザミ亜種、オウショウザザミと共に旧砂漠へと引っ越してきた雌の盾蟹であった。
というのも、夜にはディアブロスがおり、昼にセルレギオスという強敵が現れた事によって己の立場が危うくなったと悟ったからだが。
ちなみにこのザザミ亜種は結構な頻度で砂漠と原生林を往復しているらしく、餌を豊富に摂取できる場所を熟知している。
ザザミ亜種が良い餌のポイントを知っているからか、オウショウザザミとブッチャーは自然と跡を追いかけるようになる。
オウショウザザミとブッチャーがいるから下手なモンスターが近づかず、またオウショウは襲われない限り攻撃しないので、ザザミ亜種にとって彼は草食種並の扱いで放っておく。
お互い知らず知らずにギブアンドテイクの関係となり、しかし雌雄の違いによる変化は全くない。
一種の共生関係であり、同時に雌と雄の意識は全くない……人間でいう「アパートのお隣さん的関係」とでもいうべきだろうか。
とにかく平和ではあった。ザザミ亜種が満腹になって寝ているのに対し、代わるようにオウショウザザミとブッチャーが餌にありつく。
ゲリョスもちょっかいをかけるだけで襲うわけでもないし、ズワロポスはもちろんのこと、コンガやゲネポスも伸び伸びと暮らしている。
しかし弱肉強食の世界に、一定などありえない。
―キイィィィ!
―ズガドンッ!
空高くから落ちて来た金色が、虹色を踏みつけ轟音を響かせる。
金色ことセルレギオスは、空高くから目立つ虹色ことオウショウザザミに狙いを定め、急降下してきたのだ。
その轟音にビックリしたザザミ亜種は地中へ逃げ込み、気配に気づけなかったズワロポス達も大慌てで逃げ出していく。
高高度からの急速な落下に加え、鋭い爪を突き付けるような蹴りをドついては見たが……セルレギオスは踏みつけた反動を利用し跳躍する。
―%$#&“§――!
脊髄動物にはない独特の奇声を上げながらオウショウザザミは鋏を振り上げ、怒りを露わにして泡を吐く。
セルレギオスは先ほどの一撃で仕留めきれないと本能的に悟ったのだろう。現にオウショウザザミは元気リンリンだし。
怒り狂うオウショウザザミの上空を回るようにして飛んで様子を見るが、オウショウザザミは見上げるだけに終わらせない。
高速で飛行しているにも関わらず足元の水を摂取し、空に向けて発射。狙いは悪くないようだがセルレギオスは難なく躱す。
セルレギオスは飛行能力に加え制空能力も高い。ただの水鉄砲如きではあたるはずもない。
だがここは原生林の中でも水が豊富な場所。弾は無限にあるといっても過言ではなく、短時間の補給に長時間の射撃を可能としていた。
このままでは埒が明かないと判断したセルレギオスは高度を落とし、あまつさえ地上に着地。
距離が離れているとはいえ体が軽いオウショウザザミが急速で接近するがセルレギオスは身構えたまま。
かと思えばまるで松ぼっくりのように頭から首までの鱗を逆立て、ハリネズミのようになった頭を振りかぶり、鱗を発射。
刃鱗と呼ばれるセルレギオス特有の鱗はオウショウザザミに飛んでいき―――両の鋏の前に弾けた。
鋭すぎて肉体に刺さり続けるという刃鱗は、高硬度かつ超密度の甲殻に難なく阻まれた。
しかしオウショウザザミがガードする以上、そのガードは鉄壁ではなく、むしろ弾け砕けた刃鱗に一瞬の恐怖を抱いたのは明白。
両の鋏を盾に突進してくるオウショウザザミを見たセルレギオスは瞬時に地に伏せていた翼を広げ、その場で滞空し、蹴りを食らわせる。
視界を遮っていたことで何事かとオウショウザザミが衝撃を受けながらも立ち止まり、再びセルレギオスは反動を活かして飛ぶ。
再びセルレギオスは螺旋を描くようにして飛び、オウショウザザミは見上げて鋏を振り上げる。
一見すると一点のダメージも与えていないように見えるが、それでもセルレギオスに引きの手は考えられない。
セルレギオスは己の縄張りだと主張するように嘶き、再び高度を落として接近していく。
その千刃竜の突撃は、どこか焦りですら感じさせるものがあった。
―――
その頃ブッチャーは何をしているかといえば。
―ギャアギャア!
―キーキー!
別エリアでゲネポスの群れと喧嘩していた。
オウショウザザミがザザミ亜種をスルーしているつもりですが、読者様の反応がどうでるのやら。
勝手な勘違いをされていなければいいんですが(ぇ