ゲリョス「ギア・フォース!」
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「極限状態?」
「ああ」
先ほどの言葉をオウム返しのように【我らの団】団長が言い、筆頭ハンターが頷いた。
筆頭ハンターから緊急で呼び出された【我らの団】団長と教官ジグエ、そして【我らの団】主力ハンターのビスカ。
もう1人のハンターであるリリトはクエストで出払っており、その他のメンバーはドンドルマの支援作業で忙しいので外して貰っている。
三人の前には筆頭ハンターの他に、ハンター達の助力により建設されたドンドルマの重要施設が1つ【狂竜ウィルス研究所】の所長と助手が居る。
筆頭ハンターは元から表情が硬いが、せっかちな所長も、おっとりとした助手も今は表情が硬い。何か思い悩むことでもあるのだろうか。
その理由の1つが先ほどの言葉―――『極限状態』だ。
「先日セルレギオスが発見された後、狂竜化した個体が再び増加したのは知っているだろう」
「おお。シャガル=マガラを討伐した以上、他所からやって来たセルレギオスから感染した可能性が高いんだったな」
狂竜ウィルスの発症源であるゴア=マガラ及びシャガル=マガラを討伐できたのは、他ならぬ【我らの団】のハンターだ。
現在は教官となったジグエがシャガル=マガラを倒した事で狂竜化現象は徐々に収まりつつあったのだが、ここ最近になって再発している。
黒蝕龍ゴア=マガラは大変珍しいモンスターではあるが、未知の樹海で度々目撃されている。
しかし未知の樹海に潜入するハンターはいずれも上位以上の実力者である為、発見された場合は即座に狩るケースが多く、感染の期間は意外と短い。
ちなみにシャガル=マガラは古龍種としての生態故に今後の発見は不可能とまで言われているので論外。
だが今回の狂竜化現象の期間は長い。しかし未知の樹海でゴア=マガラが目撃されたという報告も無い。
奇しくもセルレギオスの大移動と重なった上、セルレギオスの群れは探索が進んでいない未知の樹海の奥地から現れていることが解った。
恐らくは他所あるいは未知の樹海に生息するゴア=マガラ或はシャガル=マガラによって大量に感染し、それに乗って来たのではないかと考えられる。
しかし、ここで予想外の事実が発覚する事となった。
「それに関しては先輩こと筆頭ランサーに調査を願い出たのだが……実は以前から原生林に限り、狂竜化した個体が度々目撃されているらしい」
「……どういうこった?マガラは未知の樹海でしか確認されていないって言っていたんだろう?」
筆頭ハンターの言葉に再び首を傾げる団長と、団長の言葉を査定するように頷く教官ジグエ。
団長は直接狩猟場に赴いたわけではないが、狂竜ウィルスはマガラ種からしか発しないということぐらいは解る。
そんな疑問に応じようと所長が前に出て、オホンと咳込んで周りの注意を向ける。
「実はな、狂竜ウィルスを研究していくにつれ『ある仮説』が浮かんだんじゃ……もしも狂竜ウィルスに感染したモンスターが生き永らえたらどうなるか、とな」
「……これこれ、まさかと思うが……」
ジグエが所長の言う仮説を耳にした途端、体中から汗が流れていく。
狂竜ウィルスが人間に感染した場合、克服すれば絶大的な力を得られ、逆に克服できなければ治癒能力が弱体化してしまう。
上記の状態異常は知能ある種族にのみ出る影響で、大型モンスターが感染した場合は異常なまでの狂暴性が発揮される。
まぁ狂暴性が極まったが故に大抵は短命で終わってしまうのがせめてもの救いだったのだが……。
もし所長の言うことが正しく、そして狂竜ウィルスを宿したまま生きながらえたとしたら。
「……所長の仮説は的中した。ゴア=マガラとの戦闘で生き延びたゲリョスが原生林の主として君臨し、それに呼応するように狂竜化個体が増えてきている」
「ゲリョスが原生林の主!?ガララ=アジャラやラージャンもいるっていうのに!?」
これに驚いたのはビスカだ。上位ハンターとして幾度も原生林に赴いたが、ゲリョスの影を見かけたのは少なく、それよりも強大なモンスターの姿が多い。
言っては失礼だが、鳥竜種はガルルガを除けば生態系で言う中級程度。1つのフィールドを長期間に渡って陣取るなど不可能に近い、というのがビスカの考えだ。
ならば、考えられる別の要素は1つ。
「……さっき言っていた『極限状態』か」
表情を隠すように帽子の鍔を下した団長が呟き、筆頭ハンターが頷く。
狂竜ウィルスを克服したモンスター。それは狂竜ウィルスに感染し克服した経験のあるハンターからしたら絶望に近い物を感じざるを得ない。
事の重大さを理解したビスカは顔を青ざめるが、しかしジグエだけは何かを思い出したかのように挙手しだした。
「とりあえず極限状態について解っていることがあったら出来るだけ教えて貰えるかの?」
「もちろんそのつもりだが……どうかしたのですか?」
思っていた以上に落ち着いているジグエを見て不審に思ったのか、筆頭ハンターが訪ねてみる。
「狂竜ウィルスを克服したのは――――ゲリョスだけじゃないんだがのぉ」
ジグエの脳裏には、骨だけになった天廻龍と、それを食らったであろう蟹の姿だった。
―――
セルレギオスによって運ばれた狂竜ウィルスを感知し、極限状態を呼び覚ましたゲリョス。
狂竜ウィルスを克服し己の力としたゲリョスの猛攻は……凄いを通り越して酷い状態だった。
―バギッ!バシンッ!ベシベシベシッ!
トサカから発する閃光で目が眩んだセルレギオスを襲う、ゴムのように伸縮性のある尻尾による猛打。
最初は尻尾を叩きつけるように逆サマーソルトを決め、地面に陥没した巨体に尻尾を向けてそのまま猛烈な勢いで叩きつける。
伸縮性を活かしているとはいえ、一発叩く度にセルレギオスの鱗ごと粉砕していく様は恐ろしいの一言に尽きるだろう。
このような攻撃が出来るのは極限状態での影響が1つ「肉質の硬質化」にある。
狂竜ウィルスを体内に蓄積したモンスターは甲殻・鱗・外皮に関わらず、ハンターの武装なら容易く弾く程という驚異の硬度を持つようになる。
どういった理由かはさておき、ゲリョスのゴムのような外皮も影響を受け、伸縮性がありながら鉄のような硬度を得る事に成功したのだ。
その結果が、この堅ゴム連打である。むろん、死にそうな程に痛い。
それでも流石はG級というべきか。セルレギオスは滅多打ちにされ体の各所を陥没させながらも抵抗の意思を見せていた。
狂竜ウィルスによる精神汚染もあるだろうが、セルレギオスはゴム尻尾の連打から抜け出し、至近距離で尾を振って刃鱗を射出。
ゴム質の皮になら斬撃の類は効果があっただろうが、極限状態になった今は違う。
―ボヨヨヨヨヨッ!
硬い癖にゴムの体質が残っている為か、なんと刃鱗を跳ね返したではないか!乱反射していくのが不幸中の幸いか。
跳ね返した事ですら気にしていないゲリョスは地を這うセルレギオスに向かって突進。頭突きをお見舞いする。
モノブロスのような突進頭突きを食らって吹き飛んだセルレギオス。先ほどの尻尾滅多打ちもあって、もはや限界に近い。
だがゲリョスは容赦しない。吹き飛んで倒れているセルレギオスの前で息を吸い込み、腹をむき出しにして身構え……毒液を吐き出す。
吐き出すのだが……これが尋常でないぐらいに多い。
ドバドバと太い線が放物線を描く。これは猛毒と体内に蓄積した狂竜ウィルスが複合されたウィルス液であり、全てゲリョスの腹の中で溜めこんでいたものだ。
まるで体内の狂気を全て吐き出さんとばかりにセルレギオスに降り注ぎ、まるで滝打ち修行をさせられているかのよう。
猛毒に加え狂竜ウィルスを湖の如き量で受け止めたセルレギオスは強烈な苦痛に見舞われるも、その間は短く呆気なく息絶えた。
しかしあれだけの毒素とウィルスを吐き出しておきながらゲリョスは満足できないらしく、そのまま嘴でセルレギオスの死骸を突きまくる。
これでもかというぐらいに執拗に。亡骸まで滅茶苦茶にせんばかりに徹底的に。
鱗を細かく砕き、ウィルスと毒に染まった肉を啄み、ミンチにせんと嘴で叩きつける。
それほど経たずとも、セルレギオスは見るも無残な亡骸へと変貌していった。
それに満足したのか、ゲリョスは天に向けて咆哮を轟かせ、周囲の小動物やズワロポス達を一斉に散らした。
鳥竜種にあるまじき禍々しいプレッシャーと狂暴性。これが狂竜ウィルスを克服した者が持つ力である。
さて次はお前だ、と言わんばかりに真っ赤に染まった目が周囲を向けるが……探し求めていた相手が居ない。
セルレギオスに夢中になってしまい、先ほどまでそこに居たオウショウザザミの姿を眩ませてしまったのだ。
もちろんゲリョスは縄張りを侵す相手を許しはしない。
翼を羽ばたかせて空に浮かび、高所から敵を探さんと原生林の空を舞う。
―果たしてゲリョスの次の狙いはオウショウザザミか……それとも。
その頃ブッチャーとザザミ亜種はといえば。
「キー、キーっ!」
あっちへ行け!と言わんばかりに寄ってくるオルタロスを杖で振り払う、いつの間にかハチミツまみれになっているブッチャー。
―ZZzzz……。
その横で、エリア1でズワロポスと一緒にお昼寝しているザザミ亜種。
―モグモグ
逃げ切れた事を良い事に木の実や虫をムシャムシャと食べるオウショウザザミ。
……マイペース過ぎるモンスターも居たものである。
どうしよう、今後の展開をどうすべきか少し悩み気味です(汗)
モンハンクロスが発売する前までにはモンハン4G編を完結させたいですね。
それ以前にモンハンデルシオンを書かないとですけどね。応募ありがとうございました!