せっかくコツコツ書いたのに、見落としで誤字があったよ(涙
狂竜ウィルスは広がりやすい。ギルドがウィルスという呼称をつけたのは、この狂竜化の感染速度に起因している。
人間や獣人族、基本的に大人しい草食種を除いた殆どのモンスターに感染し、そこからさらに別のモンスターへと感染していく。
この尋常でない感染力によって、その狩猟地の食物連鎖を通じて蔓延し、強弱関わらず狂暴になったモンスターが人類に牙を向ける。
この感染性が、狂竜ウィルスが恐ろしいとされる点の1つである。
さて、この狂竜ウィルスを克服した個体、つまり極限個体について話を戻そう。
そもそもこのウィルスは体内から蝕む毒のようなもの。強大な力を得るよう身体を作り替え、その代価として生命力と精神を削るのだ。
それに克服するということは、ウィルスに耐えられるよう身体を急速に進化させるということ。体の肉質も硬くなれるし一石二鳥。
そうなる事でウィルスに蝕まれる事なく、体内に蓄積していく狂竜化の力を最大限に引き出すことができる。毒を以て毒を制す、といった処か。
これが極限状態の仮説の1つだ。体内に蓄積しきれないウィルスは外に漏れてしまう。
以上の二点を考慮すると――――極限個体は、ゴア=マガラやシャガル=マガラのように、狂竜ウィルスを撒き散らす元凶になりえるのだ。
―――
今、ブッチャーは本格的にピンチだった。
いかにもヤバそうな色合いになったゲリョスが空を飛んでいたのを目撃したが、そいつに襲われているわけではない。
それでも危険には違いないゲリョスに見つからないように注意しながら、ブッチャーは地中に潜る時間も惜しむように走り続ける。
何度も言うがゲリョスから逃げているのではない……蟹から逃げているのだ。
―ブシューッ!
「キィィィィ!」
きっと「ひぃぃぃ!」と叫んでいるであろうブッチャーは、後ろから溢れ出る水をフラフラした軌道で避けつつ、やっぱり走る。
今の水を避けられたのは走りつつもチラチラと後方を振り返って見ていたからだ。ブッチャーは改めて背後の存在を見やる。
そこには、黒いオーラを醸し出しつつブッチャーを追いかける蟹……ダイミョウザザミ亜種の姿があった。
少し前まではオウショウザザミと同じエリアでノンビリと過ごしていたはずのザザミ亜種。
それが残留していた狂竜ウィルスに触れた事によって蝕まれ、いつの間にか狂竜化してしまったのだ。
その時にはオウショウザザミは餌を求めてどこかに行ってしまい、ブッチャーはオルタロスを追いかけまわして遊んでいた。
そして何故かザザミ亜種はブッチャーに狙いを定め、こうして追いかけっこする羽目になった、と。
小さくも力持ちなチャチャブーではあるが、流石にダイミョウザザミを倒す程の力は無い。
それに、感染する心配は無いが、狂暴になったモンスターという物は総じて面倒だ。死を恐れない暴走、というものほど恐ろしい物は無いからだ。
ブッチャーは過去何度か死ぬような思い(金獅子とか恐暴竜とか)をしたこともあってダイミョウザザミ亜種から逃げ続けているのだが……。
どーしてか、ダイミョウザザミ亜種はブッチャーから目を逸らそうとしてくれない。
「キ、キキィ!キー、キキー!」
可笑しいでヤンス!なんであっしばかり狙うでヤンスか!?……と言っているかのようにブッチャーは叫ぶ。
通りすがりのコンガを次々と撥ね飛ばしながら猛スピードで迫るダイミョウザザミ亜種は、その叫びに答えようと水ブレスを発射。
「キィィィ!」
再び「ひぃぃぃ!」というニュアンスで叫び、水ブレスをヒラリと躱す。
チョコマカと逃げるブッチャー。それを追いかけようと四足特有の機動性を活かして追い続けるダイミョウザザミ亜種。
(早く助けてくれでヤンス旦那~)
……と言っているようにブッチャーが叫ぶが、それはザザミ亜種のボディプレスの轟音によって消えるのだった……。
(……こっちに逃げてくればいいのにニャー)
そんな2匹の追いかけっこを獣人族の巣に繋がる入り口付近で見ながら、アイルーは思ったが……このアイルーには気づいていない事がある。
もしアイルーの考えたようにチャチャブーの子が転がり込んで来たら、地中を掘る事のできるザザミ亜種によって住処はメチャクチャになるだろう。
アイルーの住処の行方は?そしてブッチャーはどうなるのか!?次回を待て!
―――
そんな追いかけっこ劇場から遠く離れた、幾多もの柱に巨大な蜘蛛の巣が広がる高台にて。
―ギョエエェェェ!
ババコンガですら支えられる蜘蛛の糸の上で、より毒々しい液をばら撒きながらデタラメに走るゲリョス。
その足元では、雨のように襲い掛かる毒とウィルスの混合液から逃げるべくジグザグに走るオウショウザザミ。
地中移動も可能としているオウショウザザミとは言え、同じ狩猟地に居る限り大空を飛ぶ者からは逃げ切れないようで。
小さな蜘蛛の巣に引っ掛かっていた虫をモグモグしていた所をゲリョスに見つかり、こうして上からの強襲に見舞われてしまった。
様々な毒素を取り込んだオウショウザザミだからこそ、地面をジュウジュウと融かす、今のゲリョスの毒液の恐ろしさを理解したのだろう。
融けた端から狂竜ウィルスがばら撒かれている事もあって危険性を感じ、こうしてゲリョスの毒撒きから逃げているのだ。
逃げる相手を見たゲリョスは埒が明かないと擦り減っているはずの知能で判断し、粘着性のあるはずの糸の網に頭からぶち込んだ。
やがてブチブチと巣を破りながら身体を潜り込ませ、身体全体で地面へ落下してしまう。
にも関わらずゲリョスは即座に身体を起こし、オウショウザザミに向けて走り出す。
毒液を吐かなくなった、或は広がるウィルスで逃げ場を失ったからか、オウショウザザミは突進してくるゲリョスに向けて反転し身構える。
鋏でガード態勢を取ったオウショウザザミに対し、ゲリョスは嘴を連続で突く。
セルレギオスを挽肉にするほどの嘴攻撃を、超硬度を誇るオウショウザザミの鋏がしっかりとガード。硬さが違うのだよ、硬さが。
極限状態になったゲリョスの嘴攻撃でも甲殻に傷をつけられないが、オウショウザザミが少しずつ後退している様子から、確かなダメージが入っているようだ。
だがダメージが入っているのはゲリョスも同じ。嘴を通じて頭を揺さぶれるような衝撃が襲ってくる。
本来なら狂暴化したが故に考えなしに突っ込むものだが、ゲリョスは鳥竜種の中でも特に高い知能を持つモンスター。
嘴では効果が薄いと理解したが故にオウショウザザミと距離を取るべく、翼を広げて後退。
多少の風圧程度では怯まないオウショウザザミはゲリョスを追いかける。先ほどの攻撃とゲリョスの変貌で攻撃本能を刺激されたらしい。
ゲリョスはただ引き下がっただけではない。よく見れば鶏冠がチカチカと発光しており、後退中に閃光を放つ準備をしているのが解る。
着地と同時にゲリョスの鶏冠から強烈な閃光が放たれるが、オウショウザザミは鋏で前面を塞いでいたので目晦ましにならなかった。
当然ながら前が見えない状況なので、オウショウザザミは勢い余ってゲリョスとゴッツンコ。
四足故に速度が速くないので大した衝撃ではないが、ゴムの皮にぶつかったオウショウザザミが派手に吹っ飛んだようだ。
好機とばかりにゲリョスは後ろを向き、硬ゴムの尻尾をオウショウザザミに叩きつける。
―バニョンッ!
……なんとも区別しがたい音が響き、硬ゴムの尻尾が弾かれてしまった。
硬いとはいえゴムはゴム。硬い物にぶつかったら跳ね返っていくのはゴムの悲しき性である。
オウショウザザミの硬度はゲリョスの尾を上回り、しかしゴムとしての性質故に尻尾をあらぬ方向へ伸ばしてしまった。
弾かれたゴムの尻尾は、叩きつけた衝撃と弾かれた衝撃が合わさり勢いよく伸びていき、ゲリョスのお尻を引っ張っていく。
当然ながらゲリョスはお尻から引っ張られて横転。悔しそうにジタバタと暴れた後、即座に起き上がったが。
それを逃すまいと鋏を広げ、それを地に突き刺して王冠のようなヤドを持ち上げ、棘のような鉱石をゲリョスに向けて射出する。
忘れがちだが、オウショウザザミの甲殻が集結し凝固したヤド―通称「
装飾のようにも棘のようにも見えるこれらを射出することで、相手に暗示をかけて様々な効果を付与する「護石やられ」を生じさせるのだ。
しかし、これは当然のことながらセルレギオスの刃鱗と同じ
―ボヨヨヨッ!
例外なく、ゲリョスの硬ゴムの皮によってお守り弾を反射するのだった。
それでも跳ね返した衝撃は感じたゲリョスは「何すんじゃワリャー!」と言わんばかりに飛びかかる!
また嘴で攻撃すると思ったのかオウショウザザミは鋏でガードするが、狡猾なゲリョスは予想外な行動に出た。
オウショウザザミの目の前でウィルス毒を吐き出したのだ。嘴攻撃かと思ったら毒攻撃だったでゴザル。
至近距離で嘔吐を食らうとか精神的にもキツい。猛毒とウィルスの混合液という時点でキツいのには違いないだろうが。
するとオウショウザザミは、顔面から猛毒を浴びた後、力なく地に伏せてしまった。
途端にガクリと崩れたとはいえ、毒を吐き終えたゲリョスはそのまま嘴でガンガンと突きまくる。
―オウショウザザミの身体から、自身と同様の黒いオーラのような物を滲み出しているのに気付かずに。
申し訳ありませんが、しばらくはモンハンデルシオンに集中するのでヤオザミ成長記の更新が遅れます。
一か月内に更新できるようには頑張りたいです。コツコツ書く習慣が出て来たし。
コツコツチマチマ見直しても、見落としが出るかもしれないと思うとヒヤヒヤしますが(汗