ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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(°■°;)←(活動報告閲覧中)

( °■°)「蟹さんよぉ」
    
°。(-- )「?」

(;°■°)「お前愛されてるなぁ」

( -ω-)。°「Zzzz……」

皆さん、こんな蟹を愛してくれてありがとうございます。
けどごめんよ、今回は主人公(?)不在なんだ……。


第75話「密漁ハンターの不運」

 狂竜化ツジギリギザミが徘徊しているので立ち入り禁止区域に指定された未知の樹海にて。

 

「どうしてこうなった」

 

 ガララX装備の狡賢そうな男・ギギレが首を傾げる。

 

「私が聞きたいよ」

 

 レイアX装備のガッシリとした体つきの女性・カランが額に青筋を浮かべて言う。

 

「帰りたいッスよぉ兄貴ぃ」

 

 グラビドX装備の小太りな男・ドドが物凄い勢いでガタガタ揺れている。ビビってんのや。

 

「かといって引き下がる事もできん」

 

 レウスX装備のリーダー格・レガッダはそんな3人を宥めようとしている。

 しかしこの場に居る、未知の樹海を淡々と歩く彼ら全員は同じことを考えている……今すぐにでも帰りたい、と。

 

 

 

 密漁ハンターがどうして嫌々ながら未知の樹海に入っているのか。事の始まりは、意外にも数日前までさかのぼる。

 

 

 

 オウショウザザミを狙って旧砂漠に乗り込んだ彼らは、千刃竜セルレギオスの奇襲を(主にドドが)受けて仕方なく撤退。

 当時はセルレギオスもレアなモンスターだった為、レガッタ達は諦めの悪さも手伝って再度旧砂漠に挑もうとした。

 

 だが当時のドンドルマは混乱を極めていた。何せ己の縄張りから動かないはずの千刃竜が旧砂漠に、それも2匹同時も現れたと聞いたのだから。

 さらに、海路を渡って護送していた刀蟹(カタナガニ)が逃げ出したとの報告もある。ただでさえ忙しいのに過労死しそうだ。

 修復作業がほぼ完了した今は、ドンドルマ護衛や周辺の狩猟を頼む為のハンターを掻き集める必要があった。

 

 そんなドンドルマを仮の拠点にし続けたレガッタ達の不運はここにあった。

 

1.レガッタ達がドンドルマに帰還。

2.レガッタ達が速攻でギルドのお偉いさんに捕まる。

3.「ツジギリギザミを足止めするように」と笑顔で依頼される。

4.現在に至る。

 

 ちなみにレガッタ達が密漁ハンターであることは既にバレており、ギルドは敢えて知らぬふりをして依頼してきた。

 入手ルートは怪しいとはいえ防具はG級素材を使われた本物であるし、何よりアイルーの手も借りたい程ハンターが不足していたのだ。

 さらにレガッタ達は違法ハンター。しかも洗いざらい調べていたギルドナイトの報告によれば、彼らの悪行は極刑から逃れられない程のレベル。

 そしてツジギリギザミの恐ろしさは筆頭ランサーがお墨付き。並のハンターなら即死級の相手だからと依頼を断るのも可笑しくない。

 

 普通なら逃げ出したい状況だろうが、そうは問屋が卸さない。

 

 広大な樹海はひとたび入ってしまうと、ギルドが派遣した移動手段でなければ脱出は困難。

 ギルドの監視が無いからと逃げ出そうとすれば確実に迷い、良くて餓死、悪くてモンスターに捕食されるのがオチ。

 かと言って助けを求めようにもツジギリギザミ出没により立ち入りを禁止している為、例え同業者でも入ろうとしないだろう。

 

 そんな状況下に置かれたら大抵は逃げる事を諦めるのだろうが……彼らが目の当たりにした光景を見たらそうは思わなくなる。

 

「ナニコレェ」

 

 ドドが青い顔でそう言う。

 

 彼らの目の前では、木や石、遺跡といったあらゆる障害物が綺麗に斬り裂かれていた。

 それはもう見事なぐらいにスッパスパ。切れ味ゲージ紫の太刀だろうともここまで綺麗に切断できない……はず。

 どう見てもツジギリギザミの仕業なのだろうが、見事なまでの荒れ具合である。邪魔する者は何でも斬る、といった感じだ。

 

 石ですら綺麗に斬り裂く爪を持つツジギリギザミ。きっとドドの持つガンランスの盾ですら切断してしまうだろう。

 そんな凶悪極まりないモンスターを、道具ハメと証拠隠蔽が得意なだけの密漁者が、せめて足止めだけでもしなければならない。

 後ろを行っても地獄。前を行けばそれ以上の地獄が待っている。

 

 

 

 

 つまり――――「ツジギリギザミの刑に処す」と宣告しているようなものである。

 

 

 

 

「とにかく死ぬなよ、お前ら。盾が減る」

 

「人間盾ですね解ります」

 

「ドド……」

 

「なんでそっと肩に手を乗せるッスか姉御ォ!?」

 

 こんな殺伐とした中でも普段の雰囲気を崩さない。彼らも何気に場数を踏んだ熟練者なのだ。

 任務を少しでも果たして帰れさえすれば刑が軽くなり、上手くすれば全うな生活を迎えられるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きつつツジギリギザミを探す彼らは、見事にギルドの飴と鞭で調教されてしまったようだ。

 

 

 

―――

 

 そうこう言っている間に。

 

「お、黒い蟹発見」

 

 双眼鏡を片手に持つギギレが黒い甲殻種の姿を確認し、皆がその先に視線を向ける。

 もし夜中であったら間違いなく溶け込むようなドス黒さを持つ甲殻種―ツジギリギザミである。

 

「ひぇぇぇ出たぁぁぁ」

 

「黒い布を被ったアイルーを見たような声で叫ぶんじゃないよ恥ずかしい」

 

「カランの姉御だって足震えているじゃないっすか、あでっ」

 

「アタシのは武者震いだよ!」

 

「どうでもいいから静かにしろ」

 

 ドドとカランの漫才(?)をレガッタが止めると、途端にシンとなる。流石ボス。

 物陰からツジギリギザミの様子を伺っていると、どうやらツジギリギザミはお食事中のようだ。

 刀を折り畳んだ鉈のような鋏がチョイチョイと地面を突き、口に運ぶ。それを延々と繰り返している。

 

 穏やかに見えるが、背後には斬りたての切りかぶや岩だったものが道のように広がっている。先ほどまで散々暴れていたのだろう。

 とりあえず腹が減ったら大人しくなるという事が解ったので、頭脳派のギギレはメモを取る。勿論この情報は売ります。

 

「しっかし、コイツなんでドンドルマに向かっているのかねぇ」

 

「こんなに無差別なのになぁ」

 

 斬り裂いた道を辿るとグネグネしているが、少しずつとはいえドンドルマに近付きつつある。

 ツジギリギザミを恐れて他のモンスターが逃げ出す事もあり、このまま放置すれば今夜にもドンドルマに着きかねない。

 だからこそ自分達を囮(または生贄)として差し出したのだろう。ほんの少しの足止めになるかも怪しいが。

 

 

 いや、確かに足止めにはなるのだ―――ツジギリギザミの生態を考えれば。

 

 

「ブベッホォォォ!?」

 

 ビックーンと身が跳ね上がる程にドッキリしたレガッタ達が何事かと音源を探る。

 先ほどの奇声の正体は、齧ったこんがり肉を片手に噴出したドドの物であった。

 

「誰っすか傷みかけのこんがり肉を荷物に入れたの!すっげぇマズイっす!」

 

 どうやら空腹に耐えかねてこんがり肉を食べようとして、ハズレを引いたのだろう。

 食に煩いドドが怒りを露わにするほど不味かったのだろうが……別の意味で拙かった。

 

 

 

 彼らがドドを叱りつける又は黙らせるよりも先に。

 

 

 

―シャコン、シャコン、シャコン

 

 

 

 食事中だったツジギリギザミがコチラの存在に気づいてしまったのだから。

 そしてツジギリギザミの性質は、動く物はなんでも敵と思い、執拗に攻撃を仕掛ける事。

 

 

 

 余談だが、ギルドは真っ当なハンターには寛大だが時には非情な一面もある。

 ドドの荷物に痛みかけのこんがり肉を仕込んだのはギルドの関係者であり、こうなることを予想していた。

 

 

 

 

 故に、ツジギリギザミを引きつける、という事には成功したのだが……。

 

 

 

 

 

―必死過ぎて、空に雷雲が広がるドンドルマに接近していることを、彼らは知らない。

 

 

 

 

 

―完―




ギルドマネージャー「やり過ぎだと思うが、これもドントルマの為じゃ」
ギルド関係者「けどツジギリ連れてきそうな気がするんですが」
ギルマネ「Σ(°■°;)」

次回、迫りくる三つの影!ドントルマの運命やいかに!?そしてザザミ×2の明日はどっちだ!?

急ピッチで書いたので誤字脱字が多いかもしれません。お許しを(汗

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