ゴトンゴトンと音を鳴らしながら走る電車。運良く椅子に座れた私はスマホをいじっていた。
ちょっとした移動時間に手軽にできるのが利点でもあり欠点でもある。それがスマホゲーム。種類によっては充電がごりごり無くなる。ゲームを閉じてスマホ上部の電池残量を見るとうわっとなることはよくある事だ。
ちょっと素材集めに、と起動させて三倍速オートで回ろうとした。その時だった。
――閃光。
乗っていた電車とは違う、無機質なだだっ広い部屋に立っていた。周囲には電車に共に乗っていた人々。何が起きたのか理解が追いつかないようだ。
「おい」
声のした方へ皆一斉に振り向く。そこにはコンビニとかに置いてあるくじ引きの箱を両手に抱えた人がいた。その箱には『転生特典 くじ引き用』とカラフルに書かれている。その下に3割引とあるのは無視するべきか。
目の前にやってきて一言。
「引け」
ん、とぶっきらぼうに箱を差し出す。穴に手を突っ込み、三角形のくじを引く。
「後は自分でやれ。次」
自分でやれってどういう事ですか、と聞ける雰囲気ではない。取り敢えずくじなので開けてみる。そこには。
《転生特典》
スマホゲームから好きなキャラを一人連れて行ける(連れて行きたいと念じながらスマホ画面上のキャラをタップすると選択は完了します)
……どう反応すれば良いのだろうか。それにこれでどうしろと?
これに従うとして何が一番なのだろうか。戦力を選ぶか、愛を選ぶか。そもそも、どこへ行くかも知らないのに正解なんて分からない。
ちょこちょこやっているゲームを起動。ローディング後出てくるお知らせを閉じ、画面中央にキャラが現れる。
もうどうにでもなーれ、の精神でスマホ画面をポチる。
『処理は完了しました。ありがとうございます』
突然スマホから音声が流れる。ずっとマナーモードにしていたはずだったが、と横のボタンを確認する。
『なお対象となったゲームに絆レベル・信頼度などキャラとプレイヤーの関係を示唆するものがある場合、通常のモノと比べ精神が変化する危険性があります。ご了承ください』
「えっ」
それは先に説明するべきことでは? ……大丈夫なのかこれ? あー、だから三割引なのかもな、とどうでもいいことを考える。
どうやら全員がくじを引き終わったようだ。
「何か忘れて……あーっと、最後に貴様らが送られる場所だが」
にいい、と口角を三日月のように上げる。整っていた顔がぐちゃりと歪む。多分、これがあの存在の本性だろう。
「――――だ、精々頑張ってみろ」
大事な部分がよく聞き取れなかった。床が抜ける。自由落下。突然の事に皆何もできなかった。底なしの闇に落ちる恐怖から叫ぶ人もいた。私は硬直していた。他にもそんな人が大勢いた。
ただ、気味が悪いにやにや笑いが張り付いて離れなかった。
「ぐえっ」
どうやら全員まとめて一箇所に落とされたらしい。上から落ちてきた人に押しつぶされて変な声が出た。
男性が走ってこちらに向かってくる。それを追いかけるように女性もやって来た。女性は男性を庇うように前に立つ。
「変なことはしない方がいい。質問に答えるんだ」
「どうやってここに来た? いやそもそも、君達は『いつ』から来た!?」
「…………」
どう説明しようかと皆で見合う。スーツを着たしっかりしていそうな男性が、電車に乗っていた所からポツポツと喋り出した。
「転生くじに特典……? ネット小説のテンプレの一つだけど、彼らにそれを与えたのは何だ……?」
ロマニ・アーキマンと名乗った男は手をアゴに当てながら考え込んでいた。
「そんな事が現実にあり得るのか……? いやでもこうして彼らがいるわけだし……」
「ふむ……魔術王が関わっているわけではなさそうだ」
彼らによれば、ここは人理保証機関カルデア。男性はロマニ・アーキマン、女性(?)はかの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチと名乗った。
「FGOかよ……」
誰かが呟く。私も一応1.5部までやっているからストーリーは覚えている。ロマニの話からすると、現在は第四特異点までの修復を終えているようだ。
――あの物語に外部の関係ない人物が介入して良いのだろうか? 何か一つ狂えば人理修復はなされない。それ程までにグランドオーダーは危険なのだ。
私達にも何かできる事があるのでは、手伝わせてくれ、というのは簡単だ。しかし、次の第五特異点……いや、特異点自体ぽっと出が手助けできるほど甘い所ではない。
「グランドオーダー達成の為の人員が増えるのは良いことだ。けどこんな一度に増えたら流石に困る」
現時点の最高責任者であるロマンは戸惑いながらもそう判断を下した。食料、住居、その他諸々の調整が突然発生したのだ。それにレイシフト適正が存在しなければ、どんなに強い人でも役立たずになる。
「その、特典……だったっけ? それがどれほどの力があるか試させてもらおうか。シミュレーションルームを使って模擬戦闘を行ってもらう。もちろん、力の使い方を最初に練習してからだけどね」
使えるものは使いたい。しかしつい先ほどまで一般人だった彼らがどれほどの実力があるかは分からない。なのでふるいにかけるべきだ、とダ・ヴィンチちゃんは考えた。
「子供や老人は除外させてもらう。怪我の危険性が高いし、突然の危機に対して攻撃できるかも怪しい。もちろう、戦う意志が無い者を巻き込むつもりは当然無い。戦闘に参加したくないなら私に言ってくれ」
――もし、誰も戦力にならなければ?
ふと思った疑問を投げる。
「その時はその時だ。この人数に割り当てられる雑用があるかは分からないけど……出来る限り努力しよう」
その目の光で確信する。彼らは道具として私達を一方的に利用するのではなく、共に歩みたいのだと。それを見て安心したのか子供連れの家族であったり、持病がある人だったりと色々な人がダ・ヴィンチちゃんに模擬戦闘の辞退を申し出た。
……私が選んだキャラは未だに姿を見せない。もしかして選択を失敗した? 不安になってきた。
こっちだ、とシミュレーションルームへと案内される。力の使い方を練習してから実戦に入るように、と念押しをされた。
部屋の中に入り、風景が変わる。
炎上する都市。崩壊したビル。道路はひび割れ歩きづらそうだ。スケルトンが六体。その手の武器で何かするわけでもなく立っているだけだ。あれを的にしろ、ということだろう。
――デコヒーレンス領域、自動展開。
突然頭の中に声が響く。紫色の雷のようなエフェクトが円状に広がり、収束し……爆発する。
「お? もう出番か」
爆発の中心には両手に剣を持った豹の獣人がいた。準備運動だろうか、その剣を軽く素振りすると風を切る音がする。
間違いなく、私が選んだゲームのキャラがそこにいた。
――準備完了。模擬戦闘・スケルトンを開始します。
アナウンスが流れると、さっきまで突っ立っていただけのスケルトンの動きががらっと変わった。だらりと垂れ下がっていた腕は構えの形をとり、がしゃがしゃと骨が擦れる音と共に走り出す。
明確な敵意。本物の殺意には及ばないのだろうが足がすくむ。動きが遅れた。それを見て獣人はスケルトン達からの壁になるかのように立ちふさがる。
「『チャージ』っと」
スケルトン達が獣人の目の前に群がり、それぞれが持つ剣やら槍やらで殺そうと獣人に襲いかかる。ごしゃ、と重い音が響く。
「……何かしたか?」
ダメージは無い。シミュレーションに感情があるのかは分からないが、スケルトンは戸惑っているように見えた。
「この距離なら外さないぜ、『冥界波』ァッ!」
剣を持った両腕を交差させ、開くと同時に衝撃波がスケルトン達を吹き飛ばす。スケルトンを構成していた骨はばらけ、粉砕された。
周囲の安全を確保できたのを確認し、獣人はふう、と息を吐いた。
「改めて、だな」
剣を収め、私の目の前で口上を述べる。
「堕天使 オセだ! 精々一緒に楽しもうぜ!」
悪魔……いや、私の仲魔はそう言うとニヤリと笑った。
防魔オセは星3詐欺。覚醒すると物理無効つくのがいいですよね。
異能クー・フーリンでも良かったかな?でもまだ作れてないんですよね。マグネタイトどこ……?
……あれ、よく考えれば物理無効ってベオウルフとか物理攻撃しかできないサーヴァント達手も足も出ないんじゃ……まあいっか。
〜FGOしか知らない人にオセのふんわりした解説〜
レア度詐欺の悪魔の一人。作りやすい、弱点属性が無い、高難度にも連れて行けると便利としか言えない。
チャージで攻撃力上げての冥界波(全体攻撃)。あいてはしぬ。
私の仲魔は最強なんだ!