SERVAMP -知られざる九番目-   作:カランコエ

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欺瞞。


33. 舞台に満ちるは

 それは深夜のこと。

 点在する街灯の光だけが白々しく照らす、暗い住宅街の道。

 人気のないその通りを走り抜ける、一人分の人影があった。履き慣らされた濃いグレーのスニーカーが、コンクリートを強く踏みしめて擦り切れていく。

 人影は、少女の形をしていた。

 

「(あぁもうっ……しつこい!!)」

 

 突然だが、疾走する少女こと鈴白百合音は追われていた。誰にかと言うと、どこぞの誰かの下位吸血鬼(サブクラス)に。

 そんな彼女の後ろから響く声。

 

「待てーーーー八番目の主人(イヴ)!」

「っ、だから違うってば!!」

 

 夜道に響くご近所迷惑な追手の咆哮に、彼女もまた全力で否定を返した。無論、信じてもらえてはいない様子なのだが。

 ご覧の通り今、非常に面倒なことに百合音は八番目ーーーー椿の主人(イヴ)であるとの誤解を受けて追われている。

 因みに彼女にはその誤解の発端となる出来事の心当たりがあった。

 

「(アイツ、前にライラックを襲ってた奴ね)」

 

 頭に()ぎるのは、椿に拉致されていた頃に路地で追われていたライラックを庇った時の事。

 椿の下位吸血鬼(サブクラス)を倒そうとした時に邪魔をした人間、それも武器(リード)を持っていたとなれば、確かに普通に考えれば椿の主人(イヴ)だと思うだろう。そのロジックは理解できる。だがしかしこんな風に追い掛け回されるのは話が別だ。

 既にそこそこの距離を走り通しで流石に息が上がってきた。これ以上の鬼ごっこは不利と判断した百合音は一旦細い脇道に入り、そこから何度も角を曲がって撹乱した先で、一度身を潜めることにした。

 

「………………」

 

 バタバタと彼女の姿を探す吸血鬼の足音に耳をすませ、着ている黒いパーカーのフードを下げて顔を隠して蹲る。幸か不幸か、今の百合音の服装は夜闇に紛れるのに適した色合いだった。

 荒い呼気が漏れないように、口を塞いだ掌の間から薄く細く息をする。走った直後で息を殺すのは中々苦しい。それでも何とか呼吸を整えつつ隠れる。

 

「(……迎え撃つのは簡単だけど、こんな所でドンパチ始めるわけにはいかない……!)」

 

 お願いだから早く諦めて帰って、と彼女は切に願う。

 しかしそういう時ほど不運が近寄ってくるもので。

 

 ーーーーカランッ。と。

 

 近くで空き缶の転がる音がした。

 恐らく、野良猫か何か。けれど静まり返った住宅街に響き渡る音としては充分過ぎた。

 

「(やばっ……!)」

 

 吸血鬼が音の方へ足を向ける気配がする。辿り着かれる前に、ここから離れなくては。

 靴音を立てないように百合音は駆け出した。吸血鬼に気付かれないように細心の注意を払って神経を研ぎ澄ませる。

 

「ーーーーーーーーこっちだよ、走って!」

「っ!?」

 

 だから、急に横合いから腕を引かれた時、反射的に抵抗して投げ飛ばさなかったことを誰か誉めてほしい。

 赤いラインの入った帽子を被った、明るい髪色の青年だった。掴まれた手を引かれるままに暗い住宅街を通り抜けていく。

 大通りに面した道まで出て、漸くその青年は足を止めた。自然、百合音も止まる。

 走ったとはいえ今度は大した距離でもなかったので、数回深く息を吸った程度で心拍は落ち着きを取り戻した。それは彼の方も同じだったらしく、彼女が呼吸を整えたタイミングでくるりと振り向いた。

 髪には三つ編みのエクステ、腕には数種のブレスレット、首元には緩く巻いたスカーフと、装身具の多い出で立ちだ。服装自体は無地のシャツとベストにズボンというシンプルなものなのに、そういった細かな部分への気遣いがあるせいか地味には見えない。

 青年は緩く口角を上げて言った。

 

「危なかったね。最近はあぁいうのも増えてるし、女の子がこんな時間に一人で出歩いちゃ駄目だよ?」

 

 艶のある、耳障りのいい声だった。世に言うイケボというやつだろうかと百合音は薄い感想を浮かべる。夜風に乗って遠くから、微かな破裂音が響いて消えていった。ふらりと一歩、まだ少し酸欠な振りをして少女は、足元が覚束(おぼつか)ないような素振りで青年から距離を取った。

 さて必要だったかはともかく、どうやら助けてくれたようなので彼女は躊躇いがちに礼を口にする。

 

「えっと、ありがとうございました。……それで、貴方は?」

「しがない骨董品屋だよ。ーーーー初めまして、九番目の主人(イヴ)さん」

 

 そこで初めて、琥珀色の瞳と視線が合った。

「オレも主人(イヴ)でね。上から三番目、嫉妬の主人だよ。よろしくね」

「初めまして。鈴白百合音です」

 

 挨拶を返しながら思う。名乗らないのはわざとだろうかと。

 そちらがその気ならと彼女は先手を打った。

 

「それで、帽子屋のお兄さんはどうして私を助けてくれたんですか?」

「ストップ。オレ、さっき骨董品屋って言ったよね?」

「だってお兄さん骨董品屋さんっぽくないし、覚えにくくて」

「だからって何で帽子屋なの?」

「帽子屋さんっぽいからです」

「君の感性どうなってるわけ? 最近の若い子ってホント変な子が多いよねぇアベル〜!」

「え? じゃあ帽子屋のお兄さんはお兄さんじゃなくておじさんってことですか?」

「オレはまだ二十三!! それ以前にこんなイケメンに向かっておじさんとかどういう神経してるの!?」

 

 どこから取り出したのか、謎に手に持っていた人形を会話に巻き込んでくる自称イケメン。

 成る程そういうタイプかと青年を生温かい目で見ながらうんうん頷く。彼女は元来察しが良く物わかりの良い女の子なのである。

 

「そっかぁ……きっと、何か辛いことがあったんですね。大丈夫です! 帽子屋のお兄さんはメンタル強そうだしいつか乗り越えられる日が来ますよ!」

「勝手に人を悲惨な過去のせいでメンタルがやられた可哀想な人扱いしないで!!」

「え、違うんですか? 結構いい線いってると思ったんですけど」

「何この子ぜんっぜん可愛くない……真昼くんみたいなからかいがいがない……」

 

 アベルと呼んだ人形を抱き締めながら青年は戦慄(わなな)いていた。

 そんな彼を余所に彼女は青年と、青年が手に持つ女の子の人形を見て、そしてもう一度青年の顔へ視線を動かして。

 

「…………………………」

 

 一先ず無言で心の扉をスパンッと閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 とある少女がちょっと怪しいお兄さんに絡まれているのと同時刻。

 そこは暗い病室だった。

 明日には退院予定の主人に付き添う七番目の真祖・リリイは、夜も()けた故に健やかに眠っている御園を静かに見守っていた。

 御園の枕元にあるデジタル時計が表示している数字は23:28。明日が目前まで迫った真夜中だ。但し、陽の光の下に出られない吸血鬼にとっては絶好の活動時間でもあるが。

 ベッドの傍に置いた客人用の椅子ーーーーよくある丸椅子ではなく背もたれと肘掛けのあるちゃんとしたタイプーーーーに身を預け、リリイは先日の『お見舞い』の日のことに思いを馳せていた

 

 九番目の真祖を名乗った、あの少女。

 

 綺麗な子だった。青い瞳は宝石のように美しく冷たくて、直視するのを躊躇うほど。それでいて些細な仕草までもが洗練されていて見る者の視線を惹き付ける。有栖院家は名家であるしその子供たちも優れた教養を身に付けるが、ずっと彼等を見守ってきたリリイでさえ目を見張るレベルだ。身に付いているというより染み付いていると言った方が、きっと正しいのだろう。

 あの日、リリイはお礼を言いたかったのだ。

 それは下位吸血鬼(サブクラス)の双子から聞いた話。彼女は主人(イヴ)と共に、突然現れた椿たちと戦い双子を逃してくれたという。

 リリイにとって下位吸血鬼(サブクラス)は大事な家族だ。家族を危険から遠ざけ守ってくれたのならば感謝するのは当然のこと。

 

 しかし彼女は返答第一声に、それを拒んだ。

 

 戦ったのはあくまでも主人(イヴ)の意思であり、自身は感謝を述べられる筋合いはないと。

 それが謙遜でも何でもなくただ“事実としてそうだから”だということは、彼女の目が雄弁に物語っていた。

 そしてその時感じたのだ。リリイとあの少女の持つ価値観には、致命的なズレがあると。

 その直感は正しかった。

 軽い雑談の話題が御園のことに触れた折、彼女は唐突にそれまでの話の流れを切って、澄んだ瞳で真っ直ぐにリリイを見てこう言ったのだ。

 

『無知は罪です、お兄様』

『“知らなかったのだから”で済まされてしまうことほど、恐ろしいことはありません』

 

 それまでの言葉の中でも一等はっきりとした口調だった。怒鳴られた訳でもないのに、強く叩き付けるような衝撃をリリイに与えるほどに。

 こちらの思考を見透かすような青い瞳が脳裏から離れない。

 何も言わずともリリイの意図を汲み取り病室に残ってくれたことからも、聡明な少女であることは分かっていた。今は家を出た御園の兄を彷彿とさせる。些細なことから他人より多くの事を知る繊細さも、知った事を吹聴せずにじっと見定める賢さも。

 

 彼女には何が見えていたのだろうか、と。

 あの日からリリイは考えている。疑念の渦に溺れている。

 

 ……本当の事を言うと、あの対面の日、リリイは少し怖かったのだ。

 リリイは冷優の存在を知らずにいた。彼女がその事をどう思っているのかが分からなかった。あるいは椿のように、暗い感情を向けられているのではないか、と。

 しかしそれは杞憂に終わった。悪い意味で。

 少女は全くもってーーーーいっそ異常なほどにーーーーリリイに対して興味関心が無かった。

 決して無視などしないし一定の敬意さえ払って接してくれていることは分かったが、それだけ。プラスの感情もマイナスの感情も、一欠片も抱いていなかった。

 唯一冷優が分かりやすく感情を見せたのは、先程の言葉を口にした時だけ。

 あの言葉にだけは感情が……彼女自身の意志が込められていた。だからこそ強いものに感じたのだろう。

 そこからは交わす言葉の一つ一つが、薄氷を踏むような感覚だった。最初に抱いていたのとは全く別の不安感と緊張。何百年ぶりにできた妹のことが、リリイには分からなかった。

 

「(…………それに何故、“あの事”をーーーー?)」

 

 答える者はいない。

 夜の闇は、猜疑(さいぎ)を深めるばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 場は戻って深夜の大通り。女の子の人形を持った帽子の青年ことーーーー有栖院御国は、九番目の主人(イヴ)たる少女と相対していた。

 大通りとはいえ住宅街の途中だ。車通りなどほぼ無く、辺りは夜の静寂に満ちている。

 目の前の少女はインナーからシューズまで全て暗色で揃えたコーディネート。唯一パーカーの紐だけが白く、妙に視線を引き付ける。滲む様な警戒を宿す黒檀の瞳がじっと御国を見返していた。

 そして突然。

 ふ、と。

 先程の茶化した会話で緊張が(ほど)けたのか、その瞳が迷うように左右に揺れた。夜闇と調和する黒いパーカーの裾を片方の手がぎゅっと握り締めている。

 窺うように少女は言った。

 

「……あの、さっきは、本当に助かりました。流石にちょっと、怖かったですし」

 

 ぴんと張り詰めていた表情が、糸が緩むように柔らかく崩れる。気の抜けたような笑顔だった。

 

「どういたしまして。ところで君、真祖は一緒じゃないのかな?」

「はい、実はそうなんです。()()()()()()()使()()()()()()()置いてきちゃったんですけど。まさか襲われるとは思わなくて」

「…………」

 

 困った様な笑みを零しながらも、右手が身を庇うように左腕を掴む。

 きみは、と。“それ”を指摘しかけて御国は留まった。どのみち突き詰めていけば辿り着くことだ。

 

「……さて、話を戻そうか。オレが君を助けたのはどうしてかって話だったね」

 

 少女がこくりと頷く。その様子からして、決して鈍い(たち)ではないのだろう。御国が姿を現したことを、偶然ではなく理由があってのことだと確信を持っている。

 それならば隠す必要は無い。

 

「理由はね、君が、君たちが特別だから」

 

 特別? と首を傾げる少女へ、御国は指を三本立ててこう述べた。

 

「君たち九番目の主従は三つの点において、この戦争における最大のイレギュラーだ」

 

 ーーーー一つ、兄姉たちも知り得なかった"九番目の真祖"を有すること。

 ーーーー二つ、主人が“七人兄弟側”とも“憂鬱側”とも深く関わりを持っていること。

 ーーーー三つ、中立である筈の情報屋の庇護下にいること。

 

「本来はどれか一つだけでも充分。君たちは七人兄弟側、憂鬱側、そしてそれ以外のーーーーどの陣営に対しても切り札になり得るジョーカーなんだよ」

 

 相対する少女がゆっくりと息を呑んだ。御国の話に圧倒されるように、息を詰めて聞いている。

 そのまま、聴衆へ訴えかける演説のように軽く腕を広げて御国は続けた。

 

「勿論、核となってるのは九番目の真祖だ。その脅威性はただ“存在を知らなかった”という一点だけじゃない。元が“未完成の真祖”と云われていただけあって、その能力や性質に関する調査は殆ど進んでいない。限界距離の長さは? 固有の武器は? 幻術の能力は? 戦闘能力の高さは? これら全て、何もかも未知数だ」

「………………」

「何より“知らない”ことが脅威なんじゃない、“知ることが出来ない”ということが脅威だ。九番目の真祖が中立の情報屋の庇護下にいる今、彼女のことを更に研究する術は無いからね」

 

 だから、と。

 琥珀がひたりと黒檀を捉えた。

 

「君たちを“獲得”することは、途轍もないアドバンテージに繋がる。その勢力だけが、伏せられた手札の裏側を見られる」

「……それ、つまり、私たちは全部の勢力から狙われるってことですか……?」

「その通り」

 

 表情を曇らせる少女に、御国は(おど)けるように人形を傾ける。

 しゅるり、と少女の足元を黒い影が通り抜けたのはその時だった。きゃ、と短く高い声を上げて少女か飛び退く。

 

「あ、おいジェジェ、驚かしたら駄目だろ」

 

 するすると緩慢に地面を這って寄って来たのは黒い蛇。御国が手を伸べると器用に腕を伝って登り、首元へ落ち着いた。

 

「ゴメンね。コイツがオレの真祖、『疑わしきは罰せよ(ダウトダウト)』。動物姿は蛇なんだ」

「そ、そうなんですね」

 

 戸惑いも顕に視線を彷徨(さまよ)わせる少女に、さっきまでの真面目な声色とは打って変わって軽い調子で御国はこう締め括った。

 

「ま、そういう訳で現時点で君たちは最も価値の高い手札だ。みんなが欲しがる」

「……………………」

 

 軽さにそぐわない、脅すようなーーーー実際そういう一面もあるーーーーその言葉に、少女が僅かに身を(すく)めた。

 その隙を逃さず御国はこう持ち掛けた。

 

「だから、もし君が平穏を望むなら、オレが匿ってあげるよ」

「……!」

 

 予想外だったのか、少女が黒塗りの瞳を丸くする。

 

「こう見えてオレは色んなところに顔が利くから、君たちを匿うことは難しくないんだ。それに主人(イヴ)としてのアドバイスもしてあげられる。自分で言うのもなんだけど、結構好条件だと思うよ」

 

 どうかな? と。あくまでも提案の形で。

 少女の瞳には不安の影が揺れていた。さてどう返す、と御国は少女の返答を待つ。

 情報の切り取り方はどうあれ御国が語ったことは事実だ。九番目の主従に関しては、中立機関も憂鬱組も裏から糸を引いて取り込もうとする動きがあった。それら全てを水面下で情報屋が抑え込んでいるというのが実情だが。

 しかし如何に情報屋が不埒な手を跳ね除けようとも、当の本人が簡単に揺れるのでは意味が無い。だから御国は確かめに来た。容易に崩れそうならば自分の元へ誘い、倒れない覚悟があるのなら今はいいと、それを見極める為に。

 琥珀が見つめる先で、少女は顔を上げた。黒塗りの瞳に明確な意志の光を灯して。

 

「ーーーーごめんなさい。私は、守られたいんじゃなくて、守りたいんです。だから匿ってもらう必要はありません。誰が来ようと私は私の力で、立ち向かいます」

 

 強い光を宿す視線が御国の琥珀を真っ直ぐに射抜く。

 数秒視線を逸らさずいた後で、御国は彼女の思いを受け止めたように緩く(まなじり)を下げて言った。

 

「……うん、分かった。誰の手を取るかは君の自由だからね」

 

 今は引いても構わない時だ。元より、少し突けば崩れるほど脆いのでは『鍵』にはなり得ないのだから。

 それでももし困ったことがあったら連絡して、と店の名刺を少女へ握らせて。

 

 彼はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 帽子の青年が完全に去ったことを確認して、百合音は腰に巻いたネイビーのランニングポーチから携帯を取り出した。画面を見ず指の感覚を頼りに手慣れた仕草で電話を掛ける。

 

「ーーーーあ、もしもし風谷? えぇ、ちゃんと終わったわよ。今から帰り……え、コンビニ? エナドリなら買わないわよ。いい加減に徹夜からの寝落ちはやめなさいっての」

 

 電話の向こうで既に死にそうな声が何か言っていたが百合音はそのまま通話を切った。あの保護者の生活破綻っぷりは気を付けないといけない。

 さてと、と。携帯を仕舞って、少女は軽く伸びをして夜空を仰ぐ。

 そして心の中で呟いた。

 

「(気付かれたかしら? 途中から全部演技だったの)」

 

 幕開けは一発の銃声から。役柄のコンセプトは「臆病さを隠して気丈に振る舞う勇気のある女の子」である。

 

「(仕方ないわよね。だってあっちが先に仕組んだんだし)」

 

 てくてくとマイペースに帰路を歩み始めながら彼女は独りごちた。思い出すのは路地に隠れた時に転がった空き缶の音。

 初めは猫かなにかだと思っていたが、多分アレは嫉妬の蛇の仕業だ。わざと音を立てて百合音を追い詰めて、主人に助けさせた。であれば必然、青年が現れた瞬間から全部仕組まれていた訳だ。

 青年にとっての不運は、演技という一点においてだけは少女にも一家言あると知らなかったことである。

 

「(まぁ、あれで“簡単に他の陣営の手に落ちたりはしないけどいざとなったら強引に引き込めそうな隙はある”……くらいのイメージを持ってくれたら万々歳なんだけど)」

 

 軽薄そうな外面に似合わず随分と神経質な質に見えたので、細かいところまで色々と仕込んでみたのだが、はたしてどのくらい刷り込めたのやら。これだから表情管理の上手い人間は、と。自分の事を棚上げして彼女はそんなことを思う。

 その後ろ姿は、あまりに自然に夜闇へと溶け込んで消えていった。

 

 

 

 さて今宵の舞台、観客の目にはどう映ったか。

 欺瞞に満ちた舞台といえど、どうか目を逸らさぬように。

 覆い隠された本性を知るには、見せ掛けでもでっち上げでも、その須らくを吞み込み吟味するしかないのだから。

 

 




皆様大変お久しぶりです(土下座)。
何度も書いたり直したりしていたので正直創作から離れていた感覚はあまりないのですが、気付けば最終更新が半年以上前で戦慄している作者です。お待たせして本当に申し訳ありませんでした。

今回は(書き始めるまで気付かなかったのですが)すこぶる相性の悪い組み合わせ、鈴白百合音と有栖院御国の初対面でした。
あまりにも相性が悪すぎて、昨年末に仕上がっていた筈のプロットは書き始めた年明け早々に灰になりました。燃え残った部分はあるものの話の流れは年末と全く変わっております。まぁいつもの事ですが。
あとリリイと冷優も相性が悪かった……。これは過去に百合音が言及していた通り。作者は「いやそんなことないだろう」と思ってましたが対面させてみたらあら不思議、敵意も悪意もないのに場が凍りつく光景が出来上がっておりました。
ちなみにこの二組の相性の悪さはどちらかに問題があるという訳ではなく、単なる価値観の違いです。自分の信念に則った言動をとると相手の地雷を踏み抜いてしまうというだけ。なので基本的に仲直りとかいう概念もありません。



さて余談。
活動報告にも上げますが、6/17(土)〜6/18(日)にかけてオンラインで開催される「何でもアリアリ即売会④(主催︰らいんむぎむぎ様)」に出店側で参加する予定です。
内容はこちらの「SERVAMP ー知られざる九番目ー」の宣伝のみです。
もしイベントで見掛けられても、無断転載とかではありませんので、悪しからず。

ではまた今年中にお目に掛かれることを祈って。
次回はようやくアニメの流れに戻る予定です。待ちくたびれた彼等が出ます。
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