赤龍帝が死んだ   作:ホウラ

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ちょっと短めです。申し訳ない。

あらすじ;人々の記憶から消えてしまった親友『兵藤一誠』を追う少年、松田。中庭で出会った『木場裕斗』に誘われるままに旧校舎へとやってきた松田は、そこで自分と同じようにこの連続失踪事件を追う『オカルト研究部』のメンバーたちと出会う。松田はこれまでの経緯を話し、彼らと情報交換を行ったが、事件の全貌は未だ分からないまま。
 しかし、オカルト研究部の部長『リアス=グレモリー』には考えがあった。
 彼女の打つ事件解決への次の一手とは?
 



Chase and Chase 前編

 松田が旧校舎に招かれてから三日後、土曜日。

 休日ということもあり、駅前の広場には様々な人たちが行き交っていた。

 鮮やかな色合いの服に身を包み、楽しそうに話しながら歩く少女たち、誰かを待っているのか道の脇で携帯電話をいじる青年。

 きょろきょろと周りを見回す幼子とその手を引く母親、会話に興じながらバスを待つ老人たち。

 そんな雑踏の中で、人々の流れに逆らうようにポツンと立つ少年が一人、松田である。

「彼のことを見掛けた方は連絡をお願いします」

 はきはきとした声を出しながら、松田は手に持ったビラを通行人に差し出した。

 差し出したビラが受け取られ、松田はありがとうございますと口にする。

 通行人は小さく会釈をすると改札口へ消えていった。

「これで残り半分か……」

 ほっと溜息をつくと松田は手元にあるビラの束を見つめた。

 探していますの一言と、真ん中に載った大きな写真。

 そこには行方不明になった兵藤一誠の笑顔が写っていた。

 オカルト研究部の招かれたあの日、松田は部長であるリアスの提案によって、土曜日の早朝から駅前にて聞き込みをすることになった。

――松田くんのように覚えている人間がいたのだから、他にも彼を覚えている人がいるかもしれない――

 そんなリアスの考えに希望を託して、人の集まる駅前にて兵藤一誠の動向を知る人物を探すことにしたのである。

 ビラを配っているのは、聞き込みだけでなく喧伝(けんでん)を兼ねているからだ。

 只でさえ皆の記憶から『兵藤一誠』のことが消えているのだから、『いなくなった人間がいる』ことを周知させる必要があるのだという。

 配っているビラはオカルト研究部の部員たちの手によって作られた物で、使われている写真は松田が提供した物だ。

 幸運にも、松田の部屋に犯人の手は伸びておらず、机の上に飾られていた『いつもの三人で撮った』写真が残っていた。

 明確に一誠の存在を証明できる貴重なものである。

 彼女が打った手はこれだけではない。

 あの日、紹介された面々の他にも部員がもう一人いるらしく、その部員の手によって松田の携帯電話から消えたデータを復元しているという。

 学園のアイドルにハッカー染みた技術を持つ人材が集まるオカルト研究部とは一体何なのだろうか、何だか怖くなってきたので松田は深く考えないことにした。

 熱心にビラ配りに取り組んでいた松田だったが、しばらくして人通りが減ってきていることに気づいた。

 時間が経つほどに行き交う人々は疎らになっていき、あれほど五月蠅く聞こえていた靴音や話し声はほとんど聞こえなくなる。

 ふと腕時計に目を向ければ、針は十二時を回っていた。

 昼時だ、人通りが無くなるのも当然と言える。

「もうこんな時間か」

 そう呟くと松田は鞄を置いておいた近くのベンチに腰掛けた。

 ビラの束を鞄の中に仕舞い、代わりにお茶の入ったボトルを取り出す。

 ボトルを傾けて乾いた喉を潤すと思い出したかのように腹が鳴った。

「そういや、十三時頃に皆で集まって食べるんだっけ……」

 そんなことを言っていたなと思い出しつつ、松田はゆらゆらと揺れるボトルの中のお茶を眺めていた。

 収穫は無かった。

 朝早くから今に至るまでビラ配りと聞き込みをしていたものの、その成果は全くのゼロ。

 ビラを受け取ってくれる人は多かったものの、誰一人として『兵藤一誠』らしき人物を見たと証言する人物は現れなかった。

 まだ初日なのだと自分に言い聞かせるが、松田の胸中は暗くなるばかり。

 松田はハアとため息をつくと項垂(うなだ)れた。

「おにーさん、どうしたっすか? 元気無さそうっすね」

 俯いていた松田の視界に小さな黒い靴が映り込む。

 松田が顔を上げると、そこには一人の少女がいた。

 背丈は松田の胸ほど、中学生くらいだろうか。

 大きなリボンで纏めたツインテールと、ゴシックロリータな衣服に幼げな印象を覚える。

 まじまじと少女を観察していた松田だったが、心配そうに覗き込む少女の緑色の瞳と目が合い、我に返った。

「……ああ! 心配してくれてありがとう、俺は大丈夫さ!」

 松田は明るく笑って見せると少女もほっとしたように笑った。

 ニヒヒと声を立てる彼女の小さな口元で白い八重歯が見え隠れしていた。

「そっすか、それならよかったっす」

 少女はそう言うと松田の隣へと腰を下ろした。

 金色の髪が揺れて、ふわりと花のような匂いが香る。

 ベンチに座る少女は退屈そうに足をブラブラと遊ばせる。

「君、どうしてこんなところに?」

「これから友達と遊びに行くところっすよ。ちょっと早く来ちゃったから、待たなきゃいけないっす」

 松田が話しかけると少女は得意げに答えた。

 へえと相槌を打つと松田は腕時計を盗み見て、約束の時間に間に合うためにどのくらい猶予が必要かを逆算する。

 折角、可愛らしい女の子とお近づきなれたのだからと、松田はもうしばらく彼女と話そうと思ったのだ。

「おにーさんは、ここで何してるんすか」

「俺? 俺は……人探しってところかな」

 松田はそう言って鞄からビラを一枚取り出すと彼女に手渡す。

「俺の友達がどこかにいなくなっちゃってさ、探しているんだ」

「ああっと……。もしかして、イケないこと聞いちゃったっすか?」

「いや、そんなことないよ。こんな暗い話をした俺も良くなかったよな、ごめん」

「いえいえ、聞いたのはウチの方っすから。謝るのはウチのほうっす」

 頭を下げる少女に頭を下げる松田、双方が謝る奇妙な構図に可笑しく思ったのか、少女は笑い声を立てた。

「アハハ、それじゃあお互いさまってところで。それでいいっすよね」

「ああ、そうしよう。……ええっと」

 松田が言い淀んでいると、少女が手をポンと打つ。

「そうだった、お互いまだ名前も知らなかったっすね。おにーさんは何て名前なんっすか? ウチは『流都(ルト)』っす」

「俺は松田。よろしくな、琉都ちゃん」

「おお、初対面なのに下の名前で呼ぶなんて。おにーさん、なかなか軟派っすねぇ」

「いや、琉都ちゃんが下の名前しか教えてくれてないからだよ!?」

 松田がツッコミを入れると琉都はあざとく舌を出した。

 しばらくの間、松田が少女と談笑していると、彼女の名前を呼ぶ声を耳にする。

 松田が声のした方へ目をやれば、そこには長い黒髪の少女が立っていた。

 同い年くらいだろうか、なかなかの美人である。

 黒髪の彼女は松田に気が付くと、にっこりと笑ってお辞儀する。

 松田もまた慌てて頭を下げて挨拶を返した。

「あっ、夕麻っちだ。それじゃあ、松田おにーさん。ウチ、もう行くっす」

「おう、楽しんでおいで」

「あざっす、松田おにーさん」

 どうやら彼女の待ち人だったようで、琉都はさよならと言って黒髪の少女の方へと駆けていく。

 琉都は少女と二三言話した後、松田の方へとクルリと振り返った。

「おにーさんのお友達、ウチのほうでも探して見るっす! だから、おにーさんも頑張るっすよー!」

 琉都は大きな声でそう言うと改札口へと消えていった。

 二人の姿が見えなくなった頃、先程までの爽やかさは何処へやら、松田は目尻を下げて頬を緩ませた。

「琉都ちゃんかー、かわいかったなぁ」

 今まで可愛い女の子とこんなに長く話したことなどなかったのではないだろうか。

 一誠の失踪、元浜との仲違い、歪なクラスの風景。

 この一週間、松田はこの不可思議な異変のせいで気の休まることがなかった。

 しかし、どうだろう。

 偶然にも、松田は可愛い女の子と話すことに成功し、今までの疲れをすっかりリフレッシュすることができていた。

 もはや松田の脳裏に弱音の二文字は無い。

「くうう! あんな可愛い子とこんなに長く話したことなんて今までなかったんじゃないか!?」

 思わぬ幸運に興奮していた松田だったが、そうして過去を思い返しているうちに、ふと大事なことを思い出す。

「あっ! しまった、オカルト研究部との約束をすっかり忘れてた!」

 腕時計を見れば、約束の時間まで十分を切っている。

 松田は慌てて荷物を掴むと全速力で走り出した。

 その足取りは久方ぶりに軽いものだった。




 契約取るのにPC使っているからと、物語の裏側で部長から無茶振りを受ける少年Gくんちゃん。部内トップの稼ぎ頭な君ならいけるいける。
 
 そして新キャラ登場「流都」ちゃん。
 小悪魔後輩系ゴスロリ謎の美少女とかヒロイン確定ですね!
 女の子と仲良く話せるなんてラッキーだったな、松田!!
 


 
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