赤龍帝が死んだ   作:ホウラ

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あらすじ;駒王高校の二年生である『松田』は消えてしまった親友『兵藤一誠』の行方を追っていた。オカルト研究部の面々、『リアス=グレモリー』・『姫島朱乃』・『木場裕斗』・『塔城小猫』の力を借りつつ、松田は親友が行方不明となった真相へと迫るが、ある晩に謎の襲撃者に襲われたことを切っ掛けに衝撃の事実を知る。何と松田に助け舟をだしたオカルト研究部の皆は神話上のものとされたはずの存在『悪魔』だったのだ。もはや用済みだとばかりに彼らから戦力外通告を受けた松田は、有無を言う間もなく捜査から外されることになる。一方、オカルト研究部もとい悪魔のリアスたちはついに下手人であった堕天使たちの居所を特定し、偵察を始める。



蠢く者たちの夜

「確か、町外れにある教会だったわね」

 午後九時、駒王学園。

 門は閉ざされ、誰も居ないはずの旧校舎、その一室に明かりが灯る。

 蝋燭の妖しい光に照らされて四つの影が揺れている。

 姫島朱乃、木場裕斗、塔城小猫、そしてリアス=グレモリー。

 オカルト研究部の部室にて彼らは集っていた。

 失踪事件の犯人達を叩くべくリアスや姫島が奴らの隠れ家を探していたところ、松田の護衛をしていた木場から有力な情報を掴んだとの報告があり、急遽、彼らが活動の拠点としているオカルト研究部の部室に集まることになったのだ。

 ソファーに座るリアスが目の前の空間に手をかざす。

 すると、彼女の掌を中心に紅色の魔法陣が展開され、ゆっくりと回り始める。

 彼女が起動したのは『遠見の魔法』。

 彼女の使い魔である蝙蝠と視界を共有する魔法だ。

 

「はい、部長。そこへ神器持ちと思しき少女が『赴任して来た』と」

 

 リアスの問いかけに木場が答える。

 彼が話したのは今日の午後の出来事。松田と供に出会った少女、アーシアについてだ。

 不可解な連続失踪事件が起こる中、犯人がいると思われる候補地――悪魔が寄りつかない寺社や教会は堕天使たちの潜伏先としてよく好まれる――その一つへとやってきた神器を持つ(レアもの)少女。

 怪しいことこの上ない。

 

「教会……ここね」

 

 駒王町の空を行く使い魔はやがて目的の場所へと辿り着く。

 鬱蒼と茂る森の中に立つ教会が、使い魔の目を通して、リアスの視界に映る。

確かに教会の中に灯りは無く、松田が話していたように誰もいないように見えた。

 しかし、暗闇でも真昼のように見える悪魔(リアス)の瞳は教会を出入りする影を捉える。

 その数、十人。闇に溶けるような漆黒の神父服に身を包んだ男たちが教会の中へと何かを運び込んでいる。

 

「どうやら当たりだったみたいね。十人のはぐれエクソシストが教会を出入りしているわ。この分だと屋内にはかなりの数がいるかもしれない」

 

 リアスはそう言いつつ、使い魔を教会へと接近させる。

 教会の周囲を探っていると、ステンドグラスが割れて穴の開いた窓を見つけた。

 リアスは使い魔を窓枠に留まらせるとその穴から中の様子を伺う。

 埃をかぶり荒れ果てた礼拝堂、そこにはさらに八人の男たちがいた。

 上座に設置された主祭壇には地下へと続く隠し階段があるらしく、彼らは外からは運び込まれた荷物をその中へと降ろしているようである。

 階段の奥には明かりが灯っているものの、使い魔の位置が悪く、地下室がどうなっているかまでは見ることができなかった。

 

「どうやら、地下で何かやっているみたいね。詳しいことは行ってみないとわからなそう」

「地下……、彼らは一体何をやっているのでしょう」

 

 リアスの呟きを聞いて、彼女の側に控えていた姫島が疑問を口にする。

 

「そうね、これだけの準備をかけているのだから、何か大掛かりな儀式をしようとしているんじゃないかしら。裕斗の話では神器持ちの少女を呼び寄せたらしいわね。そうなると一番考えられるのは……」

「……神器の強奪ですわね」

「でしょうね」

 

 姫島の答えにリアスは頷くと、使い魔に帰還するように指示を出した。

 最後に労いの言葉をかけて、遠見の魔法を解除する。

 虚空に浮かんでいた魔法陣は霧散して、(ほど)けた魔力が紅色の燐光となって消えてゆく。

 リアスは手を下ろし、ふうと一つ息を吐いた。

 

「裕斗、よくこの情報を掴んできてくれたわね、お手柄よ」

「ありがとうございます」

 

 己が主に労われ、木場は恭しくお辞儀をする。

 リアスは彼に微笑むとソファーから立ち上がった。

 

「ようやく、この連続失踪事件にも終わりが見えてきたわ。これも今日まであなたたちが頑張ってきてくれたおかげよ」

 

 主《リアス》を見つめる配下たちを見渡しながら、彼女は話を続ける。

 

「この三か月間、私たちは縄張りが荒らされていく様をただ見ていることしかできなかった。このことを私は生涯忘れることはないでしょう」

 

 リアスはぎゅっと握りしめた拳を見つめる。

 彼女の脳裏にはこれまでの日々が浮かんでは消えていく。 

 

「……だけど、そんな屈辱の日々ももう終わり、遂に不届き者どもにその罪を清算させる時がやってきたのよ。決行は明日の午前零時。明日、一日を入念な準備にかけて、速攻で蹴りをつけましょう」

 

 顔を上げたリアスは凛然と断言する。

 再度、配下たちの顔を見返せば、彼らは力強く頷いた。

 

「高度な隠蔽工作を行なえるだけの力を持つ者がいる以上、一筋縄ではいかないでしょう。でも、臆することはないわ。コソコソと逃げ回るような奴等に私たちが負ける道理なんてない。私たちの縄張りに手を出したことを後悔させてやりましょう」

 

 リアスはそう言って握っていた拳を天高く掲げた。

 気を昂らせた配下たちが大声で答える。

 決意を新たにした彼らは、決戦の時に向けて動き始めた。

 

 

 

 ☆

 

  

 同刻、リアスが使い魔を通して偵察していた教会、その地下に存在する一室に声が響く。

 

「さて、そろそろ気付いたころかしら」

 

 教会の地下、上階の礼拝堂を模したその部屋に一人の少女がいた。

 手持無沙汰に己の黒髪を撫でる少女は、説教を行なうための主祭壇に平然とした顔で腰掛けている。

 神をも恐れぬその行為を咎める者はいない。

 それもそのはず、この場にいるのは神と信仰を裏切ったもののみ。

 かつて悪魔やその信奉者を駆逐すべく祓魔師たちの秘密基地として作られたこの教会は、堕天使たちと教会を追われた『はぐれ祓魔師』の根城となっていた。

 

「戻ったすよ。レイナーレお姉さま」

 

 己の名を呼ばれ、黒髪の少女は入り口の方へと振り返る。

 地上へと通じる通路の奥、薄暗い闇の奥から声の主は現れた。

 金色の髪、白い肌、黒尽くめの服に身を包んだ少女。その背には天より堕ちたことを示す一対の黒い翼が生えていた。

 

「あら、ミッテルト」

 

 己の名を呼んだ堕天使に黒髪の少女、レイナーレはニコリと微笑む。

 

「どうだったかしら、奴らの様子は」

「先ほど、使い魔がここから去っていくのをカーラワーナが確認したっす。とうとうこの場所が奴らにバレたみたいっすね」

「うーん、困ったわね。やっぱり先日の失敗が響いたのかしら」

 

 ミッテルトの報告を聞くとレイナーレは主祭壇からふわりと飛び降りた。

 コツコツと足音を立てながら階段を降りて、レイナーレはミッテルトの元へゆっくりと歩み寄る。

 

「申し訳ないっす。あのときウチが()()クサレ祓魔師を(けしか)けなければ、こんなことには……」

「いいのよ、ミッテルト。それに本当に悪いのは、()()()()()()()()彼を仕留めきれなかったアレよ」

 

 頭を下げるミッテルトにレイナーレはひらひらと手を振った。

 そのまま彼女の横を通り過ぎ、なおも話を続ける。

 

「全く……強いって噂だから呼んだのに、正直言って期待外れね。あれには相応の責任をとってもらわなきゃ」 

 

 不満げにそう語るとレイナーレは足を止めた。

 ミッテルトの背後に立った彼女はポンと手を打ち振り返る。

 

「それはさておき、あの蝙蝠どもを何とかしないといけないわね。来るとしたら、明日の晩かしら。……ねえ、ミッテルト。あなたは何かいい考えはない?」

「あっ、お姉さまったら……」

 

 レイナーレはそう尋ねながら、負ぶさる様にしてミッテルトに抱き着いた。

 ミッテルトはすました表情を作りながら――といってもその顔は上気して赤くなっている――彼女の問いに答えた。

 

「そ、そうっすね。ここは儀式を延期して、別の拠点に移動するべきじゃないっすか。別に隠蔽の魔法が破られた訳じゃないみたいだし」

「嫌よ。儀式は明日なのよ? これだけ時間がかかったのに、また一からなんてやってられないわ」

 

 レイナーレは膨れっ面を作り、抱きつく腕を強める。

 甘えるようにその身をミッテルトに預けると、彼女は猫撫で声で話し掛ける。

 

「一日だけでいいの、どうにか時間を稼ぐ方法はないかしら」

「うーん。それじゃあ、これはどうっすか?」

 

 そう言うとミッテルトはレイナーレの耳元へと口を近づけた。

 しばらくミッテルトが何かを囁くとやがてレイナーレの顔がぱっと明るくなる。

 

「流石はミッテルトね、頼りになるじゃない! ああ、そうだ! それならこういうのもどうかしら?」

 

 そう言うと今度はレイナーレがミッテルトの耳元に口を近づける。

 二三言、彼女が囁くとミッテルトは目を見開き、やがて笑みを浮かべた。

 

「わあ、流石はレイナーレお姉さまっす! それなら、不安分子の排除も出来て一石二鳥じゃないっすか! ……でも、本当にいいっすか? 何だかウチばっかり得しているみたいで、ちょっとカラワーナとドーナシークに申し訳ない気がするっす……」

「いいのいいの。ミッテルトったら、ここ最近ずっと()()()なかったでしょう? それに、こうして儀式ができるようになったのは貴方のお(かげ)だもの。だから、これは御褒美よ」

「嬉しいっす! お姉さま、ありがとう!」

 

 そういうとミッテルトは後ろへ振り返り、レイナーレに抱き着き返した。

 二人の少女が上げたクスクスと笑い声が部屋の中に反響する。

 一頻り笑い終えるとミッテルトはレイナーレから離れた。

 立ち上がった彼女はスカートを軽くつまみ、おしとやかに礼をする。

 

「それじゃあ、レイナーレお姉さま。下準備がてらさっそくフリードの奴に知らせてくるっす」

「ええ、お願いね。カラワーナとドーナシークには私から伝えておくわ」

「はい、それじゃあ行ってくるっす!」

 

 そう言うとミッテルトは出口へと駆けていった。

 反響する彼女の足音が消えた頃、一人になったレイナーレは呟く。

 

「ああ、もうすぐ。もうすぐ私も……」

 

 レイナーレは主祭壇の方へと跪き、祈るように手を組んだ。

 恍惚とした表情彼女の見つめる先、朽ちて落ちた十字架の代わりに飾られた偶像には、六枚の黒い羽が伸びていた。

 

 

 

 同刻。教会の地下施設のある一角、地下牢へと続く通路に二人の影があった。

 一人はカソックを来た大柄な祓魔師の男、もう一人は修道服に身を包んだ少女。

 靴の音を鳴らして大股で歩く男の後に続いて、俯いた少女がとぼとぼと歩いている。

 後ろの様子を伺っていた男が歩みの遅い彼女に舌打ちをすると、その手に持った鎖を引く。

 鎖がピンと張られ、鎖の先に繋がった首輪が少女の喉を締めた。

 少女はか細い悲鳴を漏らし、よろめき転ぶ。

 その拍子に少女の被っていたベールから金色の髪が零れた。

 咳き込む少女は男を見上げる。

 潤んだエメラルドの双眸に見つめられても、男は顔色一つ変えず、冷たく見下ろしながら告げた。

 

「早くしろ」

「……はい」

 

 少女は痛む喉に触れながら立ち上がる。

 首輪から伸びた鎖は擦れ合い、ジャラジャラと音を立てた。

 少女が立ちあがったのを見届けると、男は鼻を鳴らし再び歩き始めた。

 鎖を引かれ、少女――アーシア=アルジェントは男の後をついて行く。

 

――どうしてこうなってしまったのだろう――

 

 アーシアは手枷のついた両の手を見つめ、そこに宿る力を思った。

 

 アーシアは生まれて間もなく親に捨てられた。

 理由は分からない。

 ある晩、教会の前に置いていかれた小さな幼子を見つけたのだと、親代わりであったシスターから聞いていた。

 アーシアはその教会が営んでいた孤児院で育った。

 現在の彼女を形作る信仰と博愛の精神はそこで育まれたのである。

 その場所では、沢山の子供たちが身を寄せ合って暮らしていた。

 院へやってきた事情も年齢も性格も様々だったが、互いを兄弟や姉妹のように思い、固い絆で結ばれていた。

 時には諍いもあったが、アーシアにはそれさえも愛おしい思い出の一つだ。

 アーシアは家族こそいなかったが、一人ぼっちではなかった。

 そんな騒がしくも穏やかな生活が終わりを告げたのは、八歳の時のこと。

 アーシアは『力』に目覚めた。

 ある日、アーシアは自分の住む孤児院の前で怪我をした子犬を見つけた。

 足に出来たその傷は深く、痛々しい。

 寒さか痛みか子犬はぶるぶると震え、灰色の毛は滲んだ血に染まっていた。

 可哀想に思った彼女が手を伸ばしたその時、それは起きた。

 その手から緑色の光が放たれると、みるみるうちに傷がふさがっていく。

 やがて傷の跡さえも消えてしまうと、子犬はぺろぺろとアーシアの頬を舐めた。

 

 触れた者の傷を癒す奇跡、それが彼女に宿った『神器』の力だった。

 

 幸か不幸か、その様子を目にしていたものがいた。

 偶然、その様子を目にしていた教会の()()()は、すぐさまアーシアを引き取るとカトリック教会の本部へと連れて行った。

 以来、アーシアは訪れた信者に加護と称して()()を施すようになる。

 まさしく聖書に記された聖人の奇跡を体現したそれが、人の目を引かないはずもなく。

 見る見るうちに一人の少女は祭り上げられ、『聖女』と呼ばれ崇められるようになった。

 以来、彼女の周りには孤児院にいた頃よりも多くの人々が集まるようになったが、そこに彼女の友人と呼べるような者はなく。

 アーシアは沢山の人々に囲まれていながら、孤独であった。

 しかし、その寂しさを決して面に出すことなく、彼女は自身を頼ってきた人々に力を施し続けた。

 かつて院のシスターから教わった博愛の精神が、彼女の持つ生来の優しさがその立場を投げ出すことをさせなかったのだ。

 こうして聖女となったアーシアは傷ついた信徒たちを癒し続け、その立場を確固たるものに築き上げていく。

 しかし、またしても彼女の運命は流転する。

 

 ある時、アーシアは一人の悪魔に出会った。

 その悪魔は大きな傷を負っており、そう遠くないうちに死ぬことが伺える。

 シスターである彼女が所属する教会にとって悪魔とは不倶戴天の仇であり、もし出会ってしまえばどちらかが死ぬことになると言っても過言ではない。

 この場合、戦う力を持たないアーシアはすぐに逃げ出すべきなのだが、あろうことか、その悪魔に近づき治療をしたのである。

 丁度八年前、傷付いた子犬を見つけた時のように。

 結果として、傷の癒えた悪魔はアーシアに礼を言うと危害を加えることなく去っていった。

 

「聖女が悪魔を癒しただと!? 」

 後日、その出来事は司祭たちの耳に届く。

「馬鹿な、そんなことがありえるものか!」

「しかし、複数の者がその現場を見たと聞くぞ」

 

 彼らは一様に驚愕し、混乱の渦に巻かれていく。

 信仰の徒である『聖女』が敵である『悪魔』を癒したということは、まさしく『前代未聞』の事態であった。

 それは悪魔に与したという背信行為以上に、その行いがアーシアの持つ『加護』によってなされたことが問題だった。

 実は治癒の力というのは、多くはないもののそれほど珍しいものでなく、教会が知る限りでも世界中で確認されていた。

 しかし、いずれの治癒の『加護』においても、その力を及ぼせるのは人間や動物、一部の幻獣と天使のみ。神を裏切った堕天使や仇敵である悪魔に対しては効果がなく、時としては害になるというのが、教会での常識だったのである。

 数刻の議論の後、彼女の扱いは決まった。

 

「悪魔に与する魔女め!」  

 聖女として崇められた彼女は、一転して魔女と蔑まれるようになった。

 その特異性を知った司祭たちは掌を返して、彼女の力を異端のものと見なしたのだ。

 彼女の周囲からは波が引くように人がいなくなり、終には教会を追放されるまでに至る。

 とうとう、アーシアは本当に一人ぼっちになった。

 途方に暮れた彼女が辿り着いたのは、極東に存在する「はぐれ祓魔師(エクソシスト)」の組織。

 やっと安寧の地が見つかったと思えば、そこは籠の中。

 彼女の力を狙った堕天使による罠であり、こうして鎖に繋がれ闇の中を歩かされている。

 

――きっと、これも主の試練なのです――

 

 幾度も同じ問いを立てては、決まった結論へと結ぶ。

 独りになった彼女に残ったのは信仰のみ。

 最後の拠り所を失わないためにも、彼女が理不尽に怒りを抱くことも、享楽に浸り苦痛から目を反らすことも許されない。

 彼女はただ神を信じて耐え忍ぶしかない。

 

 ふと、前を歩く男の足が止まり、アーシアは顔を上げた。

 周囲に並んでいた壁は消え、太い鋼の格子で閉じられた牢屋が並んでいる。

 牢屋の奥には闇が広がっており、中の様子を伺う事は出来ない。

 男はアーシアの方へと振り返ると、手に持った鎖を引っ張った。

 

「入れ」

「きゃっ!」

 男はアーシアを牢屋の中へと突き飛ばした。

 その勢いのあまりに彼女は冷たい石畳に倒れ、小さな悲鳴を上げる。

 痛みに呻く彼女の背後で、金属の擦れる大きな音が響く。

 はっと振り返ればすでに牢の扉は閉まり、男は牢の前から去っていた。

 

「ああ……」

 

 男を呼び止めようと鉄の格子に縋りつくが、彼女の口から「待って」の一言が出ることはなかった。

 ただ諦念に満ちたため息をこぼし、力なくへたり込む。

虚ろな目でジメジメとした石畳を見つめた。

 やがて足音は扉の閉まる音と共に消え、牢は静寂に包まれた。

 




書き進めているうちにプロットを外れ、練り直していたら三か月経っていました。
気付けば、ハイスクールD×Dのアニメも最終回目前。どうしてこうなった。
ちゃっちゃと一巻を終わらせて次行かなければ。

追記;アーシアの独白を追加。すまんぬ
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