今回はツアレのお話です!
ツアレは自室の居間にあたるであろう場所でペストーニャと一緒に向かい合って座っていた。
「気分はどうですかわん」
「は、はい……だいぶ良いです」
「それは良かったですわん。他になにか私にできることはありますかわん」
「と、特にはありません。お気遣いくださりありがとうございます……」
ナザリックでは珍しくカルマ値が善に偏っているペストーニャは脆弱な生き物である人間に対しても非常に優しい。
「もうすぐアインズ様がいらっしゃるはずですねわん」
「っ!…………は……はい」
「アインズ様はこの世で最も尊く最後までこの地に残ってくださった慈悲深きお方です。だからきっと大丈夫です。心配はいりません。…………ぁ、わん」
ツアレはただ黙って頷いた。
というのも10分ほど前にユリがアインズが来ることを告げてから今のツアレを支配しているのはセバスとの間に子どもができた喜びなどではなく、子供ができたという事実さえ忘れ去ってしまうほどの圧倒的な恐怖感だった。
ツアレは以前にも何度かアインズとは顔を合わせている。
自分が玩具としてしか見なされないあの地獄のような暮らしからセバスによって解放され、再び誘拐されたときもまた救われた。
そのうえ、暖かい食事が毎日三食ついて仕事が与えられるだけでなく、まるで神話の世界に入り込んでしまったかのような豪華絢爛という言葉以外表現しようがない神々が創りしナザリック地下大墳墓でセバスと共に暮らすことまで許された。
まさに夢のような生活で、ツアレはこれらを与えてくれたアインズには感謝してもしきれないほどの恩義を感じている。
しかし、それでも死の権化の如きアインズの姿を見ると
「あ、今日私はここで死ぬんだ。」
と死を覚悟してしまうほど、ただの人間のツアレにとってのアインズはただの化け物以外何者でもなかった。
(今日こそきっと私はアインズ様に殺されるんだわ……私だけならともかく、もしセバス様の身にも何かあったら私はどうすればいいの?……私は……わたしは…………セバス様……)
ツアレは必死に涙をこらえる。
怖い、ただそれだけだった。
そして、部屋がノックされる。
「アインズ様がお見えになりました」
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アインズはアルベドと数体の
「お会いになりたいのであれば、下等な人間如き、お呼びになればよろしいのでは? わざわざアインズ様御自ら足をお運びになる必要はないかと……」
「そうか、そう思うか。……ふむ、アルベドよ。」
「はい、アインズ様」
「前にも言ったと思うが……私は、仲間たちが残したお前達皆を自分の子どものように思っている」
「ア、アインズ様……創造されただけの存在である私たちを子どものようだなんて……」
「うむ。ということは、だ。今回本当にツアレがセバスの子どもを身篭ったなら、その子は私にとって孫にあたるといっても過言ではない。ならば私が足を運ぶことは当然のことではないか」
「っ! なんと慈悲深い……」
「そういうことだ。……そうは言っても気になることは山のようにあるのだが……まぁ続きはツアレの部屋で、だな」
アインズがそのように話しているとツアレの部屋が見えてきた。扉の近くにはユリとエントマが待機している。
2人はアインズの姿を確認すると臣下の礼のポーズをとった。
「アインズ様、お待ちしておりました」
「うむ、入室しても良いか聞いてくれ」
「かしこまりました」
ユリはドアをノックしアインズが来たことを伝えると、中からペストーニャの声が聞こえる。
「アインズ様がお見えになりました」
「どうぞお入りくださいわん」
アインズが部屋に入るとそこにはツアレとペストーニャが跪いていた。
「メイド長、ペストーニャ・
「ツ、ツアレニーニャ・ベイロン、御身の前に」
「うむ。立つが良い、2人とも。ペストーニャよ、苦労をかけたな、感謝するぞ」
「感謝なぞもったいないですわん! 我々はアインズ様に奉仕する忠実なメイド、御身のためと思えば苦労などありませんわん!」
「う、うむ。そうか…今後も忠勤に励むが良い」
「かしこまりましたわん! それでは詳しいツアレの状況の説明を──」
「いや、それはセバスが来てからで良いだろう。やつもここに向かわせている。その時に詳細を教えてくれ」
ツアレはこの時、セバスが来てくれるという安心感と、セバスが来てしまうという不安感に同時に襲われていた。
「……そうだ、ツアレよ。セバスが来る前にお前に一つ聞いておきたいことがあるのだった」
「っ!」
完全に固まってしまった。返事をしないことが無礼であたることは重々承知なのに、喉に張り付き声が全くでない。アインズの後に控えているアルベドからの殺気がそれに拍車をかける。
「大丈夫だ、ツアレ。私はなにも怒ってはないのだ。ただ今から聞く一つの質問に正直に答えて欲しい、嘘偽りなくだ」
「は……はぃ……」
アインズが口調を穏やかにしたことで、なんとか振り絞るように返事ができたツアレは質問を待つ。
「よろしい。では答えてくれ。お前はセバスを愛しているか?」
「…………」
ツアレは一瞬何を聞かれているか分からなかった。それを見てとったのかアインズはもう一度優しい口調で問う。
「お前、ツアレニーニャ・ベイロンはナザリック地下大墳墓の
「わ、私は……!」
質問の内容を理解したツアレは答えるのを逡巡する。もしかしたらこれは試されているのかもしれない。自分の愚かな発言がセバスの、もちろん自分の人生も左右してしまうかもしれないのだ。
人生で一番頭をフル回転させベストなアンサーを考え導き出そうとしたツアレだったが、やはり答えはひとつしかなく、アインズにも自分の感情にも嘘をつけない。
「私はセバス様を愛しております。」
しんと静まりかえった部屋に響いた「私もアインズ様を深く愛しております。」といった小さな第一声をアインズは努めて無視し、ツアレに朗らかな口調で言った。
「そうか、そうか…ははは、それは良かった………感謝するぞ、ツアレ」
「っ!?」
なぜか絶対者に突然感謝されたツアレが目を白黒させていると、再びドアがノックされる。
「アインズ様、セバス様がお越しになられました」
次回も恋にドロップドロップ♪
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