ツア子「あー♪アー♪アッー♪アアア⤴赤ちゃんができちゃった!」
セバ美「ベビベビベイビベイビベイビベイビベイベ」
以前王都で行われた一大作戦ゲヘナでは大量の王国民がナザリックに誘拐された。彼らの誘拐は老若男女問わず行われ、ナザリック地下大墳墓第五階層に送り込まれた瞬間、主の命により苦しみなく殺されていく。
この殺戮行為の対象にはもちろん赤子も含まれていることを知ったペストーニャとニグレドはアインズの「連れていった王国民は“全て”殺せ」という命令を無視し、赤子を保護した。
これを聞いた守護者統括アルベドは激憤しアインズに2人を処罰するよう言ったが、かつてのギルドメンバーにそうあれと創造された2人を処罰する気などさらさらなかったアインズはとりあえず無期限の謹慎処分ということにした。
しかし、ただの謹慎処分ではアルベドが全く納得しなかったので、罰という名目でアインズは、2人は謹慎中
ペストーニャの話はこうだった。
この日もペストーニャはツアレにメイドとしての立ち振る舞いや心構えを先生が授業をするように説いていた。ちょうど話が一段落したところでツアレの様子に異変が起きる。体調が優れないのか明らかに顔色が悪い。
ペストーニャは心配に思い声をかけると、突然ツアレは席を立ち上がり部屋についているバスルームへダッシュした。
そして、
「……っ! うぐっ、ゴホッゴホッ、ゴホッ」
ツアレはトイレで吐いていた。
これは何らかの病気であると判断したペストーニャは素早く高位の治癒魔法をツアレにかける。しかし、ツアレの様子は一向に変わらない。高レベルの神官である自分に治療できない病があるのか、とペストーニャが驚いているとツアレは
「最近、よく……吐き気がするんです……」
と言った。これを聞いたペストーニャは「まさか」と思い色々聞くとツアレは、今まで好物だった食べ物が急に受け付けなくなったとか、すぐに眠たくなるとか、諸々の症状を語った。
これらの症状に加えて治癒魔法が効かないという観点からツアレは妊娠しているとペストーニャは判断した、ということだった。
「──これが一つ目の根拠ですわん」
「ふむ、なるほどな、その吐き気を
「仰る通りですわん」
「…しかしですよ? ペストーニャ。それなら想像妊娠という可能性もあるんじゃないかしら? 思い込みというものは強く身体に影響を及ぼすものよ」
「うむ、アルベドの言う通りだ。その辺も説明できるのか? ペストーニャ」
「はい、それは二つ目の根拠である“基礎体温の上昇”で説明できます…………わん」
今言い忘れたな、とアインズは思いながらペストーニャの説明を聞く。
ツアレが正式にナザリック地下大墳墓で働くことになった時、劣等種族である人間がナザリックで生活することは身体にどのような影響を及ぼすのか調べるべきとデミウルゴスがアインズに進言したことで、ツアレは1日の朝昼晩の三回身体検査を受けることになった。
身体検査といっても心拍数、血圧、呼吸数、体温などの軽いもので、現在ニグレドの保護下にある赤子たちもこの検査と同様のものを受けている。その記録をチェックしてみたところ数週間ほど前からずっと基礎体温の高温期が続いていることを確認できた。
「──一般的な想像妊娠では
(さっぱり何言ってるのか分からないよ、ペストーニャ……)
鈴木悟の脳みそのスペックでは理解しきれなかったため、アインズはこの説明に対するリアクションを己の隣に控えている“できる”人物に丸投げする。
「……ふむ、なるほどな。アルベドはどう思う?」
「アインズ様、恐れながら私は生命の発生についての知識はあまりありません。……ですが、私の準備はいつでもできております!」
「……お、おう、そうか。」
(そういうことではないんだけどなぁ……)
鼻息荒く顔を真っ赤にし漆黒の翼をパタパタと羽ばたかせてアインズに近寄る守護者統括殿を、ペストーニャとツアレは困ったような顔で見守り、セバスは処置なしと手で顔を覆う。このままではいかんとアインズは思い急いで話を戻す。
「う、うむ、その話はまた今度なアルベド。で最後の、三つ目の根拠はなんだ?」
「ぁ、はい、三つ目の根拠こそこの度のツアレの妊娠を決定づけた、〈
「なに? 〈
無詠唱で魔法を発動させたアインズは、ツアレのところから生命体の反応を“二人分”確認する。本来ならば、アンデッド以外の建物内の敵の位置や数を調べる場合などに使われる探知系の魔法だが、こちらの世界では本当に“生命の反応を感知”する効果として発動する。
(なるほどなぁ……これが魔法のフレーバーテキストにある「あらゆる生命体の反応を認識する」なのか……へぇ、ユグドラシルにはなかったなぁ)
そんなことをアインズが考えていると、モジモジしているツアレのことが気になったのかセバスがアインズに問いかける。
「アインズ様、よろしければどのように見えているか私めにも教えていただけませんでしょうか?」
「うむ、構わんぞセバス。本来ならば生命反応というものは一個体に一つだ。しかし今のツアレからは二つ分の生命反応が確認できる。つまりお腹の中にいる子どもの分まで感知しているのだろう」
人体の構造については全くわからないアインズも、ユグドラシルの魔法のことならかなり自信がある。答え合わせのためにペストーニャの方を見ると彼女は歯をむき出しにし──おそらく笑顔で──頷いた。
「アインズ様、仰る通りでございますわん。以上の三つの根拠に基づき、ツアレニーニャは妊娠していると診断させていただきましたわん。これにて説明を終了させていただきますわん」
そう言ってペストーニャはお辞儀をしながら後に下がった。
「うむ、納得した。ペストーニャよ、理路整然としてわかりやすい説明だった。褒めてつかわす」
「おお…もったいなきお言葉でございますわん、アインズ様」
アインズはうむうむと鷹揚に頷きながら内心「二つ目の説明はよくわからないんだけどな」とか考えていた。
「……ふむ、これでツアレがセバスの子どもを身篭ったことは確定だな。ツアレとその子の身の保護のことも考え、このことをナザリックに公表しようと思うがアルベド、どう思う?」
「恐れながらアインズ様、いきなりナザリック地下大墳墓全域に発表するとなると混乱が起きかねません。ですのでまずは階層守護者にのみ公表してはいかがでしょう?」
「ふむ、その言もっともだな。よし、では今から数時間後……遠方で仕事をしているデミウルゴスが帰還する時間も考慮して、今から3時間後に玉座の間に第四、第八を除く全階層守護者を集合させよ」
「はっ、かしこまりました。すぐに連絡いたします」
「頼んだぞ、アルベド……それでは3時間後にセバスも玉座の間に来るように……あ、ツアレはここにいるといい。後ほど料理長に直接私が命じて元気な子どもが生まれるように精のつく料理を作らせ持ってこさせよう」
「っ! そこまでアインズ様のお気をつかわせるわけにはいきません!」
「セバスよ、何度も言わせるな。ツアレが孕むその子は私の、いや私たち至高の41人の孫にあたる存在だ。元気に生まれてきて欲しい」
「ア、アインズ様……」
「そういうことだ。ふむ、アルベドよ、連絡は終わったか?」
「はい、完了いたしました。第四、第八を除く全階層守護者、3時間後に玉座の間にて集合します」
「よろしい。ではセバス、3時間後にな。ペストーニャはもう部屋に戻るがいい」
「しかし、アインズ様……!」
「命令だ。そもそもお前は謹慎処分中ではないか、今日は疲れたろう、部屋でゆっくり休むと良い」
「かしこまりました、わん……」
ペストーニャの耳はみるみる下がっていく。「休む」という行為は、社畜根性のかたまりのようなナザリックに属するものにとって一番理解できない行為だ。
「……それに2人っきりで話したいこともあるだろうしな。私も部屋に戻らせてもらおう、ではまた後でな」
そう言ってアインズはツアレとセバスの部屋をあとにし、それに続くようにアルベドとペストーニャが退出、最後に扉近くで待機していたユリとエントマが扉を閉めながら退出した。
セバスとツアレしかいないその空間は、なんとも言えない雰囲気で満たされていた。
次話は、階層守護者がみんな集まるよ!
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