セバスとツアレのナザリック子育て奮闘記   作:デンベ

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大体2500字くらいにまとめたいのですが、今回は登場人物が多く過去最長になってしまいました…

…守護者たちの会話が好きすぎて、もう

それではふんわりとお楽しみください。






第7話 君はどう考えているんだね?

「セバスとツアレに子ども……でありんすか……」

 

ナザリック地下大墳墓第十階層ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)、普段は誰もいないはずのその部屋には5人の超常の力を持つ者達の姿があった。特に転移後の世界においてはどんな存在にも比肩を許さない強者である彼らの表情はまさに驚愕としか言い表せないものだった。

当然その驚愕の事実を述べた張本人たるマーレを除いてだが…

 

「私も信じ難いよ、もちろんセバスとあの人間との関係は時間の問題だと思ってはいたが……」

 

そして悪魔のその無機質な瞳の輝きは驚愕とはまた別の、異質なものに変わる。

 

「まさか本当に子どもを作ってしまうとはね……」

 

デミウルゴスは面白くてしょうがないと言わんばかりにくつくつと嗤う。

 

「交配実験に関しては今まで望み薄の異形種とニンゲンの交配実験より、まだ可能性のある亜人種との実験だけをしていたが…いや、これでようやく私の牧場も本格的に異形種と人間種の交配実験を行うことができるよ……セバスには本当に感謝だ」

 

「何ガ、ソンナニオモシロインダ?」

「くくく、何ってそれは友よ、決まっ──」

 

楽しくて仕方ないといったデミウルゴスの雰囲気はその声の発生源を確認すると瞬時に霧散する。その声の主はガチガチと屈強な顎から警告音を出し、凍てつくような殺気を放っていた。

 

「──なるほど、そういうことですか。コキュートス」

 

デミウルゴスは納得すると急に様子を落ち着かせ、普段通りの冷静な彼に戻ったが気のせいかその雰囲気からは少し“怒り”を感じる。コキュートスとデミウルゴスの不思議なやりとりを黙って見守っていた3人は素直に疑問を投げかける。

 

「どうしたの? 急に2人とも」

「そうでありんす。なんだか怖いでありんすよ」

「ど、どうしたんですか? デミウルゴスさん」

 

3人の疑問の表情を一つ一つ確認すると、悪魔は肩を上品にすくめ、説明をはじめた。

 

「……ふむ、コキュートスはこう考えているのだよ。我々は至高の御方々によって創造された身である、それ以上でもそれ以下でもない、とね」

「……なるほど、そういうことでありんすか……」

 

そう言うとシャルティアの瞳が硬質なものに変わる。しかしそれは一瞬でその後はどこか同情のような哀れみのようなものになった。

 

「えっ! シャルティアにわかるの?」

「っ! 私を何だと思っているでありんすか……」

 

「うーん、僕、よくわからないです……」

「あたしも! もっとわかりやすく説明してよ、デミウルゴス」

 

デミウルゴスはそんな同僚の願いを受け、眼鏡をクイっと上げると柔らかい口調でもう一度説明する。外の世界の者達をとことん見下しているデミウルゴスだが、同じナザリックに属するものに対しては非常に驚くほど優しい。

 

「いいかい? 我々ナザリックに属するものは創造されただけにすぎない。生命あるものがナザリックで存在できるのは至高の41人に許されたからだ。では勝手に私たちがナザリックに無断で他の生命を持ち込むことは──」

「不敬ダ」

 

「つまり創造されただけの存在である我々が勝手に生命を、子どもを作ることも──」

「不敬でありんす」

 

「そういうことだよ」

 

その説明を聞いた闇妖精(ダークエルフ)の子ども2人は納得したのか、セバスに対しての不満の表情を浮かべる。

 

「ところでマーレ、セバスは君と交代する時、子どものことで他に何か言ってなかったかね?」

「え、えっと、特には、何も言ってなかったと思います、」

 

「ふむ、そうか……」

「あ! でも、セバスさんに何があったのか聞いたとき、小声で何かボソボソと言ってました」

 

「ホウ、セバスハ何ト言ッテイタンダ?」

「なんか……コウノトリさんが……なんとか」

 

「なんのことでありんすか?」

「コウノトリ?……それって鳥だよね?」

 

「そ、それが僕もよくわからなくて……」

「何カノ比喩カ……ム、デミウルゴスハ心当タリガアルノカ」

 

吸血鬼(ヴァンパイア)闇妖精(ダークエルフ)蟲王(ヴァーミンロード)が銘々疑問の声をあげている中、背の高い最上位悪魔(アーチデヴィル)だけ指で目頭を押さえ首を振って小声で何か言っている。

「……全く……彼のジョークのセンスはコキュートス並に壊滅的だ…………おそらくマーレに聞かれたからだろうが……」

 

「何カ言ッタカデミウルゴス?」

「ん? ……いや、何でもないよコキュートス……まぁ彼なりの説明だろう。このことはもう忘れておこう」

 

コキュートスも他の三人も分かっていることがあるなら説明して欲しかったが、デミウルゴスはピラピラと手を振り全く説明する気が無さそうなので納得はしてないが諦める。

そのやり取りのせいか、なんだか変な空気になってしまったので五人全員黙っているとコツコツと足音が聞こえてくる。

一斉にその音の発生源に目を向けるとそこには今日の主役であり、今回の騒動の原因であり、この変な空気を作った話題の張本人の姿があった。

 

「皆様、お待たせして申し訳ございません」

 

執事はその場で深々と頭を下げ謝罪する。

 

□□□□□□□

 

「ではツアレ、私は行きますがメイドを一人外に待機させておきます。何かあったら彼女を頼ってください」

「ありがとうございます。では、いってらっしゃいませセバス様」

 

セバスはにっこりツアレに微笑むと部屋を出る。

一般メイドや戦闘メイドの上司であるセバスはアインズの許しを得てから人員配置を少し調整し、メイドを一人自室の外に待機させておくことにした。彼女はナザリック外の者でありその上自分たちと同じメイドとして入ってきたツアレに一瞬でも仕えることをかなり拒絶していたが、上司であるセバスには逆らえないため渋々この役を受けた。

 

(フィースには悪いですが、なんと言っても心配ですから……後でアインズ様に直々に労って貰えるようお願いしてみましょう)

 

アインズと直に話し、今回の懐妊騒動に関してはお咎め無しどころか直接「よくやった」とまで誉められたセバスの足取りはまるで風船のように軽い。

セバスがソロモンの小さな鍵(レメゲトン)に着くとそこには既に自分以外の召集を受けた同僚全員が揃っていた。一番レメゲトンから距離的に近いはずの自分が遅く来てしまったことをセバスは五人に詫びる。

 

「皆様、お待たせして申し訳ございません」

「「「「「……」」」」」

 

「何かございましたか?」

「ふむ、セバス、一応聞いておくよ。君が下等生物(ニンゲン)ツアレニーニャとの間に子をもうけたことは本当かい?」

 

「ええ、間違いありませんデミウルゴス様」

 

そう答えた瞬間、セバスの背中に冷たいものが流れる。ゾクリと背筋を震わせ五人を確認すると──シャルティアからはそこまで感じないが──そこには隠しきれないほどの殺意が渦巻いていた。あの気弱そうなマーレでさえ、瞳の奥には異常に硬質な輝きがあった。

 

「…その敬称は必要ないよセバス。それで、君はどう考えているんだね? 今回のことを」

 

セバスは殺気の原因を理解した。守護者たちは自分がまたもや失態を犯したと思っているのだ。以前王都でツアレニーニャを拾ったことの報告を怠ったがため自分が反旗を翻しているという誤解を生んでしまったあの件と連続してまたツアレニーニャ関連で失態を犯したと。

確かに今回の件を聞いてセバスは冷徹に自分の子どもを産まれる前に殺すことまで考えた。それほど彼らにとってこの懐妊騒動は事件なのだ。

他の守護者たちが自分に対して苛立ちを感じることも無理はない、しかしデミウルゴスに言われるとなんとなく腹がたってしまうため、アインズの許しを得たセバスは前回とはうって変わって強気に答える。

 

「ではお言葉に甘えて……デミウルゴス、おそらく問題ないと私は考えています」

「ほう、なぜだね? 答えによっては──」

 

「アインズ様にお許しを貰ったからです」

 

この言葉の直後さっきまでの殺気が嘘みたいに消えていく。そして皆は驚きの表情をする。

 

「え! アインズ様とお話したの!?」

「ええ、お話しました……それにお褒めいただきました」

「ほ、褒めてもらったですって!? もっと詳しく説明してくんなまし! セバス!」

 

先程まで自分と同じく失態を犯したセバスに対し同情心さえ感じていたシャルティアの心にはもうすでに同情心や哀れみなどという感情はなく、嫉妬に近いものに変わっていた。

対してセバスの表情はあまり変わらず感情を隠しているが、デミウルゴスはそれが小さなドヤ顔であることを看破する。

セバスは一つ咳払いすると、

 

「お前達を誇りに思う、と。そのうえ、アインズ様には私とツアレの子どもを、孫、とまでおっしゃっていただけました」

 

もう既に五人の顔からは完全に殺気は抜けきっており、あるのはアインズ様に褒めてもらい、しかも自分の子どもを孫と認めてもらえる名誉にあずかったセバスに対しての、羨ましいという感情だけであった。

 

「ムゥ、孫カ……」

「ま、ま、孫……ですか……」

「ふむ、本当にそうアインズ様がおっしゃっていたのかね?」

 

デミウルゴスはまだ信じていないらしいがセバスはデミウルゴスのその嫉妬の表情に微笑みで返す。

 

「ええ、もちろんです。後でアインズ様に確認してもらっても構いません」

 

「なんか……今日のセバス強気じゃない?」

「そんなことはありません。いつも通りです」

 

あまり孫という言葉に子どもは実感がわかないのかアウラはセバスの態度にツッコミを入れ、マーレは子どもが産まれたら何で一緒に遊ぼうか考えている。

 

「セバスさんの子どもかぁ……産まれたら僕絵本とか読んであげたいです!」

「ではその時はよろしくお願いします」

 

「……ム?コレハモシヤ、好機デハナイカ?…………セバス!」

「どうかしましたか?コキュートス」

 

「子ガ産マレタラ、コノ私ヲ剣ノ指南役二推薦シテホシイ」

「な、なぜですか?」

 

マーレのお願いは可愛いが、さすがにこのコキュートスの願いにはセバスも戸惑う。

 

「イズレアインズ様ノオ世継ギガ産マレタトキ、先ニヤッテオクノトオカナイノトデハ、全ク違ウカラナ…………アァ、コノ爺ガオ教エシマスゾ……」

 

これまで見たことがない同僚の妄想トリップにセバスが若干ひいていると隣から冷静な声が聞こえる。

 

「大丈夫だよ、セバス。いつものことだ」

 

いつもこれなのか、とセバスは再び驚くと今度は叫ぶような吸血鬼(ヴァンパイア)の少女の声がレメゲトンに響く。

 

「ああああああ! もう! と、と、とりあえずそろそろ時間でありんす。中でアインズ様をお待ちしんしょう! そこで今の話が本当かどうか、聞くでありんす!」

 

シャルティアはなぜか鼻息荒く何を思っているのか足で床を何度も踏みつけている。

デミウルゴスもさっきまでの自分を恥じるように身だしなみを整えて言う。

 

「そうだね、シャルティアの言う通りだ。そろそろ拝謁の際の打ち合わせをしよう……コキュートス、続きは後にしたまえ」

「……ッ!スマナイ、デミウルゴス、モウ大丈夫ダ。トテモ良イ光景ダッタ」

 

アインズのお世継ぎだけでなくセバスの子に加え、おそらく遠い未来存在しているであろう自分たち守護者の子どもたち全員に、自分が剣の稽古をつけているところまでトリップしたコキュートスは、体内の熱を外に出すかのように息を吐き現実世界へ戻ってくる。

 

「構わないよ、コキュートス。では皆さんくれぐれも聞き逃すことのないように…まずアインズ様から見て──」

 

□□□□□□□

 

玉座の間で守護者たちは片膝をつき頭を垂れ、絶対的主人を待つ。

そして重々しい音とともに扉が開かれる。

 

「ナザリック地下大墳墓最高支配者アインズ・ウール・ゴウン様、および守護者統括アルベド様のご入室です」

 

 

 

 




デミウルゴスを活躍させたい…!
次回は恒例のアインズ様腹痛タイムです!

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