東方幻操卿   作:さんにい

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表現上の都合により、実質的な第一話っぽいものは三話目になります。ご了承ください。


‐序曲‐

 それは、むかしむかしの、そのまたずっと昔のおはなし。

 

 あるところに、三人の“はみ出し者”がいました。

 

 存在のせいで疎まれた妖怪と、

 力のせいで距離を置かれた天狗と、

 能力のせいで忌まれた人間と。

 

 そんな三人は、偶然か、はたまた必然か、多くの時間をいっしょにすごすようになっていました。

 

 そんな三人の中心では、いつも一体の妖精が笑っていました────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****************

 

 

 

 これは、ほんの少しだけ前の話。

 

 その少女は、特別に強い腕力や、霊力を持っていたわけではない。

 むしろ、他の大勢の、普通の人々と何ら違いはなかった。

 

 ただ、

 努力の結果の、身軽な身体と。

 生まれ持った、ほんのちょっとした“偶然”と。

 それに伴った、多大な“必然”と。

 

 ただ、それだけであった。

 それは彼女でなくとも、手に入れ得るものであろう。

 

 

 ……思えばこの時点で、あの帰結はさらなる“必然”であったのかも、しれない。

 

 すまない、話が逸れた。

 つまり、その少女が何か特別であったわけではなかった、ということだ。

 

 これは、そんな普通の少女の話。

 

 

 

 

 

 しかし彼女は、“普通”であると同時に“異端”でもあった。

 まあそうでなければ、幻想郷の、過去と未来を繋ぐなど、出来やしないだろう。

 

 少女は、幻想の現在(いま)を駆け抜ける。

 

「ロードローラーだあっっっ!!!」

 

 時に猛り。

 

「頑張って下さい! 知ってますか、諦めたらそこでっ!」

「……ああ、試合終了、だなぁっ!!!」

 

 時に励まし。

 

「『どうして……? その理由は、たったひとつさ。そう、たったひとつの単純(シンプル)な答え────

《テメーは私を怒らせた》っ!』」

 

 時に、怒り。

 

 少女は、駆け抜ける。

 幻想郷の現在(いま)を、拡散しながら──

 

 

 

 ──ん? 台詞が、それ大丈夫なのか、だって?

 …………まあ、本人がいいと言っているんだから、大丈夫じゃないか?

 

 

 ともかく。

 

 走り、飛ぶ少女の姿は、閉ざされた世界の人間にとって新たなる光で。

 対等に弾幕(あそ)ぶ少女の姿は、我ら忘れられた妖怪にとって新たなる風で。

 

 これは、そんな異端な外界の民の話。

 

 

 

 

 

 そしてまた彼女は、

 

 人間と妖怪とを調停する、博麗の巫女や、

 集団社会をまとめあげる、天狗の長や、

 幻想郷を管理する、境界の賢者のように、

 

 その存在が幻想郷にとって絶対に不可欠であるか、と問われれば、それは無いと答えられる。少なくとも私は。

 

 

 しかし、

 

「家族を救いたい、なんて言葉、私が拒否できるはずがないじゃないですか」

 

「悩みがあっても、『生きていればラッキー』、です!」

 

「生の瞬間でも、死という閉幕でも“暗”から逃れられないのなら、命を燃やしている今、ここに、光明を見出だすしかないんじゃないですか?」

 

「ここは、常識が非常識に、非常識が常識に成り代わる所。この幻想郷で外の常識に囚われていたら、いつまでも前に進めないですよ」

 

「待ってください。出会いをかけがえのないものだと思っているのは、あなただけではないんですよ?」

 

「伝えたいことがあるのなら、思った瞬間に言うのが吉です。

 ……どっかの誰かみたいに、突然目の前で大切な人の灯火が消えていくことだって、あるんですから」

 

 

 彼女が居たからこそ、この幻想郷が形作られたのもまた事実であろう。

 

 

 これは、そんな新たな世界を築いた一人の人間の話。

 

 

 

 

 

 その、少女の名は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東方幻操卿 ~Green Heart Phantasm.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『翡翠の中の幻想』

古卿(ふるきみ) 詩音(しおん)

 

 

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