Opening
幻想郷は、予想以上に騒がしい日々をおくっていた。
謎の来訪者に、夏の亡霊も戸惑ってるかの様に見えた。
そんな全てが普通な夏。
辺境は紅色の幻想に包まれた。
勘の鋭い少女は、直感を頼りに湖の方向へ出発した。
普通の少女は、何かめぼしい物が無いか探しに行くかのように出発した。
むしろ探しに行ったのだった。
湖は、一面妖霧に包まれていた。
普通の人間は30分はもつ程度の妖気だったが、普通じゃない人もやはり30分程度はもつようだった。
妖霧の中心地は、昼は常にぼんやり明るく、夜は月明かりでぼんやり明るかった。
霧の中から見る満月はぼやけて数倍ににも膨れて見えるのだった。
もしこの霧が人間の仕業だとすると、ベラドンナの花でもかじった人間であることは容易に想像できる。
中心地には島があり、そこには人気を嫌った、とてもじゃないけど人間の住めないようなところに、窓の少ない洋館が存在した。
昼も夜も無い館に、『彼女』は、いた。
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「ん────……ん?」
少女は、目覚めを自覚する。
そしてすぐに異変に気がついた。
「ここは…………どこでしょうか」
人間は、目が覚めたときに知らない場所にいると、ひどく戸惑うとか。
さすがの彼女も、そこは変わらないらしい。黒い瞳に、動揺の色が広がる。
同時に、翡翠の瞳には好奇の心が発現していた。
そして、黒と翡翠の少女は、更なる異変に気づく。
「…………これは、霧?」
彼女の周囲には、どこまでも続いていそうな、深い、
その、八百万の木々の合間を縫うように広がるのは、
目を覚ました少女の翡翠は、その中で30分以上いたとしても平気なことを告げていた。
しかし彼女は、蔓延する紅色の幻想にも怯まない。
外来人の少女は、着物の袖を緩やかに振りながら、惹かれるがままに歩みを進め始めた。
妖怪のような、傍若無人さを纏って。
妖精のように、興味津々とした様子で。
そこが、彼女が彼女たる所以なのだろうか。
そして少女は、風に乗ってやって来た幕開けを認知する。
「あら? 夜しか活動しない人も見たことある気がするわ」
「それは取って食べたりしてもいいのよ」
「そーなのかー」
次には、紅い森の中に、光と御札の花火が打ち上がっていた。
幻想の空に輝く、小さな幻想。
行く宛を意識していなかった少女は、その華やかさに釣られ、音と光の幻想へと引き付けられていった。
普通の少女にとって、全てが普通でない夏が、こうして始まったのだった。
東方紅魔郷 ~the Embodiment of Scarlet Devil.
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