☢Caution!!☢Caution!!☢
この文章には、以下の成分が含まれます。
・キャラ紹介
・のくせにちゃんと紹介できていない
・無駄に長い
・地の文なし
・茶番
・メタ発言
・ネタ発言
・キャラクター崩壊
・自由がフリーダムでマッハ
・藍さま弄りやすそうはフラグ
これらが苦手な方は、今すぐブラウザバックすることを推奨いたします。
尚、この話を読まなくても、本編を読む際にはあまり支障はありません。
ゼロとは言ってない。
──深遠なる幻想の、さらに奥深く。紫色で、多くの目玉が覗く空間。
そこには、暗闇など存在しない。暗闇はなく、ただ────
「暗闇は無く、ただ無知が在るのみ──よ」
「……いきなり何の独り言ですか?」
「というわけで、素敵な素敵な三次元の皆様ごきげんよう。私はみんなのアイドル八雲紫、十七歳の少女ですわ」
「何がという訳で、ですか。と言うか十七歳って、年齢詐称もいいとこじゃ──
「ほら貴女も早く自己紹介しなさいな」
「……ですから、これは一体何なんですか?」
「何って、ほら、あれよ。原作にもおまけテキストがあるじゃない」
「原作……?」
「それにインスパイアされて、誰かさんの足りない描写力を補おう、ってことになったのよ。どぅーゆーあんだーすたんど?」
「……成る程、よくわかりませんがわかりました。つまり、いつものよくわからない胡散臭いこと、ってことですよね」
「まあ大体合ってるわ」
「それならばこの私、貴方様の式として付き従うまでです」
「相変わらずお堅いこと。じゃ、貴女も自己紹介済ませなさい」
「……私がこの、紫様と二人きりの空間で自己紹介をすることに、何の意味があるのでしょうか……?」
「大人しくやったら、今日のお夕飯は油揚げ、たくさん使っていいわ──
「妖怪の賢者でおられる紫様の式、八雲藍です。以後、お見知りおきを」
「……我が式ながら、大丈夫なのかしら……?」
「それで、私は何をすれば?」
「何って……何でもいいわよ? トランプでもする?」
「トランプて……。いんすぱいあがどう、というのはいいんですか?」
「あら、不服かしら。じゃあ負けた方が罰ゲームで、脱衣するってことで」
ガタッ
「!? ゆ、紫様、今何か聞こえましたよ!?」
「気にすることはないわ、きっと大きいお友達よ。それに、乙女がそう簡単に肌を見せるわけがないでしょう?」
「乙女…………?」
「……あら。何か言いたいことがありそうな目ね?」
「い、いいえまさかぁ!?」
「ふーん……。ちなみに、ホンネとタテマエの境界を弄れば──
「そっそれよりも! 結局、私は何をすれば!?」
「まあ、端的に言えば他己紹介ね」
「たこ?……蛸?」
「凧。ええとこ、こ……紅茶!」
「ちゃ──ちゃ、着火!」
「か、か、か……カスタネット!」
「扉!」
「ランドセル!」
「留守!」
「スーツ!」
「──って、何でしりとりになってるんですか!」
「からかい甲斐があるわね、貴女。実は自分も楽しんでいたんじゃない?」
「いいえ、まさかそんな。言いがかりにも程があるかと!」
「と、いう訳でまずはこの子からよ! ふふふ」
『招かれざる来賓』
『???程度の能力』
「……だいぶ強引に進めましたね」
「貴女も同罪よ? さて、まずはこの物語の主人公にしていまだ謎多き存在、詩音についてね。残念ながら、能力はまだわかってないらしいわ」
「……まあいいですけど。で、詩音のことですか?」
「ええ。じゃあまずは、みんなが気になっているであろう能力について」
「皆、とは……?……まあいいです。それで、詩音の能力ですか。馬鹿げてますよね」
「ふふふ、負けたものね、貴女。ちなみに、彼女がこれまで行ってきたことを列挙すると、次のようになるわ」
・相手の弾幕を引き付ける
・無からスペルカードを生み出す
・その上弾幕を跳ね返す
・しかも相手のスペルカードをコピーする
・そしてスペルカードルールに普通に馴染んでいく
・明らかなパクり技を堂々と行使する
・レミリアの運命干渉を拒絶する
・なのに飛べない
・何か強そうな剣を生み出す
・フランドールの能力を妨害する
・更に訳のわからないラストワード
・幻想郷と外の世界を行き来する
・道具にスペルカードをぶつけて飛べるようにする
・でも胸はない。
……うわぁ
「……うわぁ。ええと、チート、でしたっけ? 外界でこういうの」
「ええ、そうね。……まあ、厳密に言えば違うのだけれど」
「あれ、そうなのですか?」
「どんな力にも欠点はあるわ。それはたとえ詩音でも同じ。いつでもどこでも常勝、という訳にはいかないわよ」
「へぇ……」
「それでも、限りなくチートに近いのは事実だけれどね。
さ、真面目な能力考察はここまで。次は彼女自身について」
「成る程、こういう風に進めていくのですね。でも詩音自身って……変人じゃあ?」
「変人ね」
「やっぱり変人ですか。それじゃあ普通の妖狐な私が負けるのも仕方ないですね」
「自分で普通って言う奴は大抵変な奴なんだけどねぇ。それに、真の意味で“普通”の人なんて、存在しないわよ」
「それはつまり?」
「じゃあ逆に聞くけど、普通の人ってどんな人なのかしら? 普通に大学を卒業し普通に企業に入って、普通に出世して普通に定年する人?
でも、大学を卒業している時点で高卒の人からすれば普通でない“大卒”って称号を得ているし、他の職業から見ればサラリーマンなんて“普通でない”職業だと思うのだけれど?」
「……むぅ。あんまり外界の事情を出されるとちょっと」
「ああ、悪かったわね。でも、これは人柄についても同じよ? 人間も妖怪も、好きなことはそれぞれ全然違う。スポーツが好きなリア充もいればゲームや漫画が好きな大きいお友達もいる。人を食べるのが好きな人食い妖怪もいれば、驚かして喜んでる付喪神もいるのよ。
性格なんて、さらに千差万別だわ。挙げ出すと切りがない。十人十色、なんてことわざがあるけれど、言い得て妙だと思うの。
すなわち、誰もが他人から見れば“変”な部分を持っている訳。だったらみんなが変人だとは思わない? その中でも特に変な部分が突出している人が、一般的に変人と呼ばれるだけで」
「ふむ、成る程……」
「つまりは、貴女も変人ってことね! やーい、変人のらーん!!」
「ここまで引っ張っておいて結論はそれですか!
……って、先ほどの理論だと、紫様も変人になるんじゃ」
「私はゆかりんだから大丈夫よ」
「いや意味わかりませんけど!?」
「はいはい閑話休題。もう、全然詩音の話をしてないじゃないの!」
「私のせいなんですか!?」
「ええ」
「……もう疲れました」
「さて、まずは詩音のプロフィールから。彼女は、日本のとある町に住む人間の少女。学年は、紅霧異変の時点で中学二年生、身長は魔理沙以上霊夢以下ってところね」
「……それって、霊夢や魔理沙と同い年じゃあ?」
「ええ、そうね。ちなみにまだ登場していないけれど、早苗とも同い年っていう設定だわ」
「いや設定て」
「そんな、一見するとただの人間な彼女なのだけれど……さっきの変人理論に当てはめるなら、まあ特に突出した変人よね」
「ですね。妖怪の跋扈する世界に迷い込んで歓喜する輩は初めて見ました」
「まあ中二病だからね、仕方ないね」
「その一言だけで済ますのもどうかと思うんですが」
「じゃあオッドアイだからね、仕方ないね」
「全世界のオッドアイの方に謝りましょう」
「ゆかりんテヘペロ(ゝω・´★)」
「……ところで、詩音の瞳が光ったり光らなかったりするのはどういうことなんですか? それにあの、彼女の口調が突如変わったりした件は?」
「あ、それ聞いちゃう?」
「……不味かったですか?」
「別に構わないわ。どうせ黙秘するし」
「ここに他己紹介の意義が音を立てて崩れましたね」
「何でもかんでも明かせば良いってもんでもないでしょう? ほら、どこぞのお酒のお姉さんも言ってるじゃない。
『A secret makes a woman woman』って」
「……それとこれとは話が別では?」
「ああもう、しつこいわね。どうせ話が進めばわかるからいいのよ。貴女はド素人に負けた情けない狐なんだから、もう黙っていなさいな」
「あべしっ!!!」
「かいしん の いちげき!! らん に とてつもない ダメージ!!」
「…………」
「おお らん よ しんでしまうとは なさけない……」
「……グスッ」
「……ちなみに、彼女が体操で日本有数なのは能力も何も関係ない、完全な実力だから、ズバ抜けた体捌きは素人じゃないわよ。むしろ、飛んでばっかの私たちより優れてるかも」
「同情するなら橙をくれっ!!」
「はい生写真」
「ちぇえええええええん!!!」
「……これ以上グダる前に次、行きましょうか」
『闇に蠢く光の蟲』『始まりのG!』
リグル・ナイトバグ
『蟲を操る程度の能力』
「ええええええええええ──ハッ!」
「さて、次はG──もとい蟲妖怪のリグルね。哀れにも、詩音による最初の犠牲者となった少女よ」
「コホン。……犠牲にはなりましたが、弾幕ごっこ初戦には持ってこいの相手だったんじゃないですか?」
あ何事もなかったかのように戻った。
「触れてやりなさんな。
まあでも、貴女の言うことも正しいわね。いきなり門番あたりと戦っていても、恐らく勝ち目はなかったでしょうから」
「でもその結果とんでもないものを生み出していますけどね」
「
「……紫様はもう少し、シエスタとか仰ってないでお働きになった方が良いかと」
「知ってるかしら? 働き蟻は、一定の割合がサボることで仕事の能率をより上げているのよ」
「私と紫様の一対一じゃ確実に成り立ちませんよねその法則」
「そういえば、蟻といえば蟲よね」
「そんな今更役目を思い出したかのような発言をされても、これまでの言動で既に紫様のご気質は広く知れ渡っているかと」
「あ、今貴女画面の向こうのお友達を意識した発言したわね! メターい」
「……唐突に、脳内に『おまいう』という言葉が浮かんできたのですが」
「さて、リグルの話ね。彼女は良くも悪くも妖怪、って感じだわ。人間の畏れにより生き永らえ、人間を糧とし、やり過ぎれば人間に退治される」
「まあ野良の妖怪なんてそんなものでは? 彼女はその中でも、知性はある方ですが」
「イコール今後のomakeではこの手の説明は省かれるってことよ。はいここ、テストに出まーす」
「もう突っ込みませんよ」
「そんな愉快なリグルだけれど、Gって呼ばれることを酷く嫌っているようね。仲間内でも、その事に触れるのはタブーみたい」
「まあ、蛍の妖怪ですしね。私も狸とか言われたら怒りますよ」
「でも、どう見てもGにしか見えなくないかしら?」
「……それ以上言うと叩かれますよ」
「うわっ、メターい」
「おまいう」
『すきま妖怪の式』『境界の番人』
八雲 藍
『式を使う程度の能力』
「さて……それじゃスペースも余ったことだし、この世界における“命名決闘方式”について説明しましょうか」
「……ん? あれ、紫様?」
「どうしたのかしら?」
「私が説明される番では?」
「え?」
「え?」
「え?」
「いや『え?』じゃありませんよ!」
「……そう、仕方ないわねぇ。スペルカードルールが初めて適用された記念すべき異変にて外来人に敗北し、更には自らのスペルをコピーされてしまった可哀想な妖狐の話ならいくらでも──」
「……何でもありませんでした。命名決闘方式の説明をお願いします」
「あらそう? 遠慮しなくてもいいのに」
「お願いします」
「──じゃあ、今月の仕事は全部貴女に任せるわ♪」
「なっ──」
「ありがとう藍! これで気兼ねなく説明に移れるわね!」
「……もうどうにでもなれ」
涙拭けよ。
「とまあ、そんな下らない話は置いといて。詩音が本編中にスペルカードを生み出し、どう見てもそのカードを依り代にして弾幕を発生させていたでしょう? その光景に疑問を持つお友達もいるかと思って、ここで詳しく説明させてもらうことにしたのよ」
「うわー大きいお友達とかめたーい」
「まず、根本の部分は原作と何も変わらないわ。命名決闘方式とは、揉め事や紛争を解決させるための手段であり、妖怪が異変を起こし易く、人間がそれを解決し易くするもの。そして完全な実力主義を否定し、美しさと思念に勝るものはない、という原則に基づいて成り立っているわ。あとちなみになんだけど、一回の弾幕ごっこで使えるスペルカードは五枚までよ」
「あれ、完全に無視ですか」
「んで、ここからなんだけど……初期の段階では、私たちのとこもスペルカード自体はただスペル名が書かれただけの紙で、特別に力を持つものじゃなかったの。でも……」
「……ああ、あの一件ですか」
「ええ。ある日、スペルカードルールの最終調整のために霊夢と話をしていたら、突然あの子、私のカードを見てこう言ったのよ。『なんでカード自体を発動の媒体にしないの?』って」
「実はその案は、ずっと模索していたんですよね。カード自体へ弾幕発動に必要な術式を組み込むことができれば、面倒だから宣言せずぶっぱ、なんて事態は防げます。更にはそこに、凶悪過ぎる威力や不可能弾幕を禁じる事項を盛り込めば、万が一の事態にも対処できると思い、研究を進めていたのですが……」
「まあそんなにも都合のいい代物が、そう簡単にできるはずもなく。とりあえずスペルカードは契約書ということにして、あとはルールを明文化しどうにかしよう、という方向で固まりかけていたのよね」
「はい、そうでした」
「そのことをあの子に伝えたら……『ちょっと貸しなさい』と言って私のスペルカードを借りてった後、一日でその要望を全て叶えたものを完成させちゃったのよ。しかも、スペル作成者以外の力には反応しないっていうおまけ付きで」
「あれを見せられた時には、言葉が出ませんでしたよ……」
「まあ要するに、『この世界ではスペルカードがないとスペル弾幕は発動できない』『スペルカードは、弾幕ごっこをしているその場で作り出せる代物ではない』『霊夢スゲー』ってことよ」
原作でのスペルカードがどのような扱いか知らないお友達は、ピ○シブや大百○で「スペルカード」と検索してみよう!
「というか散々霊夢霊夢言ってますけど、ここまで肝心の彼女がほとんど登場していないですよね」
「あら本当ね。一応、レミリアを倒し紅霧異変を解決したのは彼女、ということになっているのだけれど」
「なっているというか、事実ですけど」
「でもそんな彼女も、詩音のことは知ってるらしいわよ? なんか、魔理沙やレミリアに自慢されたりで」
「……確かにその二人なら、友人のことを我が事のように自慢しそうですね」
「あと、たまたま見かけた新聞に載っていたり」
「……新聞?」
「あらあら覚えてないの? 本人が言ってたじゃない、妖怪の山に飛ばされて烏天狗から質問攻めにあった、って」
「……それって、もしかしなくてももしかしますよね?」
「さあ、どうかしら? あやややや……」
「……描写されない内に外来人が知り合いを増やしていく……」
「といっても、それ以上に知り合いはいないみたいよ?」
「ほう?」
「そもそも妖怪の山に飛ばされたっていうのも、詩音が幻想郷に来たときどこに出現するのかがランダムなのが原因のようね」
「へー、ランダムなんですか」
「そう。だから普段は知ってる場所、魔法の森や霧の湖付近以外の所に現れた時は、一度外の世界に戻ってからまた入り直しているらしいわ。突撃取材されたのは、妖怪の山に出現した時たまたま近くにあややややがいたみたいね」
「でもそれだと、何回も入り直さなければならなくなるのでは?」
「何故かは知らないけど、魔法の森になる場合が圧倒的に多いようね。まあ、あそこは広いから」
「それもそうですが……」
「さ、そろそろ次の解説に移りましょうか。忘れていた、詩音の往来についても説明できたし」
「……本当に、私のこと欠片も解説しませんでしたね……」
『閉じた恋の瞳』『心を忘れた放浪者』
古明地 こいし
『無意識を操る程度の能力』
「という訳で、次は旧地獄跡にある地霊殿の主人の妹、こいしよ。覚り能力のせいで疎まれていること知り心を閉ざしたという、結構根の深い過去を持つ少女ね。英語で言えばメインヒロイン」
「ヒロインって……主人公は詩音じゃあ?」
「あの子がヒロインに見える?」
「いいえ全く」
「同感ね」
酷い言われようですね……。
「どちらかと言えば、彼女はヒーロー──」
「……とも言えないのが、詩音の面倒なところなのよねぇ。ほら彼女、基本的に好奇心に従ってしか行動しないから」
「ですね。もっと主人公と言えばこう、正義を守り抜くために戦う、とかそんな感じなのに」
「まあ幻想郷で正義を語る奴なんてそもそもいないのだけれど。それでも詩音は、どちらかと言えば主人公を飾る脇役、って印象の方が強いわね」
「そうなのですか?……ああ確かに、今回の紅霧異変、フランドールを主人公と考えれば詩音は名脇役って感じですね」
「ぶっちゃけ、
まあ何が言いたいのかって言うと、だから楽しみにしててね!」
「……かなり話がずれましたね」
「やりたくてやった。後悔も反省もしていない!」
「それで、こいしの方ですが。どうして彼女は、地底から地上へと出てきていたのですか? 往来は禁止されている筈じゃあ?」
「無意識だから仕方ないね!」
「……いやまあ、それを言われてしまうと何も言い返せないのですが」
「まあぶっちゃけると、地底と地上との間には物理的な結界とかは特になかったのよ。地上は地上で地底の妖怪を疎んでいたし、地底は地底で楽しくやっているみたいだし」
「双方が双方ともに訪れる理由が存在しない、ということですか」
「そそ。だからこそ、彼女みたいに意思のない者とかは簡単に行き来できちゃうのだけれど」
「まあ問題は起こしてないし黙認、ってことですね」
「姉は酷く心配するでしょうけどね」
「……そういえばそうでしたね。いつの間にかいなくなってて、いつ帰ってくるかもわからない妹とかどれ程悩みの種なのだろう……」
「ま、そのために泉熙も地上に出てきていたのだけれど」
「え、そうなんですか」
「……ああ、まだ詳しくは言ってなかったわね。じゃあまあ、これから説明するわ」
『沙羅双樹の鬼の色』
『??を操る程度の能力』
「──ってな訳でオリキャラ二体目、人間と鬼のハーフである半人半鬼の泉熙よ」
「本人は人間だ、とか言ってましたけど」
「でも嘘じゃないでしょう? 実際に半分は人間なのだから」
「まあそうなんですが。嘘なんて言ったら萃香始め鬼たちに物凄く怒られそうですし」
「と言うか、泉熙自身も嘘は嫌いね。彼女、鬼たちに育てられたから、基本的な価値観は鬼のそれと合致しているのよ」
「豪快で快活、嘘が嫌い、闘争が好き、等ですかね」
「その一方で、人間っぽい一面も持ってたりするわね。特に尊敬はしていないけど、自分の住む地底の管理者の妹、こいしを様付けで呼んでいたのもそういう理由みたい」
「あれですか、『なんやよーわからんけどお偉いさんみたいやしとりあえず様付けとこ!』的な」
「的な」
「ところで彼女、鬼の四天王だったのですね」
「え?……ああ、それねぇ」
「? どうかしましたか?」
「……正確に言えば、泉熙は“四天王代理”なのよ。彼女の母親が四天王だったから、その代理って訳」
「じゃあ、萃香が『あいつは四天王』と言っていたのは?」
「周りからは実質的に四天王の一人と思われているようね。力も申し分ないし、特に反対意見がないみたい。でも本人が、まだ自分は四天王を名乗るほどではないって」
「……なんだか、そういう部分も人間っぽいですね。鬼だったら遠慮なく称号を貰いそうなのに」
「そもそも称号をそこまで重視していないフシがあるわね。だからこそ、必要以上に重視する泉熙は半人半鬼なのよ」
「成る程」
「で、彼女も地上に出ていた理由、だったかしら」
「そうですね。話題の逸れ具合が凄まじ過ぎましたが」
「私みたいに頭の回転がわんだほーな妖怪は、次から次に新たな知見が飛び出てくるものなのよ」
「その結果本来の目的を見失っていたら無意味では」
本末転倒の典型例をここに見た。
「コホン。それで、泉熙も地上に出てきていた理由なのだけれど、彼女はこいしの“お目付け役”なのよ」
「お目付け役?」
「ええ。ほら彼女、『無意識を操る程度の能力』のせいで、一度見失ってしまえばもう見つけることができないじゃない? それは、心を読む覚り妖怪であっても」
「そうですね」
「でも泉熙は、能力によってこいしの居場所を特定することができるのよ。だからさとりが、こいしを見守るように頼んでいるらしいわ」
「こいしが地底から出ていきそうになったら引き留める、という訳ではないのですね」
「そりゃあだって、こいしの無意識を看破できるわけじゃあないもの。彼女の能力はあくまでも、意識すればこいしがどこにいるかわかるだけ」
「……その肝心の能力が伏せられているのですが」
「だから言ったでしょう?『女は秘密を着飾って美しくなる』って」
「何でもかんでも隠せばいいというものでもないと思います」
「……ここだけの話していい?」
「どうぞ」
「別に、泉熙の能力を隠す必要性は特にないのよねぇ。詩音と違って、自分の能力がわかっていない、というわけでもないし」
「……じゃあ、何故」
「ほら、全部言い尽くすのも華がないし? それに、次回泉熙が登場した時のomakeで言うことがなくなると困るじゃない」
「把握しました、完全に後者が理由ですね」
「ああん、手厳しい。じゃあ代わりと言っては何だけど、とっておきの情報を公開するわよ!」
「……して、その情報とは?」
「実は彼女──敬虔な、仏教徒なのよ! もう伝教大師様LOVE!って感じね」
「へえ……それが?」
「え?」
「えっ」
「それだけよ?」
「……次、向かいましょうか」
『華人小娘』『不撓不屈の門番』
紅 美鈴
『気を使う程度の能力』
「次は紅魔館の門番、紅美鈴ですね」
「……ええ、そうね」
「紫様も、無理して彼女のように昼寝する必要はないのですよ?」
「ちょっとゆかりん何言ってるのかわからない」
「……はぁ。まあ元から期待していませんし、別にいいのですが」
「ん? 今いいって言ったわね? ぽこじゃか昼寝していいって言ったわね!? 言質はとったわよ!!」
「一言も言ってませんよそんなこと!!」
「さて、美鈴の解説ね。と言っても、特筆すべき事項とかはあんまりないのだけれど」
「流石にそれは、彼女が可哀想かと思うのですが……」
「──と、一ミリも紹介されなかった九尾の狐さんが申していますが」
「飛ばしたのは紫様じゃないですか」
「いいえ、逃れられぬ
「へーそーなのかー」
「あ、そうそう思い出した。彼女、レミリアがフランを閉じ込めるきっかけになった例の事件の直前から、紅魔館で雇われているらしいわ」
「……彼女って?」
「美鈴のことよ。貴女そんなにも記憶力低かったかしら?」
「(紫様が話を逸らしたせいだと物凄く突っ込みたい……)」
「ま、精進なさいな」
「……それで例の事件というのは、レミリアが詩音に語っていたあの件のことですか?」
「ええ。フランの狂気がバゴオォォンってなって、敵も味方もキュッとしてドカーン!ってなったやつ」
「適当な擬態語にしか聞こえないのに間違っていない所が恐ろしいですよね」
「その時彼女は雇われたてだったからフランにも覚えられていなかったし、物陰に隠れてなんとかやり過ごしたそうよ。吸血鬼姉妹以外では、一部始終を知る唯一の妖怪ってことね」
「……ならば、何故そんなにも恐ろしい思いをしたのにまだ紅魔館に勤めているのでしょうか?」
「今言ったでしょう、一部始終って。だから、狂気が一時的に治まったフランの精神がドカーンってなるとことか、レミリアが恐怖に染まりながらも必死に色々とやってるとことかも見ちゃってるのよ」
「あーそれは……確かに、そんな光景を見せられてしまえば『暇を下さい』なんて言いにくいですね」
「それにまあ、彼女お人好しだし」
「そのせいで色々酷い目に遭ってますが。魔理沙の『ブレイジングスター』で毎回吹き飛ばされていたり」
「あら、常識人というのは割を食う存在なんでしょ?」
「周囲の対応故にそういった状況に陥り易いだけであって、“常識人”と“割を食う”を等号で結ぶことには承服致しかねます。と言うか断固拒否します」
「……まるで自分が常識人みたいな言い方ね」
「? 何を今更なことを仰って」
「……言わぬが花、ってやつかしらね」
言うて紫さんより遥かに常識人ですけどね彼女。
「幻想郷では常識に囚われてはいけないのよ」
『永遠に紅い幼き月』
レミリア・スカーレット
『運命を操る程度の能力』
「そんなこんなで、常識に囚われないキャラ紹介はまだまだ続くわ」
「……いい加減長くないですか?」
「うん、これを読んでる全読者の声を代表してくれたことには感謝するわ藍。でもね、まだレミリアを含めて四人も残ってるのよ」
ちなみにこのあたりで大体一万字です。どうしてこんなに長くなった。
「……あれ? あと四人って、それだと計算が合わなくないですか? 詩音が知り合った人妖は、もう少しいたように記憶していますが」
「ああ、そのことね。このコーナーは、あくまでも『東方紅魔郷』っていう一つの
「つまり、アリスや萃香等はここでは紹介しない、と?」
「しょうゆこと。彼女たちが異変に関わってくれば、その時にまた改めて紹介するわ」
「把握致しました。……それで、次はレミリアでしたっけ」
「ええ。まったくもう、藍がまた話題を反らすから!」
「高度に知能が発達してれば、次々と新たな知見が飛び出してくるのでしょう?」
「あ、ごめんその
「ご都合主義にも程がありますね!?」
「はいはい、解説を始めるわよ。そんじゃ、永遠に幼い悩める姉、レミリアね。まあ、異変の時にほとんど詩音に打ち明けているから、改めて語ることはこちらもあまりないのだけれど」
「……はぁ。疲れた……」
「でも、彼女の感情が紅霧異変の発端といっても過言ではないから、繰り返しになっちゃうかもだけれど説明させてもらうわよ。
レミリアは、フランに対して大き過ぎる罪悪感を抱いていたわ。自分が唯一の家族である妹フランに恐怖してしまったこと、妹を四百年近くにわたり幽閉してしまっていたこと、その結果フランの狂気がますます深まってしまったことに対する罪悪感を、ね」
「……なんか、フランドールも似たようなこと言ってませんでしたっけ?」
「そうね。まあ、似た者姉妹ですもの」
「その結果、中々ややこしいことになっていますが……」
「その辺はフランの項でまた言及するわ。で、そのせいでレミリアは、フランが自分なんて嫌いなんじゃないか、自分に姉の資格なんてないんじゃないか、と思うようになったワケよ」
「……ああ、だから詩音に頼んだのですね?」
「詩音が関わった結果丸く収まる運命が見えた、というのも本当のようだけれど、その感情が大きなウェイトを占めたのはまあ事実でしょうね」
「その割には、フランドールの発言を勘違いして酷く落ち込んでいましたが」
「そりゃあそうでしょう。貴女だって、橙が自分のこと嫌いだろうなーと考えるのと、実際に橙から嫌いって言われるのとでは雲泥の差でしょう?」
「……物凄くわかりやすいですね、その喩え」
「そんなこんなで日々を過ごしていたレミリアは、とある外来人が妹の未来を変える、という運命を見た。だから彼女の運命を操り、異変を引き起こすと同時に彼女を幻想郷へ導いた。これが、紅霧異変の真相ね」
「……あれ? でも異変中、レミリアの運命操作は詩音に拒絶されていませんでしたっけ?」
「ああ、それね。実は彼女の『運命を操る程度の能力』、ある二つの力の総称なのよ」
「二つ?」
「まず一つは、対象の過去に介入する能力。といっても実際に介入するのではなくて、悪魔族特有の“魅了”やら威圧やらを使って、相手の神経・魔力回路などに変化を起こしているらしいわ」
「これが、詩音を二時間だけ飛べるようにしたけれど拒絶されてしまった方ですね?」
「ええ。んでもう一つは、未来の分岐点がわかる能力よ」
「それって、つまり未来予知──」
「──では、ないらしいのよねぇ」
「あれ」
「どっかで本人が言っていたけれど、レミリアは“分岐点”と“朧げな結末”が見えるだけらしいわ。今回の例で言えば、“異変を起こす”と“外来人がいい感じにしてくれる”ってことしかわからないみたい。未来予知だったらほら、もっと詳細までわかりそうなものじゃない?」
「……何だか、霊夢の勘みたいですね」
「あ、言い得て妙ねそれ。そんな二つの能力をまとめて、レミリアは『運命を操る程度の能力』を自称しているのよ」
「つまり、過去に干渉する方の能力は詩音に弾かれたけれど、未来を察知する方の能力は詩音自身に介入する訳ではないため問題なく発動した、ということでよろしいですか?」
「つまりはそういうことね」
「ふむ、成る程……。そんな能力をまとめて、『運命を操る程度の能力』と自称するレミリアって……なんかこう、独特な美的感覚というかなんというか」
「中二病みたいよね」
「あっわざと避けてたのにその表現」
「でも、詩音と違ってレミリアは患者じゃあないわよ? きっと。
彼女のはほら、吸血鬼特有のセンスと子供の発想力とかが混ざったサムシングなんだから。たぶん」
「……でも、妹のフランドールにはそういった傾向は──」
「レミリアの名誉のためにもこれ以上は止めましょうか、うん」
『紅魔館のメイド』
十六夜 咲夜
『時間を操る程度の能力』
「はい、次は咲夜よ咲夜。紅魔館の誇るメイド長にして、今のところ駄メイド街道一直線な少女の」
「私には、その駄メイドな一面しか印象に残っていないのですが」
「あれでも彼女、優秀なのよ? あの無駄に広い紅霧館をほぼ一人で切り盛りしているし、異変の時に霊夢と詩音がかち合わなかったのも彼女の功績によるところが大きいわ。流石は、レミリアに仕えてン十年のベテランね」
「……確かに、あの広さの館を一人で掃除しているのは凄いですね。掃除自体は、私も一人で行ってますが」
「貴女吸血鬼の従者なんかに負けてて悔しくないの!?」
「暗に紫様も掃除手伝って下さいと言ったつもりだったんですがね!」
「え、嫌よ」
「じゃあせめてご自分の仕事くらいはご自分でなさってくれても……」
「…………?」
「『何言ってんだこいつ』じゃないですよ!」
「あ、スゴい。何も言ってないのに考えていることが伝わったわ。貴女覚り妖怪の才能あるんじゃない?」
「何ですか覚り妖怪の才能って」
「嫌われる才能?」
「別に彼女たちも、好きで嫌われているわけじゃないと思うのですが」
「だから才能なのよ。やったね藍ちゃん! 才能が増えるよ!」
おいやめろ
「話を戻しましょう。咲夜について、ほかに補足することはあるでしょうか?」
「えぇー…………逆に、藍は咲夜について、何か聞きたいこととかあるかしら?」
「えっ私ですか。そうですねぇ……そういえば彼女、最初詩音に対する口調が全然違いましたよね」
「それはまあ、彼女自身が語っていた通りね。主とその妹を救った存在なんだから、敬意を払うのは当たり前、って考えみたいよ。デフォルトの口調は、魔理沙に使っていた感じのようね」
「とりあえず敬語を使っとけ、といった感じですか。なんか、泉熙のこいしに対するものと似ていますね」
「にんげんだもの ゆかり」
「泉熙は半分鬼ですが。っと、泉熙と言えば」
「あら、どうかした?」
「何故彼女は、仏教を信仰しているのですか? 鬼でありながら人間の宗教を信仰するのは、なかなか稀有だなと思いまして」
「幻想郷には妖怪神社とか妖怪寺とかより取り見取りだけれどね」
「寺はともかく、神社は信仰している妖怪なんてあまりいないじゃないですか」
「い、一刀両断ね。霊夢が聞いたら泣くわよ?
まあそれはともかく、泉熙が仏教を信仰している理由は簡単よ。彼女の母親が、伝教大師の弟子だったから」
「へえ?」
「詳しいことはわからないけれど、『円鬼』という名前で仏門に励んでいたみたいね」
「成る程、その影響で──って、そういえば泉熙の親って──」
「はい、強制終了。これ以上は本編をお楽しみに。
というか、後半はほぼ咲夜の話していないじゃない」
「あー、本当ですね」
「ほら最後、何かないの!?」
「いきなり言われましても」
「はい五、四、三、二──」
「え? ちょ、焦らせないでくだっ──
「一!」
「えーー、詩音がレミリアと戦った時のカメラってどこで手に入れたのですかっ!?」
「撮った写真を共有するって条件で文から借りてたわ」
「まあ知ってた」
『東洋の西洋魔術師』
霧雨 魔理沙
『魔法を使う程度の能力』
「どんどん行きましょう、次は魔理沙ね。紅霧異変を解決しようと紅魔館に乗り込み、無事地下室へと迷い込んだ普通の魔法使いよ」
「パチュリーを下したのも彼女、ですよね?」
「ええ。そこから地下で迷って、床をぶち抜いたらたまたまフランの部屋だったみたいね」
「手荒だなぁ……」
咲夜さん涙目。
「んで、フランと弾幕ごっこを始めて少ししたら、詩音たちが現れたって感じよ」
「……実際、あのまま魔理沙がフランドールと弾幕ごっこを続けていたら、決着はどうなっていたのですか?」
「そうねぇ……普通の弾幕ごっこであれば魔理沙にも十分勝機はあったでしょうけど、あの状態のフランは何を仕出かすかわからないから……」
「確かに、能力を使われてしまえば成す術がありませんね」
「スペルカードを使って直接的に命を奪うことは性質上不可能だけど、間接的にだったらどうとでもなるわ。あの場で魔理沙が勝つ割合は、多く見積もって五パーセントってとこかしら」
「……多いのか少ないのか、判別しにくいですね……」
「十分多い方でしょう。詩音だって絶対に勝てた訳でもないし。貴女だったら二パーセントもないんじゃない?」
「……一応、妖怪としての誇りが私にもあるのですが」
「フランが能力を使えば、脆い人間だろうとタフな妖怪だろうと一発アウトじゃないの。それだったら、貴女よりも弾幕ごっこの経験回数が多く、成長の可能性も未知数な魔理沙の方が高いのは道理じゃあないかしら?」
「うう、そう明瞭に言われると凹むなぁ……」
「それに貴女、詩音にも負けたし」
「その話はもういいのではっ!?
……というか、紫様だったらどうなんですか? 勝率」
「そんなもの、正気と狂気の境界を弄れば相手はただの幼い吸血鬼なのだから、貴女より遥か彼方の上よ」
「……ならば、何故その方法でフランドールを治してやらなかったのですか?」
「別に、私がそこまでしてやる理由がないもの」
「…………」
「正気だろうと狂気だろうと、幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは、残酷なことなのよ」
「……面倒だっただけでは?」
「…………」
「無言で目を逸らさないで下さい」
「その方法でフランを治しても、根本的な解決にはならないわ。詩音や魔理沙みたいなのと触れ合って、彼女の心を変えていくことが重要なの」
「いやまあ、そりゃそうなんでしょうけども」
「だから決して、後処理とかレミリアへの対応とかが面倒でさぼったわけじゃないのよ。あーゆーおーけい?」
「つまり、面倒でさぼった──
「おーけい!?」
「……お、おーけー」
「はい、そんな魔理沙の紹介よ」
「確実に『そんな』の使い方が間違っていると思います」
「幻想郷では常識に囚われてはいけないのよ」
「それ言っときゃ何とかなると思っているのなら大間違いですよ」
「細かいわねぇ。さて、魔理沙なのだけれど、色々と詩音に思うところはあるみたいね」
「まあ、目の前であんなことされて何も思わない訳がありませんよね。と言うか、いつの間にか彼女と詩音、結構仲良くなってませんか?」
「フランと詩音の弾幕ごっこが終わったあと、日付が変わる直前まで三人で遊んでたみたいよ? それに、今のところ詩音が幻想郷に来たとき、ほぼ毎回魔理沙に会っているようだし」
「毎回、ですか」
「ええ。ほら、詩音が霖之助さんのとこで作った『スケボー君』ってあるじゃない?」
「あの飛翔板ですか」
「それ、魔理沙の家の前に置かせて貰ってるらしいわ。流石に外の世界まで持っていくわけにはいかないって」
「それは……まあ、そうですね。人前で飛ぶ訳にもいかないでしょうし」
「だから詩音が幻想郷に来たときは、そのまま魔理沙の家で駄弁るか、二人でアリスの家に突撃するか、紅魔館まで遊びに行くかの三択みたいね」
「そりゃあ仲も良くなりますね」
「……よく考えてみれば、人間なのに人里に行かないとかどんな神経しているのかしら」
「そもそも詩音は、人里の存在を知っているんでしょうか?」
「それは流石に……微妙ね。魔理沙辺りから聞いていてもおかしくはないけど……」
「……まあ魔理沙は人里出身ですし、流石に自分の出身地くらいは話しているのでは?」
「あーうん……あー、うん」
「……? どうされたので?」
「いや、藍も存外にデリカシーがないなーと思っただけよ」
「今日の私貶されてばかりですね……」
「魔理沙は、まあ実家といろいろあったのよ。その結果、今は勘当状態だし……さっき言った思うところっていうのも、彼女が家を飛び出した理由に関連していたりするわ」
「あれ、そうでしたっけ」
「そうなのよ。そういうことにしておくのよ」
「いやしておくて」
「まあ、その感情が溢れる日も遠くない、とだけは言っておこうかしらね」
「……なんだか今日、お茶を濁すだけの発言が多くないですか? まあ普段から、紫様は胡散臭い言動が多いですが」
「どこぞの誰かさんが見切り発車したせいで、思ってたよりもネタバレに繋がることしか出てこなくて困ってるのよ」
「それは……うわぁ」
「正直、幻想郷縁起に書いてあるようなことまで紹介するべきか、いまだに迷っていたり」
「もう残り一人なんですけど」
「そうよねー。だからまあ、詳細な他己紹介はよそに任せておけばいいかなーって。というか、そこまでやっちゃうとこのコーナーの尺が目も当てられないことになってしまうし」
すでに十分……。
「というか、ここまで長くなった原因は紫様の悪ふざけが大きな割合を占めていると思うのですが……」
「それに、この世界には『感想』という、素晴らしい質問コーナーがあるじゃない! もしこの話を見て『結局オリキャラのことちっとも理解できなかったよ九尾の狐コンチクショー!』ってなった場合は、遠慮なく
そしてこのロコツな感想稼ぎである。
「どうしてそこで、また私が罵られなきゃいけないんですか」
「藍だから」
「理不尽ですね」
「ククク、このくらい道理と理不尽の境界を操れば容易いことよ……!」
「これ程までに無駄な能力の使い方は初めて見ました」
「ようかいだもの ゆかり」
「その言い回しを気に入らないでください」
『悪魔の妹』『純粋無垢の狂気』
フランドール・スカーレット
『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』
「さあ……いよいよ最後ね。ラストに紹介するは、紅霧異変、そのすべての始まりにして終わりの存在、フランドール・スカーレットよ」
「いよいよ終わりですか。無駄に長かったですね……」
「一見ムダに見えるようなことにも、必ず意味は存在しているわ」
「今回の場合、時間の浪費以外の意味を私は見出せません」
「たまにはゆっくりと、時間を浪費することも必要よ?」
「こういう遠浅の問答をしなければ済む問題だと思うのですが」
「ハイ、それじゃフランの解説に移るわね。美鈴の項で言ったから詳細は割愛するけど、昔フランが狂気でドカーン!ってなったことがあったの」
「割愛したのに殆ど変わっていませんね」
「んでまあしばらくすると、彼女の狂気も一旦落ち着くわけじゃない? その時フランの視界に入ったのは、敵や、自分を慕っていた者たちの死骸、そして傷つき、怯えた目で自分を見る姉だったのよ」
「……それは、何と言ったら良いのか……辛い、ですね」
「そんな生易しいものじゃあないとは思うけれど、言葉として最も適切なのはそれでしょうね。実際、ここでフランの精神は完全に壊れたみたいよ」
「そうして、破壊を望まない殺戮者が生まれた──ということですか」
「……何よ、そのカッコいい言い回し。藍のくせに」
「別に大したことは言っていないと思いますが……」
「あ、もしかして、無自覚に詩音と同じ病気に──
「それはないです」
「否定が早いわね……まあいいわ。それでフランもレミリアと同様、どうしようもないくらいの罪悪感を抱いてしまったのよ」
「……まあ、敵味方関係なしに数え切れない数を屠り、更には大切な姉まで壊そうとした、となれば抱かない方が可笑しいですね」
「ええ。異変が終わってからもレミリアに会うのを渋ってる理由は、そんな風に罪悪感を感じているからね」
「……レミリアの時にも言った気がしますが、この二人、物凄く似通った感情を抱いていたのですね」
「互いが互いに会わせる顔がなく、更には片方は狂気に陥っている。詩音がいなければ、この姉妹はどうなっていたことやら」
「……想像したくないですね」
「ま、でも全ては終わったことよ。無事フランは解放され、もう狂気のままに破壊を行うこともほとんどないでしょう」
「仮に発作的に起こったとしても、詩音だけでなく魔理沙や霊夢もいる訳ですから、きっとどうにか出来るでしょうね」
「その安心感が、フランを更に解き放つのよ。さっき私が、正気と狂気の境界を弄るだけじゃダメだって言った理由がわかるでしょう?」
「……でもそれは、紫様が面倒臭がったからじゃ──
「知らない子ね。でも、フランとレミリアの関係はまだギクシャクしたままのようね」
「あれ、そうなのですか?」
「だってほら、数百年ぶりに直接喋ったのが、レミリアのカリスマがブレイクされてうーっ☆ってなってた時なのよ?」
あっ……(察し)
「それに、お互いの罪悪感が綺麗サッパリ消えたわけでもないし」
「……なんか、よりややこしい状況になってません?」
「詩音に言いなさいよ」
正に上げて落とす、とかいうやつですかね。
「より正確に言えば、上げたあと錐揉みコークスクリューをさせながら二重螺旋の軌道でふんわり落下させてるわね」
「理解はできませんでしたが言いたいことは何となくわかりました」
「まあでも、これより先は本人たちがどうにかすべき領域でしょう。曲がりなりにも会話できたわけだし、レミリアを縛る最大の枷だった、フランが自分を嫌いっていう思い込みも解けたしね」
「『大好き!』ですか……。一度でいいから言われてみたい……」
「──! ふふふ……。
まあ、それは置いといて。ほかに、フランについて聞いておきたいことはあるかしら?」
「他に……あ、そういえば。フランドール、どこかで『自分の狂気は一度封印されたけど解けてしまった』といった感じのことを言ってましたよね。あれって?」
「え?……ああ、そっか。あの時貴女には、違うことを任せていたわね」
「あの時……?」
「ふふ、まだわからなくていいわ。そうねぇ、“壮大な伏線”とでも言っておきましょうか」
「伏線、ですか……」
壮大過ぎて回収できる見込みがない点について、紫さん一言どうぞ。
「お口チャック。それはともかく、藍、今日は貴女に伝えたいことがあるのよ」
「何ですか?」
「藍──貴女には、いつも感謝しているわ」
「ほへ?」
「寝てばかりな私の代わりに、いつも骨を砕いて、幻想郷のために働いてくれる。更には私の式としての役目を果たすため、鍛錬も欠かさない。加えて、橙の教育まで熱心に取り組んでいるのだから……」
「は、はあ」
「本当に、感謝してる。そして私は、そんな藍が──大好き、よ」
「──!」
キマシ?
「Notタワー。家族としてよ」
「かぞっ──! え、ええと、あの、その……」
「本当よ? 何度でも言ってあげるわ。
藍、私は、貴女が大好き」
「────っっっ!!!」
「ふふふ、こんなにも顔を赤くしちゃって。可愛いわねぇ」
「え、えと、あの、その、ゆかりしゃま……」
「そう、大好き。だから、こんなにも出来の悪い主人で良ければ……これからも、私のためになってくれるかしら?」
「で、出来が悪いだなんてそんな……!
もっ、勿論です! 微力ですが、粉骨砕身精一杯、貴方様のために力を尽くさせて頂きます!!」
あっ……(察し)
「そう! ならよかったわ!! じゃあ早速だけど、これをどうにかして頂戴ね!!」
「はい──」
ドサドサドサッ。
「……はい?」
「あーよかった!! 藍が! 私のために! これをぜんっぶやってくれるなんて!!」
「……え、えと、紫様」
「何かしら!?」
「この、上げ下げさせるだけで筋肉痛になりそうな量の紙は一体……?」
「大結界の修繕箇所、妖怪の山からの苦情、閻魔からの呼び出し状エトセトラよ。でも藍は、私のためにこれを全部『粉骨砕身精一杯』やってくれるのでしょう!?」
「なっ──
「やってくれるのでしょう!?」
……悪魔や、悪魔がここにおるでぇ……。
「……わかりました、わかりましたよ! 私がっ、これらをっ、全部っ、やればいいのでしょう!?」
「おお、わんだほー! ありがとう藍、愛してるわ!!」
「畜生ッ、もうどうにでもなれ!!!」
「──と、いうわけで、他己紹介もとい『omake.txt』第一回は終了よ。ここまで付き合ってくれた方には、心から感謝しているわ」
「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」
「本当は、もっと紹介らしい紹介ができればよかったのだけれど……」
見切り発車の上、どっかの誰かさんはほぼノリでここまで書き上げましたからね。これ程までにグダグダになってしまったこと、今一度お詫びいたします。
「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」
「……にしてもこのコーナー、ホントに成り立っているのかしら?」
一応、最低限のことは伝えられたかなと。まあ、本当に最低限だけですが。
「そうね、本当に最低限だわ。どうしてこんなにもグダってしまったのか……後で藍にはキツく躾けておくから、みんな許してちょうだいね」
「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」
こんな虚ろな目をしているのに、まだ災難が待っているのか……。とりあえず、藍さんに向かって合掌。
「次の藍はきっと上手くやってくれるでしょう」
いやなぜ殺したし。
「……あの、一つ宜しいでしょうか」
「何かしら?」
読めない漢字でもありましたか?
「いえ、そうではなくて。ずっと触れるべきか迷っていたのですが……」
「ふむふむ?」
ほうほう。
「……この、どこからともなく聞こえてきて、紹介する者の名前を読み上げたり、偶に突っ込みを入れたりする声は何なのですか? 紫様が、当然のように談笑なさってるものですから……」
「あー、この声のこと?」
どの声ですか?
「貴方です」
あ、私ですか?……そういえば、自己紹介がまだでしたね。
私は天の声、お二人のサポートをさせていただく所存です。以後、お見知りおきを。
「は、はあ、ご丁寧にどうも」
「──と、いう訳で天の声さんよ。おまけパートでは今後ともお世話になるから、そこんとこヨロシクね」
「はぁ、よろしくお願い──って、いやいやいや!? どう考えてもおかしくないですか!?」
「はいはい、文句は仕事を終わらせてから言う!」
「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」
最早、哀愁すら漂ってきますね彼女……。
「何言ってるの、藍は自分からやりたいって申し出たのよ?」
思考誘導して言わせた、の間違いでは?
「言葉の綾ね」
うわぁ。
「それに私、嘘は吐いてないわよ? 藍に感謝してるっていうのも藍が好きっていうのも、全部本当のことだもの」
「だとしたら余計にたちが悪いですね!!」
「文句は──
「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」
……哀れ。
「さて、そろそろおしまいにしましょうか。もう少しで二万字に到達しちゃうわよ?」
平均文字数詐欺がより捗りそうですね。ただでさえ、短い話と長い話の差がえげつないのに。
「気にしたら負けね。幻想郷では常識に囚われてはいけないのよ」
便利ですねその言葉。
「と、いうわけで。以上、幻想郷の賢者八雲紫とその式八雲藍、そして天の声でお送りしました。皆様、これにてごきげんよう」
お付き合い頂きありがとうございました。またどこかで、お会いしましょう。
「ほら、藍も何か言いなさい」
「……さよなら、もう二度とやらなくていいです」
「……あ、そういえば。その書類、期限は全部明日までよ?」
「あああああああああああああああ!!!」
────TO BE CONTINUED!!
申し訳ありませんが、これから二週間程個人的に忙しいのと、夏バテという天敵が同時に襲ってきたために一、二週の間投稿を休ませてもらうかもしれません。
暫しの間、お待ち頂けると幸いです。