東方幻操卿   作:さんにい

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Stage2 境界の番人

 少女は尚も、惹かれる方向へと歩みを進めていた。

 霧は、一向に晴れる気配を見せない。いつまでも詩音に纏い続ける紅い幻想は、彼女から視界だけでなく時間感覚をも奪っていた。

 

「んー、なんだかさっきまでより霧が濃くなっている気がしますね。

 ──ん?…………………!!」

 

 人間とは実に不思議な生物で、ある者の五感が正常に作用していない場合、他の感覚器官がそれを補おうとすることがあるらしい。盲目の天才○○、などといった類いの人物は、外の世界で多数報告されている。

 

 この時の詩音も、そのような状態であったのかもしれない。

 

 突然何かを感じ取り、詩音はその場で上体を仰け反らせた。

 と同時に、かなりの速度の気弾が、詩音の顔があった場所を過ぎ去っていく。

 先ほどまでよりも濃密な妖霧が、じっとりと揺らぐ。

 

「ふむ、やはり人間にしては出来るようだな」

 

 すると、どこからか声が聞こえる。

 詩音は声の主を探そうと、身体を起こし──

 

「ってこれ、あの映画の超有名なシーンの再現みたいですねー。でもあれはCGだし、これならキア○も真っ青ですね」

「……やはり外界人か。全く、どうしてこんな忙しい時に……」

 

 今度は、先ほどまでよりも近くで聞こえた。釣られ、詩音が顔を向ける。

 

 どこまで行っても消えない、紅い霧の漂う森。その暗い木々の間に立っていたのは、道師服を着た女性だった。

 

「あれ? もしやあの映画をご存知で? ここは、私たちのとは別の世界だと思ってたんですが……」

「その認識で間違いない。ここは、忘れられし者どもが集う地、幻想郷だ。

 映画は……私の主が、『我が式たるもの一般教養くらい覚えておかなきゃ』と」

 

 ……こういった場合、発案者が見たいから、というのが理由の大半を占めるのだが。

 ともかくその金毛の、九尾の狐は、こめかみを押さえた手を下ろすと再び詩音へと向き合った。

 

「それは置いといて、だ」

「はいはい置いとくんですね。さよならキ○ヌー」

「…………続けていいか?」

「あ、どうぞご自由に」

 

 ……何度も言うようだが、詩音は外界の、普通の少女だ。今までは何の変哲もない人生を送ってきた、うら若き少女である。

 そうであるにも関わらず、詩音の目の前に鎮座するのは妖獣であるというのに、彼女は全く緊張感を感じさせない。

 

 詩音のその有り様は、どこかこちら側に近いものを感じさせた。

 

「……私は、八雲藍という者だ。この幻想郷と外界とを隔てる結界の、管理を行っている」

「へえ、私は古卿詩音と申します。

 にしても、ここはやはり異世界なのですね……! ここから、きっとアツい展開が……!」

「……いい加減、話が進まないのだが」

 

 ……どうやら彼女自身もなかなか特殊な性格をしているようだが。

 

 その藍と名乗った少女は、うんざりしたような様子で詩音を叱責する。

 

「あ、すみません。ちょっとまだ見ぬ異世界にテンションが上がってまして」

「そこは普通恐れると思うのだが……

 ……まあいい。私は、今言ったように結界の管理、主に監視をしているんだが」

「ふむふむ。管理職って大変ですよね」

「で、だ。古卿詩音──

 

 ──お前はどうやって結界を抜けた?」

 

 いつまでも終わりが見えないため、今度は語気を強めて、詩音に迫る。

 返答次第では、と思い、体に妖力を滾らせて。

 

 しかし、当の詩音は藍の目をじっと見つめ、黙して語らない。

 二人、いや一人と一匹の間に、少しの時と妖艶な霧のみが流れた。

 時は、永遠に続くように見えて、しかしどのような存在にも終焉を告げる儚さを帯びて。

 霧は、振り払えば消えてしまいそうで、しかし底の知れないほど甚大な妖力を帯びて。

 

 ……いや、どのような存在、というのには少々語弊があった。時の流れから解脱した存在には、そのようなことは起こらないだろう。蓬莱人とか。

 

 ともかく。

 いい加減業を煮やし、こうなったら力ずくでも、と藍が考えた時。

 

 左の瞳(翡翠)が、ゆらりと揺れた。

 

「っ!?」

「あの────

 

 そちらから、ご招待して下さったのではないんですか?」

 

 そして二重に面食らうこととなる。

 

「しょ、招待?」

「は、はい……。なんだか惹き付けられるって言うんでしょうか、ふと何かを感じて、そしたらそのまま意識を持ってかれて。気づいたら、ここに」

「と、いうことは、無意識に、結界を越えたのか?」

 

 彼女は、再びこめかみを押さえて唸り始めた。しかしその顔は、先ほどとは違い真剣に悩んでいる。

 一方の詩音も、言われるまで意識しなかったのか、改めて自分が異界の地に何故か来ていることについて、不審に思い始める。

 

 思案を続ける二者。紅い幻想はそんな彼女らを翻弄するかのごとく漂い、樹木は僅かな風によって大袈裟にざわめいていた。

 

「……そうだな、この異変時に、不確定因子は……」

「ん? 何か分かりましたか?」

 

 少しして、藍が何かを呟き始めた。

 既に迷宮入りで自己完結してしまっていた詩音は、新たな情報を求め彼女に声をかける。

 

「いや。ただこちらにも事情があってな。スペルカードルールが施行されて初めての異変で、出来るだけこの異変が円滑に解決されるのが望ましいんだ」

「……ちょっと、私の理解力が足りなさそうなんですが……」

「ああ、すまない。まあ要するにだな──」

 

 この時、藍は明らかに詩音を見くびっていた。

 所詮、稀に訪れる外界の迷い人だと。

 ()()()悪戯により来訪した、ただの招かれざる客だと。

 

 先ほど述べた様に、詩音は左の瞳の色以外は何の変哲もない少女である。

 それ故、たとえ賢者の式であったとしても、()()()人間と扱うのは仕方のないことなのかもしれない。

 

 

 思えば、ここが間違いだった。

 

「──古卿詩音、貴様を侵入者と見なし、幻想郷から排除する」

 

 相も変わらず暗澹とした森に、無数の光弾が浮かび上がる。

 

「え……………?」

「勿論、自分から出ていってくれればこんなことする必要はないんだがな。これまでのお前の言動からするに、好奇心に負けて残留するだろうよ」

 

 詩音の黒い瞳に、困惑の色が浮かぶ。

 やはりそこは人の子。平和な時代に生まれ育った者にとっては、突如として敵意を剥き出しにされることは慣れないことであり、困惑もするだろう。

 

「そんな、そんなことって……」

「……別に、命まで奪ったりするつもりはないぞ? というより、そんなに絶望するのならば今すぐにでも出て行ってもらいたいのだが」

 

 ……どこか様子がおかしい。

 

 紅い霧の中に浮かび上がる、一人の人間の顔。そこに見られたのは、これから排撃されることへの恐怖──

 

 ──などではなく、ただただ驚愕しているような表情で。

 

「だって、だって!

 ──異世界転生ものは、そっちの住人に受け入れられてナンボでしょ!」

 

 藍は盛大にずっこけた。儚い人間を幻想した彼女が馬鹿だったのか。

 

 ……そういえばこの人間、先ほど蟲妖怪に突然弾幕を放たれても特に動揺せず躱していた。確かに、今更敵意だけで恐怖、困惑するのもおかしな話である。

 

「ええい、調子が狂う! このまま、さっさと退場してもらうぞ!」

 

 そう、九尾の獣が雄叫びをあげる。

 同時に、数多の弾幕が詩音へと襲いかかった。

 

 彼女の放った弾幕は広がり、集まり、また広がって、少しの隙間をも奪取せんかのごとく詩音に迫る。凡人には肉を切らせるどころか、自らの肉を削がせる程の覚悟がなければこの弾幕の回避は不可能だろう。

 その弾幕は規則的な、美しい陣形を保ったまま、か弱き人間へと近づいていく。

 

 そして、ある一点にまで来たとき。

 

 

 突如としてその陣形が乱れ始めた。

 

「!? ど、どうなっているんだ!」

 

 先ほどまでの優雅な足並みは何処へやら、幻想の空に舞う弾幕は、藍の想定とは違う経路を辿り始めたのだ。

 一部は、明後日の方向へ飛んでいく。一部は、他の弾幕とぶつかり、消滅していく。

 ただやはりその多くは、

 

 翡翠の少女へと()()()()向かっていた。

 

 それらを詩音は、持ち前の身のこなしで華麗に避けていく。

 

 暴走した弾幕が、地面にぶつかり土が飛ぶ。枝にぶつかり木の葉が舞う。

 その、飛び交う土の間を詩音は駆ける。舞い踊る木の葉の中を飛び、そして宙返りまで披露する。

 まさに自然という競技場で、自分の演目をこなす手練れのような、そんな光景だった。

 

「おっ、おい! 古卿詩音!! どういうことだっ!!」

「えっ、何が──へぶっ!!」

 

 藍は思わず声を荒らげる。

 

「いてて……。

 ちょ、ちょっと藍さん、回避中に話し掛けられると、呼吸が乱れてしまうんですが」

「そんなことよりもだ!!」

 

 尚も藍は詩音に迫る。

 先ほどとは打って変わって、驚愕の色に染められていたのは藍の方だった。

 

「──どうして!

 どうして、私の弾幕が、お前に引き付けられていってるんだ!」

 

 藍は今まで、弾幕を避けられたり、相殺されたことはあっても、軌道をねじ曲げられたことはなかった。

 ……というより、空中に飛び交う力のカタマリを操ることなど、出来るものがいるのだろうか。

 

 しかしそれを行ってみせている、当の詩音と言えば──

 

「……え? これって、そういう仕様じゃないんですか?」

 

 ……また無意識。無意識とは、私たちの想像以上に便利なものらしい。

 

 まあ意識的に操作出来るのならば、進んで自分の方へと近づけはしないか。そう考えると、妥当と言えば妥当だが。

 

「くっ…………! ならば、これでどうだ!?」

 

 

 

 

 式輝『プリンセス天狐 -illusion-』

 

 

 

 

 次に藍が取った作戦は、奇襲だった。

 

 彼女が懐から取り出したスペルを宣言する。すると、彼女の体を中心にして、青い弾幕が放たれた。

 空に漂う紅い幻想とは対極の色彩を放つそれら青い幻想は、今度は引き付けられることなく詩音へと迫っていく。

 

 しかし、先ほどまでと比べると、いささか物量が足りない。

 

「おっと! 今度はスペルカードですか。なんか今日は調子が良いですし、このまま──」

 

 第一波を難なく躱す詩音。そのまま啖呵を切ろうと、前を向いた。

 

 しかし。彼女は確かに、弾幕の発生源に居たのに。動く素振りなど見られなかったのに。

 詩音の視界が捉えたのは、頭上を通過する青い弾幕のみだった。

 

「うおっ?」

「やれやれ、スペルカードはその不思議な能力の影響を受けないようだな」

 

 刹那、後ろで聞こえた声に詩音は振り向く。

 そこにいたのは果たして、金髪の、九尾の狐だった。

 

「うおぉっ!?」

「ただ弾幕を放つことのみが、スペルカードの役目ではない。これくらいの芸当、出来て当たり前さ。

 では、ここからが本番だ。私のスペル、お前には攻略できるかな?」

 

 そう言って、笑みを浮かべる。ようやく自分がちっぽけな人間を翻弄できたことが、余程嬉しかったらしい。

 その顔は楽園の管理者ではなく、一匹の妖怪として、弾幕ごっこを楽しんでいるようであった。

 

 そして、再度その体から四方八方に広がる弾幕が放たれる。詩音はそれを何とか避けるが、気づくとその背後には再び藍の姿が。

 

「……もしかして、瞬間移動ですか?」

「まあ、似たようなものだ。これを使うと、移動中は攻撃を食らわないからな。

 それよりも、体力は大丈夫か? 私のスペルの効果が切れるのもまだまだ先だからな、せいぜい頑張ってくれよ」

 

 そう嗤うとまた弾幕を放ち、消える。

 

「……! や、やってやりますよ!」

 

 負けじと笑う詩音。しかし、その顔には疲労の色が滲み出ていた。

 

 

 

 放つ。消える。

 広がる。躱す。

 

 

「そういえば、九尾の狐、って! はぁ、傾国の美女、で、有名、ですよね!」

「……まあ、そんな呼ばれ方をされた時もあったな。

 ほら、もう一度」

 

 

 放つ。消える。

 広がる。跳ぶ。

 

 放つ。消える。

 広がる。大きく避ける。

 

 

「はぁっ、はぁっ、やっぱりっ、美人さん、ですねっ、」

「世辞はいらん。ほら、お代わりだ」

 

 

 放つ。消える。

 広がる。転がって避ける。

 

 放つ。消える。

 広がる。なんとか合間を抜ける。

 

 

「いや、でも、背も、高いし。胸も──

 ──胸も…………………」

「……? どうした?」

「わっ、私はまだまだ大絶賛成長中なんですよ!!」

「うわっ! 木片を投げるな!」

 

 

 放つ。消える。

 広がる。木に当たる。木が砕ける。

 

 放つ。消える。

 広がる。土に当たる。土が抉れる。

 

 

 放たれる。消える。

 広がる。

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ──」

 

 人間の限界というのは、妖怪の何倍も早い。

 それは翡翠の少女も例外ではなく、詩音は既に息を切らし、肩で呼吸をしていた。

 

 というか、よくもまあ人間の分際でここまでやれたものである。

 放たれた弾幕は木を抉り、土を砕いていて、周囲の状況はなかなかのものだった。

 

 いよいよ体力の限界が近い詩音。あと二、三度弾幕が放たれれば、彼女は避け損ね攻撃を食らってしまうだろう。

 確かに弾幕ごっこでは、殺傷性は低められている。が、それでも人間に、当たってその後の快活な活動を許すほど妖怪の弾幕は甘くはない。現に今、放たれた弾幕はここら一帯の景色を凄惨なものに変えていた。

 

「くっ、こうなったら、目には目を! 歯には歯を!

 ──スペルカードには、スペルカードを!」

「それ、恐らく用法間違っているが」

 

 追い込まれた詩音はそう叫ぶと、手に力をこめ始める。

 諫言を呈するが、それにも耳を貸さない。

 

「というか、何をやっているんだ? 手に力なんか入れて……」

 

 ……藍がこう聞くのも、普通なら当たり前のことである。

 何故なら、スペルを発動するのには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

「イメージ……こういうのはきっと、イメージが大事……多分」

 

 それでも詩音は手に力を込め続ける。

 

 

 そして次の瞬間。

 

「っし! また出来た!」

 

 詩音の手に光が収束し、そこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 幻想『季節外れのバタフライストーム』

 

 

 

 

 そして、スペルが宣言される。

 

「っ!?!?!?」

 

 九尾の驚愕度は余裕でこの日一番を記録したが、そう悠長なことも言ってられない。

 迫り来る目映い弾幕に、彼女はもう一度自身のスペルによって移動を行う。ついでとばかりに弾幕を放ったが、それは詩音から溢れだす光の濁流に全て飲み込まれてしまった。

 

 詩音の弾幕の勢いに、藍は防戦一方だ。先ほどとは、攻守が逆転していた。

 

 

 

 暫くして、両者のスペルの効果が切れる。

 

「おいっ、 古卿詩音!!! さっきのスペルはどういうことだ! どうやったら、何もない所からスペルカードが出現するんだ!!

 しかもあの技は、蟲妖怪の物だろう!! どうしてそれを、お前が使用出来るんだっっ!!!!」

 

 詩音に口を開けさせる須臾すら与えず、藍は烈火のごとく捲し立てる。逆に言えば、それ程彼女が驚愕していた、ということだ。

 対する詩音はというと……

 

「んー。すごい綺麗でしたんで、真似出来るかなー、ってやってみたら。

 ──出来ちゃいました!」

 

 この有り様である。

 全く、自分の行ったことがどれほど異常であるか、この娘は理解していないのだろうか……。

 

「……もういい。お前には尋ねたいことが山程できた。手早く尋問を開始するためにも、とっとと墜ちてもらうぞ」

 

 この不可思議人間を相手にしていたら、いつまでもきりがない。

 そう判断した藍は間もなくの決着を予告すると、先ほどとは異なるスペルカードを取り出した。

 が、ここでまた詩音が水を差す。

 

「あ、そうそう尋問といえば。私、さっきからずっと藍さんに尋ねたいことがあるんですが」

「ああ!? 今度は何だ!?」

 

 度重なる驚愕、そして詩音の掴み所のない態度に、藍は憤りが蓄積していた。荒い声を上げた彼女を見れば、物凄く毛が逆立っている。

 それでも詩音は、そんな様子の妖怪を気にも留めず、懐を探る。人間にしてこうも一貫していると、もういっそ清々しい。

 

 そして彼女は、懐から三枚の紙を取り出した。

 

「うーんと……あ、そうそうこれです」

「……何だそれは」

「あれっ? 心当たりないですか?」

 

 詩音はその中から一枚を選び出し、掲げる。それは、どうやらスペルカードのようだった。

 

 ……先ほど、その場でスペルカードを()()()()という摩訶不思議なことをやってのけたのに、今更何をしているのか。

 そう考え、さっさと蹴りを着けようとし、スペルカードを構える。

 

 しかし。

 

「──っっ!!??」

「うーん……。なんだかこれから、藍さんとすごく似たようなチカラを感じるんですが……」

 

 突如翡翠に光りだした詩音の瞳に、

 

「そっ、それは……!?」

 

 そして何よりもその手に持つスペルカードから放たれる妖気に、化石のごとく固まってしまっていた。

 

 

 

 

 幻想深淵『四重弾幕結界 -麟子鳳雛-』

 

 

 

 

 何の前触れもなく宣言されるスペル。

 同時に、莫大な量の弾幕が何処からか集い始める。

 

「な……何故……!!」

 

 集結したそれらは、空中を漂う詩音の周りを、周回する。

 紅い空に浮かぶ赤や青の弾幕は、四重ではとても数え足りない程の、弾幕による結界を森の広大な領域に形成していた。

 その結界どうしの間に、藍も封じられる。

 

 前からは、迫り来る赤い弾幕。

 後ろには、廻り巡る青い弾幕。

 このままでは、墜とされてしまう。

 

 しかし、藍は動かない。

 いや、動けなかった。

 

 何故なら、

 

「どうしてお前が、()()のスペルを……!」

 

 どう足掻いても覆せないもの(主人と式の力の差)が、そこにはあるから。

 

 

 そして弾幕は、全てを光に染めていった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Stage2 境界の番人 ~八雲藍~

 

 Stage Clear!

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 紅い森。煙をあげて倒れる、九尾の狐。

 そして、そこに現れる一つの裂け目(スキマ)

 

「あらあら、やられちゃうなんて。我が式ながら情けないわねえ」

 

 スキマから出てきた金髪の女性は、その狐の頭を膝に乗せると毛繕いを始めた。

 その顔は一見優しそうだが、どこか胡散臭さを醸し出している。

 

「──でもまあ、」

 

 そのまま彼女は、斜め上を見つめ、虚空に向かい口を開く。

 その目線の先には、羽ばたく一匹の蝙蝠が。

 

「あのお嬢さんお好みの、運命とやらは無事動き出したみたいね」

 

 そして、妖怪の賢者は、静かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしてもあの人間、どうやって私の技を……。

 ……翡翠の目────

 

  ────…………っ!?」

 

「……いやまさか。そんなこと、ある筈がないわね……」

 

 

 

 

 

 

 ──霧は、まだ深い。

 




・MEMO
麟子鳳雛《りんしほうすう》
→将来性のある子供のたとえ。

すぐ怒り、すぐ驚き、すぐ振り回される──
ここの藍さま、スゴく弄りやすそう(ゲス顔)
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