そこには大洗女子学園の生徒会メンバーこと角谷杏、小山柚子、河嶋桃の三人が居た。
授業中にもかかわらずに三人が学食に居ることに巧は疑問を抱いていた。
その疑問を三人にぶつけた。
「君たちは何でここにいるんだい?授業中のはずだと僕は思っているけど・・・」
巧は聞くと片眼鏡の桃が答えた。
「戦車道の練習と練習試合で仕事が立て込んでいるんだ。授業を公欠で仕事をしているんだ」
「それは理事長が許してくれるのかい?」
巧は黒森峰女学園では絶対にありえない事なので聞き返した。
「生徒会には特権が与えられているんです」
巧はそういうものなのかと思った。
「それで教官はなんでここにいるの?」
会長の杏に質問をされたのですぐに答えを返した。
「早めに来てしまったんだ。お昼も食べてなかったから生徒の居ない学食で昼食をとっておこうかなと思ってね」
納得する生徒会メンバー。
会長の杏が何かひらめいた顔をした。
「私達も昼食をとろうと思ってさぁ。教官も一緒にどう?」
巧は別にデメリットもないので一緒にすることにした。
その後は巧は食券を買って昼食を受け取った。
「生徒会室で食べるからついてきて」
杏と二人の後ろを巧はついて行って大洗女子学園の生徒会室に向かった。
大洗女子学園の生徒会室は理事長室のように広く私物が少々ある。
黒森峰女学園の戦車道隊長室も同じように広く理事長室のようになっているので少しは納得がいっている巧。
四人は真ん中のソファに腰掛けてテーブルに昼食を置いて囲んだ。
そして巧は一言だが確実で大きな爆弾発言をした。
「君たちは全国高校戦車道大会で優勝しないと廃校なんだよね?」
三人は度肝を抜かれた驚いた顔をした。
巧は文部科学省学園艦教育局長の辻廉太とは飲み仲間でみほが転校する大洗女子学園の事を調べている時に廉太本人の口から廃校の真実を聞かされたのだ。
「その通りだ。大洗女子学園は今年度の全国高校戦車道大会で優勝しないと廃校は免れない」
いつもへらへらしている生徒会長の角谷杏が真面目な顔で話を始めた。
「色々みほちゃんにした事に言いたい事はあるけれどこの件は別だよ。廃校の件は僕に任せて」
三人は顔を見合わせた。
巧が今から何かをするのか理解してないのだ。
巧は携帯を取り出してあるところに電話をした。
「もしもし文部科学大臣ですよね?」
その一言で巧以外の三人は凍り付いたように固まった。
『な、何かね?』
電話の相手である文部科学大臣は格下である巧を相手に緊張していてたじろいでいた。
「大洗女子学園の廃校の件を推進しているのは貴方だと聞きました。単刀直入に言います。大洗女子学園の廃校の件を取り消してください。これは警告です」
巧の言葉に緊張が走る文部科学大臣。
それ以外に三人も石像のように呼吸音すら聞こえなかった。
『う、うむ。わかった取り消しておく』
「ありがとうございます」
巧は電話を切って一息を吐いて一言、言った。
「大洗女子学園の廃校の件は一応取り消したよ」
その一言に複雑な感情を抱く三人。
喜んでいいのか?と思い言葉が出ない状況が続いた。
その沈黙を破るように杏が声を出した。
「どうして私達が苦労して廃校を阻止するチャンスを与えれたのに、なぜ教官は簡単に廃校を止めれるんですか?」
杏は先程のような口調ではなく真面目に真剣に会話をしていた。
「今回の廃校の件は文部科学省学園艦教育局のバックにいる文部科学大臣が推進している事なんだ。文部科学省学園艦教育局長である辻廉太さんとは親友でね。この事を聞いたんだ。そして僕が文部科学大臣に電話をして取り消してもらったんだよ。文部科学大臣とは“仲が良く”てね。世間に知られたくない秘密が僕の日記帳に書いてあるくらいにはね」
それを聞いた杏は一言を口から漏らした。
「ブラックメール・・・」
ブラックメール、平たく言うと脅迫状みたいなものだ。
巧の独自の情報網で掴んだもので文部科学大臣以外にも巧は他の政界の人間のブラックメールを持っている。
「彼にとっては命だよ」
巧の毅然とした態度に三人は恐怖すら感じ始めていた。
「それとこれは忠告だよ。次もしもみほちゃんを傷付ける事があれば・・・わかってるよな?」
巧が普段絶対に口にしない敬語が抜けた言葉。
その言葉に込められた覇気は未知数で三人は蛇に睨まれた蛙の如く動けずに居た。
「その事に関しては謝罪します」
頭を下げようとした杏の頭に巧は手を乗せた。
「いいよ。君たちも君たちなりに自分たちにできる母校を救う方法がこれだったんだね。よく頑張ったよ。だからこういう時は大人に頼ってくれていいんだよ?」
巧はその苦労を認めるかのように頭を杏の撫でた。
その瞬間、杏の目から大粒の涙が出てきた。
いや杏だけではない。
これまで三人で廃校阻止に理事長よりもこの学校の全校生徒よりも苦労していて、その苦労が報われた気持ちとこれまで誰も頼れなかったのに手を差し伸べてくれた巧への感謝の涙である。
初めて三人の気持ちが救われた。
泣いている三人を巧は優しく抱き込んだ。
「もう安心していいんだよ?廃校はなくなったんだ」
巧は三人を泣き止むまで声をかけて続けた。
三人は段々気持ちが落ち着いてきて巧は三人を放して元の位置に座った。
三人はまだ少し涙が出ているが落ち着てきていた。
「廃校阻止の件は大洗女子学園の戦車道継続を条件にします。何も気にせずに学生生活最後の思い出に何かに夢中になった思い出を作ってください」
巧は優しくそう言った。
巧自身も学生時代に一生懸命取り組んだ戦車道を大洗女子学園の生徒たちに何も気にせずに思う存分やって欲しいから廃校を取り消したのだ。
みほのトラウマを呼び起こした事に巧は怒りを覚えたが、それ以上に今現在はみほが戦車道をまた続けてくれた事と勝つ以外の戦車道の楽しみ方を理解したからそのお礼として、みほの新たな居場所の為に廃校を取り消したのだ。
そしてもう一つの理由を巧は口にした。
「みほちゃんに戦車道を教えたのは僕なんだ。西住流ではない黒森峰女学園在学中に編み出した僕の『みんな』で勝つ戦車道。それは西住流には相反する事だからみほちゃんはしほさんに怒られて戦車道にトラウマを植え付けてしまった。だからこれは僕の責任でもあるんだ。でも君たちはみほちゃんに戦車道を再開する機会をくれただけだよね。だからさっき脅すようなことをして悪かったよ。ごめんなさい」
巧は先の事を謝った。
深々と頭を下げて謝った。
だけど三人は謝罪を望んでいなかった・・・
三人は必然的に同じことを思っていた・・・
それは・・・
『どうすれば巧が西住みほではなく、私だけを見てくれるだろうか?』
っと心の中で嫉妬の感情が渦巻き始めていた。
巧がみほの名前ばかりを言っているので三人の心の中に嫉妬と言う大きな感情が生まれ始めていたのだ。
頼れない人間の中からたった一人の手を差し伸べてくれて褒めてくれて、心の安らぎが三人の心を大きく変えたのだろう。
「あんがとね。お礼に付き合ってあげようか?」
その一言に巧は真剣な顔をしていたはずが糸が切れたように緊張が切れて固まってしまった。
その杏の一言に反応するかのように桃と柚子が対抗した。
「会長それなら私の体を差し出します。どうぞ私の体に種を・・・」
「桃ちゃんは泣き虫だから耐えれないよ?会長は貧相な体ですし、私の体を捧げます」
三人の間に火花が散っているように見えた。
巧はそれを止めるように言った。
「学生の本文は勉強だから授業を受けてきなさい。仕事は僕がやっておくから。言う事を聞かないと僕は帰るからね」
その一言で三人は猛スピードで生徒会室から出て行った。
巧は生徒会室の奥にある理事長が座るようなイスに腰掛けて机の上にある書類仕事を始めた。
高校生には多すぎるほど書類があり、自分にできる物をかたずけ始めた。
巧も日本戦車道連盟でデスクワークをしているので早々と仕事を終わらせていった。
思った以上に簡単に終わってしまい巧は少し暇になった。
一息つこうとした時だった。
巧の携帯が鳴った。
巧は携帯の画面を見た。
そこには非通知で電話が来ていた。
少し巧は驚きながら電話に出た。
「もしもし、あなたは誰ですか?」
巧は一言、率直に聞いた。
『私はただの貴方のファンだ』
変声機で声を変えられていて巧は電話の主が誰か理解できなかった。
「そのファンが僕に何のようだい?」
『貴方に聞きたいことがあるんだ。君は戦車道が好きですか?』
巧は言うまでもない質問に溜め息を吐いて答えた。
「もちろんだ」
『そうですか・・・ならまた連絡します。今度は直接会うための場所を言いますので』
そう言って一方的に相手が電話を切った。
巧は喋り方から電話の相手を割り出そうとしたが、あいにく全然知らない人物だった。
巧は考えても仕方ないと思い時間が解決してくれると考えた。
そしてやることもないので椅子から立ち上がり体を伸ばしたりして体をほぐして疲れをとろうとした。
そうしているとまた携帯が鳴る音が聞こえた。
次は誰だろうと思いながら巧は携帯を取ると画面に書かれていた名前は・・・
『しほさん』
だった。
巧はみほの事を悟られないように恐る恐る電話に出た。
「もしもし、どうしたんですか?」
『巧さんが休暇を頂いたと聞いたので電話をしました。熊本に戻ってこれますよね?』
巧にとっては一番困る質問だった。
しほに巧が休みを与えた事を言ったのは児玉七郎だろう。
だけど巧はしほさん相手に大洗に居ることだけは伝えなかったことだけは心の中で感謝をした。
「私情で帰れそうにないです」
『そうですか・・・巧さんは今どこにいますか?』
しほに一番困る質問をされた。
巧はどう言い訳をするか思いつかずにいた。
『もしかして千代のところですか?』
「い、いえ違います」
しほが良からぬ方に勘違いを始めていたので巧は誤解を解くべく否定をした。
『そうですか。でも本当にどこに居るのですか?』
結局、巧は話を逸らすことに失敗してしまった。
ここで巧は最後の奇策に出ることにした。
「母の日のプレゼントまだですしたよね?しほさんには黒森峰に在学してた時に自分の第二の母親でしたからそのプレゼントを選んでるのですけど・・・」
そう伝えると電話の向こうで携帯を落とす音が聞こえた。
そしてしほが電話を拾う音が聞こえた。
『巧さんありがとうございます。とても嬉しいです。お義母さんと呼んでくれるという事はまほとの婚約を認めてくれたという事ですね』
「えっ!?」
しほが盛大に勘違いを始めている事に巧は戸惑いを隠せなかった。
『また熊本に戻って来たら正式な書類の元で婚約しましょう』
巧が固まっている内にしほが一方的に電話を切ってしまった。
巧は大きな地雷を踏んでしまったと後悔をした。
急にまほも婚約と言われたら困ってしまうだろうから巧は婚約したことよりもまほの気持ちを無視してしまったことに後悔をした。
悔やんでいる巧にまたもや電話が鳴った。
次は誰だと思いながら巧は着信の相手を確認した。
『千代さん』
巧の額から変な汗が止まらなくなってしまった。
巧は恐る恐る電話に出た。
『巧さんしほに聞きましたよ。西住の娘と婚約・・・ドウイウコトデスカ?』
「い、いえ誤解です!」
巧は誤解を解くべくしほが勘違いをしている事を言った。
「だから婚約は勘違いなのです。誤解を解く前に電話を切られてしまって誤解が解けなかったんです」
千代には先程の事を包み隠さずに話した。
「なので誤解です。今度しほさんに会った時に誤解を解くので婚約はないに等しいです」
巧の必死の弁解で誤解が解けかけていた。
だが千代は巧がしほを母親だと思っていたことを気にしていた。
『それなら私も巧さんの母親なのではないかしら?』
巧は図星を突かれて言い返せなかった。
だから巧は千代にしほと同じようにするためにこう答えた。
「千代さんもプレゼントします」
『それならいいわ』
千代の機嫌が元通りになり、いつも通りの調子になった。
『それなら西住と同じく愛里寿ちゃんと婚約してもらいますから』
「えっ!?千代さんそれは!」
巧が抗議する間もなく千代が電話を切った。
巧は呆然と立ち尽くしてしまっていた。
西住家と島田家の戦車道名門流派同士の間に更に亀裂を与える事になってしまった。
その事に大きな後悔の念を持ってしまいどうにもできないようになってしまった。
巧はくよくよしても仕方がないと思い、気持ちを切り替えていこうと思った。
そして巧は大洗女子学園の戦車道に大きな影響を与えるのであった・・・
どうでしたか?
作中に搭乗した人物2名はオリジナルキャラです。
ちなみにまだ一日目の放課後が残っています・・・