やることが無くなった巧は大洗の町を散策していた。
大洗の地理に詳しいわけでもないのでただ散歩しているだけとも言える。
巧は周りを見渡していると目の留まる人物が居た。
「あの子は確かⅣ号の操縦手の・・・」
大洗女子学園のみほの乗っているⅣ号の操縦手の少女が一人で歩いているのを発見した。
「えーっと確か、冷泉麻子さんだったかな」
巧は名前を思い出して呼び止めた。
「どうしまs・・・って誰かと思えばあんたは」
「伊藤巧です。みほがお世話になってます」
社交的に構える巧にたじろぐ麻子。
「君はどうして一人なんだい?みほたちはどうしたの?」
「西住さんたちは買い物に私はおばあに会いに行ってたから」
巧はそれを聞いてある事をひらめいた。
「暇なら甘いものでも食べに行かないかい?僕だけで甘いものを食べていると変だからね」
巧は甘いものは人並みに好きだが男一人で食べているのを変な目で見られて以来、巧は誰か女の子としか行かないようにしているのだ。
巧の一言で麻子の目が輝いていた。
「いいぞ」
「何処か良い喫茶店にでも入ろう」
そのまま二人は近くの喫茶店に入った。
「いらっしゃませ。何名様ですか?」
「二人です」
巧が定員とやり取りしてテーブルに案内された。
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
店員がそう言って去って行くと巧はメニューを開いた。
「好きなものを頼んでいいよ。これでも結構、稼いでるんだ」
麻子がそれを聞いてメニューに目を落すと麻子が驚いた表情をした。
「お、おい、本当にいいのか?」
麻子が聞き返すのも無理もない。
ここの喫茶店は一般的な喫茶店より値段も高くてコーヒー一杯でも五百円以上もする店なのだ。
「一応、持ち合わせだけでこれくらいあるから大丈夫だよ」
巧は自らの財布を開いて見せた。
中にはかなりの札が入っていた。
「それならいいが・・・」
麻子は納得してメニューに目を落とした。
スイーツの種類もかなりあり、麻子は迷っていた。
どっちにしようかと目で見て比較しながら考えていた。
それを見かねた巧があることをひらめいた。
「すいません。ブルーマウンテンとこれとこれください」
巧は麻子が迷っていたものすべてを注文した。
「飲み物何がいい?」
巧の毅然とした態度に麻子は驚きを隠せなかったが、聞かれた事はすぐに返した。
「これで」
「かしこまりました」
麻子は店員が去って行くのを確認すると巧を凝視した。
それを確認した巧が麻子の言わずとも言いたいことが分かった。
「遠慮しないでいいんだよ」
「こちらも社交辞令かと」
「学生なんだから気にしない」
巧はそう言った。
麻子は引っかかりつつも気にしない事にした。
そして数分沈黙の間を経て注文した品が届けられた。
並べられた品々に麻子は興奮を隠せなかった。
それを見た巧は一言。
「どうぞ好きに食べて」
そう言うと麻子が礼儀正しいが、子供のように食べ始めた。
それを見て巧はほほえましく思った。
知らず知らずのうちに麻子の頬には生クリームがついていた。
それを巧がナフキンでそっと拭いてあげた。
「!?」
麻子がぴくッと驚いた。
「ごめん。びっくりさせたかな?」
「いや、大丈夫」
麻子は口ではそう言っていたが、内心すごく動揺していた。
「(今の・・・物凄く懐かしい・・・)」
麻子は何か心の中で引っかかっていたのだ。
「どうしたんだい?具合でも悪いのかい?」
「いや・・・」
麻子は大丈夫な素振りを見せているが、周りから見ると凄く顔色が悪かった。
「もう店を出ようか」
巧に言われるがままに席を立った。
巧は会計を済ませようとレジの前に立っていた。
「っ!」
麻子は驚いた。
巧の後ろ姿が死んだはずの父親のように見えていたのだ。
巧は会計を済ませて麻子の方を見た。
麻子は顔をしたに下げていて見えないようになっていた。
「大丈夫かい冷泉さん?」
麻子は巧の言葉を聞いて感情が保てなくなってきていた。
巧の言った冷泉と言う単語に反応したのだ。
「ま、麻子だ。麻子と呼んでくれ」
麻子は最後の賭けに出たのだ。
奇妙にも自分の名前を言われたら落ち着けるのではないかと思ったのだ。
「いいのかい?それじゃあ麻子、行こうか」
巧のその一言で麻子の気持ちや感情がすべて変わった。
「うん
お父さん」
「えっ?」
麻子は驚いている巧の手を引いて店から出て行った。
「ど、どうしたんだい?」
巧は心配そうに麻子に聞いた。
「お父さんどうした?」
「そのお父さんだよ」
麻子はわかっていないような顔をした。
「お父さんはお父さんでしょ?」
巧はこの状態になる要因を知っているような気がした。
過去に両親を亡くした人物が似た人間を脳で同一人物と認識することがあると。
まさにこの状況を言うのであろう。
「そ、そうだったね」
そしてもう一つ。
それを拒絶すると精神に異常が起きる可能性があるのだ。
巧はそれを恐れてあえて麻子の父親になりきるようにした。
「そろそろ家に戻ろうか?」
「うん。お父さんおんぶして」
「いいよ」
巧は麻子をおんぶした。
麻子は巧におんぶされたら、すぐに寝てしまった。
麻子は低血圧で朝が弱く、今日の練習試合も朝が早くて眠かったのだろう。
巧は夕焼けが落ち始めている大洗の街を歩いて学園艦のある港に向かって歩くのだった。
日はかなり落ちていて、学園艦の出港が迫っていた。
巧も学生時代は黒森峰の学園艦で生活していたので、学園艦の出港に急いで駆けつけているのは実に十年以上も前の事で、少し懐かしく思っていた。
やはりそういうところは学校は違えど一緒なのだろう。
麻子の吐息を感じながら巧は大洗女子学園の学園艦に到着した。
そのまま階段を上がり、艦上に上がって行った。
そこには大洗女子学園の戦車道履修者が何人か居た。
この中にはみほも居た。
「巧さんなんでここに・・・って麻子さん?」
みほは巧におんぶされている麻子を見ていた。
巧は苦笑していた。
「少し色々とね・・・」
「ふ~ん色々・・・」
みほがいつも通りに瞳から光が消えてふらふらと巧の方に近づいてきていた。
「ちょっと待ってみほちゃん。これには理由が・・・」
巧はこれまでの出来事と起きているすべてを話した。
どう対応すべきか、この状態をどうするかを話した。
「実は麻子は小さい頃にお母さんとお父さんを交通事故で亡くしてるんだ。多分そのせいだと思うんだけど・・・」
沙織は麻子の過去に両親を交通事故で亡くした事を告白してくれた。
これにより巧との話が一致することになった。
みんな意気消沈としていた。
だがみほはなぜか目を輝かせていた。
「巧さんがお父さんなら、妻の私はお母さんですね!」
場違いのようなテンションで空気を悪くするみほ。
巧は苦笑するしかなかった。
「んぁ・・・」
みほの声で起きてしまう麻子。
周りを見渡して状況を読み取り始める麻子。
状況を理解した麻子は巧の背中をするすると降りて立ち上がり、巧の右手と手を繋いだ。
「麻子さん、お母さんとも手を繋ごう」
「西住さんはお母さんじゃない。私の両親はお父さんだけだ」
麻子は巧の手を力強く握っていた。
麻子は現実から逃避するために自分の記憶まで捻じ曲げて捏造しているのだ。
みほの顔は表情は険しくなっていった。
「麻子さんおかしいとは思わないの?巧さんと自分の年齢差に気づいてないの?年齢が合わないと思うけど」
「みほちゃんそれは!」
巧はみほが真実を言おうとしているのを止めようとしたけど、止められずにすべてを言ってしまっていた。
巧は恐る恐る麻子の表情を確認した。
「西住さんでも冗談を言うんだな」
麻子は真に受けていなかった。
巧は内心ホッとしていた。
「麻子、先に家に戻ってくれるかな?」
「うん。先に戻ってるから」
巧は麻子を自分の家に帰して自分が喋りやすくした。
麻子が家に帰って行くのを確認して巧は口をひらいた。
「まず最初に僕がここに居るのは三日間の休暇をもらったから居るんだ。そしてその間の期間は大洗女子学園の学園艦に乗船し、大洗女子学園の戦車道を指導させてもらいます」
大洗女子学園の生徒会のメンバーとそこに居合わせている巧が保護した一年生達が喜んでいた。
「それじゃあ私の家に泊まってくださいね」
みほが巧をそう言うが巧は首を横に振った。
「・・・何で、ですか?」
みほの瞳はまたどす黒く暗く光のない瞳をし始めた。
「麻子の事が心配なんだ。僕の責任なんだ」
「でも、私は巧さんと!」
「みほちゃんには悪いけど今回は許してくれないか?この埋め合わせは絶対今度するから」
みほは少し考えて答えを出した。
「・・・うん、わかった。でも巧さんちゃんと埋め合わせを考えてくださいね?」
「僕は約束を破らないから心配しなくても大丈夫だよ」
巧はそう返したが、みほが素直に引き下がった事に少し違和感を覚えていたが、気にしなかった。
「(麻子さんなら巧さんを盗られる心配はない。グロリアーナのダージリンさんの言う通り、私もそろそろ準備をしないと・・・)」
みほが今回、巧に事をあきらめたのはダージリンの助言と宣戦布告で焦っていて何かの準備を始めようとしている・・・
それは今後に大きく影響する事は巧も誰にも知らない・・・
各自は各々に解散を始めた。
だけど巧は大きなミスを犯していた。
「そういえば家の場所聞くの忘れた・・・」
このままではみほの家に行けばカッコ悪いし、泊まる場所もないので野宿コースになってしまう事を巧は察した。
とりあえず着替えを買うために服屋で替えのシャツと下着類、私服を少々買って途方に暮れていた。
皆が解散して数十分ぐらい時間が経過していて、巧の体力が無くなってきていた。
途方に暮れて歩いていると呼び止められる声が聞こえた。
「あ、あの伊藤巧さん?」
そこにはⅣ号の通信手をしている武部沙織が立っていた。
「Ⅳ号の通信手の武部さんだよね?」
「え、あっ、はいそうです」
巧は少し緊張気味の沙織を和ませようと巧は柔らかい笑顔で話を始めた。
「緊張しなくて大丈夫だよ」
「あまり男の人と話したことがないから緊張しちゃって」
照れた笑顔で答える沙織に巧は少し安心したようだ。
沙織が歩こうとした瞬間!
「きゃ!」
足をつまずいてこけようとしていた。
「危ない!」
巧は沙織の手を引いて腰に手を掛けて抱き抱えた。
「よかった・・・」
巧は沙織がこけなくて一安心していた。
だけど沙織は・・・
「(・・・こんなにドキドキするなんて初めてだよ~!これが恋なのかな?)」
顔が真っ赤になってドキドキが止まらなかった。
「すまないけど麻子の家まで案内してくれるかな?恥ずかしながら家の場所がわからないんだ」
「私でよければお供します!」
元気の良い沙織の姿を見て一安心する巧であった。
「(巧さんを振り向かせるにはどうしたらいいんだろう?結婚情報誌を参考にした方が良いかな?やっぱり大胆な行動と巧さんを想う気持ちがあれば振り向いてくれるはず!)」
巧の近くでヤンデレになりかけの少女が居るという事は本人も知らなかった・・・
沙織と巧はそのまま麻子の家まで行き、家の扉を開いた。
不用心にカギもかかっておらずに玄関で靴を脱いで部屋の奥に行くと床で寝ている麻子が居た。
顔を見ると泣いた跡があった。
巧は寂しがらせたと罪悪感があった。
「麻子ったらこんなところで寝て!」
「疲れてるんだよ。僕も疲れたしこのまま寝かせてあげよう」
沙織は巧の言った事に納得して麻子の布団を敷いた。
その間も麻子が起きる気配のなく、巧は麻子を布団に移動させた。
「沙織ちゃんもありがとう」
「気にしないでください。巧さんも横になったらどうですか?」
「お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」
巧は寝っ転がった。
休憩につもりで寝っ転がったが、思いのほかの疲労に就寝してしまった。
「(可愛い寝顔するだな~・・・キスしてもバレないようね?)」
沙織は巧を起こさないようにそーっと唇を触れ合わせた。
沙織は更に愛おしく思ってしまい、巧の隣に寝っ転がった。
「(なんだが眠たくなって・・・)」
沙織も疲れているのかすぐに寝てしまった。
「んぁ・・・お父さん・・・」
麻子が眩しくて起きてしまい、寝ている巧を確認して沙織の反対方向に寝っ転がって就寝した。
麻子と沙織に挟まれて就寝する巧は今日一日でかなりの出来事があった。
修羅場もあれば、急に娘が出来たり、全然知らない街を歩き回ったり、仕事をしたりして巧にはかなりの疲労が溜まっているだろう。
だが巧本人は気づいていない・・・
まだ地獄の三日間が始まっていない事に・・・
どうでしたか?
まだ一日目に入っていないのに二人も変化しました・・・
ここで読者様に質問ですが、このまま大洗の生徒全員をヤンデレにするか、一部正常者が居るかどっちにしようか迷っているので意見をお願いします!
それではまた次回!
チャオ!