変境で育てられた自称常識人   作:レイジャック

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……今の季節って夏だったか?春の季節だと俺の中では認識しているんだが?




気温28度は最早夏じゃねーか!!!!!




あ、暑い〜液◯窒素を〜〜!!


Are You Ready?

昨日、早めに休息をとった事もあり窓から光が差し込む時よりも早く起きてしまった。だが、体調は最高に良く体を動かしたい気分なので日が昇る前なのも気にせず部屋着のまま外に出て昔を思い出しながら久しぶりにランニングや素振りをした。汗も少しかいてきたので刀を鞘にしまい近くの銭湯によって汗を流してから本部に戻る。

 

戻ってきた頃には日も昇って自室の窓から輝かしい太陽の光が入り、部屋は明るくなっていた。部屋着を着替えいつものスーツに身を包み込み準備を整えた後、少しだけ自室で本を読んで時間まで過ごし、そろそろ頃合いに近づいて来たので本をしまい昨日言われた通り折紙紫のいる部屋まで向かった。

 

 

_____________________________________

 

 

ある一室にて重苦しい空気の中、1人の女性……折紙紫がその場にいる他の者に告げた。

 

「……真希、寿々花。今回お前たちは箱根で、荒魂を一掃する作戦を指揮しろ。この作戦は、親衛隊結成以来、これまでにないほど大規模なものになる予定だ。そのため、舞台には多くの刀使を用意した。装備や兵糧も十分なはずだ」

 

「重要な任務をお与えいただき、ありがとうございます」

 

「今回の作戦、必ず成功させてご覧に入れますわ」

 

「期待しているぞ」

 

彼女達に指揮を任せ話も終わったのと同時にノックの音が聞こえた。

 

「……来たか。真希、寿々花。作戦前にお前達に紹介しておく者がいる。あと少しだけ付き合ってもらう」

 

「分かりました」

 

「分かりましたわ」

 

「……入れ」

 

「失礼する」

 

一言告げた後。扉を開け部屋の中に1人のスーツ姿に仮面をつけた怪しい人物が入ってきた。

 

「先約がいたか……出直した方がいいか?」

 

「いや、いい。今回はお前を2人に紹介する為に呼びだした」

 

「ほう、また何か企んでいるかと思っていたぞ」

 

「貴様!紫様に失礼だぞ!」

 

「真希。これが奴とのいつものやりとりだ、気にするな」

 

「ですが!」

 

「いいと言っている」

 

「くっ……分かりました。紫様がそう仰るのであれば……」

 

「……そろそろ話を進めないか?生憎、俺にもやる事がある」

 

「ふっ、何を言っている?今日は雑務以外特にやる事もないだろ」

 

「それを言われると胸が痛むな」

 

「これしきの事でお前が傷つくとは思えないな」

 

「……いいから話を進めろ」

 

「貴様!無礼にも程があるぞ!」

 

「ええ、そうですわね。少し、紫様に失礼ではなくて?」

 

「真希、寿々花」

 

「……失礼しました」

 

「……失礼致しました」

 

「それでは本題に入ろう。見てわかると思うが、ここにいる彼女達が親衛隊の第一席と第二席だ。2人とも自己紹介をしておけ」

 

「はい。折紙紫親衛隊第一席、獅堂真希……よろしくお願いします」

 

「同じく親衛隊第二席、此花寿々花。よろしくお願い致します」

 

「この2人が例の親衛隊か……第三席と第四席はどうした?」

 

「今回はここにいる2人に作戦を任せるついでにお前の事を紹介しておこうとしただけだから、他の2人は呼んでいない」

 

「俺の紹介はおまけ程度とはな……ふっ、まあいい。改めて自己紹介させてもらう、ここの本部で働く職員のゼロだ……以上だ」

 

「相変わらず自己紹介が簡素だな」

 

「放っておけ。あまり自己紹介は得意ではない」

 

「ゼロ……だと……!?」

 

おい、そこの一席!何……だと……!?みたいに言うな!バカにしているのか?ああん?

 

「何だ貴様、俺の事を知っているのか?」

 

「はい。親衛隊に入隊する前に学校でゼロ……様の噂を耳にした事があったので……」

 

「私もゼロ様の噂は聞いた事がありますわ」

 

「そうか……それについては聞かないでおく。それよりも第一席と第二席、俺を様付けで呼ぶな。ゼロでいい……それと敬語は不要だ」

 

「よろしいのですか?」

 

「敬語を使われるのは好かん……タメで話せ、その方が楽だ」

 

「分かりました……では、遠慮なくそうさせてもらう」

 

「そうですわね。本人から許可を頂いのですからそのようにさせてもらいますわ」

 

「ああ、第一席と第二席は理解が早くて助かるぞ」

 

「ゼロ、僕の事は名前で呼び捨てにしてくれて構わない」

 

「私も名前で呼び捨てにしてくれて構いませんわよ」

 

無茶振りキタコレ!そんな事すんなりできるのはDQNだけだ!……だが、ここで遠慮すれば舐めプされてしまう……腹を括るしかない!

 

「……分かった。お言葉に甘えよう……悪いが用が済んだなら俺は戻るぞ」

 

「そう焦るな。実はお前にもう一つ言い忘れた事がある」

 

「何?……また面倒な事ではないだろうな?」

 

「さあどうだろうな?……そういえば、お前にはちゃんとした席を用意していなかったな」

 

「……まさか、紫様!」

 

「ご明察通りだ……ゼロ、お前にはこれから親衛隊のサポート要員として働いてもらう。さしずめ、第0席とでも読んでおこうか」

 

「何……だと……!?それでは今までの業務はどうするつもりだ……」

 

「それについては心配はいらない。通常、お前には今まで通り過ごしてもらい、有事の際に親衛隊と共に行動してもらう予定だ。その為のサポート要員というわけだ」

 

「くっ!それならば確かに可能だが……因みに拒否権はあるのか?」

 

「別に断ってもらっても構わない……だが、その場合はまた前のように外に出る機会が増えるかもしれないがな」

 

「……いいだろう。紫様の命令に従おう」

 

「賢明な判断だ。さて、そう言う事でこれから親衛隊と共に行動する事があるかもしれないが、2人とも何か意見があるなら聞いておこう」

 

「僕は紫様の判断にお任せします」

 

「私もですわ。それに、あの噂が本当ならば私としても心強いですから」

 

「なるほど、それでは今後は奴と共に任務を遂行しろ。言っておくがあいつは気まぐれに行動する曲者だ。くれぐれもどんな事でも協力してくれるとは考えるな」

 

「分かりました」

 

「分かりましたわ」

 

「……おい、人をひねくれ者みたいに言うな。俺は物事を自分で決めて行動しているだけだ」

 

「ああ、そういう事にしておこうか」

 

「……もういい、俺は戻るぞ」

 

「そうしてくれて構わない。ご苦労だったな」

 

「気にするな……そこの2人共、あくまでも俺はサポート要員だという事を忘れるな。できない事は断るが無理でなければ協力する……これからよろしく頼む、真希、寿々花」

 

「ああ、僕もあまり無理をさせないように努力するよ」

 

「そうですわね。私も極力負担を減らすように努力致しますわ」

 

「そうしてくれ……だが、無理だけはするな。無理をするくらいなら俺が手を貸してやる……それでは失礼する」

 

用が済み紫様から退室の許可を得られたので、名前呼びをした恥ずかしさから逃げるように部屋を出て行った。立て続けに残った親衛隊の2人も部屋から退室して扉を閉めた後、廊下の窓から外を眺め先程の人物について語る。

 

「あれが噂のゼロか……」

 

「私、初めて見ましたが噂とは少し違いましたわね。もう少し怖い人だと思っていましたわ」

 

「案外気さくな人だったね……」

 

「そうですわね……真希さん、いろいろ考える事もありますが今は作戦に集中しますわよ」

 

「そうだね。紫様からお任せされたこの作戦、絶対に成功させてみせるさ。行くぞ寿々花、まずは作戦本部で策を練るぞ」

 

「分かりましたわ」

 

2人は気を引きしめ直し今回の作戦計画の為、作戦本部へと向かっていった。

 

 

________________________________________

 

俺が紫様の用事を済ませた後、昨日と同じく書類作業をする部屋に行き、椅子に座ると同時に来訪してきたいつもの職員から書類を手渡され、職員が退室してから作業に没頭した。

 

作業に没頭しすぎて昼食を摂り損ねたままだったので、作業も終盤に差し掛かった頃になって腹が鳴った。

 

「……もうこんな時間になっていたのか……少しぐらい休憩しても問題ないだろ」

 

作業を一度中断しそこまで食欲が湧かなかったので一先ず机に突っ伏して一眠りしようとした……が、突然の激しいノック音によって眠気が覚め慌てて作業をしている素振りに戻る。いつもならここで、入室許可を出してから入ってくるのだが、今回は許可も待たずに扉を開けて部屋の中に1人の職員が入ってきた。

 

「作業中すみません、緊急の要件だったので許可もなく入室事をお許しください」

 

「許す。それで、緊急の要件とは?」

 

「はい、紫様からゼロを今すぐ連れてくるようにと……」

 

「そうか……了解した。ではすぐに向かおうか」

 

「ありがとうございます」

 

「いやなに、丁度休憩をしようとしていたところだったのでな。気にする必要はない……それでは行くか」

 

「はい!」

 

内容も分からないがこの職員の慌てようから冗談ではない事だけは確かだと判断し、すぐに壁に立て掛けてある刀を持って部屋を出て諸君の案内の元紫様がいる場所にに向かった。

 

 

とある一室、今朝も来た部屋の扉を開けて中に入ると紫様が席に座って待っていた。

 

「紫様、ゼロをお連れしました」

 

「ああ、ご苦労だった。持ち場に戻っていいぞ」

 

「はい、失礼します」

 

一緒に来た職員は紫様に俺を連れて来た事を報告した後、俺を置いてすぐに自分の持ち場に戻っていった。……薄情な奴だな、俺も早く戻りたい……

 

「緊急との事だが、何かあったのか?」

 

「ああ、単刀直入に言う……今すぐ警備隊と共に箱根まで向かえ」

 

「箱根だと?宝探しでもしているのか?」

 

「いいや、荒魂を一掃の作戦中だ。だが、少し問題が生じてな……2名の刀使が部隊からはぐれた」

 

「部隊からはぐれたならすぐに合流するよう連絡すればいいではないか」

 

「それはできない。現在その刀使達は荒魂の相手をするだけで精一杯だ。他の刀使達もその2人が指揮を執っていたので、指揮が不在になり自分の事で精一杯の状況だ」

 

「なるほどな……それほど荒魂が手強いのか?」

 

「いや、荒魂自体そうでもないが数が多すぎる」

 

「……今から向かったとして、その2人を無事に救出できる保証はしないぞ」

 

「ああ、それでいい……引き受けてくれるな」

 

「ふん、好きにしろ……警備隊の準備はどうなっている?」

 

「既に整っている。ではこれより警備隊と共に箱根へ向かえ。あとの指示は他の者に私が直接指示を出すのでそれに従ってくれ」

 

「了解した……では失礼する」

 

「健闘を祈る」

 

紫様からの労いの言葉を聞いてから扉を閉め、警備隊の元に駆け足で向かった。

 

警備隊の待つ場所を途中歩いていた職員に聞いて急いで向かうと、一つのヘリだけが俺の事を待っていた。急いで来たのにも関わらず大遅刻をしてしまった事に焦っていると、ヘリの操縦士に早く乗るように伝えられたので今はとにかく考えないようにして中に乗り込みドア付近にに腰を落とす。しばらくして、ヘリが上昇を始め段々と地上との距離が開いていき旋回しながら徐々に目的地に向かって加速してきた所でドアを閉める。

 

「ふぅ、まさかヘリで移動する事になるとはな……それにしても、警備隊は何処にいる?」

 

中から外を見回してみるが、見える範囲で他のヘリの姿が見当たらない。疑問に思ったのでヘリの操縦士に訪ねてみたところ、どうやらとっくの前に他の警備隊などは既に出発していてこのヘリは急に用意させたものらしい。俺が遅れた訳ではない事が分かったので、この後の移動中ずっと気負いなく睡眠をとった。

 

目的地付近に到着すると、地上には刀使と思われる少女2人と警備隊が共に進行している最中だった。すぐに俺も飛び降りても問題ない高さになってからドアを開けてダイビングし、少しでも衝撃を和らげるため猫のように足から着地して膝を曲げ上体を低くし衝撃を全身に分散する。上手く衝撃が逃げた後、遅れを取り戻すため急いで警備隊のいる場所まで駆けた。

 

 

やっと追いついたと思っていたのもほんの数秒の事で、今度は突然先程よりも進行速度が早くなった。仕方なく警備隊の後ろからその早さに合わせてすすんでいると前方の方から何やら声が聞こえてくる。

 

「あははははっ!荒魂を倒しまくるぞー!とりゃー!」

 

あれっ?何だか不思議だ、この声を聞いていると昔を思い出す。

 

「……むむっ!この荒魂、意外と強い!でも、結芽の相手じゃないね!」

 

ゆめ?……何処かで聞いたようななまえだが……そうか、お団子ヘアーの女の子の名前と一緒だったな……

 

「わっ!いきなり後ろから襲ってきた!エッチな荒魂!」

 

何だとっ!!!!駆逐してやる!!生まれた事が罪だと感じるまで斬って斬って斬り刻んでやる……気がつかないうちに足が早くなっていて、気がつくと警備隊の先頭まで移動していた。

 

「うわぁ!……って、ゼロかよ。驚かせないでくれ」

 

「何のことだ?」

 

「今後ろから恐ろしい程の殺気を感じたんだけど……」

 

「すまん、少し冷静さを欠いていたようだ」

 

「謝らないでくれ。あれ程の数の荒魂を前にしたらそうなるさ……現に俺も少し冷静ではないからな」

 

「そうか……ところで、徐々に前方の2人と距離が開いてきていないか?」

 

「ああ、2人のスピードが速すぎてな……俺もそろそろ辛くなってきた。ゼロは大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「……今のは聞かなかった事にしよう」

 

「何のことだ?」

 

「いや、何でもない……それよりも、ゼロは先に行ってくれ」

 

「いいのか?お前達はどうする?」

 

「俺達じゃ追いつけないからこのまま無理ではないぐらいの速さで進むから安心して先に行ってくれ」

 

「そうか……分かった、何かあれば大声をだして助けを呼べ」

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

「では、また後で会おう」

 

「ああ、ゼロ……彼女達の事は任せた」

 

「気が向いたらな……またな、加藤……」

 

「俺は遠山……また居なくなってる……はぁ、いつになったら覚えてくれるんだよ……」

 

加藤と呼んだ警備隊員と別れ、前方にいる刀使2名を見失わないように走る。

 

 

あれからかなり走っていたが、特に問題はなく進んだ……しかし、警備隊はやはり追いついてこれなかったようで、今は付近に見当たらない。俺自身も予想外で、まさかここに来るまでの道中に数体しか荒魂の相手をしなくてもいいとは思っていなかった……これならば、荒魂討伐をやってもいいと考えてしまう。そして、スムーズに進めるようにした当の本人達が前方で何やら話している。

 

「ところでさ、結芽のスピードに付いてこれるなんて、おねーさんもなかなかやるね!おねーさんって下の名前、なんていうんだっけ?」

 

「……前に自己紹介したのですが覚えてもらってなかったんですね……夜見です。私は皐月夜見と言います。」

 

「うん、覚えたよ夜見おねーさん!」

 

「今度は忘れないでくださいね」

 

「はーい!それにしても……そっちのおにーさん?もなかなかやるね!」

 

「おにーさん?」

 

「……気づいていたのか」

 

「もちろん!だっておにーさん?はずっと結芽達から離れなかったからね!」

 

「いや待て、その発言は誤解を招く」

 

「どうして?」

 

「それは……はぁ。もういい、今のは忘れてくれ」

 

「う〜ん、よく分かんないけどおにーさん?がそう言うなら分かったよ!……それでおにーさん?の名前は何て言うの?」

 

「……ゼロだ」

 

「ゼロ……あなただったのですか」

 

「夜見おねーさん知ってるの?」

 

「はい。今回の作戦において協力者を用意したから行動を共にするように、紫様から伝えられています」

 

「なるほど。ならば貴様が紫様の言っていた人物か……改めて紹介する。今回行動を共にする事になったゼロだ。無理な事で無ければ指示に従うので遠慮なく言ってくれて構わない」

 

「分かりました。私は親衛隊第三席の皐月夜見です。今回はよろしくお願いします」

 

「じゃあ次は結芽の番ね!親衛隊第四席、燕結芽。四席って言っても親衛隊の中で1番強いけどね!」

 

「……本人か」

 

間近で見て分かったが……本人ですねこれ。見間違いようない、ここにいる第四席は何処からどう見ても俺の知る人物だ。しばらく会っていなかったから身長も髪も伸びて最後に会った頃とは見た目が変わっていたが、少しばかり面影がある。それにこの人懐っこい性格は以前のままだったのですぐに分かった……どうしよう、ここで正体を明かしておいた方が良いか?……いや、駄目だな。そんな事すれば危険に晒されるかもしれない、仕方ないがここは我慢しよう……ごめんよ、結芽ちゃん。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「……いや、何でもない。それよりもここから先はこの3人だけで行動するのだな?」

 

「はい。これ以上時間をかけるのは危険ですので」

 

「そうか……ならばここからは三席の指示に従って行動しよう」

 

「私のですか?」

 

「それが1番効率的だ……生憎指示を出すような経験が無いのでな。任せたぞ三席」

 

「……分かりました。それと、私の事は夜見とお呼びください」

 

「分かった。俺の事はゼロと呼んでくれて構わない。それと、俺に対してはさん付けも敬語も不要だ」

 

「それではゼロと呼ばせていただきます」

 

「ああ、それでいい」

 

「むー!2人して結芽を仲間外れにしないでよー!」

 

「別に四席を仲間外れにした覚えはないのだが……」

 

「もう!結芽でいいよ、ゼロおにーさん!」

 

「あ、あぁ……結芽、夜見にも言ったが敬語は不要だ」

 

「はーい!分かったよ、ゼロおにーさん!」

 

「……おにーさんは不要だ。ゼロでいい」

 

「えー!ゼロおにーさんじゃ駄目なのー?」

 

「いや、別に駄目ではないが呼びづらいだろ?」

 

「全然そんな事ないよー!」

 

「そうか……なら好きに呼んでくれ」

 

「うん!よろしくね、ゼロおにーさん!」

 

「……よろしく、結芽」

 

俺の過ごしてきた古い記憶から蘇ってくる。お前には諦めるしか選択肢がないと……そんな言葉が頭の中で響いて、それに対して妙に納得してしまった俺は、これ以上時間を無駄にしない為にも呼び方について考えるのを放棄した。

 

「お二人共、そろそろ目的地まで向かいたいのですがよろしいですか?」

 

「すまん、待たせたな」

 

「結芽はいつでも行けるよー!」

 

「そうですか、それではこれより2人の救出に向かいます。先程と同じく結芽さんが道を切り開いて先導して下さい」

 

「りょーかーい!!それじゃ行くぞー!」

 

「……俺達はどうするんだ?」

 

「結芽さんの後に続いて相手をしていない荒魂を倒しながら進みましょう」

 

「了解した……それでは先に行ってしまった結芽を追いかけるか」

 

「ええ、そうですね」

 

「では行くぞ」

 

「はい」

 

夜見からの指示を受けた後、先に飛び出して行ってしまった結芽の後を追って救助を待つ2人の元まで、道中の荒魂を殲滅しながら3人で進んだ。

 

 

_________________________________________

 

真希と寿々花が本体から分断されて、約半日後。

 

「はぁ……はぁ……、……クソッ……いくら斬っても……終わらない……」

 

「手足が鉛のよう……御刀を持つ手に……力が入らなくなってきましたわ……」

 

「スマホは充電切れか……はぁ……はぁ……水も……食料も……」

 

「わたくしたち……、このままでは……どうせなら……なるべく……道連れに……他の場所で戦っている刀使たちを……、少しでも……楽に……!」

 

「寿々花……何を考えている……?」

 

「……あなたとおそらく同じことですわ……!」

 

「そうか…………寿々花、これだけ言っておきたい。さっきは助けてもらったのに……暴言を吐いてすまなかった。」

 

「っ!……いえ、私の方こそ、大人げなかったですわ…………さぁ、最後の力を振り絞って、一花咲かせましょう!」

 

「ょし…………それじゃあ、行くぞっ!!うらああああああああっ!!」

 

「いやあああああああああっ!!」

 

「2人とも!助けに来たよ!」

 

「……へっ?」

 

まさか疲労のせいで幻覚が……!?

 

「お待たせいたしました。もう大丈夫です。すぐ後ろに警備隊もいます」

 

「ヒーローは遅れて登場するものだからね!結芽は女の子だけど!」

 

「……夜見と結芽!?どうして君たちがここに……!?」

 

「紫様のご命令で、お2人を救出に参りました」

 

「そういうこと!……それにしても、2人ともずいぶんボロボロだね!荒魂との戦いでそんなになるなんて、おねーさんたちもまだまだだね〜」

 

「う……、うるさいぞ……!助けに来たのか、憎まれ口を叩きに来たのかどっちなんだ……!」

 

「あはは!それだけ言い返す余裕があるなら大丈夫そうだね!それじゃ、後の事は結芽たちにまかせて!」

 

「でもどうやってここまで来ましたの?」

 

「それは私の方から説明致します」

 

夜見はここまでの経緯を一言一句違えずに真希と寿々花に告げた……

 

 

「……そんな感じで紫様に支持されながらここまで進んできて、おねーさんたちと合流できたの!」

 

「紫様の指揮は常に的確でした」

 

「……そう、だったのか……」

 

「みなさん……ありがとう……ございました……」

 

「あれれ?2人とも、だいぶお疲れ?」

 

「お2人は半日近くも戦い続けていたんです。疲れているというレベルではないでしょう」

 

「そう……だね。実は結構前から、手足の感覚がほとんどないんだ」

 

「半死半生とはこういうことかもしれませんわね」

 

「そっか!じゃあさ、結芽が荒魂を倒すところをそこで休みながら見ててっ!」

 

結芽は疲れて動けない2人にそう告げてから荒魂の元へ向かい相手をした。

 

「それにしても、話ではもう1人と一緒だと聞いたんだけど……まさか途中で……」

 

「いえ、獅堂さんの心配している事は起きていません。今はお2人の様子を確認する時間稼ぎをしてくれています」

 

「そうなのか……よかった……」

 

「それで、その方は何処にいるのかしら?」

 

「あそこです」

 

夜見が指差す方向を見てみると、結芽から少し離れた場所でスーツ姿に仮面をつけた人物が荒魂を次々と斬り倒していた。

 

「あれは……!?」

 

「ゼロ……!?」

 

「ご存知でしたか」

 

「ああ、今朝紫様から紹介されたんだ」

 

「でも、どうしてあの方がここにいるのですか?」

 

「道中聞いた話によると、紫様から命令を受けてお2人の救出に来たそうです」

 

「……そうなのか……」

 

「はい。それでは私は燕さんの元へ向かいます」

 

夜見も2人に一声かけてから結芽の元へ向かった。

 

「あははははっ!とりゃー!」

 

「機嫌が良いな……結芽、2人は無事だったのか?」

 

「うん!2人とも生きてるよー!」

 

「そうか……あとは帰るだけだな」

 

「えー!せっかくなんだからもう少し遊びたーい!」

 

「それは荒魂との戦いの事を言っているのか?」

 

「そうだよー!まあ、結芽の相手じゃないけどね!おっとと!」

 

「……燕さん。私たちの任務はお2人の救出です。ここで荒魂を倒す必要はありません」

 

「夜見か……良いのではないか?この先荒魂が出てくる可能性もある……それならここで少しでも数を減らしておいた方が楽になるぞ」

 

「そうだよ!それに結芽はもっと遊びたいの!固いこと言わないでよ、夜見おねーさん!」

 

「……わかりました。離脱の最中に背後から攻撃を受けても面倒ですし、まずは付近の荒魂を殲滅しましょう」

 

「わーい!そうこなくっちゃ!よーし、暴れるぞー!」

 

「私はただ、壊すだけ……はぁっ!」

 

「……2人とも無理だけはするなよ……ふっ!」

 

「……さすが、夜見と結芽だ」

 

「ええ……助かりましたわ……」

 

「そうだね……それにしても、ゼロの噂はどうやら本当みたいだね」

 

「そうですわね……流石、終焉の異名を持つお方、まるで剣筋が見えませんわ」

 

「ああ、本当にあの3人には感謝してるよ」

 

「「…………」」

 

「……はは」

 

「……ふふふっ」

 

2人の無事を確認した後、付近の荒魂を殲滅して荒魂の反応がない事を確認してから警備隊の元まで警戒しながら1人に肩を貸し、もう1人は抱えながら歩く。

 

「すまない夜見、歩きづらくはないか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうか、もう少しだけ肩を貸してくれ」

 

「分かりました」

 

「安心しておねーさんたち、荒魂が現れても結芽がすぐに倒しちゃうから!」

 

「ああ、頼りにしてるよ結芽」

 

「任せて!……それより、寿々花おねーさん大丈夫?何だか顔が赤いような気がするけど」

 

「べべ別に、大丈夫ですからご心配入りませんわよ!?」

 

「寿々花、体調が優れないならすぐに言え……無理に我慢しなくていい」

 

「大丈夫ですのでお気になさらないで下さい!!」

 

「お、おお……それならいいが、何かあればすぐに伝えろ」

 

「わ、分かりましたわ……どうして私がこんな格好をしているんですの……」

 

「仕方ないよ寿々花、君が一歩も歩けないんだから。文句は言えないだろ」

 

「はい。この場合、力のあるゼロに運んでもらうのが1番効率的です」

 

「結芽が寿々花おねーさんを運べたら良かったんだけどねー!まあ、遊べるから結芽はこっちの方がいいけどね!」

 

「もうしばらくの辛抱だ……それまで耐えてくれ」

 

「……はい」

 

とりあえず今は耐えてもらいながら警備隊のいる場所まで戻った。その後、2人は応急処置を受けて歩ける程度に回復したので後の事は警備隊に任せる。

 

「さて、それでは帰るとするか」

 

「ゼロ」

 

「……夜見か。どうした、何か用か?」

 

「はい。紫様からの伝令をお伝えしに参りました」

 

「……それで内容は」

 

「現在行われている作戦に参加し、荒魂を一掃するようにと」

 

「……最初からこれが狙いだったのか……チッ!やはりこうなったか……夜見、これから任務を遂行する。あの2人を連れてお前達は先に戻れ」

 

「分かりました。では、お気をつけて」

 

「ああ、またな……」

 

仕方なく命令に従い今も尚、荒魂と戦っている刀使達の元へ行く。

 

それからは刀使達と共に荒魂全てを殲滅し、任務が完了したので来た時と同じくヘリに乗って今や第三の我が家となった本部に帰投した。……俺を除く親衛隊のメンバーはあの後、温泉にはいっていたと聞いたのは次の日の事だった……

 

 

 

 

その日からよく親衛隊と行動を共にする事も増え、本部でも比較的話すようになり親睦が深まったと思う今日この頃……途中、モクサ?とか呼ばれる造反分子の調査の為研究所に赴き、過労のため倒れそうになる寸前にそこの爺さんに近場の椅子を借りて仮眠をとる事があったが、それはまた別の機会に……そんなこんな日々を過ごす事もあったが無事に今日を迎える事が出来た。

 

季節も春になり桜が散り、新たな芽から緑の葉が顔を出している。そして、天気も絶好の晴れ日和となり、年に1回行われる一大行事が開催した。その名も……

 

「全国剣術大会……獅堂真希が二連覇を果たした大会だったな。まあそれは俺には関係ない……今日は刀使だけだから男の俺は非番……うむ、コーヒーが美味い!」

 

一大行事が開催されているのにも関わらず、1人まったりとコーヒーを啜っていた。

 

 

この日を境に激務になるのを彼は知らない……

 

 

今から約半日後、物語は動き出す……

 

 

 

 

 

It’s a show time ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 




かなり省いた部分も変わっている部分もあるけど、気にするな!


やっと次から原作突入だぜ!オラ、ワクワクすっぞ!!

少しだけ番外編もやろうかなと思ってるけど、果たして上手く書けるだろうか?

研究所で倒れそうになったのを番外編にするつもりですが完成はまだまだ先になります……
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