「我ら親衛隊に刃を向ける事は、即ち紫様に刃を向ける事……その罪はバ◯シーに値します!」
「バ◯ァァァァァァァジィィィィィィィィィ!!!!!」
「ゼロ!?突然どうしたんですの!?応答して下さい!ゼロ!ゼロォォォォォォォォォォ!!!」
……これやってたら絶対怒られる……
少し前、対象の刀使に逃げられ止む無く本部に帰還してから一眠りした後、寝る前に設定していたスマホのアラーム音で起こされた。
「『叶え〜られない約束なら〜、そう約束じゃなく戯〜れ言』えいっ……まだ眠い……だが、夜見が心配だから行こうか……もしかしたら無理して動いているかもしれないしな……なんてな」
ベットから身を乗り出して立ち上がり大きく伸びをして体をほぐした後、刀は今回部屋に置いて少しだけ身軽になった格好で夜見の居る治療室に向かった。
一眠りする前に来た場所を思い出しながら廊下を1人歩き目的の場所まで辿り着いた俺は、中にいる人物の姿を確認するため扉を開けて一声入れながら入った……
「体の調子はどうだ……不在だと?ちっ、まだ本調子でもないのに何処へ行った……いや、待てよ?お花を摘みに行っただけの可能性もあるか?……どちらにせよ1度会って確認した方が良さそうだな。もしも後者の場合は……全力で謝るか……夜見ならきっと分かってくれる筈だ」
目当ての人物が不在だったため、その部屋から退室して夜見の向かいそうな場所に移動する。
「それ程付き合いが長い訳ではないが、心当たりがあるとすれば……やはり、紫様のいる部屋か作戦本部だな……紫様に会えばまた面倒事を押し付けらる可能性もあるので、先に作戦本部へ行くか……どうか居てくれよ、俺の為に……」
この選択した場所に夜見がいなければ絶対に面倒事に巻き込まれる未来しか見えない俺は、祈りながら作戦本部まで向かった……
作戦本部まであと少し、未だ目標は確認できず段々と運命のカウントダウンが始まる中、廊下の角を曲がれば後は一直線に歩けば着くという場所でも聞こえるほどの罵声が聞こえてきた。
「忘れるな!沙耶香さえ居れば、お前達など必要ない事を!!」
かなり顔を合わせたくない人物の声が聞こえこの廊下を通るのに躊躇いが生じていると、足音がこちらに近づいて来たのですぐさま近くにある部屋の一室に入りやり過ごす……
「……行ったか」
「何が行ったんだい?」
「な!?貴様!いつからそこに!?」
「さっきからここに居たんだけど……何してるのゼロ?」
「それは、あれだ……体が勝手に動いたという奴だ……気にするな沖田」
「いや、凄く気になるんだけど……誰かに見つからない為にここに隠れたんでしょ?」
「そうだな……少し、いやかなり会いたくないからな……鎌府学長には……」
「……それには同意するよ、僕もあの人が苦手だからね」
「分かってくれるか……」
「まあね、こっちも散々怒鳴られたから会いたいとは思わなくなるさ。それよりも、今なら出て行っても大丈夫なんじゃない?」
「そうだな……仕事中に邪魔して悪かったな」
「気にしないで、資料を取りに来ただけだから」
「そうか、それは良かった。では失礼する」
「またね、後で仕事を持って行くから期待していてくれ」
「……せっかく忘れていたんだがな。分かった、用を済ませた後に部屋に戻るとしよう」
最近手付かずになっていた書類整理などの雑務を思い出し、少し鬱になりながらゆっくりと扉を開け外の様子を確認し、誰もいない事を確認してから部屋を出て作戦本部へ歩き出した。
「まあ、鎌府学長に会うよりも仕事をしていた方がマシだから良しとするか……それよりも今は夜見を探さないといけないんだが……ん?あの服装は……夜見か?だが、俺が運んだ時と違う格好だな……確認してみるか」
目的地の扉の近くで両手を顔に当てている格好をしている女性が1人佇んでいた。だが、背中越しの為顔を確認できず夜見本人と断定できないので近くまで歩き声を掛けた。
「夜見、こんなところで何をしている?」
「ゼロ?」
問いかけに応じてこちらを振り返る女性は探していた人物であった夜見本人だと分かりほっとする。
「夜見の様子を見に行ったが不在だったので探したぞ……おい、その顔はどうした?」
「……いえ、何でもありません」
「嘘をつくな。赤くなってるのだから見れば分かる……もしや、鎌府学長の仕業か?」
「それは……」
「やはり奴の仕業か……ちっ!夜見、お前はここで待っていろ。少し用事を思い出した」
「待ってください……私は、大丈夫ですので……」
「夜見……本当に大丈夫なのか?」
「はい」
「そうか……当事者である貴様がそう言うのであれば部外者の俺はこれ以上何も言わん。だが、もしも困った事があればすぐに言え……いいな?」
「はい……ありがとうございます。ゼロ」
「礼は要らん……それにしても、かなり強くやられたようだな」
両手を退けている夜見の顔を見てみると、威力が強かったのか遠くから目で見ても分かるほど赤くなっている。とても痛そうな夜見の頬に俺は腫れ具合を確認する為手を添えた。
「あ、あの、ゼロ……」
「ああ、悪い……やはりまだ痛みがあるか。いきなり触ってすまない」
「いえ……大丈夫です……」
「そう言ってくれると助かる……だが、先程よりも赤くなっていないか?見た感じ反対側まで赤くなっているような気が……」
「……そんな事はありません……気のせいです」
「そう……なのか?まあいい、では行くぞ」
「ゼロ……何処へ行かれるのですか?」
「何を寝ぼけた事を言っている?無論貴様を送り届けに行くという事だ……そうでもしないとまた知らない場所で無理して倒れるかもしれんからな」
「……すみません」
「謝罪は要らん。こちらも貴様に負担を掛け過ぎた責任がある……だから、今回はおあいこだ」
「おあいこですか?」
「……そういう事にしておけ、異論は認めんぞ」
「はい。分かりました」
「これ以上長居していては埒が明かない、さあ行くぞ」
「あっ……あの、ゼロ」
「話なら後で聞いてやる。今は黙って歩け」
「……はい」
夜見の性格上、例えその場では理解していても絶対に無理はしないなんて出来ない。紫様の為であれば躊躇わない事を今回の件で知る事が出来たので、ここは強引にでも手を引っ張り逃げられないようにして夜見の寝ていた部屋へと向かった……
「着いたな……それで、何か先程言いたい事があったようだが?」
「……手が」
「手?それがどうし……先に言っておくがわざとではない!断じて!」
「……そうですね。ゼロはそんな事しない人です」
「何だか信じていないような気がするのは気のせいか?」
「安心してください、私は信じています」
「それならいいんだがな……それでは俺はここで失礼する。ちゃんと体を休めるように、いいな?」
「……はい」
「……少し心配だが今は信じて戻る事にするか……またな」
夜見を無事送り届ける事に成功し、若干のトラブルはあったもののそれ以外に問題はなく無事に作業部屋へと戻る。
「……やはりあの時と同じですね。私は一体どうしたのでしょうか?」
残された女性は先程まで握られていた手を見つめながら現状、自分の体に起きている事に疑問を持つ。
「私は疲れているのでしょうか?……ゼロとの約束もあるので少しだけ休憩しましょう」
答えを知る者は誰もいない部屋の中、女性の呟きだけが木霊した……
夜見と別れてから作業部屋に戻った俺は、既に部屋の中で待っていた沖田から仕事を渡されひたすら作業に没頭していた。
「コーヒーが旨く感じない……だと……!?おかしい、前はあんなにも美味しかったのに……酸化でもして味が落ちたか?」
以前飲んだコーヒーとは違い、あまり美味しく感じなくなったコーヒーを飲みながら一息をつく。それでもまだ美味しいと感じられる事に喜びを得ているとまたもや来訪があった。
「入っていいぞ。沖田」
「あれ?何で分かったの?」
「……最近よく出歩いているのが貴様しか思い浮かばなかったからな」
「あはは、ゼロにそう言われるとはね。僕も落ちた者だ」
「その発言聞き捨てならないな。どういう意味だ?」
「ええと、今のは何というか……こほんっ!ゼロ、紫様がお呼びだ。それじゃ!」
「あ、おい!クソッ!逃げられた……はぁぁ。奴の事は後回しにするとして、紫様の呼び出しか……嫌な予感しかしない」
心休まるひと時を過ごしていた最中に余計な重荷を残していった沖田を恨みながらも、重い腰を上げて紫様の待つ部屋へと向かった……
とある一室の前で一呼吸してから震える手を必死に抑えノックをする。
「入れ」
「失礼する」
「来たか……今回の任務は失敗したと聞いたぞ」
「……そうだな、その責任は俺にある。罰なら俺だけが受けよう」
「別にそれについては構わない」
「何?それでいいのか?」
「問題ない……だが、そうだな。せっかくだからゼロには罰を与えてやろう」
「……遠慮する」
「そう構えるな、特段無理な事はさせない」
「それは紫様にとってだろ?俺にとっては違う」
「どう捉えるかは勝手だが、これは決定事項だ」
「くっ!これが権力というものか!……いいだろう、受けて立つ」
「ゼロ。お前は何と戦うつもりだ?」
「ワールド!」
「……そうか」
「……」
「……」
「さて、用件を伝えるぞ」
「おい、今スルーしただろ?」
「今回は特別にお前の見せ場を多く用意した。感謝しろ」
「この人聞いてないな……いや待て、見せ場?何のだ?」
「そんなの決まっている……お前の雄姿を見せる場だ」
「待て待て待て、それはつまり前のように休みがなくなるという事だろ」
「察しがいいな。現在は他の事にばかり人員を割いている為、荒魂による被害がここ数日対処に遅れている」
「それで俺は荒魂討伐の任に就くようにと?」
「そうだ。しばらくの間はそちらを優先してくれ。親衛隊だけでももう1つの件は対処できる」
「……少し心配だが、確かに荒魂を放っては置けないな。仕方ない、その任務、お受けしよう」
「それは助かる。ゼロ、本時刻を持って荒魂討伐の任へと就くものとする。早速だが、少し前に要請が来ていたのでそこへ向かえ」
「了解した……要らぬ心配かも知れんが貴様も気をつけろよ」
「……ははははっ、本当に要らないな。まったく、やはり面白い奴だな。ゼロ」
「こちらとしては割と本気だったのだがな……では、失礼する」
こちらが心配している事を笑う女性に背を向けて部屋を退室し、悲しみを紛らわせる為手配されているいつもの車が待っている場所に駆け出した。
それからというもの、隊員に有無を言わさずすぐに俺の特等席になっている車の席に乗り込み現場まで隊員の運転で向かう。車内には不穏な空気が流れはじめて誰も口を開けないでいると運転手がその空気を打ち破り口を開いた。
「と、到着しました!ゼロ!」
「……もう着いたのか。早いな」
「すみませんが、ここ以外にも荒魂が出現していると報告があるので近場から送り届けるよう指示されているのです」
「……そういえば多くの見せ場を用意したとか言ってたな…はぁぁ。少しここで待機してろ。すぐ戻る」
「え?は、はい!お気をつけて!」
隊員に返事も返さないまま車を降りて荒魂の元まで駆けて行く……現場まで時間もあまり掛からずに到着すると、刀使達が懸命に荒魂と対峙していた。だが、見た限り劣勢のようで徐々に刀使が1人、また1人と飛ばされて地面にぶつかり気絶して写しが無くなる。つい最近から活動するようになった刀使達がいると沖田から聞いていたが、もしかしたら目の前の刀使達なのではないか?
「……人員だけ補充しても仕事が楽になるとは限らないのか。勉強になったな」
人員補充ばかり気にしていた自分に間違いがある事に気付き、1人反省している間にもまた1人飛ばされる。そして、最後の1人になった刀使は在ろう事か攻撃を防ぎきれずに尻もちをついて御刀を手放してしまった。御刀が無ければ何処にでもいる少女となったその刀使に荒魂は容赦するはずもなく頭で叩き潰しにきた。それでも刀使はその場から離れないままただ目の前で起きている事を見ているだけでいた。
「あっ……私、死ぬんだ……っ!」
このままでは写しを張っていたとしても危険なので刀使の元まで駆けつけている最中、他人事みたいな感想を言いながら目を閉じてただ待つだけの格好を晒していた事に呆れながらも荒魂を刀で受け止める。
「……あれ?痛くない?私死んじゃったのかな?」
「三流芝居はそこまでにしておけ」
「え?あ、あなたは!?ゼロ様!?」
「……苦戦しているみたいだな。すぐに終わらせる」
荒魂を押し返し、切っ先を向けて挑発してみる。
「図体だけがでかい愚か者が……少し遊んでやる」
挑発が効果あったのか、荒魂がくねり出した後俺の方に近づいてきたので、そのまま刀使との距離を離す為荒魂を人のいない場所に誘導した後立ち止まって向かい合うと、突然荒魂が突進してきた。
「……下がガラ空きだ」
突進を避けて荒魂の腹下まで潜り込み、切っ先で突き刺す。刃の部分が全て貫通して通らなくなったところで柄から手を離してバク転して両手をつき、肘を曲げてから勢いよく伸ばして勢いをつけて足で柄に衝撃を加えてさらに押し込む。予想とは違い貫通はしないまま荒魂の体が宙に浮く。一緒に宙に浮いた俺は刺さってる部分の近くを足場にして柄を握り1度刀を抜いてから、今度は斬り刻んでいく。回転しながら斬って足がつけば向きを変えて足に力を入れて蹴り回転して斬る……段々と重力に従って落ちて行く荒魂と地面との距離が近づいてくると、1度その場から離れ距離を取る。地面に落ちた荒魂が動けない間に飛んで背に乗り刀を突き刺して力を入れながら胴体の後ろまで突き刺したまま一直線に走り、荒魂の体から刀が抜けると今度は大きく後方に飛んで頭の上空から縦一閃に刀を振り落とす。片膝をついた状態から立ち上がり刀を1度汚れを落とすように振ってから刀を鞘に戻す。荒魂の状態を確認もせず背を向けて歩き出していく。
「後は任せる」
「え?は、はい!」
「頼んだぞ……」
荒魂は他でも出現していると聞いていたので、後のことは先に居た現場の人間に任せて今も待っている車の場所まで走った。
「悪い、少し遅れた……」
「いやいや、遅れたとかそんなレベルじゃないから!」
「そうは言ってもかなり早く終わらせたつもりでいたんだが、遅すぎたか?」
「逆だよ!早すぎなんだよ!」
「そうでもないだろ。親衛隊の第一席と第二席はこれ以上の荒魂を相手にした事があるが、それよりは遅いと思うぞ?」
「おかしいから!?比較対象間違えてるよそれ!」
「おいおい、そんな大声を出すな……耳が痛い」
「わ、悪い……はぁぁ。いくら言っても意味がないって沖田さんから聞いていたけど本当だったな」
「沖田がどうした?」
「いや、何でもない。こっちの話だ……それじゃ次に向かうよ」
「ああ、よろしく頼む」
「了解」
まだ存在している荒魂は他に数箇所もあるので、急ぎ車を急発進させて向かった……
それからも荒魂を次々と相手して回収作業などは全て他の隊員や刀使に任せて帰還した俺は、すぐさま部屋へと一直線に向かい刀を大雑把にベットに放り投げて倒れ込む。
「……明日からどうなるんだこれ?もう今日だけでかなりしんどい……機会があれば紫様に進言して親衛隊の中から1人回してもらうかなぁ。……無理だな、親衛隊は全員紫様の為にしか動かない信者ばかりだった……でも待てよ?確か結芽ちゃんだけは違ったな。だけど最近調子悪そうだし無理はさせられないよなぁ……はぁぁ。仕方ないけど1人で頑張りますか。それに、少なからずこれで沖田に仕事が回るはずだからな!そう考えるとやる気が出てきた!よしっ!今日は寝る!頑張れ明日からの俺!」
少しだけこの任務にやる意味を見出した俺は、明日からの激務に備えカロリーメイトと野菜ジュースを夕食がわりにとってから、景気付けに銭湯へ行って風呂に入り帰って歯を磨き、眠くなるまでの間だけ一冊の古い書物を読み始める。
「そういえば本を読むのも久しぶりだな……読んでる本はあれだけど……それにしても、まさかこの前の任務の山に昔行った事がある小屋にあった書物の切れ端を見つけるとはね……もう考えたら負けだなこれは、意味がわからない。どうしてこんな離れた場所にこれがあったんだよ!?しかも、全部揃っていて翻訳というか読みやすいようになって置いてあったし……せめてもう一本の刀があれば良かったんだけどな……ともかく、これで全巻コンプリートだ!弍式はもうマスターしたから、弌式といきたいところだがまずはこの読みやすくなった禁を読むか……別に変な想像はしていない。興味があるというか保険だ保険!」
作者が2人いたのか、それとも誰かが持ち去って書き写したのか分からないが予想もつかない場所にある小屋で見つけた本を一冊選んで読み出す。
「フリードマンには感謝だな。あそこで電話がなかったら歩き回りはしなかったからな……本当に偶然か、それともこれは運命なのか?……ふぅ、とにかく今は考えないようにしよう」
電話中に見つけた小屋は草むらの影に隠れていてよく見なければ分からなかっただろう、そんな事を思い返しながら1ページまた1ページめくって読み進める。大体は見たことあるものばかりであったが、もう1つの書物には無かった記載が目に留まった。
「『注 この刀はどちらか片方が存在しなければ効力は半減する』……なんだこの、RPGに出てくる設定みたいなの。せめて半減した効力を詳しく書けよな……ふぁぁ、眠くなってきたしそろそろ寝るか」
書物をしまいベットインしてリモコンで明かりを消す。
「どうか、激務ではありませんように……おやすみ……」
例え叶わなくとも願いながら目を閉じて眠りについた……
とうとうここまで来てしまった……嬉しいような悲しいような……
かなりのご都合主義が今回あり過ぎることに悔いはない!!
後残り2話位で1クール終わると思うけどこれで良いのか少し不安になってきた!!
……それでも続けるけどね!!