まあ気にするな!!いつものことだ!!
……もう無理。頭が暑さでやられたんだよ……
仮眠といいながら移動中ずっと寝てしまった俺は、沙耶香ちゃんに揺すられて目を覚ました。
「零次、起きて」
「んん……沙耶香ちゃん?……そうか、俺は生きていたか」
もしかしたら事故に遭うかと寝る前は不安だったがそんな事は起こらなかったみたいで、五体満足の状態である事に内心ホッとする。
「もう到着してる」
「そうなの?それじゃあ降りないとだね」
目的地には到着しているという事なので車のドアを開けて降り、周りを見回す。
「緑が多いなぁ……っと、沙耶香ちゃん掴まって」
見回すのを中断して降りようとしている沙耶香ちゃんに手を差し出して要らぬ手助けをするが、これも昔本やテレビで見た車のマナーであるという知識があったので実践してみた。そして、どうやら間違えではなかったらしく、沙耶香ちゃんは何も言わずに手を掴んで降りる。
「……ありがとう」
「どういたしまして……それにしても、ここに隊長達がいるのかな?」
「そのはず。早く合流しないと」
「ああ、そうだね。それじゃあ中に入ろうか」
安藤さんは……何故か目の前の建物の従業員の1人と楽しく談笑しているのが見えたのでそっとしておき、2人だけで中へと入る。
「おぉ!これは絶景だ。旅館なんて久しぶりだなあ」
「今日から宿泊されるお客様方ですね?お話は伺っています」
突然話しかけられて驚きながらも声のした方を見ると、女将なる女性が姿勢正しく歩いてきた。どうやら出迎えにきてくれたようだ。
「俺達の事を知っているんですか?」
「ええ。昨日連絡を貰いましてね、お二人という事でしたが外にいる方は?」
「ああ、あの人の事は気にしなくて大丈夫です。その内何処かへ出掛けるので」
「そうなのですか?」
「そうです。だからお気になさらず」
「かしこまりました。それではお部屋に案内させて頂きますので、まずはあちらにあるロッカーに靴を脱いでしまって下さい」
「わかりました」
女将と思われる女性従業員の言う通り、2人は靴を脱いでロッカーにしまってから女性従業員の元まで戻ると、親切にスリッパを用意してくれたのでそれを履く。
「それではご案内致しますね」
「「お世話になります」」
「はい。それではまずはそちらの女性の方からご案内させて頂きますがよろしいでしょうか?」
「ええ、構いません……すみませんが少しだけ待っていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます……沙耶香ちゃん、今スマホ持ってる?」
「持ってるけど、それがどうしたの?」
「この先何かあった時呼びに行くのがお互い大変だからさ、連絡先を交換しておいた方が楽になると思うんだけど?どうかな?」
「確かに零次の言う通り、任務には必要だと思う」
「いや、任務って意味じゃないんだけど……まあいいか。それじゃ交換しようか」
「分かった」
沙耶香ちゃんは先にここの旅館にお世話になっている刀使達と一緒の部屋になるはずなので、それを見越して連絡先を交換する。何故なら俺は……大勢の女性がいる部屋を訪れる程の大層な度胸を持ち合わせていないからだ!!……笑いたければ笑えよ……
「よし、これでいつでも連絡取れるね……お待たせしました。それではお願いします」
「はい、かしこまりました」
「それじゃあ、また後で会おう沙耶香ちゃん」
「うん。零次、また後で」
「ふふふ、それではこちらです」
何故か俺を見て上品に笑われた気がしたが特に気にせず、案内されていく沙耶香ちゃんが見えなくなるまで手を振りながら見送る。
「さてと、戻ってくるまで暇だなぁ……とりあえずグラ◯っとくか」
やる事がなかった俺はスマホを取り出してソシャゲをやって待つ事にした。
_____________________________________________
しばらくスマホで時間を潰していると女性従業員が戻ってきたのでスマホをポケットにしまう。
「お待たせいたしました」
「いえいえ、それ程待っていませんよ」
「お気遣い痛み入ります。それではご案内致します」
「お願いします」
今度は俺が女性従業員の後についていき部屋に案内される。階段を上り少し歩くと女性従業員が立ち止まる。
「こちらがお客様のお部屋になります」
そう言って部屋の襖を開けてくれたので、遠慮せずに中に入りすこしだけ見回る。
「……何だか落ち着きますね」
「ありがとうございます。それでは、何かありましたらお申しつけください」
「はい、分かりました」
「失礼致します」
最後に襖を閉めてくれると、その後は仕事が他にあるのかすぐにきた道へと歩いて行った。
「大変そうだな……それにしても本当にいい部屋だ。やはり俺も日本人だから畳は落ち着く……訳がない!広すぎ!俺1人だよね!?これ絶対4人部屋だよね!?これは本部長のイタズラか?……ありえるな」
そんな事は言いつつも今回は特に怒る程でもないので、荷物を置いてスマホをテーブルの上に置いてから畳に寝転ぶ。
「この香り落ち着くなぁ。思わず寝てしまいそうだ……なぁ……」
車では座ったままで寝た気にはなれなかった事もあり、俺は寝転んで目を閉じるとすぐに熟睡し始めてしまった。
_______________________________________________
次に目を覚ました時、またもや同じ人物に揺すられて起きた。
「……沙耶香ちゃん?」
「零次、来て」
上体を起こして欠伸をすると段々と覚醒していく。
「よく寝たぁぁ。やっぱり畳もたまにはいいな」
「……みんな待ってる」
「え?」
まだ意識がはっきりとしない中でその言葉の意味が理解できずにも立ち上がる。
「零次、早く」
「何かあったの?……って、ちょ!?腕を引っ張らないで!?」
いきなり腕を引っ張られ動揺するも、本人はこちらを見ずに問答無用で何処かへと連れて行く。
「待ってくれ!?せめてスリッパだけでも履かせてくれぇぇぇ!」
部屋に入る時に脱いだスリッパを履く暇すら与えてもらえずに、そのまま俺は引かれるがまま沙耶香ちゃんと共に早歩きになる。
腕を引っ張られながら転びそうになるのを何とか耐えて歩いていると、何やら見た事があるようなないようね制服姿の女子達がいるところに連れられて来てしまった。
「隊長、連れてきた」
「おう、ご苦労!こいつが沙耶香の言っていた奴か」
「えーっと、この状況の説明をプリーズ」
「隊長、薫に零次を連れてくるように言われたから連れてきた」
「おk把握……あー、もしかして本部長の言っていた刀使達ってここにいる人たちの事?」
「そうだ!オレの前でサボりは許さない!」
「ねー!」
威勢が良い少女は腰に手を当て自慢気に言い放ち、それに続き近くにいる変な生き物が鳴き声をあげる。
「すみませんが、あなたが隊長さんですか?」
「おうよ!オレがここにいる隊を率いる隊長の益子薫だ!」
「ど、どうも。神条零次です。本部長から聞いているとは思いますが微力ながらお手伝いする事になりました。よろしくお願いします」
「ねねっ」
「……それは何ですか?」
「ねねはオレのペットだ。気にするな」
「ねっ!」
「……やっぱりペットなんだ……よろしくチビ助」
「こいつはねねだ。そんな名前じゃない」
「ねー!」
「……じゃあ、ねね助」
「いやいや、だからこいつはねねだって言ってるだろうが!」
「いやいや、そんな名前じゃうさぎを殴る少女しか思いういかばないんだが?」
「はぁ?うさぎを殴る?」
「あーいや、何でもない。こっちの話だ」
「ね?」
「まあいい。それよりも沙耶香は良いとしてお前は何だ?」
「何だと言われても困るんだが……まあ、あれだ。本部長の部下と言う事らしい」
「いや、らしいって何だよ?」
「それは、部下らしい事はほとんどしていないから?」
「何だそれ?」
「まあまあ、俺の事は気にしないでくれ……俺はただ本部長に逆らえなくてここに来たんだ」
「そ、そうか……なんか、その。ドンマイ」
「ねー」
「ああ、ありがとう。理解してくれる人がいるだけで気が楽になるよ」
「まあ、オレもこき使われてるからなー。少しは分かるさ」
「そうなのか?」
「ああそうだ。あのおばさん、次にあったら文句を言ってやる」
「あははは、程々にな……それではこれより荒魂捜索と益子薫の監視の任務を遂行します。よろしくお願いします皆さん」
「はい。よろしくお願いします神条さん」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
皆から戸惑いながらも返事をもらえて少し安心していると、隊長が喚きだした。
「ちょっと待て。今なんて言った?」
「よろしくお願いします?」
「そこじゃねぇ!その前だ!」
「えーっと、荒魂捜索と益子薫の監視?」
「それだよ!それを先に言えよ!」
「どうして?別に大した事ではないと思うけど?」
「んな訳あるかぁ!!何だよ監視って!?」
「それは本部長に言ってほしい。俺は隊長が働かないからついでに監視して、帰還後報告するように言われただけだからね」
「はぁ!?何を言っているんだあのおばさんは!オレがいつ仕事をサボったってんだよ」
「隊長、つい先程もサボっていましたよね」
「うぐっ、何も言い返せない」
「そうだったんですか……えーっと、見たところあなたが副隊長ですか?」
「はい。副隊長の桐生葉月です」
「やっぱりそうか……よく隊長はサボるのですか?」
「ええ、少なくとも最初の1日以外は」
「それは何というか……お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「苦労しているんですね……まあ、監視と言っても俺はそこまで厳しくは無いですけどね」
「おお!お前わかってるじゃねーか!」
「ふっ、仕事はたまには手を抜かないとな……そうだろ?隊長さん」
「ああ、そうだな。お前が監視役で良かったぜ!」
「零次でいい。俺も話の分かる隊長で安心したよ」
「そうだろそうだろ!あ、そうだ。オレの事は名前で呼んでくれ」
「分かった。これから少しの間だがよろしく、同志薫ちゃん」
「おうよ!それじゃこれから牛乳で一杯どうだ?」
「ふむ、悪くない。それでは一杯やりますか!」
「隊長、神条さん。いい加減にして下さい。本部長に報告しますよ?」
「おいおい、今のは軽い冗談だって。な?零次」
「そ、そうそう。今のは薫ちゃんの言う通り冗談ですよ。あはははは……だから報告しないで下さい!」
「オレも右に同じく!」
「あなた達本当に今日会ったばかりですか?息がぴったりですけど?」
「いやいや、オレはあいつと今日が初めてだ」
「俺も薫ちゃんとは今日……初めてまともに会話した」
「まともに会話した?」
「そんな事より!これから荒魂捜索を始めるぞ!!全員気張っていけよ!」
「了解だ!」
「「「「「了解!」」」」」
「はぁぁぁ。了解」
「よし!それではいざ出陣!」
隊長である薫ちゃんの掛け声と共に全員行動を開始する。俺も皆と同じくその場から動こうとして、ある重要な事を思い出したて立ち止まる。
「零次、どうしたの?」
「スマホとか部屋に置いてきたままだった……ごめん沙耶香ちゃん、薫ちゃんに後から追いかけるから先に行くよう伝えといて」
「分かった」
「ありがとう。それじゃ……」
沙耶香ちゃんに伝言を頼むと、旅館内を走るのは気がひけるので早歩きで部屋に戻る。
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部屋に戻って竹刀袋とスマホを持ち、部屋を出てロビーでスリッパを脱いでロッカーから靴を取り出して履き替えて従業員に一声かけてから皆の後を追って行く。しかし、徒歩で移動していたのか走り始めてから直ぐに見つける事が出来た。よく見ると聞き込みしているようで誰も動こうとしないので今の内に合流するために近づいた。
「お年寄りは若い子とお話しするのが大好きですから」
「お話しするのが好きと言っても長話はやめてほしいけどね」
「うおっ!?……って零次か。驚かすなよ!」
「ごめんごめん、てっきり気づいているもんだと思ってたよ」
「私は気づいていましたよ」
「じゃあオレにも言えよ!」
「すみません、隊長は気づいていると思っていましたので」
「お前らな〜……」
「まあまあ落ち着いて薫ちゃん。ほら、聞き込み終わったみたいだよ?」
そして、聞き込みしていた沙耶香ちゃんを指差して教えると呆れながらもそちらに振り返った。
「目撃者からの聞き取り完了。これより捜索に向かいたい。命令を」
「ああ、ま、適当に探してくれ」
「緩いな〜」
「了解……目撃地点に法則性が感じられない以上、捜索範囲を広げる」
「しかし、あまり広げ過ぎると逆に穴が大きくなりませんか?」
「私が範囲を2倍担当する」
そう言ってスマホをポケットにしまってからその場から飛んで木の枝に乗り、その後も別の木の枝に飛び移りながら移動していった。その光景を目の当たりにした俺たちは驚き、俺だけは咄嗟に視線を逸らした。
「八幡力も使わずにあの身体能力ですか。あれなら確かに2倍行けますね」
「……はぁぁ。あの真面目ちゃんめ……」
「隊長は糸見隊員が嫌いなんですか?」
「真面目過ぎて苦手なんだよ。はぁ……同じ真面目人間でもひよよん・ザ・ないぺったんはいじると反応が超愉快!……久しぶりに会いたいもんだぁ」
「とりあえずそのひよよんという方に、隊長は深く謝罪すべきだと思います」
「ひよよん・ザ・ないぺったん?薫ちゃん、何でないぺったんなの?」
今まで視線を地面に落としていた俺は、気になるワードに興味を持ち薫ちゃんに向き直って問いかけた。
「ああ、それはだな……実際に見れば分かる」
「見れば分かるって……ああ、そういう事か」
「そういう事だ……」
「神条さん、女性に対して失礼な事を考えていませんでしたか?」
「そ、そんな事ないですよ?」
「……本当ですか?」
「……すみませんでした。少しだけ考えていました」
「次からは気をつけて下さいね?」
「はい……」
「それでは隊長、私達も捜索を始めましょう」
「だな。よーし、それじゃお前ら行くぞー」
何故か俺だけが注意を受けて、反省しているのが見て分かるほどに落ち込んでいる俺を置いて、他の皆は荒魂捜索のため歩きながらあたりを見回す。
「……俺も探すか」
幾度もの理不尽な状況を乗り越えてきた俺は、すぐに気を取り直して皆の後を追いかけた……
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皆に追いついた後、同じく足を使って捜索を開始した俺は現在スペクトラムファインダーの性能の低さに落胆していた。
「こういう時に活躍しないでいつ活躍するんだよこれ……」
「どうした?」
「薫ちゃんか……スペクトラムファインダーに反応しないなら放置しても良いと思うんだけど、どう思う?」
「確かにオレも同じ考えだ。だが、おばさん曰く、民間人の訴えを無下には出来ないだとよ……はぁ、めんどくせぇ」
「なるほど、確かに今のご時世では無視も出来ないか……沙耶香ちゃんにだけ負担をかけるのもアレだから、俺も少しだけ頑張りますか」
「おいおい何をするつもりだよ?」
「別に大した事じゃないよ。別行動で捜索するだけだからね」
「お前刀使じゃないのに大丈夫なのかよ?」
「そこは、遭遇したら逃げて連絡するから大丈夫。そういう事でその時は頼みますよ隊長殿」
「おうよ!……でも、オレはお前の連絡先知らないぞ?」
「……あの〜、連絡先を交換しませんか?というか交換して下さいお願いします!」
「まあそれはいいけどよ……お前以外と抜けてるとこあるんだな」
「あはははは、仰る通りで……以後気をつけます」
「まあ、そんな落ち込むなって……ほら、連絡先交換するぞ」
「ああ、ありがとう」
情けない所を見せてしまうも無事、薫ちゃんと連絡先を交換する事が出来た。
「よし、これで準備は整った……神条零次、これより別行動をとり捜索致します」
「あまり無理はするなよー」
「もちろんそのつもりだよ……それじゃあまた後で」
「おう」
最早、隊長監視の任務はこの際忘れて、俺は少しでも刀使達の負担を減らす為に1人で森の中を駆け巡った。
「なっ!?……消えた?」
「どうしたんですか隊長?」
「ああ、副隊長か……なぁ、あいつは一体何者なんだ?」
「神条さんの事ですか?それは先程彼が、真庭本部長の部下だと言っていたじゃないですか」
「いやそうなんだけど、そうじゃなくてだな……あーもう分からん!!」
「ちょっと隊長!?急にどうしたんですか!?」
「……わりぃ、どうやら疲れてるようだ。さっき目の前からあいつが消えたように見えたのは疲れているせいだな、きっと」
「何を言っているんですか?」
「いや、何でもない……さて、それじゃオレは休憩するとしますか」
「隊長も働いてください」
「おー、後でな……それに、オレの代わりに零次が働いてくれるから問題ない」
「そういえば見かけませんね」
「零次ならさっき別行動で探し始めたぞー」
「大丈夫なんですか?」
「オレもそう言ったけど、もし遭遇したら逃げてから連絡するって言ってたから大丈夫だろ。だから、オレはベストコンディションを保つ為に今から休憩しなくてはならないんだ……後の事は頼んだぞ桐生副隊長!はーはっはっはっは!!」
「……はぁ。どうせこうなると思っていましたよ……」
森には高らかな笑い声が響き渡り、その元凶である人物は頭に相棒を乗せながらその場に5人の少女達を残して歩き去って行った……
__________________________________________________
別行動を開始してから数時間後、あれからも色々森の中を捜索したが一向に見つける事が出来ずにいた。現在はどの辺りかを確認する為森を抜けると、前方が崖になっている見晴らしの良い場所を見つけた。
「あの崖から周囲を見回してみるか」
とりあえず道に迷っても旅館のある場所を覚えておけば困る事はないと考え、崖から旅館を探すことにした俺はギリギリのとこまで歩き始める。そして、あと少しで下を覗き込める位置まで来ると、突然何かが崖の下から現れた。
「荒魂……じゃなくて沙耶香ちゃんか、良かったぁ」
「零次?」
「久しぶり。荒魂は見つかった?」
「まだ」
「そうだよね。そんなに早く見つけられないよね」
「零次も?」
「残念ながらまだ見つけられてないよ。この先はほとんど見て回ったけどいるのは野生動物ばかりだったよ。あははは」
「早く荒魂を見つけないと」
「ああ、そうだね。でも焦っても荒魂を見つけられる訳じゃないから、無理はしないでね」
「分かった。無理はしないように頑張る」
「そこを頑張るんだ……そうだ、他の人は?」
「薫以外は下にいる」
「薫ちゃん、あんたって人は……とりあえず俺も合流するよ。それじゃ降りようか」
「うん」
そう伝えると俺は軽く膝の屈伸をしてから崖の端で立ち止まり下を向いて、足場になりそうな場所を確認してから飛び降りる。途中途中に降りる前に目星をつけていた足場を利用しながら降りる事で、足に負担もあまりかけずに降りる事が出来た。
「よっと……足場が崩れなくてよかった〜」
「神条さん、崖から飛び降りるなんて……あなたは馬鹿なんですか?」
「副隊長さん酷くない?これぐらい大した事ないじゃん」
「いいえ、あの高さから何もしないで飛び降りるような事をするのは馬鹿です。ましてやあなたは刀使ではないのですから」
「そうなの?別に刀使じゃなくてもあれぐらいの高さなら大丈夫だと思うけど?」
「それは貴方だけです。刀使でさえ八幡力を使いますよ」
「……それは置いといて」
「話を逸らしましたね?」
「そ、そんな事ないよ?」
「……そういう事にしておきましょう」
「感謝する……まずは近況報告、向こう側は捜索したけど荒魂は発見出来ませんでした」
「そうですか。こちらも現在捜索中ですが未だ発見できていません」
「お互い進捗状況は変わらずか……それじゃあここからは共に捜索してもいいかな?」
「はい、お願いします……隊長が働かなくて人手が足りなかったので助かります」
「あははは、それは何というか……お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「それではこれから桐生副隊長の指揮の元、任務を遂行します。ご指示を」
「分かりました。これよりまだ足を踏み入れてない範囲を捜索するのでついてきてください」
「了解」
別行動はここまでとなり、隊長が不在の為桐生副隊長の指揮の元、隊長を除いたメンバーで捜索を再開した。
_____________________________________________
隊長を除いたメンバーだけで捜索してから長い時間が経ち、空は夕焼け色に変わっていた。そして、現在は不在だった隊長と合流してメンバー全員集合していた。
「じゃあ、今日はここまで。暗くなると山は危険なんで、早めに切上げた隊長様に感謝しつつ宿で疲れをとるように」
隊長からありがたいお言葉を受けて皆静かに頷く……者は誰一人として存在しておらず、4人の刀使は絶賛沙耶香ちゃんを褒め称えていた。もちろん、空気が読める俺は隊長からのありがたいお言葉を受ける前から包囲網から離れて、隊長の隣で遠くから沙耶香ちゃんの様子を眺めていた。
「たった1日で凄い人気ですね沙耶香ちゃんは」
「ええ、彼女のおかげで捜索範囲も広がりましたからね」
「そうですね」
副隊長の中でも沙耶香ちゃんの株が急上昇していた。俺の評価は実績を残していないのであまり聞きたくなく、話を逸らしていると薫ちゃんが苦い顔になりながら呟いた。
「気のせいか。沙耶香が来た事でオレの株がストップ安になった気がする」
「気のせいです。だって彼女が来る前からストップ安でしたから」
副隊長は最後に衝撃ではないが、事実を告げてから歩いていき、残された2人+αの間には気まずい空気が流れる。
「……薫ちゃん、生きていればいい事の一つや二つ見つかるさ」
「そのフォローの仕方はどうなんだ?」
「ごめん、こういう時なんて言えばいいか思いつかなかったんだ……という事で、ねね助。お手本を見せてくれ!」
「ねねっ!?」
「他人任せかよ!」
「他に方法が見つからなかったからね……許せ薫ちゃん」
「もう少し粘れよ……」
「そうは言っても……他に言えるとしたら、寝顔が可愛かった事ぐらいしか褒める事ないよ?」
「なっ!?お前見たのか!?」
「え?まあ、あれだけ堂々と寝ていれば見てしまうと思うけど?それにしても気持ちよさそうに寝ていたよね」
「//……忘れろ、今すぐ忘れろ!」
「いや無理でしょ……と言うのは冗談だ。だから御刀に手を伸ばさないでください」
「……本部長に今回の任務でサボってたのを黙ってくれるなら許す」
「するする!しますから!黙っていますから!だから落ち着こう。ね?」
「わかった、今回は許してやる……約束忘れんなよ」
「もちろんだ……はぁぁぁ。斬られるかと思ったぁ……」
どうにか隊長殿の許しを得た俺は、未だ心拍が安定しないのでゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせる。一瞬縦から真っ二つに斬られる未来が見えて足が震えていたのを気合で何とかしたのは秘密だ……
副隊長がこの場から離れてから一悶着あった後、入れ替わるようにして沙耶香ちゃんが薫ちゃんの前まで歩いてきた。
「明日は必ず荒魂を発見するから」
「もう少し肩の力を抜いても良いんだぞー。この一件、荒魂による直接的な被害は一切報告されていないんだ。紗南の目も届かないし、気楽にやれよ」
「任務は速やかに達成すべき。刀使の使命は、荒魂を討つ事だから」
「だよな、うん。刀使として正しいのはお前らだよ」
「言っている意味がわからない」
「いいんだよ。お前らはそれで」
「ねー」
「薫ちゃんが隊長らしい……だと……!?」
「零次、どうしたの?」
「あ、ああ。ちょっと驚いただけだから気にしないで」
薫ちゃんの気遣いに本気で驚いてしまい動揺したのを誤魔化して愛想笑いしてみると、沙耶香ちゃんが浮かない顔をしていたのでバレたのかと思い問いかける。
「どうしたの沙耶香ちゃん?」
「ねぇ零次、さっき薫が言っていた意味が分かる?」
「え?ああその事か……まあ何となくは分かるかな」
「分かるの?」
「少しね……その内沙耶香ちゃんも分かる日が来るさ……」
「どう言う事?」
「う〜ん、そうだなぁ……考え方は人それぞれ違うって事かな?」
「?」
「まあ今は分からなくても問題はないから深く考えなくてもいいと思うよ?」
「そうなの?」
「ああ。それにこればかりは刀使じゃない俺が言っても説得力皆無だからね……いずれ薫ちゃんが教えてくれるさ。だから、今は宿に戻って疲れを癒そう。戦士にも休息は必要だからね」
「零次、私は戦士じゃなくて刀使だけど?」
「比喩だよ比喩。ほら、俺たちも早く行かないと置いて行かれちゃうから行くよ」
「……分かった」
「うんうん、素直でよろしい。それじゃあ行こう」
俺なりに答えを持ち合わせてはいたが、薫ちゃんが何を伝えたかったのか分からない為敢えて教えず、後の事は薫ちゃんに任せる。今は宿に戻ることを最優先に宿へ歩き出すと、後ろから沙耶香ちゃんもついてきたので安心して先に行ったメンバーの後を追った……
__________________________________________________
宿に戻った後、上手い飯と温泉を堪能した俺は部屋でゴロゴロしながらスマホを弄る。
「……ガチャ率の変動があったのにも関わらずこの引き運……天は、運営は俺を見放した!!」
ソシャゲのガチャを引いてレアリティが最高なものが1つも引けず、嘆きながらスマホを既に敷かれている布団の上に叩きつける。
「これはもうあれだ、課金しろという事だな。だがしかし!それでも俺は無課金で続けてやる!!俺の意思は豆腐よりは硬い!!……近場にコンビニないかなぁ」
俺の意思は思った以上に弱くて脆く、ガチャ運の無さに思わず理性が崩壊してコンビニでカードを買おうと立ち上がり、財布を持って部屋を出た。
「別にカードが目的ではない、あくまでついでだ。そう、お菓子を買うついでだから大丈夫……こうして沼にハマるのか俺は……」
自分に言い訳しながらもカードを買う事は決定事項になりつつある中、廊下を歩いていると前方に見知った顔が見えたので近づいて声をかけてみた。
「はぁ……めんどくせぇ……」
「何が面倒臭いの?」
「れ、零次!?いつからそこに!?」
「今来たばかりだけど?それで、こんな所でどうしたの薫ちゃん?」
「あぁ、ちょっとな……そうだ。零次、この宿に卓球できるとこがあったよな?」
「え?確か一階にそんな場所があったけど……」
「それだ!ちょっとオレは沙耶香達を連れて来るから、零次はラケットを用意してくれ。それじゃ、頼んだぞ」
「は?お、おい!ちょっと!?……まだ一言もいいとは言ってないんだけど……まあ、どうせコンビニがどこにあるかも分からないしいいか。ラケットとピンポン球さえ用意すればいいんだよな?……従業員の人に聞いて借りてこよう」
突然の申し出を断れず、あのままでは課金の沼にハマる未来が待つだけなのは分かりきっている事なので、急遽予定を変更して薫ちゃんのご要望通りに道具を借りる為、従業員を探し始めた。
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ロビーにいた従業員の人に言って、卓球道具を借して貰ってから卓球台のある部屋に向かうと既に他のメンバーが温泉の浴衣姿で集まっていた。
「意外と人望あるんだなぁ……」
やはり、薫ちゃんと言う人間は何だかんだ言っても隊員達からの信頼があるようで正直尊敬する。もしかしたら今回も誰かを気にかけてここに呼び出したのではなかろうか?
「これがカリスマ……まぁそれはないか。皆暇していただけだろ……そうに違いないはず!」
「おっ?やっと来たか。零次遅いぞ」
「ごめん、少し従業員の人と話をしてたら少し遅くなってね。はいこれ、借りてきたけどラケットの種類が違うのは勘弁してくれ」
「おー。まあ大丈夫だろ。ありがとな」
「どういたしまして」
俺は素直にお礼を言ってくれる薫ちゃんに対して1つ仮説が唐突に浮かび上がる。こうやってさり気なく好感度を上げているから信頼されているのではないのだろうか?
「俺もこれから真似しようかな?」
「何を真似するんだ?」
「いや、何でもないから気にしないで……それで、どうしていきなりやろうとしたのかは聞かないとして、誰がやるの?」
「ふっふっふ、それなら決まっている。オレがやるのはもちろんだが、対戦相手として……沙耶香を指名する!」
「私?」
「そうだ!沙耶香はそっち側な」
勝手に指名して場所も相談もせずに決めてから、ラケットとピンポン球を手に取り、薫ちゃんは沙耶香ちゃんと向き合う形で台の向こう側に移動する。
「……取り敢えず沙耶香ちゃん、これを持って」
「分かった」
俺は残りのラケットを沙耶香ちゃんに手渡した。ラケットを受け取った沙耶香ちゃんだが、急な展開にまだ困惑したままの状態でも台の前に移動する。
「沙耶香ちゃん……俺は君を尊敬するよ」
俺ならば確実に文句の1つは言っていただろう。そう考えると沙耶香ちゃんが急に眩しくて直視出来なくなった。
両者とも位置に着くと、未だにラケットを持って困惑している沙耶香ちゃんに対して薫ちゃんが挑発し始めた。
「へいへーい、沙耶香ビビってるー」
その最中も眩しくて直視出来ていない俺が、伊達眼鏡越しに目元を手で覆っている間、他のメンバーは俺と反対側に横一列に並んで沙耶香ちゃんの声援をし始めた。
「糸見さん、ファイト!」
「隊長なんかやっつけちゃえ!」
「あれ?薫ちゃんは信頼されてるんだよね?……今のは聞き間違いか?」
声援の中に薫ちゃんを批判する声が聞こえた気がした俺は……右から左に受け流す……俺は何も聞かなかった……そういう事にしておこう……
「どういう……事?」
困惑していた沙耶香ちゃんは遂に耐えきれなくなったのか、この状況についての説明を薫ちゃんに問い詰める。
「どうもなにも、温泉と言えば卓球だろうが」
「今は任務の途中」
薫ちゃんの答えになっているのかわからない答えに対し、沙耶香ちゃんは当たり前のように答えた。
「「真面目か!?」」
思わず沙耶香ちゃんの答えには反射的に俺が思った言葉が口から出て、薫ちゃんとハモってしまった。
「バカヤロウ、休んだり遊んだりするのも任務の内だ」
「任務……」
「いやいや、後者は違うだろ?沙耶香ちゃんが信じたらどうするの?」
「細かい事はいいんだよ。今はそれよりも遊ぶのが大事だ!」
薫ちゃんの発言にはどうも納得は出来ないが、確かに遊ぶのも休むのも大事ではあると思うのでこれ以上は何も言わずに黙る事にした。
「ねねー」
薫ちゃんの発言に対しては何も言わない事にした時、突然沙耶香ちゃんの肩にねね助が現れた。
「あっ」
「ねね助?いつの間に?」
ねね助の出現に驚いた沙耶香ちゃんは小さく声を漏らし、俺は今までどこに潜んでいたのか……もしや、浴衣の中にいたのでは?と考えられる隠れ場所を推測していると、ねね助がその場で尻尾を使って素振りを始めた。
「ねっ、ねっ、ねっ」
それを見た沙耶香ちゃんはねね助の意図が分かったかのように、同じくラケットを持って素振りを始める。
「こう?」
「ねっ!」
「え?分かるの?」
ねね助の意図が分かった沙耶香ちゃんに対して驚きを隠せず、俺はいつしか先程までねね助がどこにいたのか推測するのをやめていた。
「ふっふふ、ねねが言ったところで所詮貴様など遊びの素人。本気の遊びと言うものを、教えてくれる!!」
「流れるようにフラグを建てますね」
「あー、何だか結果が目に見えるよ」
「はっはっは!いくぞ沙耶香!」
薫ちゃんは沙耶香ちゃんに宣言した後、ピンポン球を上に投げて構えを取る。
「ま、まさか!?あれは!?伝説のプリンスサーブか!?」
「ふん……キェェェェェェ!!!」
そして今、ついに沙耶香ちゃんと薫ちゃんとの白熱のバトルが始まった……
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卓球とは競技である、であるからして必然と決着がつけば終わるものだ。そして現在、俺の目の前の光景は勝者と敗者の姿が見て分かる程の状況になっていた。その光景を目の前にピンポン球が床に跳ねる音がBGMとして鳴り響く。目の前にある台の片方には……薫ちゃんが台に突っ伏して荒い呼吸をしていた……薫ちゃんが負けたという事だ……
「えー、勝者は沙耶香ちゃん!」
取り敢えず何か言ってあまり薫ちゃんの姿を注目させないようにする為、沙耶香ちゃんが勝利した事を宣言した。その俺の意図に気づいてかは知らないが、ねね助が沙耶香ちゃんの腕を尻尾で掴んで上に掲げると俺と他に1人を除いたメンバーが沙耶香ちゃんの元へ集まって喜び合っていた。その間に俺も薫ちゃんの元へ移動する。
「はぁ……はぁ……はぁ」
「驚くほど体力ないですね、隊長」
「卓球は英語でtable tennis って言うけど、薫ちゃんの疲れようはtennis並み……いや、それ以上だね」
「ええそうですね。流石に私も驚きました」
「俺もだよ……」
「薬丸自顕流は、一撃で仕留める瞬発力が……ありゃあいいんだ。おい!ちょっと待ってろ」
荒い息が少し整ってきた薫ちゃんは、ラケットを置いてこの場から出て行く。それを見ていた全員が疑問に思いながら薫ちゃんが出て行ったドアの方を見ていると、何やら音がドアの向こうからしてきた。そして、勢いよくドアが開くとそこには……御刀を持っている薫ちゃんの姿があった。
「はっは!御刀さえあればお前のような木っ端、敵じゃねぇ!!」
「いっそ清々しいまでに卑怯!」
「逆の意味で尊敬します!隊長!」
「糸見さん頑張れ!」
「下克上よ!」
「部屋を壊さないで下さいね」
「……ちょっとトイレ行ってくる」
予想外の行動に俺の頭は機能停止した。薫ちゃんが何を考えているのか分からなくなり、少し気分を落ち着かせようと一度トイレに向かう……と言うのは嘘で、俺の経験上これから面倒事が起きると思ったので、巻き込まれない内にこの場から退散するのが最良だと判断した。だからこそ、俺はこの場に全員を残して1人トイレへ逃げた……
「いい度胸だ、覚悟しやがれ」
俺がトイレに向かう最中に最後に聞いた言葉はどこかフラグ臭い台詞だった……
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あの後、少し早歩きをしてトイレに向かった俺は途中従業員の人に捕まった。
「あら?お客様は先程の」
「え?ああ、はい。神条です。先程は道具を貸していただきありがとうございます」
「どういたしまして。皆様楽しんでいらっしゃいますか?」
「え、ええ。それはもちろんですよ」
「それは良かったです」
道具を貸して頂いた従業員の方と偶然鉢合わせし、素通りするのは失礼なので少しだけ世間話をしておこうと話していた俺は、まさかこの選択が間違いだったとは時が来るまで気づけなかった……そう、今従業員の方にお礼をしている最中に俺の来た道の方から何か大きな音が聞こえたのだ。
「あら?今の音は?」
「あ、あははは、何ですかね?少しハメを外しすぎて頭を壁にでもぶつけたんじゃないでしょうか?」
「え?それはそれで大丈夫なんですか?それに、音もかなり大きかったような?」
「どど、どうって事はないと思いますよ?ですが少し心配なので俺が確認してきます。後で教えに行きますのでロビーで待っていて下さい」
「そうなのですか?私も一緒に……」
「大丈夫です!……たぶん……とにかく、俺が確認して来ますので待っていてください。お願いします」
「は、はぁ、分かりました。それではロビーに居ますので後で何があったか教えて下さい」
「はい!それでは失礼します!」
その場で敬礼して返事をし、すぐ様回れ右をして来た道を歩いて戻る。
「大丈夫だ俺、あの場には副隊長の桐生さんがいるんだ。いくらなんでも台を壊してはいないはずだ。薫ちゃんだって副隊長の前でそんな事はやらない……よな?」
戻る最中に自分に大丈夫だと言い聞かせ、最悪の状況には陥っていない事を願いながら歩く。そして、もしかしたら他の場所で音がしたのかもしれないと希望を持ち、皆のいる卓球場のドアの前に立つ。
「何も起きていませんように何も起きていませんように……よし!」
何も起きていない事を祈った後、覚悟を決めてドアを開けて……そっと閉じた。
「……これは夢か?卓球台は無事だったが……いやいや、そんな御刀が天井に刺さってるとか無いわー、目の錯覚だなきっと」
そう行った後もう一度ドアを開けて見ると、隅に4人で固まってひそひそ話している少女達と、その場から一歩も移動していない沙耶香ちゃんと台の上に乗っているねね助がハイタッチをしている。そして、天井に突き刺さったままの御刀付近で腕を組んで仁王立ちしている桐生副隊長と土下座している薫ちゃんの姿が目に写った……
「どうしてこうなった……」
「はっ!?零次!助けてくれ!」
「えーっと、これは薫ちゃんの仕業……だよね?」
「いや違う、オレの手元から御刀が勝手に動き出して天井に刺さったんだ」
「隊長?」
「な、なーんてな……零次!何とかしてくれ!お前だけが頼りなんだ!」
「薫ちゃん……はぁ、まったく」
「零次……」
「罪は償わないといけないよ薫ちゃん。頑張れ……」
「この薄情者ー!!」
「隊長。やはり本部長に報告しますね?」
「はっ!?それだけは勘弁してください!何卒お慈悲を!」
綺麗なまでに土下座が様になっている薫ちゃんを見て助けたいとは思うが、その目の前にいる桐生副隊長のプレッシャーが恐ろしくて何も出来ずただドアの前で立ち尽くす。本当に何がしたかったのか分からずにいると、頭を上げた薫ちゃんは目の前の人物ではなく、今も仲よさそうにしている沙耶香ちゃんとねね助の様子を見ながら一瞬微笑んだ。
「なるほど、そういう事か……仕方ないな」
俺は天井に突き刺さっている御刀の元まで歩き出す。プレッシャーが近づくにつれ強くなろうとも俺の歩みは止まらない。この程度は余裕だ。師匠に比べたら可愛いものなので近づきたくはないが、近づこうと思えば近づける程度で問題ない。どうにか2人の間に到着すると、未だにプレッシャーを放っている桐生副隊長をなだめる。
「まあまあ桐生副隊長、薫ちゃんもこうして反省しているみたいだから許してあげましょうよ」
「零次……」
「……そうですね。少しは反省しているみたいですからこれ以上はやめておきます」
「桐生副隊長……オレは信じていたぜ!」
「勘違いしないでください隊長、私は説教はやめるという意味で言ったんです」
「「え?」」
「考えてみてください、いくら反省したところでこれがどうにかなる訳ではないんですよ?」
そこで桐生副隊長は現実を突きつけるかのように御刀を指差した。
「これはどうするんですか隊長?」
「いや、その、それは……零次!!」
「そこで俺に振るの!?」
「零次なら何とかなるだろ!というか何とかしてくれ!」
「驚くほどに他人任せだね薫ちゃん!?そんな事言われても……あっ」
「神条さんどうしたんですか?」
「何かあるのか!」
「いやぁ、それはあるにはあるんだけど……上手くいくかどうかわからない」
「それでもいい!頼む零次!」
「う〜ん……仕方ない。やるだけやってみるよ」
「おお!ありがとう零次!」
「あまり期待はしないでね?」
「神条さん、それで何をするんですか?」
「ん?それはね……」
俺は袖からスマホを取り出して2人に見せる。
「これだよ!」
「「スマホ?」」
「まあまあ。ちょっと待ってて」
2人が困惑している隙にスリープモードを解除してある連絡先に電話をかける。コール音が鳴ってからスマホを耳に当ててしばらく待つと、かけた相手側と繋がった。
「あ、もしもし真庭本部長ですか?」
「お、おい!零次!お前!」
「しーっ、静かにして薫ちゃん。大丈夫だから」
『もしもし、こちら沖田です』
「あれ?沖田さん?本部長は?」
『本部長は今は休んでいるよ』
「そうですか……」
『もしかして神条君かい?』
「え?はいそうですけど」
『そうか。今君は本部にいないのか。もしかして昨日からかい?』
「そうなんですよ……すみません。書類まだ終わってないままなんですよ」
『それは気にしなくていいよ。本部長から急に呼び出されて派遣されたんでしょ?』
「まあそうですね。書類は後回しでいいと言われたので……まさか群馬まで来るとは思っていませんでしたよ」
『あははは、それはお気の毒に……それで、何かあったのかい?』
「あー、ちょっと必要な道具と資材を用意して貰おうと思ってたんですけど……休んでるなら無理ですね」
『うーん、そうでもないよ?』
「え?」
『必要なのは道具と資材だけなんだよね?』
「ええ、そうですけど……大丈夫なんですか?」
『ああ、それなら僕が何とか用意するよ。一応これでも結構地位が高いからね。何とかなるよ』
「ありがとうございます。ですが、道具や資材を運搬する人員が最低でも1人いないとですがそこはどうするんですか?」
『それなら問題ないよ。さきほど戻ってきた彼ならいつも暇しているからね』
「それって……安藤さんですか?」
『正解!流石神条君、本部長の部下なだけはあるね』
「いえいえ、これぐらい職員の方なら気づいていると思いますよ?」
『そうだね……まあそれはいいとして、道具や資材を運搬する人員だけでそれ以外には人員を割けないんだけど、それでもいいなら協力出来るけどどうする?』
「はい。お願いします」
『了解。それでどんな物が必要なの?』
「お世話になっている旅館で何もせずにいるのは少し申し訳ないので、所々に傷や穴が見える壁や天井の修繕したいと思いまして。その為の道具や資材をお願いしたいんですが」
『それなら、修繕活動で余っているものと予備があれば問題ないかな?』
「たぶん大丈夫です」
『それじゃあ、いつ頃届ければいいかな?』
「そうですねぇ、出来れば朝にはお願いします。無理であればせめて昼までには」
『了解。まあ彼の運転なら朝には着くと思うよ。他にはないね?』
「はい大丈夫です。ありがとうございます」
『気にしないで、僕も君には書類を手伝って貰っているからね』
「え?俺がやっている書類に沖田さんのもあるんですか?」
『あっ……そ、それじゃあ明日の朝には届けるから。切るね!』
「あ、ちょっと!……どういう事だ?あの中には本来やらなくていい書類があるのか?だとしたら、書類が多いのは奴のせいだと?」
まさか今までの仕事量は真庭本部長からの嫌がらせではなく、沖田が勝手に置いていったのをやっているのか?
「まさかな……」
「おい!零次!聞いてるのか!」
「え?薫ちゃんどうしたの?」
「どうしたのじゃねぇ!急に考え込んでたから呼んだのに……返事しないから心配したぞ」
「そうだったのか……ごめん薫ちゃん」
「ったく……それで、どうなったんだ?」
「それなら問題ないよ。明日の朝には道具が届く手筈になっているから、あとは旅館の人に説明して了承を得るだけだ。もちろん、真庭本部長には秘密だ」
「そうか……まあ、本部から人を寄越せばすぐに終わるか」
「何言ってるの薫ちゃん?本部からは道具だけ届けてもらうだけだから人は運転手だけだよ?」
「はぁ?じゃあ誰がやるってんだよ?」
「俺だけど?」
「はぁ!?お前出来んのかよ!?」
「流石に壊れた建物を修繕するのは無理だけど、これぐらいなら1人でも何とかね」
「神条さん、あなたは一体何者なんですか?」
「だから前にも言ったでしょ?真庭本部長の部下だって……そういう事で、明日は任務に参加できないと思うんだけどいいかな?」
「ああ、それは構わないんだが……いいのか?」
「今回は特別だよ。薫ちゃんが隊長としてはしっかり働いているみたいだからね」
「どういう意味ですか?」
「それは隊長に聞いてみてください……さて、それでは俺は旅館の人に説明してくるからこれで失礼するよ」
いつの間にか視線が集まっていたこの場から離脱する為、後ろから聞こえる声を無視して卓球場から出て行き、そのままロビーでまつ従業員の元まで歩いて行った……
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旅館の人に必死になって土下座をしながら説明をして何とか了承を得た後、疲れきった俺は部屋に戻り速攻で布団に入って眠りについた事で、次の日の朝は目覚めも体調もすこぶるよく、7時になる前に起きる事が出来た。
そして、朝食をとった後に布団が片付けられている部屋に戻って着替えると職人の忙しい1日が始まる。荒魂捜索の為朝からまだ捜索していない場所を薫ちゃん達が歩いて探している頃、俺は今朝方到着した安藤に本部長に黙っている代わりに手を貸してもらうようオハナシして色々と道具を車から運び出す。
一通り運び終えてから、安藤に偶に道具を手渡して貰いながらも天井の修繕から取り掛かる。沖田が用意してくれた道具の中には偶然なのか予め調べていたのか、同じクロスがありクロス全貼り替えをせずに修繕する事が出来た。だが、やはり1人で行なっている事もあり、かなり時間が経過して既に太陽が真上に登っていた。しばし休憩をとり、午後からは従業員の案内の元、修繕する場所を教えてもらいながら作業をし、やがて最後の壁のクロスを張り替えた頃には空が夕焼け色に染まっていた。その事実を知った俺は、急いで道具を片付けて安藤に協力してもらいながら車に資材や道具を運び、何回か往復して全ての道具と資材を車に積み込み終えた。
「やっと終わったぁぁぁ」
「そんな……本当なら道具を運ぶだけのはずが……」
「まあまあ。細かい事を気にしないでくださいよ安藤さん。そんなんじゃ人生疲れちゃいますよ?」
「うるせぇ!こっちはお前のせいで疲れてんだよ!」
「それはほら、今までのツケが回ってきたと思って受け入れてください」
「そんなの無理だ!せっかく名物巡りをしようとしてたのに……」
「いや働いてくださいよ……まあ、その。ありがとうございます。おかげで助かりましたよ」
「ほとんど俺がいる意味なかったよな?」
「……ああそうだ、まだ薫ちゃん達が捜索中かもしれないから合流しないとだった。それじゃあお疲れ様でした!」
「おい!待て!……くそぅ、帰ったら沖田さんに文句言ってやる」
俺は安藤を1人残し、まだ戻ってきていない薫ちゃん達の元へ逃げた。ありがとう安藤、今度何かお土産持っていくよ……ゲテモノをな!!まさに外道!!
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山の中を探し回っている俺は、先程道具を詰め込んでいる時に見た車両を思い返していた。
「あれは確かノロを回収する時の車だったよな?無事に見つかったのかな?」
それにしてはスペクトラムファインダーに反応していない荒魂に対していささか大袈裟に感じるも、そんなものかと無理矢理納得して山の中を駆け回る。すると突然近くから聞き慣れた声が聞こえた。
「くそ!次から次へと何だってんだ!」
「今の声は薫ちゃんか?どうしたんだろ?」
その声は普段の薫ちゃんからは想像できないような感じだったので、気になった俺は声のした方に進路を変更して駆ける。
「確かこっちだった筈なんだけど……あ、いた」
ようやく姿を確認できた俺は前方にいる薫ちゃん達に声をかける。
「おーい……って何があったんだ?」
「零次!」
「やあ薫ちゃん、修繕が終わったから来たよ……それで、何でみんな倒れてるの?」
「原因はあいつだ」
「あいつ?」
薫ちゃんの視線を辿って顔を向けると、そこには見知った顔の人物が御刀を握りながら立っていた。
「ふぁっ!?」
「どうした零次?」
「あ、いや、何でもない……」
「獅堂、真希」
「お前がこいつらをやったのか……」
「ちょっと薫さんや、証拠も無しにそれは酷くない?」
「零次は黙ってろ」
「……はい……こんな器用な真似出来ないと思うんだけどなぁ」
俺が薫ちゃんに怒られていると、一瞬こちらを見て驚いていたがすぐに無表情になり、真希は答えもせずに背を向けて飛び去っていった。
「おい!待ちやがれ!」
「薫、ノロが何処にも……」
「くそっ!あのヤロウ……」
「薫ちゃん、沙耶香ちゃん、今は倒れてる人達をどうにかするのが先じゃないか?」
「くっ!わあってるよ!沙耶香、零次、今はまず全員を旅館まで運ぶぞ。手伝ってくれ」
「うん、わかった」
「了解……でも全員運べる?」
「そこは大丈夫だろ……零次がいるから」
「うん、そうなるよね。別にいいけどさ」
大の大人達は全員俺が往復して運び、沙耶香ちゃんと薫ちゃんは桐生副隊長達を旅館まで運んだ。
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倒れている人達の約半数はノロを回収に来た人達だった。沙耶香ちゃんと薫ちゃんが桐生副隊長達を旅館の彼女達の部屋まで運んだ後、心配だったのか最後の1人を運んでからは部屋から出てこなかったので、俺は1人黙々と残った人達を運んでいた。
「マジかよ……せめて一声かけて欲しかったな……」
文句を言いながらも最後の1人を旅館まで運んできて、空き部屋を借りてそこに寝かせる。寝かせた人達の事は、先程様子がおかしい事に気付いた安藤さんに本部へ連絡してもらったので直に迎えがくる筈だ。これ以上は俺に出来る事はないので、自分の部屋に戻り温泉浴衣を準備して浴場に向かい温泉に入り疲れを癒す事にした。
「後は安藤さんが何とかするだろ……あぁぁぁぁ、いい湯だな〜〜」
そして俺は、今回は長めに温泉に浸かる。浴場を出た頃には時刻が8時を回っていて外は暗くなっていた。
「……長風呂しすぎた……頭クラクラする……おっとっと、危ねぇ。こっちは沙耶香ちゃん達の部屋だった……あぁ、早く部屋に戻って横になろう」
長風呂で逆上せて思考力の落ちた俺は、間違えて沙耶香ちゃん達の部屋へ向かう廊下を歩いていた。
「ダーーーーーシュッ!!」
「……ん?今のは薫ちゃんの声か?……まあいいか、早く部屋に戻ろう」
向こう側から声が聞こえた気がしたが、今はそれよりも部屋に戻るのを優先して来た道を戻り、自分の部屋へと向かった。
「やっと着いたぁぁぁ。ぼふぅ」
部屋に着くと一直線に布団まで向かい倒れこむ。
「あぁ、今日は疲れたぁぁぁ。明日は楽になると良いなぁ……スー……スー……」
倒れこんだ後、やっと横になれた安心感と今日の疲労が重なり俺は直ぐに眠りについた……スマホの着信が鳴っているのに気づかずに……
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次の日、目が覚めると……車の中で座って寝ていた。
「……は?」
「おう、やっとお目覚めか」
「安藤さん?……ああ夢か……」
「言っておくが夢じゃないからな?それよりもうすぐ着くから心の準備をしておけよ」
「はぃ?心の準備?」
「そうだ。昨日本部長が連絡したのに出なかったからお怒りだぞ?」
「え?電話?」
「ああ、昨日の夜に神条に電話したみたいだぞ?まったく、おかげで俺がこんな事するように命令されちまったぜ……っと、着いたぞ」
「着いたって……本部?」
「昨日の夜中にお前を車に運んでから出発して、途中仮眠とったから朝になったけどな。もちろん荷物も積んであるぞ?」
「は、はぁ。ありがとうございます……じゃなくて、どういう事?」
「それは本部長に会えばわかるさ。ほら、行くぞ」
「ちょっと……まだ理解できてないんだけど……嫌な予感しかしないけど、とりあえず行くか」
安藤さんが積んでくれた荷物を手に取り彼の後を追いかける。安藤さんに着いて歩く中、お互い沈黙のまま廊下を歩いていると急にある部屋の前で立ち止まる。
「この中に本部長が待っている筈だ……死ぬなよ神条……それじゃあな。お前のことは忘れない」
それだけ言うと安藤さんは来た道を走っていった。
「……あ、おい!どういうことだよ!?……俺が何かしたのか?」
まだ寝ぼけているのか頭が働かない。それでも考えてみるが思い当たる事が皆目検討つかない。
「まあ良いか、いつもの事だ。とにかく入るか」
今、真庭本部長の待つ作戦本部の扉を開けて中に入る。
「失礼します。神条零次、ただいま帰還しました」
「おお、やっと来たか……神条、ちょっとこっちに来い」
「はい」
真庭本部長に言われた通りに彼女の元へ歩いて行く。俺が近くに来ると、こちらに向き直り口を開いた。
「神条、昨日何故電話に出なかったんだ?」
「電話ですか?そんな事言われても身に覚えがありませんよ?昨日は直ぐに布団に横になって……あっ」
「どうした?」
「いや〜、その、寝る前にスマホの着信音が鳴っていたような気が……すみませんでしたぁぁぁ!!」
「……神条、わざと出なかった訳ではないんだな?」
「はい!そんな気は一切ありません!」
「……はぁ、まあいい。昨日の事は薫から聞いているからな」
「え?そうなんですか?」
「ああ。例のノロの強奪犯が現れたんだろ?」
「たぶんそうですね」
「たぶんだと?どういう意味だ?」
「あー、それはですね……ほら、真庭本部長も爺さんから聞いてると思いますが、俺は一度黒フードの人物を見ているんですよ」
「それならフリードマンから聞いているが……今回見たのは違う人物だと言いたいのか?」
「その通りです。今回見た人物は体格も違いましたね」
「では、ノロは何処に消えた?」
「さぁ?俺たちが来る前にでも逃げたんじゃないですかね?もしかしたら今回見た人物が何か知ってるかもしれませんよ?」
「ほう、神条は獅堂が犯人じゃないと?」
「ええ。彼女には無理だと思いますよ」
「それは何故だ?」
「簡単な事ですよ。彼女は根っからの善人だからです」
「……まるで彼女を知っているようだな。どうしてそう言い切れる?」
「えっ!?そ、それはですね……アレですよ。こう、オーラ的な?」
「何だそれは?」
「あ、いやぁ、その……自分、人を見る目があるので!」
「……だから彼女の仕業ではないと?」
「そ、そうなんですよ。俺から見た感じ、彼女は悪人になりきれない善人みたいな?」
「はぁ?」
「いや、ですから……こほんっ、とにかく!彼女がノロを強奪したとは考えにくいと思います」
「……だが、彼女以外に現場にはいなかったが?」
「だから、それはさっきも言った通りです……と言っても納得できませんよね」
「当たり前だ」
「ん〜……それなら直接彼女に聞いてみてはどうでしょか?」
「そうしたいが、彼女の行方が分からない」
「……それなら彼女が現れるまでこの件については保留にしませんか?」
「……そうだな。今はそれよりも今後の対策を考えるのが先か」
「そうですよ。その時に捕まえれば真実が分かりますからね」
「確かにそうだな。それでは私は、今後の対策を練るので忙しくなるだろうからこれを頼んだぞ」
「了解しました……って、ちょっと待ってください。それで何故俺に書類を渡すんですか?」
「だから言っただろう?これから忙しくなると」
「いやいや、それは分かりますが何故に俺なんですかね?他の人でもいいのでは?」
「それは流石に他の者に悪いだろ」
「俺には悪くないと?」
「ああ、連絡に出ない奴に悪いとは思わないな」
「うっ……昨日はすみませんでした」
「まあ、今回はそれで許してやる。他にも、修繕活動の道具や資材が使われていたみたいだが?」
「……俺が使いました」
「そうかそうか。まあ、それらは余り物だったから特に問題はないがな……これから少ーーし仕事が増えるかもしれないがやってくれるな?」
「……神条零次、謹んでお受けいたします」
「ああ、期待してるぞ……それで次の用件だが、薫はちゃんと働いていたか?
「薫ちゃ……益子薫さんですか?彼女は……隊長としてよく働いていましたよ」
「それは本当か?」
「はい。特に問題なく……とは言えませんが、メンバーを気にかけていろいろと動いていましたね」
「……そうか」
「ええ。沙耶香ちゃんも今回の任務で彼女から何か学ぶ事が出来たと思いますよ」
「そうみたいだな……話はこれで終わりだ。もう戻っていいぞ」
「はい。それではこれで失礼します」
「神条、明日からも頼んだぞ?」
「はいはい、分かってますよ……それでは失礼します」
真庭本部長からお叱りは貰わなかったが、代わりに書類を貰い、それを手にして部屋を出て作業部屋へと向かった。
「……戻ってきたらこの仕打ちは流石に酷いな……やはり、今も昔も楽ではなかったか……」
1人ため息をつきながらも、今日からまた俺の忙しい1日が始まっていく……例え彼が望む事とは逆になろうとも、ただひたすら日々を過ごしいく……
はいはいはい!どうですかこの駄作感!最悪でしょ?
……もう最近疲れてこんな文章になっちゃうんですよね〜。それでも頑張って書きますけど……
やっと、次回はあの2人との面会だ!!
チョコミントアイス美味いな……