変境で育てられた自称常識人   作:レイジャック

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さあ、貴様ら!マイクの準備は出来ているか???


Let`s Shout!!!!



目の前にいるのはもしかして……なんだ、天使か……

車を走らせて数時間もしないうちに目的地に辿り着いた。

 

「こんにちは〜遊びに来たわよ〜」

 

相変わらずマイペースな奥様こと、俺の母さんは家から出てきた女性に声をかけていた。このコミュニケーション能力だけは見習いたいものだ。

 

「いらっしゃい姉さん、さあ入って」

 

「お邪魔しま〜す」

 

「「お邪魔します」」

 

おいおい、あの父さんでさえこんなに礼儀正しいぞ。その上をいくというのかこの人は!?さすが家族勢力図の頂点に立つ御方だ……そんなバカな事を考えている間に居間に通され、座って下さいと言われたのでお言葉に甘えてそこにある3人がけのソファに座った。おうふ、何だこのソファは柔らかいぞ?こいつ、生きてる!?……まあそんな事ないんだけどね。

 

さてさて、ここからどのような事が既に予想できる俺は出されたお菓子を黙々と食べて、砂糖とミルクが入ったコーヒーを飲んでいる。他にやる事がないから仕方ない、このソファに座った時点でこうなる事は予想できていた。

 

「初対面の相手だからこれぐらいしかやる事ないな……話長いし、同い年の子はいないし、意外とお菓子が美味しくてやめられないし……うん、悪くない。パクッ」

 

このミルクたっぷりママの味は最高だ、これは賞与ものだ。思わず店長呼んできてと言いたくなる。この場合は製作者か?

 

ここで話始めてから数分後、やっとひと段落ついてお口直しに各々が飲み物を飲んでいると先程から感じる気配にあちらの女性が気づいたようで手招きしてる。特に興味がない俺は気にせずにミルクたっぷりママの味を堪能していると何やら周りが騒がしい。

 

「ほら、零次自己紹介しなさい」

 

「ふぇ、いふぁふぉろ?」

 

「口の中に入れながら喋らないの。みっともないわよ」

 

「ごくっ……美味しいから仕方ない、悪いのは俺じゃなくこのお菓子さ!」

 

「はぁ、そんなにこのお菓子が気にいったの?」

 

「もちろんサー!!」

 

「まったく、この子ったら……ごめんなさい、その、ちょっとこの子変わっているから」

 

なんだと!少なくともまだまだ常識人の範疇だ!少なくともあなた達よりはマシだからね!……最近自分でも変な子供だよなぁとか思う時もあったけど、少しだけだから!ほんの少ししか変じゃないから!

 

「あら、姉さん、面白い子でいいじゃない」

 

「そう?」

 

「ええ、そう思うわよ。ねぇあなた」

 

「ああ、そうだな。それに元気がありそうだ」

 

「ははは、確かに元気な子に育ってくれましたね」

 

「いや〜照れますね〜」

 

「もう!調子に乗らないの」

 

「ははっ、愉快な子だね」

 

「ふふっ、そうね。それじゃ先にうちの子を紹介させてもらうわね。ほら、隠れてないで出てきなさい」

 

「うぅ〜〜」

 

ん?いつの間に……いや、俺がお菓子に夢中になっている時に来ていたのか……まあ、女の子の声だし一緒に遊ぶにも何もないから別に紹介してくれなくてもいいんだけどね……自分でも驚くほど俺はドライだな……ア〇〇スーパードラァイィ!!!

 

「初めまして……燕 結芽です……よろしくお願いします」

 

なぬっ!ユメだと!?あのお団子2つの髪型の!?ここはD.C.の世界だったのか!ならばこの出会いを大事にしなくてはならないな……ごめん義之……お前は弟君と呼ぶ女性と幸せになってくれ……

 

お菓子の包装を開けようとしていた手を止めてそちらを見るとそこには……天使が降臨していた……うん、お団子ヘアーじゃなかったけど別にいいや……知ってるか?この世は可愛いが正義になるんだぜ?

 

「あらあらとても可愛い子じゃない」

 

「ああ、最初見た時天使かと思ってしまったよ……零次もそう思うだろ?」

 

「父さん、天使にあったマナーを俺は知らないんだけど……この時はどうすればいいのかな?」

 

「いや、今のは冗談だったんだけど……」

 

「そうなの?俺は本気かと思ってたよ……思わず天にも登りそうだった」

 

「危ないねっ!?登っちゃ駄目だからね!それは片道切符だから絶対駄目だよ!?」

 

「父さん、今のは冗談だよ」

 

「そ、そうだよな。悪い少し興奮してしまったね」

 

「大丈夫だよ父さん、いつもの事……でしょ?」

 

「いや、人を万年発情してる人みたいに言わないでくれるかな?誤解されるじゃないか」

 

「それはどっかに投げ捨てて置いて、俺の自己紹介がまだだよね」

 

「零次、何だか最近お父さんに冷たくない?」

 

「お父さん、零次も成長してるって事よ」

 

「こんな成長の仕方嬉しくないんだけど……」

 

父さんが落ち込んでいるみたいだけど構わずに自己紹介しよう、天使様の前でみっともない姿は見せられないからな!……さっきからみっともない食い意地は見られているけどね……

 

「初めまして皆さん、私、神条零次と申します。以後お見知りおきを」

 

決まったーーーーーーー!!!!!これはもうパーフェクトだろ!絶対そうだ!だってほら、みんな唖然として何も言わない……あれ?何で誰も何も言わないんだ?もしかして言葉遣い間違えた?……oh my god!!

 

「そうだ!あ、あの!燕結芽ちゃん……でいいんだよね?よかったらこれ食べて下さい!」

 

そうだよ、まずは餌付けすればまず間違いはない……俺はなんて天才なんだ!恐るべし頭脳プレー!開けようとして手に持っていたミルクたっぷりママの味のお菓子を少女の元へ行き手渡した……だが動きがない、ただの屍のようだ……人生上手くはいかないものだな。

 

「もしかして嫌いだった?」

 

「え?ううん、そんな事ないけど……いいの?」

 

「ああ、美味しいから是非食べて欲しい!」

 

こうなればヤケだ!どんな手段を使ってもその可愛いお口に入れるまで、俺は諦めない!!テンションがおかしくなってるがそれは気のせいだ……

 

「ふふっ、変な人だね。ありがとうお兄さん!」

 

「へ、変な人……だと……!?」

 

手段を選ばないとは言ったが、無邪気な子に変な人呼ばわりされると……かなりショックだ……しばらく立ち直れそうにない……けど、せっかくのチャンスだ何か会話しないと!!前世で鍛えあげたギャルゲーのトーク術を見せる時!

 

「あはは、喜んでもらえて良かったよ。ところで、何故にお兄さん?」

 

はい!俺のトークなんてこんなもんですよ……だってギャルゲーは選択肢選ぶだけで自分が会話してるわけじゃないし、ヒロインが聞き上手なだけだしこうなるよね……うん、知ってたよ?でもさ、夢ぐらい見たっていいだろ?

 

「だってお兄さんはお兄さんでしょ?」

 

はい来ました!結芽ちゃんマジ天使確定!もうねこの子、この歳で聞き上手な時点で将来有望だね!それにちゃんづけで呼んでもそれについて聞いてこないとか……あれっすわ、ヒロインの中のヒロインっすわ……さっきまで手段を選ばないとか考えていた自分を殴りたい。

 

「ええと、俺は今8歳だけど結芽ちゃんは何歳?」

 

「私は5歳だよ」

 

「3つ、いや4つ年下か?それならお兄さんで間違ってはないんだけど……俺の事は名前で呼び捨てにしてもいいよ?」

 

「お兄さんじゃ駄目なの?」

 

首を傾げながらのポーズでそんな事言われたら駄目とは言えない……でも。お兄さんなんて呼ばれる程俺は立派な人間でもないし……困った……

 

「いやいや駄目じゃないよ、好きに呼んでくれて構わない」

 

「う〜ん、じゃあ零兄!」

 

「零兄?俺の名前は零次だよ?」

 

「知ってるよ。零次だから零兄……ダメかな?」

 

「グフッ!?」

 

こ、これは伝説の上目遣いと首を傾げるの究極の技!!この歳でこれ程までの高等技術を習得しているとは……結芽ちゃん、君、世界狙えるぜ……やべっ、鼻からトマトジュースが出そうだ。

 

「そんな事ないよ、凄く気に入ったよ!」

 

「本当!じゃあ、これからは零兄って呼ぶね!」

 

「ああ、よろしく結芽ちゃん」

 

……もう、俺死んでも悔いはないかもしれない……初めて転生して良かったと思えた。今までの苦悩はこの日の為にあったんだ……そうに違いない!師匠、家出するなんて考えてごめん、俺、これからも頑張るよ……

 

「あらあら、すっかり仲良しね零次」

 

「さすがはお父さんの息子だな!」

 

「良かったわね結芽、これからも仲良くするのよ」

 

「仲良きことは美しきかなだな」

 

さっきまで唖然としていた両親達は既に元どおりになっていたみたいだ。それに気付かないなんて……これが燕結芽の力!?恐るべしパワーだ。

 

「そうだわ!大人達の会話で暇していたみたいだから、零次は結芽ちゃんと遊んだらどうかしら?」

 

何!?天使と遊ぶだと!?つまり俺は……抱きつけばいいんだな?……駄目だ、思考が乱れている、一先ず深呼吸して落ち着かせよう。吸って〜……何だかほのかに香る清涼な匂いだ……って、これじゃただの変態じゃないか!!落ち着くどころか逆に興奮しちゃうじゃないか!俺にどうしろと言うんだ!!……そうだ、息を止めよう。何だ、こんなにも簡単な事に気づかないなんて、俺ってばお茶目だな!!……キモいですね、すみません……

 

「零兄遊んでくれるの!」

 

「もちろんサー!」

 

美少女の頼みとあらば例え火の中海の中でも期待に応える、それが、男ってもんだろ?YESは言ってもNOとは言わない……これ常識!

 

「それじゃあね、刀使ごっこしよ!」

 

「刀使ごっこ?あの荒魂を祓う刀使の事?」

 

「うん!私が刀使で零兄が荒魂ね!」

 

おいいい!!俺斬られる役かよ!?いくらなんでも流石に酷過ぎだろ……まったく、ここは1つハッキリ言って断ろう。

 

「俺が荒魂だね……よーしっ!それじゃやりますか!いくぞ結芽ちゃん!ガオ〜!!」

 

ふっ!断れるわけないだろ?だって俺、常識人だもの……YESは言ってもNOは言わない……これは常識、つまり常識人である俺に断るという選択肢はないのだ!!だからせめて、結芽ちゃんを楽しませるように精一杯襲ってやるぞ!性的な意味ではないからな!

 

「わぁっ!?いきなりなんてずるい!」

 

「甘いね結芽ちゃん、荒魂に常識なんて通じないよ」

 

師匠から聞いた話では荒魂は常識では考えられない行動をすると言っていたからこんなものだろう。さあ、エンターテイナーとして全力で演じてやりますか!

 

「休んでいる暇はないぞ〜!武器もない今こそこちらの好機だ。ガオ〜!」

 

「くっ!なんて強さ!せめて武器があれば……」

 

「結芽!これを使って戦うのよ!」

 

「これは御刀、ありがとうママ!」

 

「ママに出来るのはここまでよ、頑張って結芽。応援してるわよ」

 

「うん!私頑張る!」

 

「結芽、お前なら絶対に倒せる。信じているぞ」

 

「結芽ちゃん、頑張ってくれ!そこの変な喋る荒魂に負けるな!」

 

「結芽ちゃんファイト!そんなへなちょこ荒魂なんかコテンパンにしてちょうだい!」

 

大人達がいつの間にか俺達の遊びに混ざっている……と言うか、結芽ちゃんの両親も乗り気だけど俺の両親が地味にディスるのはやめてくれませんかね?何か恨みでもあるの?……日頃の恨みはあるか……何だか涙が出てくる、ここにいる荒魂にも心があるんだよ?

 

「さあ、荒魂さん。ここからは私の番だよ!」

 

「ふん、戯言を……ならば見せてみるがいい、刀使の実力とやらを」

 

「言われなくても!やぁぁ!」

 

あれ?これごっこだよね?本気じゃなくて遊びだよね?結芽ちゃんのおもちゃだけど刀を振るスピード早くないですか?

 

「ちょっと結芽ちゃんストップ!?」

 

「問答無用だよ!ハッ!」

 

「あだっ!」

 

あまりの威力のある一太刀は避ける暇もなく直撃して、俺は地に伏した。

 

「ふふ〜ん!これぐらい私にかかれば簡単だったよ」

 

「流石ね結芽、これで安心して暮らせるわね」

 

「ああ、結芽のおかげで助かったな」

 

「結芽ちゃんお見事!少しだけスッキリしたよ」

 

「結芽ちゃんは凄いのね、荒魂の方はもう少し頑張ってやられて欲しかったわ」

 

ほほう、ここにいる皆でそんな事を言いますか……いいでしょう、不肖荒魂役の真骨頂を見せてやりますよ!!

 

「ふははははは、やるな刀使、今のは正直驚いた」

 

「そんな!倒したはずじゃなかったの!?」

 

「残念ながら先程の姿は本気ではない。まだ私には第2第3形態があるのだ。さあ、ここからが本番だ!第3形態の私に勝てると思うなよ!」

 

「その姿は……」

 

「そう、これこそが第3形態……四足歩行、通称獣モードだ!先程より機動性と速度が格段に上がっているのだ」

 

ネーミングセンスが壊滅的なところはツッコまないでくれ……

 

「例え強くても私は負けない!」

 

「いいぞー結芽ちゃん!急所を狙って攻撃だー!!」

 

「結芽ちゃん、手加減はいらないわ……連撃を与えるのよ!そうすればきっと倒せるはずよ!!」

 

「うん!やってみる!いやぁぁぁ!!」

 

「いや、流石にちょっとそれはまずいってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「荒魂さん!覚悟ぉ!」

 

「ぎゃああああああああ!!!!」

 

こうして長く激しい戦い……ではないが、俺の悲痛な叫びで終わりを告げた……どうして俺はこうなるのだろう……

 

 

 

あれから連撃を結芽ちゃんからもらい倒れていた俺が回復した頃には、大人達は会話に華を咲かせながらコーヒーを飲んでいて俺の傍には結芽ちゃんしか残っていなかった。

 

「いてててて、少し赤くなってるな」

 

「ごめん零兄!こんなにやるはずじゃなかったんだけど、ママ達に応援されて嬉しくてやり過ぎちゃった……グスッ」

 

応援していた本人達は全然気にしていないようだからそこまで落ち込まなくていいと思うんだけどね。大方俺の両親が大丈夫だから気にしなくていいとか言ったのだろう……普段はこれ以上に辛い師匠の修行を毎日見ていればそうなるか……

 

「これぐらい平気だから気にするな」

 

「……本当?」

 

「本当だよ、でも心配してくれて嬉しいよ。結芽ちゃんは優しいな」

 

「だって私のせいだから……私の事嫌いになった?」

 

「まさか、俺が結芽ちゃんの事嫌いになるなんてあり得ないよ」

 

「そうなの?」

 

「そうなんです。だからさ、そんな顔するなって……可愛い顔が台無しだ、ほら笑顔笑顔」

 

「可愛い……えへへ」

 

「そうそう、やっぱり可愛い女の子には笑顔が1番似合ってるよ」

 

「私、可愛い?」

 

「?あぁ、思わず頭を撫でたくなるくらい可愛いよ」

 

「えへへ〜、頭撫でられるの好き」

 

「そうかそうか、もっと撫でてやろうじゃないか」

 

「うん!お願い!」

 

「よしよし」

 

やばいこれ、結芽ちゃんの頭を撫でているとか罰が当たりそう……でも、撫で心地が良過ぎてやめられない止まらない……これは中毒になりそうだ。

 

「さて、日も傾いてきたしそろそろ帰るわね」

 

「あら、もうこんな時間になっていたのね。楽しくて時間を忘れていたわ」

 

「私もよ……零次〜帰るわよ〜」

 

こんな至福のひと時もいつしか終わりが来ることは分かっていたが、今ではなくてもいいのではないか?だが、この家の子じゃない俺が駄々をこねても情けない姿を晒して終わるので、せめて結芽ちゃんの前では恥を晒さないように素直に帰る事にした。

 

「は〜い、それじゃ結芽ちゃん俺はもう帰らないといけないみたいだ」

 

「ええ〜、もう帰っちゃうの〜?」

 

「本当は帰りたくないんだけどね……また遊びに来るからさ」

 

「またきてくれるの!」

 

「もちろんだ!だから今日は帰るね」

 

「は〜い」

 

「うむ、素直でよろしい」

 

「零次、そろそろいいかな?」

 

「ごめん父さん、今いくよ……それじゃ結芽ちゃん、またね」

 

「うん!零兄!また遊びに来てね!約束だよ!」

 

「分かった、約束するよ!それじゃあね」

 

「ばいば〜い」

 

非常に帰りたくない、だが、帰らないといつまでもこの家に留まり迷惑をかけてしまう……また遊びに来ればいいのだから……そう自分に言い聞かせて俺はこの燕家を出た。

 

帰りの車の中、到着するまで久しぶりに心地良い眠りにつけた気がする……

 

 

 

 

これが、燕 結芽という少女との出会い……そして、彼女の運命が変わり始めた事に誰も気づかないまま時間は過ぎていく……

 

 

 

Next stage ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ふぅ……


『作者は完全燃焼しました。』
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