それでいいのか作者よ……
激動の日々、苦難の始まり
俺、神条零次が中学2年に無事進級し、研師としての技術を磨き青春を謳歌しながら生きている今日この頃、季節も夏に近づいていた……
今日とて俺は、やりたくもない授業を見たくもない野郎たちと汗水流しながら取り組む。授業中は無言になりながらも必至に先生の話を聞き、必要であればメモをとる。そんな変わらない日常を送りながらも世界は変わらず今日も平和だ。最近は登下校の道で荒魂が現れたというニュースも見て、本当に俺の知っている世界と違う事を再認識する事もあったが平和だ。
そう、平和なのだ……誰も異常だと考える事もなく日常を過ごしている……たった1人を除いて……
俺が違和感を覚えたのは去年の冬、授業の中で大の苦手な歴史の教科書を読んでいた時が始まりだったと思う。御刀と呼ばれる刀剣類が管理されているのはそれとなく知っていた。だが、ここでふと疑問に思う内容が目に飛び込んできた。
「ノロを一箇所に集める?分散させるのではなく?」
「おい、神条、教科書ばかり見ていないでノートに写せ〜、黒板消すぞ〜」
「ういっす〜」
教科書と睨めっこをしていたのが先生にばれたので、まだ書いていないとこを写し書きする。丁度俺が書き終えてペンを置くと同時に先生が黒板を消した。その後、先生は再び雑談を入れながら教科書の内容を読み上げる。その間は寝ている生徒やノートに落書きしている生徒もいるので、俺も疑問を感じた内容について考える。
警察庁刀剣類管理局、御刀の管理をしている。そして、その本部では現在御刀の管理だけでなく他に、ノロを各地から集めて折紙家主導の下で管理しているらしい。だが、ノロはたくさん集まり結合する事で荒魂化するもの。それを何故一箇所に集めるのかそれが理解できない……そしてその指示を出した者こそ今の局長であり、20年前に起こった大事件、相模湾岸大災厄において大荒魂を討伐する特務隊の隊長を務めた最強の刀使として知られいる人物……
「折神紫……俺の両親が働いていたとこの上司か……この人は何を考えているんだ?」
その人物が指示した理由が分からない。授業後、その事について先生や他の生徒に質問をするも全員が全員俺らには縁も縁もないから気にするなと言われた。誰も気にしていない事について俺が間違っているのかと思い、それからしばらくは考え過ぎだと自分自身に言い聞かせて過ごしていた……今日までは……
再び疑問が生じたのは家で呑気にテレビのニュースを流し、ポテチとコーラを食べて飲んでゲップをしていた時、テレビから流れていたどこかの専門家が言った一言だった。
「ええ、刀剣とノロの管理を一任している折紙紫は政治も容認するぐらいですからね、これ以上の人物はこの先現れないかもしれませね」
「政治が容認している?刀剣とノロの管理2つを?……おかしい、政治家も馬鹿じゃない筈だ。ノロの危険性についても多少なりとも知っている筈なのに……」
この世界の政治家が馬鹿なだけか、折紙紫が本当に凄いのか……凄いのは確かだが馬鹿な可能性もありえるな……どちらにせよ本人に聞かなければ何も分からない……
「俺が馬鹿だからこれぐらいしか予想できないのは痛い……だが、これ以上考えても分からないし……そうだ!聞きに行こう!俺ってば天才だな!」
そうと決まれば話は簡単だ!せっかくの休日だから今から管理局本部に行けばまだ間に合う。すぐに財布とスマホを持って家を出る。電車に数時間乗って目的地近くの駅で降り、歩いて向かう。そして、目的地に到着しいざ入ろうとした、その時!
「ちょっと君、ここに何か用かい?」
「はい。紫様に聞きたいことがあって来ました」
「はぁ、悪いけどそれは出来ないよ」
「な!?どうしてですか!?」
「あのね、紫様だって暇じゃないんだ。それに、一般人である君が会える様な御方じゃない事ぐらい君もわかるだろ?ほら、帰った帰った」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
警備の人に強制的に追い出され完全に八方塞がりの状況に陥る。
「詰んだ……考えれば紫様って凄い人なんだっけ……俺みたいな一般人が気軽に会える筈ないじゃんか。どうしよう……何か手段はないのか?こうやって追い出される事なく見つからないように会う方法……あるじゃないか。師匠から教えてもらったあれが……」
可能性の1つを模索して結論に至った俺は、一度この場から離れて家に帰宅し準備を始める。準備を終えた後、再び目的地に赴く。
「やっと着いた……さて、あたりは暗くなってきて絶好のチャンスだ」
持ってきた身長より少し短い竹刀を収納する袋から、俺が唯一持っている一本の刀を取り出し体操着袋ぐらいの大きさの袋からフード付きの黒のコートを取り出して身につける。最後に師匠から貰った防弾グローブつけ準備が完了した。
「おっと、危ない危ない、忘れるところだったな……素顔がバレれば最悪刑務所行きになってしまうからつけておかないとな」
とり忘れていた気味の悪い下半分がない仮面をコートを取り出した袋から取り出して顔につける。今度こそ準備が完了した。
「さあ始めるぞ……スニーキングミッション……スタート!!」
折神紫がいる建物は現在ライトアップしていて下手に進めば見つかるので、まずは光が当たらない場所で様子を伺い人と監視カメラのおおよその場所を把握する。人がこちらを見ていないすきにカメラの死角を移動して少しづつ建物に近づきながら、外から折紙紫の姿を確認しそこを目指す。しかし、姿を見つけるも隙が一切なく潜入できない状態で行き詰まりになった。
「どうする?このままでは見つかるのも時間の問題だ……何か排気口でもあればいいのだが……ん?動いたか……これはチャンスだな」
目標の人物が席を立ち部屋から出たのを確認した後、その部屋にある窓までジャンプして飛び移り窓に張り付くがここで1つ問題が生じる。
「何だこの窓は!?これでは中に入れないではないか!……仕方あるまい、この刀の力を使って正面から入るか……」
正面以外に入る場所がないので、とりあえず正面入り口の頂上まで移動する。そこから下を見下ろし人が出てくるまでの間に念のためグローブを片方外して指を薄く切り、血を一滴刀に流す。
「準備は万全だ……あとは人が出るまで待つのみ」
一瞬も気を抜かず人が出てくるまで観察し、ポケットからコインを1つ取り出す。数分後、やっと1人職員が出てきたのを確認しその人の付近にコインを投げる。
「ん?今の音は何だ?」
職員が音のなる方を向いている隙に力を使い自身を強化しその場から飛び降りる。そして、自動ドアが閉じる前に強化した体を最大限活かして駆けた。
「まずは中に入る事が出来たが……運がいい。誰もいないな……好都合だ、折神紫が戻る前にあの部屋に潜入するか」
見つからないように警戒しながら壁伝いに歩き、気配がない事を確認して階段を使わずに2階へジャンプして移動する。それから目標地点まで気を緩めず一気に駆け抜ける。
「外から見た場所では確かここだったな……さて、鬼が出るか蛇が出るか。それとも何も居ないか……一か八か賭けてみるか」
目の前にあるドアの取ってを握りゆっくりと開ける。
「……誰も居ないか……一先ずのところは安心だな。あとは本人の目的さえ聞ければここから出るのは容易だ……来るまでそこにある本でも読んで待つか」
他にやる事もなくなったので大人しく備え付けの本棚にある一冊をとり読み始める。
「ほう、意外と漫画以外も面白いものだな……」
適当に取った本が面白く本来の目的も忘れて読みふける。だからこそ、誰かが入ってきて話しかけるまで気がつかなかった。
「おい、そこのお前、ここで何をしている」
あっ、そういえば目的忘れてた……どうしよう……
「まずは中に入ったらどうだ?」
誰かに聞かれたらまずいので中に入るよう促すと、その人物は思いのほか素直に聞き入れられて中に入ってドアを閉めた。こちらもいつまでも本を読んでいるのは失礼なので本を閉じる。
「お前が折神紫……本人に相違ないな」
「ああそうだ……それがどうした?」
「何、そんなに難しい事ではない。1つ貴様に聞いておきたい事があって確認しにきただけだ」
本を元の場所に戻しながら答えたけど大丈夫だよな?怒ってないよな?
「確認だと?」
「ああそうだ……単刀直入に聞く……貴様の目的はなんだ」
「目的?何の事だ?」
「惚けるな、貴様が刀剣だけではなくノロも集めて管理しているのは知っている。どちらか片方だけならば別に気にも留なかったが、どちらもとなれば話は別だ。特にノロを一箇所に集める事はどう考えてもリスクがあり過ぎる……」
「目的なんて大層なものはなにもない」
「それが折神紫の答えか……なるほどな……では今度は別のものに聞こうとするか……」
「何?」
「もう一度問おう、貴様の目的は何だ?折神紫……いや、大荒魂と呼んだ方がいいか?」
「貴様……どこでそれを」
「何、気づいたのは今さっきだ……貴様も知っているこれを使った」
そう言って去年の秋頃にアンティーク店に一個だけ置いてあり、購入したものをポケットから取り出して見せる。
「スペクトラム計……」
「念のために持ってきたが、まさか役に立つとはな……」
実際はポケットに入れてたのを忘れていて、さっき本を片付けている時に取り出して気づいただけとは言えない。それに、普通の荒魂以上にビンビン反応してたから大荒魂と勝手に名付けたのも言わないでおこう。
「それで、私をどうするつもりだ?」
「先程から言っているだろ?貴様の目的は何だ、と……返答次第では今この場で貴様を斬る」
「ふっ、斬るだと……ならばやってみるがいい」
「いいのか?言っておくが俺は加減が苦手だ……死ぬかもしれないぞ?」
仕方ないがこう言われるとは想定外だ、それにあっちもハッタリで言っただけだろう。ならこっちもハッタリをすれば正直に答えてくれるはず!
「ああ構わない」
死ぬかもしれない事をそんな容易く答えるなよ!……まったく、師匠の言った通りだ。荒魂に常識は通じないな……
「そうか……後悔するなよ……」
「馬鹿なっ!?」
「だから言ってるだろ、加減は苦手だと……では答えてもらおうか、貴様の目的を……」
一瞬で背後をとり折神紫の首元に刀を当てながら、駄目元で答えるように促す。
「……復活を果たす……それだけだ」
「それがお前の目的なのか?」
「そうだ」
「そうか……」
目的が分かったので俺は刀を鞘に収め、折神紫に背を向けて扉の前まで歩く。
「何の真似だ?」
「何がだ?」
「貴様は私を斬るのではなかったのか?」
「はぁ……本当に話を聞いてない奴だな……言っただろ?返答次第では斬ると……それに、意識してやってるわけではないだろうが、貴様の行いのお陰で被害が少なくなったのは事実だ……危害を加えていない奴を斬る趣味は俺にはない」
まあ最初から斬るつもりなかったけどね!ただのハッタリで、正直に答えてもらおうと言っただけなのに勘違いしすぎじゃないか?
「だから斬らないと?」
「そうだ」
「ふっ……貴様面白いな……」
「……そりゃどうも、ではこれで失礼する」
ドアの取っ手を握り開けようとした時、何故か呼び止められる。
「待て」
「何か用か?」
まあ、不法侵入したのに返してはくれないか……やり過ごせると思ったのに!くそう!!
「貴様に1つ提案がある……私の部下にならないか?」
「……は?」
何を言ってるんだこの人は?俺が部下だと?何故に?真意を問いたださねばならん。
「一応聞くが何故俺なんだ?」
「なに、貴様は他の奴とは(雰囲気が)違うみたいだからな」
「ほう、俺が他の奴らと(常識が)違うだと?……言っておくが、今斬らないのは貴様が危害を加えていなからだ。世の人々に危害を加えればすぐにでも貴様を斬る……それでもか?」
「ああ、そうしてもらって構わない」
少しは構えよ!側に自分を斬る相手を側に置くとかいかれてやがるぜ!!
「悪いが俺にメリットがあるように思えない……だから断らせてもらおう」
「メリットか……では、ここの職員より給料をはずませよう」
「何?……つまり、俺を雇うという事か?」
「そういう事だ」
これは願ってもない事だ。まさか卒業後の就職先が今の内から約束されるとは……就活と言う名の苦行をせずに済むなんて、そんな誘惑にこの俺が負けるわけ……
「いいだろう……ただし条件がある」
まあ誘惑に勝てるほど俺と言う人間は出来ていないからこうなるよね。知ってたけどあれだね……人間のクズだね!ニートじゃないだけマシのはず!
しかし、ここまで執着されると何か嫌な予感がするので無理難題を押し付けて諦めてもらおう……これで今の発言を撤回してくれる気にもなるだろ。やっぱり辛くても就活はしないとだしね!
「条件か、言ってみろ」
「1つ、今から最低でも2年の間は土日以外は働かなくていい事」
「土日だけか……それぐらいなら問題ない」
「では、2つ目。俺が絶対に命令に従わなくてもいい事」
「つまり自由行動をさせろと言う事か?」
「そうだ、俺の判断で物事は決めさせてもらう……」
「わかった、それを許そう」
「……最後に1つ、貴様が世の人に危害を加えれば俺は貴様の敵になり、貴様を討つ」
ここまで言えば流石に相手も渋るだろ……とか思っていた自分もいましたよ。でもそこは荒魂、全然俺の常識が通用しない……
「ふっ、いいだろう。その時は私を討ってもらって構わない……他には何かあるか?」
「……ではもう1つ、俺の正体について詮索はするな……それでもいいなら素直に雇われよう」
ここで切り札、素性の知らない奴という最強カードを出す。流石にこれなら警戒して雇わないだろ……
「わかった」
「……この姿のまま過ごすぞ?いいのか?」
「別に構わない、その刀も携帯していい」
だから構えよ!!……もうダメっすわ、手札に何もないっすわ……
「……」
「他には無いようだな……では、来週からさっそく働いてもらう」
「……了解だ。俺は帰らせてもらう」
「待て」
「……まだ何か?」
「貴様の名を聞いてない」
「……ゼロ……そう呼んでくれ」
「ゼロと言うと偽名か……まあいい、来週からよろしく頼んだゼロ」
「ああ、給料分は働くさ……それでは紫様、失礼する」
酷く疲れが押し寄せてきた体を動かし、今度こそ扉を開けて退室する。出た後に1度だけため息をついてから正面入り口へと歩き出す。
正面入り口まで誰とも会う事はなく外に出て、1度袋を置いたままの場所まで行き、コートを脱いで袋にしまい刀は竹刀を入れる袋にしまう。すっかりいつもの制服姿になった俺はそのまま駅に行って電車に乗り、家の近くで降りて家まで重い足取りで歩いて帰る。自宅に着くと何もやる気が起きずに自室のベットに倒れてすぐに寝た。
次の週から俺は……休みなど無くなった……
職員との初顔合わせとして、初日に職員を集め全員の前で紹介される事になった俺は、この服では流石に怪しまれるという事で紫様からスーツを手渡されそれに着替えてから、職員の集まる会場でお披露目された……お披露目前、どうしてスーツのサイズを知っているのか不気味に思えたがそこはスーパー刀使という事で無理やり納得する事にした……
「今日からここの臨時職員となる者を皆に紹介する。自己紹介しろ」
「本日からここの臨時職員になったゼロだ……給料分の働きはする。以上だ」
「そう言う事だ、仲良くやれとは言わないが色々と指導してやれ。まずは一通り覚えてもらう為、数ヶ月置きに各部署に配属する。配属された部署の職員は彼が仕事をこなせるようにしてやれ」
聞いてないんですけどぉぉぉぉぉぉ!!!!いきなり無茶振りですか!?全然笑えねぇぇぇ!!
「まずはここでオペレーターとして仕事してもらうから面倒を見てやってくれ。それと、彼の素性については詮索するな……以上だ」
以上じゃねーーーーーー!!!お前は現場でいきなり仕事をやらせるつもりか!そこは研修期間とか儲けようぜ?な?
「紫様、その話は聞いてないぞ……」
「それはそうだ、今初めて職員にも言ったからな……この前のお返しだ」
意外とこの人は根に持つらしいです。でもいくら何でもやりすぎやしませんかね?泣くぞ?
「では、そこのお前。この者を指導してやれ、私は部屋に戻る……期待しているぞ、ゼロ」
俺の返事も待たずにこの場から出て行き1人残された俺を、警戒してか誰も話しかけてこない……当然だ、素顔を仮面で隠している相手に気軽に話しかける事が出来たらそいつはこの先一生困らないで暮らせるだろう……仕方ないので自分から、先程指導するように言われた職員の元まで歩き、無礼がないよう慎重に話しかける。
「貴様が俺の指導をしてくれるという事だが……」
「え?あ、はい。あなたの指導を任された沖田と言います。よろしくお願いします」
「……ゼロだ、ここについて何も知らないから色々教えてくれ……それと敬語はいらない」
「えっと、よろしいのですか?」
「構わない」
「そういう事なら分かりました。改めてよろしく、ゼロさん」
「ゼロでいい、さん付けは不要だ」
「そうなのか?じゃあ、よろしくゼロ」
「ああ、よろしく頼む」
まだあまり会話を交わしていないが今ので十分わかった。この人は絶対に良い人だ。人当たりも良くて性格も良い……なるほど、紫様は適当に選んだ訳ではなかったのか……少しだけ見直した。
「どうかしたか?」
「……いや、何でもない。それよりも仕事の内容について詳しく教えてくれ」
「ああ、分かった。それじゃまずはモニター室へ行こうか、僕達オペレーターはそこで刀使や警備隊と連絡をとって、被害状況や現場までのナビ等をするんだ……僕の説明よりも実際に見てもらった方が早いかもね」
「なるほど、中々に重要な役割を担っているのか……興味深いな」
連絡を取りあいながらリアルタイムで指示や情報を伝えるのは戦場において重要な事だ。まさに情報を制するもの戦いを制するだな……うん、何言ってるんだろ俺?
その後、沖田と名乗る職員の指示に従いながら仕事をこなす。やる事は多いが案外楽しく、毎週土日だけだが朝から晩までずっと働き詰めになった。
それから数ヶ月後、初日に紫様が言ったように他部署に配属され同じくその部署の1人から指導教育を受け仕事をこなす……それを毎週土日だけ行い2年の月日が流れた……
そして、今日、中学3年も終わり春休みになった頃にようやく全ての部署を制覇した。
そこから先は部署配属ではなくフリーの状態になり、書類の整理などの雑務の仕事をやるだけで暇になる事も増えた。必要であれば駆り出される事があるが、大抵の場合が警備隊からの要請ばかりである。被害があった場所の撤去作業や修繕活動、極稀に荒魂との戦闘もあったが、ほとんど避難誘導だけで危険はない。何故ならいつも刀使が先に現場にいて戦っているからだ。本来であれば加勢するのがセオリーかもしれないが、特に危機的状況ではなかったので放置した。
そうして、春休みも過ぎて高校1年になり、同じような日々を過ごす。今日とて平和な日常を過ごす事数ヶ月後……夏も終わり間近となり、俺はとある試験を受けて結果通知を待つ。そして、今日の昼過ぎごろに休暇でまったりしていた自宅に一通の封筒が届いた。
封筒を開け、中身を取り出し確認する。
「ご、ご、ご、GOーです!!じゃなくて!合格だ……よしっ!これで俺は自由の身だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
試験が合格した事に舞喜びながら家の中を軽快なステップであちこち移動する……が、階段で足を滑らせて床に頭をぶつけて気絶した。次に目を覚ました時には既に外は太陽が昇る頃になっていた。どうやら1日気絶したようだ……それから徐々に頭が覚醒し、今日が仕事の日だったのを思い出して急いで身支度を整えて出かけ、時刻ギリギリに到着した。1度大きく深呼吸して息を整えてから建物の中に入って、すれ違う職員には片手を上げるだけの挨拶をする。俺も偉くなったものだ……最初はこの挨拶の仕方について陰口を言っている者も見受けられたが、今ではこの挨拶にたいして陰口を叩く者もいない……
少しだけ当初の思い出に浸りながらもいつものように所定の場所へ行く……折神紫のいる部屋だ……1度ノックをして入る許可を貰ってから中に入ると、今日も変わらず老けていない女性が座っていた。
「時間ギリギリとは珍しいな」
「少し大事な用があってな……それより、紫様に報告がある」
「報告か……言ってみろ」
「これからは土日以外も働けるようになった」
「そうなのか、随分と急だな」
「本来であれば昨日の時点で報告するつもりだったが、あいにく非番だったのでな」
うん、嘘だね。気絶してたからだね。でも、非番だったのは本当だから大丈夫……何が大丈夫なんだ?……まだ頭が完全に覚醒していないみたいだな……
「そういえば昨日はいなかったな……それではこれからは毎日働けるんだな?」
「そうだ……と言いたいところだが、それは無理だ」
「何故だ?」
「俺は毎日通勤するのはごめんだ、正直疲れる」
通勤時間に何時間掛かるか分かるか?バチを使ったゲームが何十回も出来るんだぞこのヤロウ!!それに俺は朝に弱いんだからな!そこんとこよろしく!!
「なるほどな……では、通勤がなくなればいいのだな」
「?それが出来るなら別に構わないが……」
おいおい、そんなのタヌキの使うピンクのドア以外ないじゃねーか……もしかしてこやつ……持っているのか?
「ふふっ、言質は取ったぞ……では明日からここに住み込みで働いてもらおうか」
「何……だと……!?」
「それであれば通勤する必要もないだろ?」
「それはそうだが……部屋はあるのか?」
「安心しろ、部屋の1つぐらいすぐに用意できる。そうだな、今日の仕事は引っ越し作業でもしてもらうとするか」
「何?引っ越し作業だと?」
「ああ、無論お前の引っ越しだがな。給料分の仕事はするんだろ?」
「……分かった。今日からここで世話になるぞ……」
「ああ、好きに使うがいい」
「……それでは作業があるから失礼する」
こうして俺は折神紫に一杯食わされてここでの生活が、今、始まる……始まってしまった……
だがこの時、俺は知らなかった……1人の少女が苦しんでいることに……
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自分なりに予測してみたが、たぶんこの年月の何処かであのシーンが入るはずだと思う……
明確になっていないから分からないまま書いたけど、たぶん間違いではないはず……
p.s.判断材料は身長と身体的特徴の一部と髪の長さです……