私が社会人となった二年目の春、久しぶりにお兄ちゃんから部屋へ呼び出された。何故だろうと思いつつ、大事な話があるって言われた。そしたら雪乃さん達がいて、そこで三人と付き合ってる&同棲してるって教えられてもうビックリ。
「本気で言ってる?」
「……俺が冗談でこんな事言えると思うか?」
そこで教えられた過去の事。いろはさんが合鍵をもらった裏にそんな事があったなんて……。最初は信じられなかったけど、よくよく思い返せば、確かにその頃、お兄ちゃんは私と距離を取っていたのを思い出した。毎年お正月は実家に顔を出していたのに、その年だけは来なかったし。
「でも、雪乃さん達はそれでいいんですか?」
「ええ。いずれ結衣やいろはさんよりも私と言わせてみせるから」
「それはこっちのセリフだよゆきのん」
「ですです。ま、八幡さんもかなり素直になってくれましたし?」
「……悪いか」
目の前で繰り広げられる会話を眺め、私は理解した。お兄ちゃんは本気で三人を奥さんにしたいって思ってる。だから、それを聞いた雪乃さん達は、表向きそれを受け入れてないって風に装って、お兄ちゃんのわがままに付き合ってくれてるんだって。
「……雪乃さん、結衣さん、いろはさん」
真剣な表情でそう切り出すと、すぐにこっちを向いてくれる三人が本当に嬉しい。うん、お兄ちゃん、小町は応援してあげる。ただ、それはお兄ちゃんのためだけじゃないからね。こんなにも優しいお義姉ちゃん候補達のためでもあるんだから。
「こんな、ハーレムを望んじゃうような兄ですが、小町の大好きなお兄ちゃんを、よろしくお願いします」
その後はもう惚気話の連続。お兄ちゃんは三人の自慢ばかりで、三人はお兄ちゃんの自慢。本当に呆れるしかなかった。だけど、やっとお兄ちゃんと本気で向き合ってくれる彼女さんが出来て、私は嬉しかった。それに、そんな人達をしっかり受け止めているお兄ちゃんを立派に思えた。兄として。
それから半年近く経ったある日、お兄ちゃんが実家へ顔を見せた。何をしに来たのかと思えば、お父さん達に自分の事を話しに来たらしい。お父さんとお母さんは、久しぶりに顔を見せたお兄ちゃんに驚きを見せていた。だって、すっかりお兄ちゃんが大人になっていたから。私も実感したもん。ああ、これがお兄ちゃんの大人の顔なんだって。
「親父、母ちゃん。実は俺、三人の女性と同棲してる」
家中の時が止まった。お母さんは信じられないとばかりに目を見開いて、お父さんは言葉の真偽を確かめるように無言でお兄ちゃんを見つめていた。小町は何も言えず、ただお兄ちゃんとお父さん達の顔を交互に見るだけ。
「……それを相手の方はどう思ってるんだ?」
「理解してくれて、納得までしてくれてる。近い内に向こうの家族にも挨拶に行くつもりだ」
その瞬間、お父さんが立ち上がり、何故か自分の部屋へ向かった。そして少しして戻ってくると、一通の通帳をお兄ちゃんへ差し出した。お母さんはそれを見て何かを悟ったように息を呑んでいた。
「これを持って行け。俺がお前が生まれてから少しずつ積み立てたもんだ。男はでかい夢を見る事がある。それが何であれ、いるのは金だ。もしお前がそういう夢を追い駆けたいと言い出した時にと、そう思ってな」
「親父……」
「俺も、若い頃は色々馬鹿な夢を見た。だけど、それを実行できるだけの度胸と思い切りがなかった。そして、何よりも金が無かった。だから、お前が生まれた時、同じ想いだけはさせたくないとな」
「八幡、女として一言だけ言わせてもらうよ。その三人が納得してるって事は、もう全てをあんたに預けたって事だからね。何があっても、ちゃんと守り抜きなさい。今のあんたなら、それが出来ると私は思うから」
「母ちゃん……」
「良かったね、お兄ちゃん。本当に……良かった……っ!」
「小町……母ちゃん……親父……ありがとう。本当に、ありがとう……っ」
気付けばお兄ちゃんは泣いていた。お母さんも泣いていた。お父さんは泣いてなかったけど、ずっと上を向いていた。小町は、もう何も見えなかった。バラバラだった家族が、久しぶりに同じ気持ちになった瞬間だった。
お兄ちゃんは泊まって行く事になり、久しぶりの自分の部屋を見て、何も変わっていない光景に驚いてたから、お父さんがいつ逃げ出してきてもいいようにって言ってた事を教えてあげた。すると、その言葉を噛み締めるようにして呟いた。
「俺は、本当に子供だったんだな……」
そう言って小さく笑ったお兄ちゃんの背中は、とっても大きく見えた。兄として。
それから少しして、夏の暑さが薄れてきた頃、お兄ちゃん達が引っ越した事を聞いた。なので引っ越し祝いも兼ねて遊びに行くと、中々年季の入った一軒家。
「あっ、小町ちゃん。いらっしゃい」
「こんにちはいろはさん。遊びに来ました~」
二階建ての築二十年ぐらいの家。賃貸らしいけど、家賃を聞いたらビックリ。四人で割ると諭吉さんが二枚。格安だなぁって思っていると、どうやらちょっとした交渉の結果らしい。
「え? 家賃を一年分まとめて払った?」
「そう。ヒッキーがそうするので少しまけてくれないかって大家さんに」
「向こうとしても、先んじて手元に来る方が安心出来るから応じてくれたわ。こちらも一年は家賃を考えずに済む。まぁ、これも仲介が介在しないからこその手段でしょうけど」
「そんなお家あるんですか?」
「ここの大家さん、他にも家を持ってるんだって。で、ここは昔の自宅らしくて、人が住んでくれた方が収入以外にも色々助かるからって」
すっかり奥さんみたいな雪乃さん達を見て、私は安心すると同時に寂しくもなった。あのお兄ちゃんは、気付けば立派な大人になって、しかも旦那さんとしてもちゃんとしてるらしい。今日は三人を休ませると同時に、私を歓迎するためにとお寿司を予約し、現在その受け取りにお出かけ中。それに使われている車は、お兄ちゃんが自分のお給料を使って買ったもの。大きなワゴンタイプの奴で、楽に大人が七人は乗れる感じだ。ゆいこのおかげで使う暇がなかったからなって、そう言って笑ってた。
「でも、意外です。結衣さんのとこはともかく、いろはさんや雪乃さんのとこも一応理解してくれたって」
「あー、私の家は理解って言うより様子見って感じ。ま、孫が出来ればそれをとっかかりでいけると思ってるけどね」
「私の両親は理解ではなく放任よ。あの二人、いえ母にとっては姉さんがいるし。私が余程の問題を起こさない限り気にしないんじゃないかしら」
「あ、あはは……それでもヒッキーは頑張ってたよ。えっと、男見せたんだよ」
「うん、それは本当。実は、私達の家族には八幡さん一人で会いに行ったんだ」
そこで明かされる事実。お兄ちゃんは三人にご両親との約束だけ取り付けてもらい、たった一人で会いに行って事情を説明。何と、雪乃さんのお父さん以外に殴られたそうだ。それを結衣さんといろはさんは、それぞれのお母さんから聞いたらしい。お兄ちゃん、黙ってたんだ。
「その事をヒッキーに聞いたら、パパの気持ちを考えれば当然だからって。それに、それを知る事であたし達がパパの事を嫌いにならないで欲しかったから、だってさ」
「ホント、八幡さんって一度決めると凄いですよねぇ。まぁ、だからこそ決意するのが遅くなるんでしょうけど」
「その分、一度決めれば必ずやり抜くわ。だから、今回の事も必ずやり抜いてみせるはずよ。納得させられなくても理解だけは得ると、そう言ってくれたのだからね」
雪乃さん達を見てると思う。愛って、凄く強いけど、その分重いんだなって。その重さを耐え切れる人だけが愛の力を使えるんだと心から思う。私も、いつかその重さを知る時が来るんだろうか? 願わくば、その時はまだ叔母さんになっていませんように。
「ただいま」
そうこうしてるとお兄ちゃんが帰ってきた。今じゃ会社の期待の星なんて言われてからかわれてるらしく、そこからもお兄ちゃんの成長が分かる。もう専業主夫になりたいって言ってた頃のお兄ちゃんはいない。それが少し寂しくて、でもすごく安心している自分がいる。
お寿司はとびきり美味しい訳でもなく、普通に美味しかった。それからは雪乃さん達と一緒にガールズ(?)トーク。お兄ちゃんはそれを居心地悪そうに聞いていたのが面白かった。昔ならどこかへ逃げるか、関係ないとばかりに本やゲームに意識を向けてたはずなのに。
「そういえば、寝室ってどうしたの? やっぱり別々?」
「一緒に出来る訳ないだろ。子供が出来たら考えるけどな」
その言葉に、何故か雪乃さん達が嬉しそうに微笑んだのを私は見た。その理由は良く分からないけど、未来から来てた赤ちゃんの事が関係してる事だけは分かった。うーん、やっぱり私も見たかったなぁ。聞くところだとかなり可愛かったらしいし。
その後もちょっと際どい質問をしてお兄ちゃんを、時々お義姉ちゃん達を困らせた。それでもきちんと向き合って答える辺りに、お兄ちゃんの変化を感じて頼もしく思った。兄として。
それから数年の時が経ち、あるニュースに私は思わず目を疑った。それは、重婚許可の法案。そしてすぐにお兄ちゃん達へ連絡すると、すぐにでも手続きをするとの事だった。そして半年もしない内に私は叔母さんになった。だけど、嬉しさの方が大きかった。何せ、やっとお義姉ちゃん達が式を挙げる事が出来るからだ。お腹が目立つ前にと、お兄ちゃんはあの通帳のお金全てを使い、三人の花嫁に綺麗なドレスを着せた。
―――俺のでかい夢の一つが叶ったよ。ありがとう、親父。
式の終わり際、そうお兄ちゃんが告げると、あの時さえ涙を見せなかったお父さんが人目も憚らず泣いた。お母さんも、小町も、事情を知っているお義姉ちゃん達と、仲人をしてくれたお兄ちゃんの会社の社長さん夫婦も泣いていた。一人、お兄ちゃんだけが凛々しくも優しい笑みを浮かべてた。
全てが終わって、お義姉ちゃん達のお腹が段々大きくなり、遂にその時が来た。無事に生まれてくれた三人の赤ちゃんは、お義姉ちゃん達の両親さえも笑顔に変えた。そして桜の花が咲き始める頃、お兄ちゃんが三人の赤ちゃんの名前を決めた。雪美ちゃんに結花ちゃん、まいこちゃんだ。何とまいこちゃんは私の名前からも一文字使ったとの事。
「雪美、結花、まいこ、ね。アナタらしいわ」
「どーゆー事?」
「結衣さん、平仮名で考えてナナメ読みです」
「…………ああっ! ホントだぁ!」
そんな話を聞きながら私も考える。ゆきみ、ゆいか、まいこ。斜めにするとゆ、い、こ。ゆいこ。それが未来から来たというお兄ちゃんの子供の名前。だけど、実際には三人も娘が生まれた。ゆいこちゃんは、どこにもいない。だからせめて名前だけでもって、そういう事かな。そう思って私は納得。本当に父親になったんだなって、そう思った。妹として。
「ね、小町おばさん。なによんでるの?」
「ん? ああ、日記だよ。まいこちゃんが生まれる前から書いてたやつなんだ」
「まいこが? みせてみせて」
「だ~め。それに、まいこちゃんには、まだ読めない文字が多いからね」
「そんなコトないもん。まいこ、もうえほんだってよめるもん」
私の膝に座り、拗ねたような顔をするまいこちゃん。本当に可愛い。今日は土曜日。当然幼稚園がお休みなのだが、今日は兄夫婦のお泊りデートのため、実家で私が子供達の面倒を見る事になっていた。お父さんとお母さんは孫達と朝から遊んだために寝室でぐったりしてる。ま、一人で子守するのは嫌ではないし、むしろ楽しくて癒される事もあるのだが、一つだけ難点がある。それは、子供が欲しくなってしまう事。
「あー、まいこがおばさんをこまらせてる~」
「結花ちゃん、そんな事ないよ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ」
「だけど、ごかいをうむようなはつげんはひかえるべきだわ。おばさまもそう思いますよね?」
「それはもっと大きくなってからでいいよ。雪美ちゃんはお姉さんだから、お母さんみたいにしっかりしたいんだろうけどね」
まいこちゃんの頭を撫でていると、結花ちゃんと雪美ちゃんがやってきた。一応長女の雪美ちゃんだが、同じ年に生まれているためにそこまでの差はないと言える。ただ、雪乃お義姉ちゃんの影響か、口調がかなり似てる。対して結花ちゃんは結衣お義姉ちゃんと一緒で、周囲に笑顔を振りまく天使みたいな子だ。まいこちゃんは甘えん坊というか、人を動かすのが上手な気がする。その辺りはいろはお義姉ちゃんの血だろうなぁ。
「でもゆきママ、このまえみちまちがえてたー」
「あ、あれはわたしたちがちゃんときづくかためしたのよ!」
「あれ? でもゆきママ、こーばんでおまわりさんにみちおしえてもらってたよ?」
「そ、それは……もしものときはこうするようにとみせてくれただけよ」
「はいはい、そこまでにしようね? 大体、結衣ママもいろはママもドジなとこや失敗する時はあるでしょ?」
「「うん、あるよー」」
揃って答える結花ちゃんとまいこちゃんについつい頬が緩む。あー、可愛いなぁ。まだハイハイする前から知ってるせいで、本当に愛情が溢れる。私もおむつ換えたりしてあげたんだもんね。仕事で疲れてる時も、この子達の声を聞かせてもらって癒される事だってある。
そして、その度に思うんだ。きっと、昔お父さん達が仕事をあれだけ出来たのは、小町達の笑顔のためにって思ってたからだろうって。擬似的な母親をする度に、親は子供のためならどんな苦労も乗り越えられるんじゃないかって。
「そういえば、どうして雪美ちゃんと結花ちゃんはこっちへ来たの? たしかリビングでプリキュア見てたでしょ?」
そう、かつての兄が録画したアニメは、今や立派に姪っ子達のお気に入りとなっている。それと、パンさんも。その理由は、目付きがパパに似てるから。それを聞いてお兄ちゃんは苦笑いし、お義姉ちゃん達は大笑いしたとか。私も聞いた時は笑うのを我慢出来なかったしね。
「おなかすいた~」
「そろそろおひるごはんのじかんだとおもって」
「あー、そうだね。じゃ、すぐ用意するから待ってて」
時計を見れば丁度十二時をさしていた。結花ちゃんに可愛いおねだりもされたし、雪美ちゃんの少し恥ずかしそうな顔も見れた。御代としては十分。なので早速お昼を作るとしよう。とはいっても、残りご飯を使ったチャーハンだけどね。卵を用意し、後は便利な素を使えばいいだけ。と、背中に感じる三つの視線。振り返ればそこには可愛い姪っ子達。ははーん、そういう事か。
「お手伝いしてくれるの? じゃ、手を洗ってきて」
「「「はーい」」」
揃ってトタトタと走り出す三人。うん、こういうとこは雪美ちゃんもまだ歳相応な感じになるね。可愛らしい後ろ姿を見送り、何を手伝わせようかと考えてメニューを変える事にした。少しだけご飯をレンジで温め、三人の愛らしい助手がくるのに備える。丁度温め終わりで三人の天使が戻ってきた。
「「「洗ってきたよ」」」
「よし、じゃあオニギリ作ってもらおうかな」
「「「オニギリ!」」」
何を作るか言った瞬間、三人の目が輝いた。そうだよね。自分でも出来るって分かるもん。お手伝いじゃなくて最後までやれる。これが子供の頃ってすごい感じするんだよねぇ。で、中に入れるものをこっちが用意。ツナマヨはマストで、後はおかかと……のりたまのふりかけを見つけたのでそれを使ってもらう事に。
「じゃ、これでよろしく。ケンカしないようにね」
「「「はーい」」」
三人のおにぎり作りを少し眺める。やはりというか何というか、雪美ちゃんは歳のわりに綺麗なオニギリを作る。結花ちゃんはやや苦手そう。でも楽しそうに笑ってる。で、まいこちゃんは雪美ちゃんのやり方を見て真似ていた。いやぁ、三者三様だね~。
「おばさん、これでいい?」
「おー、まいこちゃん上手だね。うん、そんな感じでいいよ」
「おばさんおばさん、あたしは?」
「結花ちゃんも上手に出来てるよ。だけど、ちょっとだけ力抜いてごらん?」
「えっと……どんな感じ?」
「少しだけ優しく握るの。やってみて」
「うんっ!」
マイペースなまいこちゃんと元気な結花ちゃん。雪美ちゃんは黙々とオニギリを作っている辺りがらしいなぁ。さて、ではそろそろこっちもやりましょうか。オニギリ用に分けたご飯とは別に、少しだけ残したご飯を使ってチャーハンを作る。すると、三人の視線がこっちに向いたのが分かった。
「おばさん、なに作ってるの?」
「チャーハンだよ」
「それもオニギリにするの?」
「ううん、これは普通に食べるの。あったかいものもいるかなって」
「それはいいですね。オニギリのほうは少しつめたいですし」
「そういう事」
フライパンを動かしながら答えるけど、何というかホントお母さんになった気分。あー、こりゃ雪乃お義姉ちゃんやいろはお義姉ちゃんが料理張り切る訳だ。背中に感じる尊敬の眼差し。まだ火を使わせてもらえないもんね。おぼろげな記憶の中で、私も小さな頃はお兄ちゃんに同じような目を向けた事があった気がする。
出来上がったチャーハンをオタマでお店みたいに盛り付け、テーブルへ置くと目に入るのは凸凹な感じのオニギリ。その光景で本当にほっこりしてしまうのは歳を取ったって事なのかな? とにかく早く食べたそうにしてるし、先に姪っ子達だけでも食べさせてあげますか。
「じゃ、手を合わせて?」
「「「「いただきます」」」」
合図と共にそれぞれがちゃんと自分以外のオニギリへ手を伸ばす辺りが可愛い。私はお茶を用意してそんな光景を眺める。お茶を入れたコップをそれぞれの近くへ置く。と、そうだったそうだった。
「お茶置くからね。気を付けて」
「ありがとうございます、おばさま」
「はい、結花ちゃんの」
「ありがと~」
「まいこちゃんの」
「ありがとっ!」
「うん、じゃあ私もみんなのオニギリいただこうかな?」
「「「はい、どーぞ」」」
一斉に差し出される三つのオニギリ。ああ、もう! 本気で可愛いんですけど! ……本当に相手作って、子供産んじゃおうかな? あてがない訳じゃないし……。とにかく今は姪っ子の気持ちをいただこう。
「じゃ、まずは結花ちゃんのからね」
「はーい」
握り方が若干柔らかいけど、最初のやつを見てたから分かる。これは結花ちゃんなりの努力の結果だ。中身はツナマヨ。うん、普通に美味しい。
「美味しいよ、結花ちゃん」
「よかったぁ」
「つぎ、つぎはまいこの!」
「はいはい」
ぴょんぴょん跳ねてアピールする辺り、本当にいろはお義姉ちゃんっぽいんだよなぁ。さて、オニギリは……思ったよりはちゃんと握れてる。少し硬いかな。でも美味しい。のりたまは鉄板だね。
「どう?」
「うん、美味しい。まいこちゃんもちゃんと出来てるね」
「えっへんっ!」
「おばさま、私のを食べてみてください」
雪美ちゃんの負けん気発動。こうして見ると、お兄ちゃんの遺伝子ってどこに反映されてるんだろ? 娘は基本父親似って聞くんだけどなぁ。そんな事を思いながらオニギリを食べる。うん、幼稚園児が握ったとは思えないぐらいちゃんとしてる。中身がおかかなのもあって、すっごく正統派な感じ。
「さすが雪美ちゃんだね。お見事」
「ま、まぁとうぜんです」
そう言いつつ嬉しそうに笑みを見せる雪美ちゃん。この辺りはまだ両親の影響はないみたい。出来れば雪乃お義姉ちゃんとも、陽乃さんとも違うタイプの女性になって欲しい。そうしてオニギリが減ってきた辺りで、三人の視線がチラチラと向いているものをあげましょう。
「あったかいもの、どうぞ」
「「「あったかいもの、どうも」」」
丁度いい感じの温度になったはずだし、そろそろ強めの味も欲しいよね。差し出されたチャーハンを三人が楽しそうにスプーンで崩していく。うんうん、何かテンション上がるよね、それ。
「「おいひー」」
「……ごくんっ。ゆいかもまいこも、くちにたべものいれたまましゃべっちゃダメ」
「あはは、そうだよ二人共。ちゃんとよく噛んで食べてね?」
「「ふぁーい」」
「もうっ! 言ったばかりなのに……」
そんな感じで楽しい昼食は過ぎていく。お腹いっぱいになった三人は、その後少し遊んで、揃ってお昼寝タイム。その寝顔を眺め、心から思う。お兄ちゃん達はこの天使達と出会ったから結ばれたんだと。あの未来から来た赤ちゃん。それがお義姉ちゃん達に応じて姿を変えた事。それを見たから、お兄ちゃんはお義姉ちゃん達を求め、お義姉ちゃん達はそれを受け入れたんだ。
「子は鎹、か……」
この場合もそれでいいのか分からないけど、ゆいこの三人が今に繋げたのは事実。……雪乃さんのゆにいろはさんのい。それを足して結衣さんのゆい。三人の子供って意味のこでゆいこ。だけど、もしこれをお兄ちゃんが付けたなら、絶対こは小町のこだと思う。
「……もしかして、私の旦那さんって亜麻色髪なのかな?」
そうすればお兄ちゃん達に聞いた、最後の姿になるんじゃないかな? 亜麻色髪でクセ毛がない子に。そんな馬鹿げた事を思いつつ、私も気付いたら眠っていた。その夢は、私が顔の分からない男の人と並んで、ゆいこちゃんらしき赤ちゃんを抱いている夢だった……。
ゆいこの複合した姿は、自分的には小町が産んだ姿の予定でした。で、旦那さんが彼女の想像通りの髪色で、生まれた子を見て八幡達が驚く。それが最初の最終回のオチでした。ゆいことの名は、そこで彼らの叫びを聞いた小町が妙に気に入り、自分の子へ名付けるという流れで。
今はそれを変えて良かったかなと思います。ここまで拙作にお付き合い頂きありがとうございました。