永久凍土帝国アナスタシア、最終戦。うちはこうして勝った、的なのを演出込みで書き上げてみました。

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氷の皇女と太陽の王、異聞帯と汎人類史

人類を救う任務を完遂したマスターを、素人だと侮っていたわけではない。だが自分達ならもっと上手くやれたはずだ。こんな素人よりは強いはずだ。そう過小評価していたのは間違いなく、事実だ。

 

彼が召喚した英霊は、こと自分のサーヴァントに対して。いや、このロシアにおいて、相性が致命的なまでに最悪だった。

それが顕現した瞬間に、局地的に吹雪は止み、雲が裂け、空から光が差し込んだ。まるで、その英霊のためだけに存在する舞台かのよう。それは太陽だった。この果てなきブリザードに包まれた大地からは観測し得ない輝きがそこに誕生したのだ。

 

氷のヴェールが剥がれ、大地が露わになる。冬は明け、春の到来を喜ぶがごとく、草の芽がかの者の降臨を前に首を垂れた。

 

一歩、かの者が歩く。熱風が吹く。魔術礼装についた氷が溶ける。吹雪の冷たさを消し去る熱さ。この異聞帯では未来永劫感じることのない「はず」の感覚が肌を焼く。

 

「我が名はオジマンディアス。我がマスターの呼び声に応じ! ここに、参上した!」

 

ああ。そうか。だが、こちらには。

 

「命令を、マスター」

「戦え」

「ええ」

 

彼女がいる。太陽など、吹雪で閉ざしてしまえばいい。

 

 

…………戦いは一方的だった。最初に想像した通り、あのマスターが呼び出した汎人類史の脆弱な英霊は吹雪の中で凍てつき、マスターと共に永遠にそこに残る氷の彫像となった…………なら、どれだけよかったか。現実は違う。

 

「ぬるいぞ! ハハッ!」

 

オジマンディアス。またの名をラムセス二世。それは過去のエジプトに政を布いた名高きファラオである。太陽神ラーの息子を名乗る、神に等しき存在。それは太陽の化身。

その傲慢さは強さに裏打ちされたものであり、決して虚勢などではなく、それはこちらの不利となって現れる。

解せないのはそれほど傲慢な王が、どうしてあれほど弱い魔術師モドキをマスターとして認め、その権能を振るうのか。どうして。どうして……唇を噛む。この感情は、嫉妬か。悔しさか。憤怒か。あるいは、その全て。

補欠の補欠でしかなかったお前が、どうしてそれほど輝いている。

 

皇女の冷気は太陽の熱量に届かない。吹雪は熱風に負け、氷の弾丸は光の柱の前に蒸発し、宝具の邪視もあちらのサーヴァントには届かない。いや、届いていても気にも留めないと。

 

「つまらんな。この程度か、貴様ら」

 

彼我の力量差は圧倒的。絶望的ですらある。彼は一歩も動かず、ただ光が降り注ぐ。こちらはひたすら耐えて、避けて、隙を探り続けるのみ。

彼はその絶大な力を存分に振るい、僕らを正面からすり潰そうと猛攻を仕掛けている……存分に? いいや、それは訂正する。この程度、小手調べ。あるいは児戯に付き合っているようなものだろう。

だが……辺りには450年の寒波により堆積した氷があった。そしてそれは彼の一撃で溶け、その下の地面が露わになっている。恐るべき熱量、サーヴァントであれ当たれば無事では済まない。これが児戯? ならば全力とはいかほどのものか。

マスターとしてできることは。サーヴァントへの攻撃は無意味。なら、その後ろにいるマスターへ魔弾を放つ。が、キリエライトが立ち塞がり、その盾をもって防ぐ。ファラオがやはり、無意味。

 

避けて、避けて……限界は訪れた。キャスタークラスなど、もともと跳ね回って戦うのに適したサーヴァントではない。アナスタシアとて、武功を挙げた英雄として座に登録されたわけではない。だからこそ、穴だらけになった地面に足を取られるなんていうミスを犯して、そこを光輪が覆った。処刑の前兆。直後、極光が降り注ぐ。質量を持った光が、相棒を押しつぶす。ロシアを押しつぶす。この世界を、押しつぶす。

 

「……」

 

彼はたしかに魔術においてはど素人だ。しかし、現実を前にして、認めざるを得ない。

彼は、弱い。しかし、あれほど強力なエゴと能力を持つサーヴァントが、彼を横に立たせ、彼の為に力を振るっているのだ。

使い魔との対等な関係。魔術師として正しいあり方ではない、しかし、方法は正しい。

 

誰が言っていたか。「魔術師当人が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい」と。まさしく。彼は人理修復の旅路で、最強の縁を作り上げたのだ。

多くの英霊と絆を交わし、縁を繋ぎ、その全ての中からこの場において最も適したサーヴァントを召喚した。

 

僕の負け、そう認めたくない。

 

「女王になれ! アナスタシア!」

 

令呪をもって、今一度命じる。光を押し返し、小さな氷の球が割れて、彼女がまた姿を見せた。

 

「我が光輝を前にして絶望せず、なお足掻くか。よかろう! ならばさらなる輝きを持って貴様らを焼き尽くすとしよう! ……なに? 殺すな? 仕方あるまい、貴様の頼みだ。加減はしてやろう」

 

力の差を見せつけられ、その上で情けまでかけられる。これが屈辱。だが、そこにこそ付け入る隙があると信じる。

大地が揺れ、同時に影がさす。膨大な魔力が、足下と頭上の両方に現れる。

 

「全能の神よ、我が業を見よ!」

 

叫ぶ王はより輝きを増し、光が世界を満たす。創世の神が光あれと言った、その時のように。

 

「そして平伏せよ、我が無限の光輝、太陽はここに降臨せり! 『 光輝の大複合神殿 (ラムセウム・テンティリス)』!」

 

そして、宝具が放たれた。巨大なピラミッドが地面から生え、同時に空からも降り、アナスタシアをその頂点に挟みこむ形で、二つの錐が合わさろうとする。

 

巨大な神秘と質量。大質量をかち合わせるだけの至極単純な一撃。それ故に、付け入る隙がなかった。

 

最初から最後まで、抵抗は無意味に終わった……ように見せた。この一瞬であちらも決まった、と思っただろう。

 

「やっぱり素人だ」

 

その慢心に、彼女の一撃が刺さる。最後の令呪をもって命じたのは、宝具の強制解放。強引に割り込ませた一撃は見事、王に届いて、彼は消滅。ギリギリのところで皇女は立ち止まっている。

 

「無茶をするものね、カドック」

「素人には負けられない」

 

彼女も人間でいうところの瀕死。サーヴァントであるから生きている、という状態。既に令呪はなく、あとは別れるのみ。だが、汎人類史のマスターを殺すだけの時間は……

 

「イェーーー!」

 

叫び声と共にバイクが突っ込んできて、彼女を跳ね飛ばし、彼方へと走り去った。

パスが途絶えるのを、自覚する。

 

「即興で書き上げた雑そのものなシナリオだったが、その通りに事が進むのを見ると傑作だな。紙に書いた途端駄作になるだろうが。お前はどう思う」

「吾輩、マスターの役に立てただけで滂沱の涙を流すほど感激しておりますのでな。まあ吾輩の書いたものならなんであれ傑作に間違いはないでしょう!」

 

状況が飲み込めないまま、ただ負けたという事実のみを突きつけられた。




雑ですまんな。あれこれと突っ込みどころがあっても30分で書いたものだし許して。

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