もう一つのお菓子
少し前の話、うちのカフェでこの前お菓子教室やった時に、お母さんのお手伝いで先生をやったんだ。
初めてだから気合い入れていろいろ勉強して、準備万端で挑んで、結果としてはうまくできたかなって思ってるよ!
でも、一つびっくりしたことがあって、Roseliaの紗夜さんが来てたんだ。
学校も学年も違うから全然親しいわけじゃなかったけど、いいきっかけだと思って話かけてみたらすごい真面目で優しい人だったの。
それに、もっと練習したいって言ってて、また一緒に作る約束もできた。
今日はその約束の日。もちろん楽しみではあるんだけど、やっぱり緊張しちゃうなぁ..
そろそろ約束の時間というところで扉が開く。ほぼぴったり、真面目な紗夜さんらしいな。
「こんにちは、羽沢さん。今日はよろしくお願いしますね。」
「こんにちは!こちらこそよろしくお願いします!」
挨拶を交わしお店の奥へ案内する。
「今日はここで作りましょう、上手く教えられるか分からないですけどお願いします!」
「ふふっ、私のわがままに付き合っていただいてるだけで感謝していますから、そんなに構えなくても大丈夫ですよ。」
「わがままだなんて、私も一緒にやれたら、なんて思ってたので!」
「そう思ってくれてたなら嬉しいわね。」
なんというか、大人って感じがするな~。余計緊張してきちゃった
二人で手を洗って、エプロンを着て準備を整える。材料などは事前に用意してあったので早速始める。
「早速なんですけど、始めましょうか!」
「はい、お願いしますね、先生。」
微笑みながら返事をしてくれる。
「せ、先生はちょっと恥ずかしいので普通に呼んでくれませんか..?」
「ふふ、ごめんなさい、羽沢さん。改めてよろしくお願いします。」
紗夜さんのこういう一面って新鮮だな~、なんて考えてしまう。
「はい!」
始めてみると、紗夜さんは二回目なのにも関わらずすごい手際で教えた手順をさらさらこなしていく。流石としか言いようがない。
「紗夜さん、二回目なのにこんなに上手に..すごいですね!」
「いえいえ、前回もそうでしたが羽沢さんの教え方がとても良いからですよ。」
「あ、ありがとうございます!でも、紗夜さんもやっぱりすごいですよ!」
「ありがとう。あと、ここまでやったらどうすればいいのかしら?」
いつの間にかとても多くの、様々な形のクッキー生地が置かれている。
「わわっ!早いですね、あとは焼くだけなのでちょっと待っててください!」
私も慌てて型でくり抜く。
「慌てなくても待ちますよ、大事なのは気持ち、ですよね?」
教えるはずが、立場が逆転してしまっていた。
「あっ、そうでしたね!もう、紗夜さんには敵わないですよ。」
「私なんて羽沢さんに比べればまだまだですよ。」
もう最初の緊張なんか忘れて、とても楽しくなってきていた。
「おまたせしました!それでは生地を焼きましょう!」
焼き上がるまで時間がかかるので、お話ししながら片付ける。
「羽沢さんはバンドの皆さんにプレゼントとかする予定なんですか?」
「もちろんです!紗夜さんもバンドの方にプレゼントされるんでしたよね?」
「はい。あと、今日は日菜にも持って行ってあげようと思ってます。」
「お二人とも仲いいんですね!」
「ま、まぁそれなりには..」
「あー!」
「い、いきなりどうしたんですか!?」
「お、大声出してすみません...実はラッピング用の包装紙とかリボンとか買い忘れちゃって..」
「そうでしたか、それでは一緒に買いに行きませんか?」
「えっ?いいんですか?」
「羽沢さんさえよければ私は構いませんよ。」
「ありがとうございます!」
紗夜さんとお出かけなんて初めて、なんだか楽しみだな。
「それじゃあ行きましょうか。」
「はい!」
紗夜さんはあまりこういうお店を知らないようなので、私のお気に入りのお店へ向かう。
「こんなに色々な種類があるんですね。驚きました。」
「はい!ここ、私のお気に入りのお店なんです!自由に見て回って大丈夫なので買ったらまたここで合流しましょう!」
紗夜さんに内緒でサプライズしようかな、なんて考えながらいろいろ探す。
30分ほど経って合流する。
「紗夜さん、なんかすごい量じゃないですか!?」
「ひとりひとりに、と買っていたらこうなってしまいました。」
という紗夜さんの袋には包装紙が6本見える。あれ?バンドの人と日菜さんと、あとは誰のなんだろう?
「ひとりひとりに対する丁寧さ、紗夜さんらしくていいと思います!」
「ありがとうございます。早速ですが戻ってラッピングのやり方を教えていただけませんか?」
「はい!」
うちへ戻り、綺麗に焼き上がったたくさんのクッキーを取り出す。
ふたつのクッキーの乗ったプレートを置き二人で小分けする。
「ここで丸くふわっとさせると可愛くできますよ!」
「なるほど、勉強になりますね。」
「えへへ、こういうのは得意なんですよね。」
私は5個、紗夜さんは6個の小袋を作り上げる。
「ラッピングの材料、片付けましょうか。」
「そうですね。あっちにごみ箱あるので、いらないものは捨ててきちゃいますね。」
そう言って、私を見てないことを確認して、紗夜さんのかばんにメッセージカードと一緒にクッキーを入れる。
戻ってきたら、紗夜さんがほとんど片付けてくれていた。
「あ、片付けさせてしまってごめんなさい!」
「いえ、これくらい気にしないでください。それに、とてもいいものを頂いちゃいましたしね。」
そう言う紗夜さんの手には私がさっき入れたクッキーが
「えぇ!?気づいてたんですか!?」
「ふふ、リボンなどをカバンに入れようとしたら見つけちゃいました。」
「まだ片付けの途中でしたもんね、私こういうの向いてないかもです...」
「羽沢さんはそんな真っすぐなところが素敵だと思いますよ。」
「あ、ありがとうございます。」
ほんと紗夜さんはすごい人だよね。尊敬しちゃいます。
「さて、日も落ちてきたしそろそろ帰ろうかしら。」
「あ、もうこんな時間だったんですね。」
「遅くまでごめんなさいね、それと今日はとても楽しかったわ。」
「いえいえ!私も楽しかったです!」
「それじゃあ失礼するわね、今日はお付き合いありがとう。」
「こちらこそありがとうございました!お気をつけて!」
紗夜さんが帰った後、なんだか少し寂しく感じた。ふと、テーブルを見ると片付けの時まとめてくれていたリボンの中からメッセージカードとクッキーが見えた。
『今日は本当にありがとう。これはちょっとしたお礼です。お菓子作りはまだまだ未熟ですが、食べてくれると嬉しいわ。それと、今度時間があえばゆっくりお茶でもしましょう。 氷川紗夜』
すぐにでもお茶に誘いたいくらいだよ。サプライズも上手だし、ほんと最後まで紗夜さんには敵わなかったな。
紗夜さんの手作り、とても気になるし、せっかくなのでいただく
「あ、すごくおいしい...」
紗夜さんの甘くて優しい味が私を満たしてくれた。
紗夜さんの事が気になるつぐちゃんな感じと、普通に仲良くなりたい紗夜さんな感じで書きました。ご感想などいただけるとほんとに喜びます!