刻の涙   作:へんたいにーと

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第六話

◆アレキサンドリア

 

 ジェリドはエイダのハイザックにまたも抱えられて母艦に帰還した。コックピットから青い顔のままフラフラと降りてきたジェリドは、ジェリドのハイザックを見て金切り声を上げた整備班長を横目に見ながらそうっとその場を後にする。

 

 機体の至る所にビームの至近弾の跡があり、胸部装甲はボコボコ、ハイザックの体に張りめぐされた冷却パイプも無残なもので、ランドセルはパージされている。おまけに四肢にも一部欠損が見られ、スクラップは間違いないと言えた。

 

「エイダ少尉!」

 

 整備のためコクピットと同じ高さに設置されたオレンジ色のリフトに乗っていたエイダは、まだエマ隊が帰還していないためエアーが注入されていないデッキのため、無線でのジェリドの呼び出しがヘルメットを通して頭に響いた。

 すぐにジェリドを発見し、接触する。これによりバイザーの振動でお互いの声が無線を介さなくても伝わる。

 

「中尉、ジャマイカン少佐への報告は……」

 

「コックピット内で済ませてある。次の作戦まで独房で待機せよとのことだ。取りあえず。MPが来るまでにエアーがあるところへ行こう」

 

 ジェリドはそう言うと、モビルスーツデッキのすぐ隣にあるパイロット専用の即応待機室へと移動した。ここには数台のドリンクバーとロッカー、壁にデッキの様子を映した液晶モニタがあるだけで他には何もない。

 ジェリドはヘルメットを取り、スポーツドリンクを二本とるとエイダへ一本を渡しながら言った。

 

「エイダ、よく見つけてくれた。おかげで命拾いした。ありがとう」

 

いつになく真剣なまなざしで素直に礼を述べるジェリド。

 

「そんな、私なんて……中尉をカバーできずに、そのせいで!」

 

「それはもういい。後続隊がアーガマのモビルスーツ隊を押さえきれなかった事に問題がある」

 

「しかし!」

 

「良いから飲め」

 

 エイダは礼を言って渡されたチューブからドリンクを飲んだ。ドリンクで買収するのは出撃前にジェリド自身も学んだ事だ。居住区ではないため無重力状態の待機室で、お互いは浮いたまま向き合っている。

 

「黒い奴はどうだったんだ。エイダの機体は損傷してないように見えたが」

 

ジェリドが沈黙を嫌い、話題を少し逸らした。黒い奴とはリックディアスの事だ。

 

「すごく手ごわかったです。一撃も当てられませんでした。おそらく中尉の相手を援護しに来たのだと思います。私に対しては牽制程度の発砲しかしてきませんでした」

 

「あいつも別格だな。あの動きは古参にしか出せない」

 

「わかるのですか?」

 

エイダが手の中にあるチューブから目を外し、ジェリドの顔を仰いだ。当然ジェリドはリックディアスの動きなど見ていない。カミーユに追い立てられボコボコにされていただけだからだ。しかし、部下の前で上官の体裁を保つためにそのような事をしたり顔で述べていた。

 

「わかるさ。いいか、アーガマはとにかく別格だ。今まで我々が戦ってきたジオン残党兵とは違うぞ。ジャマイカンはまだその変が分かっていないが、戦った俺たちならわかるだろう?」

 

 ジェリドはコックピットで報告した際、ジャマイカンの苦言を思い出して苦笑した。ジャマイカンはボロボロになって戻ってきたジェリドの報告に、「情けない」の一言であった。一応ジェリドがカプセル撃破の事を言うと、下種な笑みを浮かべてはいたが。

 

「それは……わかります」

 

エイダの顔は暗い。部下を持つとは面倒な事だなとジェリドは内心で思っていた。

 

「と、なるとだエイダ。お前がイレギュラーから俺をカバーできなかったとしてもそれは仕方ないことだ。もう考えるのはよせ」

 

 お互い生きている事だしな、と締めくくると丁度エマのガンダムマークⅡ1号機とエマ隊のハイザック2機が、カミーユの乗るガンダムマークⅡ3号機を連れてデッキへと帰還した様子がモニターに映されていた。

 

「俺を散々いたぶってくれたやつのお出ましか」

 

 

「見に行くんですか?」

 

スポーツドリンクを飲みながらそう述べるジェリドにエイダは質問した。

 

「あぁ、エアーも注入されたみたいだし、確認したいことがある。確かカミーユとかっていう少年のはずだ」

 

「少年って……知っているんですか!?」

 

「まぁ、ちょっとな。殴られたり顔面を蹴り飛ばしたりした仲だ。」

 

「最悪じゃないですか! 面倒事は御免です。私はここにいます」

 

そんなエイダの声を後にし、ジェリドはヘルメットを抱え、フルーツジュースのドリンクチューブを一本ドリンクバーから取り出すと、デッキへと向かった。

 

(ヒルダはどうなったんだ。知らなくては今後の対策を立てようがない)

 

ジェリドは焦っていた。

 

◆アレキサンドリア、モビルスーツデッキ(格納庫)

 

ジェリドとエイダがデッキへと降りたつと、丁度エマがカミーユをコックピットから引きずり出していた。

 

「降りろっていうんなら一人で降りますよ!」

 

 カミーユが力任せにエマを跳ねのけたため、エマが弾き飛ばされデッキに浮かんだ。ジェリドはその様子に眉をひそめたが、得に行動しようとはしなかった。

 

そんな少年を見上げる金髪の恰幅の良い中年男性が、紺色のスーツに身を包みデッキに立っていた。

 

「親父、何でこんなところにいるんだよ……母さんはカプセルに入れられて」

 

カミーユはその中年男性を震える声で親父と言い、コクピットから父親のもとへと降りてきた。靴にはマグネットが仕込んであるため、しっかりと床に立つことができる。

 

(母親の報告をする気か。それとバスクの非道さも)

 

ジェリドはデッキの二階からカミーユ親子を腕を組みながら見下ろした。しかしここからではカミーユの時折荒げた声くらいしか聞こえたものではなかった。

 

 

 父親のフランクリン・ビダン大尉は地球連邦軍の技術士官で、マークⅡを開発した功績を持つ。その妻のヒルダ・ビダン中尉は材料工学専門の技術士官で、件の事から今はエゥーゴのアーガマに身を置いていた。

 

 フランクリンは妻をカプセルに入れて放ったバスクへと抗議しに行くようだ。しかし、ジェリドはヒルダの生死を未だ把握していないので、迂闊に行動出来なかった。

 

 

 両脇を二人の兵士に拘束されながらカミーユが居住区にある独房へと連行されていく。彼はモビルスーツを奪い、敵側に渡すのを協力し、ティターンズと交戦もしている。銃殺は免れないだろう。戦艦の内部で刑は執行しないだろうが、カミーユの死は迫っているといえた。ジェリドは接触を試みた。

 

「バスク大佐がやった事は君にとって許せない事かも知れないが、エマ中尉にあたるのはよせ」

 

 カミーユが聞き覚えのある声に振り向くと、宇宙港で自分の顔面にサッカーボールキックをお見舞いしたジェリド・メサという男が通路に立っていた。

 

「お前は!」

 

「俺は知らなかったんだ。君の母さんがカプセルに入ってただなんてな」

 

悪びれもせずにそう言い放ち、自分にむかってドリンクを投げてよこすジェリドに、カミーユは急速に頭に血が上るを感じた。知らなかったで済む問題ではない。下手をすれば母は死んでいたのだ。カプセルを壊したあのハイザックに乗っていたのは、目の間にいるこの男だったのか!

 

 ドリンクを手に取るとフルーツジュースのファンシーなロゴが目に飛び込んでくる。それが今の状況と反比例し過ぎており、カミーユはますます怒り狂った。

 

(どうやら余計に腹を立てさせてしまったようだ)

 

 ジェリドは良かれと思って差し入れしたドリンクを見て怒り狂っているカミーユを見て溜息をついた。

 

「それで、ママはどうなったんだ。死んだのか?死んだってんなら、殴ったっていいんだぜ?」

 

 こちらを見ながら、母の生死は至極どうでもいい事だという雰囲気を崩さないまま語りかけるジェリドに、カミーユはついに拳を握った。

 

 ジェリドはまだ、ヒルダ中尉の生死を知らない。あれで死んだのならもうしょうがない事だと割り切っていたが、生死は気になる。しかし素直に聞くには時が早過ぎた。何と言ったってジェリドは先ほどボコボコにされたばかりなのだ。何度死を覚悟させられたことか。少し棘のある言い方になってしまったのも無理はなかった。

 

 カミーユは激情に身をゆだねて、今すぐ怒鳴り返したかったが、カミーユの後ろからついてきていたエマがカミーユの振り上げた拳にそっと手を置いて降ろさせた。

 

「エマ中尉、余計な事をするな」

 

 ジェリドは自分ですら触れたことのないエマがカミーユの拳を包んでいるのに軽くショックを受けた。わざわざこんな事をしでかしてカミーユの激情を駆り立てたのにはもうひとつ理由がある。

 

カミーユの鬱憤はこじれると厄介だと作中で感じていた。そのため、一発殴る事によってそれが緩和するのは自分にとって悪いことではないとジェリドは考えていた。詰まる所、エゥーゴにジェリドが渡る場合、このことが後を引いては面倒だと感じたのだ。

 

 ジェリドの感情を押し殺した声にエマは思わずジェリドの顔をうかがってしまう。一体この男は何を考えているのか。

 

「お前たちも、余計な手出しはするんじゃない」

 

ジェリドはカミーユを押さえている二人の男にもそう言うと、カミーユへの拘束を解かせた。

 

「こうまでされても、殴れないほど女々しいのかお前は!どうなんだ!」

 

 ジェリドのさらなる挑発にカミーユの堪忍袋はズタズタであった。一瞬で間合いを詰めると、トンっとつま先で地面を蹴り身長差を埋め、空手で鍛えた強烈な上段突きをジェリドの顔面に放った。

 

「このおお!」

 

「うぐっおああ」

 

 カミーユはジェリドが口の端から血の玉を流しながら弾き飛ばされていくのを、ジェリドのパイロットスーツの胸の部分、丁度ジェリドのシンボルマークのいびつな星のマークを掴むことによって寸での所でキャンセルさせ、水月に更なる殴打を叩きこむ。その衝撃でシンボルマークのワッペンが剥がれてしまいどこか宙空へ勢いよく飛んでいった。

 

 身体の正中へ正確に打ち込んだそれは、俗に言うストマックブローだ。副交感神経が集中する人間の急所を正確に打ちすえられてジェリドの横隔膜を動きを止めた。詰まる所、瞬間的に呼吸ができなくなった状態である。

 

「かッ……」

 

「知らなかったで!済む問題じゃッ!ないだろうッッ!」

 

 宙空でマウントポジションをとり、ジェリドの顔面を何度も殴りつける。あまりの威力にジェリドは意識を失っており、僧帽筋は首を守るその役目を果たせず、左右からのフックを食らうたびに危険なほど揺れるジェリドの首は、さながらアメリカンクラッカーだ。

 

 カミーユは気絶させた事を確認すると殴打をやめたが、拳をジェリドの喉元に当て隙なく残心している。静かになった事を見計らって二人の兵士は恐る恐る、再びカミーユを拘束した。

 

「卑怯な大人ですね。母は生きてますよ。そんなに生きてるのか気になるんだったら

 撃たなきゃいいでしょう!ああそうだ、あなたは軍人だったな。軍人は、事態の善悪も分からずに上官に従うんだものな……許してやるよッ!!!」

 

 続けざまに荒い息で吐き捨てるカミーユの声はジェリドの耳にはまだ聞こえていなかった。

 

「あなた達、早く連れて行きなさい!……ジェリド!……ジェリド中尉!」

 

エマが慌ててカミーユを連れて行かせ、自身はジェリドの意識を戻すため、伸びているジェリドに馬乗りになってジェリドの頬を叩き始めた。

 

「そういう組織を憎む事を、僕は今日、覚えたんだ!」

 

 遠くでカミーユが叫んでいたが、今のエマはジェリドが死んだのではないかと焦っていたためその台詞は頭に入ってこなかった。何せジェリドは危険な首の動きをしていた。脳にダメージが残る可能性もあったのだ。

 

 まずジェリドが最初に感じたのは匂いだった。シャンプーの良い香りを楽しみながら目を開けると、エマの横顔が飛び込んできた。ジェリドが息をしているかどうか確かめるため、馬乗りになってジェリドの口元に耳を近づけていたのだ。

 

 ジェリドはしばしその光景と、自らの腹に当たるエマの尻の感触を楽しむ事にし、意識が覚醒した事を言わずにぼうっとその様子を眺めていた。が、エマはすぐにジェリドの呼吸音に気づき、馬乗りになった姿勢をとき、横たわるジェリドの隣にしゃがみ込んでしまった。

 

「ジェリド、起きたのね。私が分かる?」

 

「なんだエマ中尉、もう少し楽しませてくれたって、バチは当たらない」

 

咳き込みながら言うジェリドにエマは呆れた顔で答える。

 

「それ、セクハラって言うのよ。……記憶の混同はないようね。さ、立って」

 

ジェリドは痛みで顔をしかめ、壁に背を支えながらゆっくりと立ち上がった。

 

「あなたの負けよ。何であんなことしたの」

 

鳩尾を押さえているジェリドにエマはぐいと詰め寄った。

 

「知らなくていい。それより、カミーユの母親はどうなったんだ」

 

 ぼそりとエマの目を見ずにジェリドがはぐらかすと、エマはジェリドの横の壁に片手を付けジェリドに逃げ場を無くさせた。

 

 そんな様子にジェリドは内心面白がった。ジェリドは195cmと高身長だが、エマの身長は168cm、女性としてはかなり高い部類であるがジェリドとの差は実に27cmもある。

 当然エマの片手の位置はジェリドの脇腹程の高さの壁に突き刺さっており、お互いの距離が近いためエマは見上げる形でジェリドを睨んできているのである。

 

 なんだか頭の上にポンと手を置きたくなるそんな衝動にジェリドはかられたが、身長差で迫力が出ない事で、エマはさらに眉を怒らせ語気を荒めている。仕方なく諦める事にした。

 

「奇跡的に生きていたわ。……カミーユに抑えられたことが悔しかったのなら、ティターンズらしく……!」

 

「ティターンズらしく自尊心のある行動を、か。 エマ、ティターンズに自尊心があるなんて本当にまだ思っているのか?」

 

 低い声で呟くように話しかけるジェリドにエマは動揺した。この男は一体何を言い出すというのか、自分の心を見透かしているかのようなその青い瞳に、エマはたじろいだ。

 

「何を……]

 

言うのよ。と続けようとしたエマは息をのんでしまい言葉を発することができない。

 

 ジェリドがエマの肩を抱いて、逆にエマを壁に押し付け今度はジェリドが壁に手を突いてエマの動きを封じたからだ。先ほどのエマとジェリドの立ち位置が入れ替わった状態に、エマは不覚にもドキリとしてしまった。

 

 揺れ動く瞳を見降ろしてジェリドは確信した。このエマは、原作のエマと同じだ。間違いなく、ティターンズを去るだろうと。この瞳の動きは間違いなく、動揺を表している。

 

 先ほどの問いに対して動揺しているとジェリドを考えていたが、実際はジェリドに壁へ押し付けられた事にエマがときめいてしまっている事による動揺の方が大きかった。

 

「カプセルはあのガキの親が乗ってたんだ。詳しくは知らないが要は人質作戦ってわけだろう。子供の親を人質にするような組織にまだ自尊心なんてものを持てるのか?」

 

 少しきつくエマに言ってしまったジェリドだったがふと、こんな事を言っても自分にとって何もプラスにならない事だと気付いた。確かにエマの心情を言い当てることが太郎の知識を持ったジェリドには可能だろう。

 しかしそれがなんだというのだ。言い当てたところでジェリドは今、エゥーゴに行く気がないのだからそれは大した意味を持たない。

 それどころか、エマに余計な警戒心を抱かせてしまうだけだと考え直したのだ。エマをよく見れば、瞳に潤いが見られる。やはりきつく言い過ぎたのだと、先ほどカミーユに殴られ過ぎたせいで苛立っている自分に気づくと、罪悪感からジェリドは目を伏せ、エマから一歩遠のいた。

 

「いや、すまない。……それよりカミーユの母親は何か言っていたか?」

 

「私が知っているのは彼女はひどく怯えていて、とても話なんかできる状態じゃなかったってことだけ」

 

 そうかとどこか満足そうに頷くジェリドにエマは疑問を抱いた。先ほどのカミーユとの問答でもジェリドはカミーユの母親の事を気にしていた。それはまだわかる。

 しかしヒルダが話せないほど酷く怯えていたと言うのにどこか満足げな表情を浮かべているのに、エマは合点がいかなかった。これでは何かヒルダに話されては困るような事がジェリドにはあると言っているようなものだ。

 

「なんでそんな事を聞くの。ヒルダ中尉と何かあったの?」

 

「あるわけないだろ。ただ自分が撃った奴がどうなったのか聞きたかっただけだ」

 

 女の勘とでも言うのだろうか。ジェリドはエマの直感に警戒した。話は終わりだとばかりに踵を返すと手をひらひらと振って誤魔化しながらこの場を後にした。

 

「そう」

 

 エマは知らず知らずのうちに胸を両手で抱えていた自分に気づくと、慌てて腕を下ろした。この男は自分には知られたくない何か隠している。そしてティターンズの行動に不信を抱いてしまっている自分を、見抜いている。警戒しなくては。

 

 警戒しなくてはと頭では分かっていても、どうも好意的な感情を押さえることができない。自分は彼に少しばかり魅入ってしまったのかもしれない。エマはため息を一つつくとバスクに呼ばれていた事を思い出し、ブリッジへと向かった。

 

◆ブリッジ

 

「どうだろうエマ中尉」

 

 ジェリドがブリッジに入ると、前方の宙空を見つめていたバスクがエマへ振り向いて、一つの提案をしてきた所だった。

 

「私だって人質などを使いたくはない。今度は君のやり方でやってみてはもらえんか。正攻法でアーガマの新型モビルスーツを略奪してもらいたいのだ」

 

(略奪に正攻法も糞もあるか)

 

 ジェリドは入室した途端に入ってくる情報に穏やかでないものを感じながらエマの横にすっと立った。

 

「中尉ならできるはずだ。私に意見するほどの、器量をお持ちのようだからな。勿論、ライラ隊との共同戦線を許可しよう。三機のガンダムマークⅡを使ってもよい。どうかね中尉」

 

 これは現戦力の全てを投入しても良いというお墨付きをもらった事になる。失敗は許されなかった。

 

「やらせて頂きます」

 

 エマの答えに満足したバスクはチラリとジェリドに目をやった。ジェリドは一応言っておく事にした。上昇志向がないと思われるのはマイナスだと判断したのだ。

 

「大佐。ガンダムマークⅡを使わせてもらえるならば、自分が汚名ばnいや、返上したく」

 

「汚名返上?そう言うセリフは実績を見せてから言うものだ!そのひどい面を私に見せるな。医務室へとっとと行かんか!」

 

 バスクは先ほどカミーユに殴られた所が青痰化してきているジェリドの面をみて、吐き捨てるようにそう言うとエマと詳細を詰めにかかった。

 ジャマイカン少佐から独房入りの命令を出されていたジェリドだったが、バスク大佐からの医務室待機で命令を更新されたものと解釈し、この幸運が持続するうちにそそくさと医務室へ向かうのだった。

 

 ジェリドはカミーユ親子とエマの逃亡劇に関わらない事にし、医務室で治療を受けた後、ベットで横になっている事にした。史実でもジェリドのできる事はなかった。

エマの逃亡を阻止するつもりのないジェリドにとって一番良いプランは関わらないという事につきた。

 今頃は若ハゲ(カクリコン)がカミーユに殴られて伸されている頃だろう。ジェリドは二度の出撃ですり減った神経を休ませるため仮眠する事にした。

 エマに別れの挨拶もなく対立する事になるのは気がひけたが、休眠の方が今のジェリドの欲求には勝っていた。それほどに疲れていたのであるが、折角建てた自らのフラグをへし折っている事にジェリドは気づかない。

 

 ジェリドの予想は当たっており、ここでジェリドが史実とは違い格納庫に行かなかった事でフランクリン大尉を焦らせることなく、エマの脱走は史実よりもスムーズに進み、ハッチを爆破させることもなく脱走を成功させる。

 アレキサンドリアは正規通りの出撃と勘違いしたままエマ隊を発進させることとなったが、途中合流信号が上がらない事で異変に気付いたボスニアのライラ隊により、エマ隊との戦闘が起こるも、アーガマのクワトロ隊の活躍によりマークⅡ三機は無事にアーガマにたどり着いたのだった。

 

 

 


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