IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第2話

「―――と言うことでして、ISの基本的運用は現時点では国家の認証が必要なのです」

 

すらすらと教科書を読み進めながら授業を行っていく副担任の山田 真耶、童顔が目立ち可愛いという言葉が似合う彼女の教科書の文章を読み進めながら必要な部分をノートに書き出して行きつつも同時に教科書と違う部分、違う言い回しを使っていた場合はそこまで確りと聞いた上でノートに書きこんで行くカミツレ。中学時代の先生は黒板というよりも口に出した所をテストに出す人だったので先生の言葉までノートに書きこむ事が身にしみている。それも結構役に立ちそうな事でホッとする、あの先生には今度お菓子でも送っておこう。

 

「杉山君、如何ですか分からない所とかありますか?」

「いえ今のところ大丈夫です、お気遣いどうも。でも細かいところが少し気になるので後で聞いてもいいですか?」

「はい勿論!どんどん先生に頼ってくださいねっ!!」

 

真耶は唯一の男子二人を気遣うようにカミツレにそっと近づきながら大丈夫なのかと声を掛けた、今行っているのは参考書でも飽きるほどに読んだ所なのでバッチリ付いていけている。予習が身を助けるというのを実感した始めての事で僅かに感動しつつ真耶に返答を返す。頼られた事が余程嬉しいのか真耶は顔に似合わず豊満な胸を揺らしながら胸を張った、かなり接し易い上に頼りに出来る先生というのは嬉しい発見だと思っていたが何やら視界の端で一夏が此方を信じられない物でも目の当たりにしているかのような顔をしていた。

 

「(……えっ何あいつ、姉貴に教えてもらったとかだからあんな余裕だったんじゃねえの?)」

 

一夏の姉はこのクラスの担任であると同時に世界大会の覇者でもあるIS操縦者である織斑 千冬、そんな強力すぎる後ろ盾と大先輩がいるのだから其方に教えて貰っていると完全に思っていたのだが如何やら違ったらしい。まさか今の段階で分からないというのだろうか。参考書さえ確り熟読していれば理解出来る筈の内容なのだが……。

 

「織斑くん、何か分からない事があったら遠慮なくいってくださいね♪」

「や、山田先生……殆ど全部わかりません……!」

 

その瞬間、カミツレの思考は一瞬死んだ。そして再起動した直後抱いたのは呆れと怒りであった。

 

「えっ……ぜ、全部ですか……?あ、あの他に織斑君以外で分からない人って居ます……?」

「なあカミツレも分からないだろ!?今のうちに言っておいた方が為になるって!!」

「……俺、こんな奴のせいで夢を捨てなきゃいけなかったのかよ」

 

失意と怒り、呆れは様々に複合されつつ一夏に対する態度を徐々に決定して行く。こんな奴のせいと思う傍らで何故あんな余裕そうな笑いを浮かべられていたのかという疑問まででてくる。

 

「織斑お前参考書はどうした。あれを読んでいれば分かるはずだが」

「電話帳と間違えて捨てました」

「必読と書いてあっただろうがばか者!!」

 

その声と共に教室内にて授業を見守っていた担任の千冬の出席簿によって叩き伏せられてしまったがそれで理解出来ないのも納得だ。読んでさえいれば分かるのだから読んでさえいないのならば分かりようも無い。

 

「後で再発行してやる、一週間以内に覚えろいいな」

「い、いやあの厚さは一週間じゃ……」

「やれと言っている」

「……はい」

「杉山、一応言っておくがこいつには一切手を貸すな。こいつの自業自得だからな、責任を取らせる」

「元々教える気が無かったのでご心配なく、あと先生後で聞きたいところあるんですが良いですか」

「勿論だ。お前は真面目そうで安心した」

 

自分から捨てているような奴に教える事など無いというか自分の事に精一杯で教えている暇などないし、そもそも織斑に教える事自体が嫌だというのもある。それに千冬の言っている通り自分で知識を放棄したような物なのだから自分で責任を取らせるのが一番という物だろう。その一夏からは雨の中で捨てられている子犬のような目で見られるがそれをゴミを見るような視線を返して勉強に戻った。カミツレは猫派である。

 

「頼むカミツレ、手伝ってくれよ!!」

「嫌だ。むざむざ織斑先生の裁きを受けたくは無い」

「そんな殺生な!!?」

 

休み時間になりカミツレの元へとやって来た一夏は勢いよく頭を下げて勉強を教えてくれるように懇願しに来るが、先程自分でやれと言われた事をもう忘れているのだろうか、幾ら頭を下げられても教える気など全くない。自業自得なのだから自分で何とかしろと声を大きくして言いたい。

 

「そもそも自分で放棄したような物だ、自業自得だ。自分でなんとかするのが筋だろ」

「そんなぁ……でもあんなの電話帳に間違えてもしょうがないだろ!?」

「俺の家には電話帳など無いから知らん」

「えっマジで!?」

 

あったかも知れないが少なくとも自分は目にした事が無いから同情も出来ないし何も言えなくなってしまう。そんな事よりさっさと一夏には消えて欲しいと心から願うカミツレ、折角真耶に掛け合って放課後の補習授業やらを了承して貰えた事で少しは自習のペースを落とし休み時間を休憩に使えるようになったのだからゆっくりさせて欲しいという物だ。そんな時、煌びやかな金髪に碧眼の少女、セシリア・オルコットが此方に話しかけてきた。

 

「ちょっと宜しくて?」

「へ?」

「なんの御用でしょうか」

 

気の抜けた返事をする一夏に比べてカミツレは座ったままだが確りとした敬語を使いながら相手を敬うように口を開いた。少々高圧的な印象を受けるがそれでも相手は極めて理性的且つ貴族の風格を感じる。ならばそれに合わせるようにするのが筋という物だと祖父から教わった。それに機嫌を良くしたのか少女ことセシリアは笑みを浮かべながらカミツレの方へと向いた。

 

「そちらの方は失礼な態度だというのにそちらの杉山さんはよくご理解していますわね」

「これと一緒にされるのは流石に心外という物ですよ、ミス・オルコット」

 

自己紹介を行われている時に彼女が名乗った名前、セシリア・オルコットという名前には聞き覚えがある。というのもカミツレはイギリスが好きな国であるのでそれなりに知識がある上に旅行などでも訪れた事がある、その関係かIS学園に入る事になった際にISの事を詳しく調べた際にイギリスの事も一緒に調べた時、代表候補生である彼女の事も知ったのである。

 

「いや俺君の事知らないし……」

「知らないですって?この私セシリア・オルコットを!?」

「おう知らない。っていうか代表候補生って何だ?」

 

がたたっ、思わずクラスの女子達数人がずっこけた。その中にはカミツレも含まれていた。

 

「お、おおおお前本気か!!?本気でそれ言っているのか!!?」

「ああマジ。カミツレ知ってるのか?」

「文字から連想出来るだろ普通!!?国家の代表IS操縦者の候補生の事だ、お前の姉さんだって元々国家代表だろ。その代表になり得るエリートの事を言うんだよ!!」

 

その説明を受けてああ成程言われて見たらそうだな!と納得したように手を叩く一夏を見て頭が痛くなって来た。こんな事も分からないのに奴よりも自分の方が実験材料にされ易いと思うと悲しくなってきた、自分の価値ってなんなのだろうと。

 

「でもそのエリートだからって偉いわけじゃないだろ?俺達と同じ生徒な訳じゃん」

「アホか偉いに決まってるだろ、相応の努力をしてライバルとその座を争って維持して苦難の中を突破した人だけがエリートって言えるんだよ。優秀な人ってだけでなくてそれだけ苦しんで努力した人をエリートって言うんだよ少しは言葉の重みを理解しろアホ」

「そ、そこまで言わなくても……」

 

別段彼女を擁護する訳では無いが此処まで積み重なった一夏へのヘイトがやや爆発してしまった結果こんな事を言ってしまった。兄からも言われた事を思い出さなければ「感情を制御出来ない奴は馬鹿」だという事を……自分もまだまだ子供だとやや辟易していると気付けばセシリアが此方を見てキラキラとした顔を向けていた。

 

「貴方素晴らしいですわ!!なんと理性的で思慮深いのでしょうか、ああっまだ貴方のような理解ある男がいるなんて思いもしませんでしたわ!!」

「そ、それはどうも……」

「いかがでしょうか、またの機会に紅茶でも嗜みながらお話でも!!」

「是非お供させて頂きたいですね、それと宜しければ代表候補生である貴方に教えを請いたいのですが……」

「ええ勿論、私に教えを請いたいなんて素晴らしい慧眼をお持ちですわね!!」

 

などとセシリアからの印象が凄い勢いで良くなっていく中で休み時間終了のチャイムが鳴ってしまった、セシリアは詳しい事はまた後ほどと去って行った。一夏も席へと戻って行く中、カミツレは内心でガッツポーズを取っていた。

 

「(よっしゃあ!!代表候補生から指導を確約させた!!)」

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