IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第202話

アリーナの騒がしさがピットの内部にまで響いてくる、外では今か今かと準決勝の始まりが待ち侘びられている。しかしそんな喧騒すら耳に入らぬほどに静に心を落ち着けながら戦いの時を待ち続けている男がそこに佇んでいる。深めに呼吸をしながら僅かにざわめいている心を落ち着けながらも、脚を進めるために準備を進めながら頭の中では自分が知っている限り最強のIS使いである千冬と戦いながら自分を高めている。激しい剣戟戦のイメージとリアルなまでに感じる幻聴が、意識を切り替えていく。セットしていた時計が戦いの開始の10分前を告げるように鳴ると、反射的にその身に相棒を纏った。

 

「―――」

『精神レベル安定、最高のコンディションですね』

「―――負けられない戦いだ、最高の状態で行くのが当然ってもんだ」

 

戦装束ともいえる相棒『大将軍』を纏ったカミツレにとって準決勝は酷く重い意味を持つ戦いとなる。この戦いは義妹であるマドカとの戦いであるが、それだけではなく妹と戦い破れた乱の分の思いを背負っている。そして、この戦いの先には決勝戦が待っている。自分が目指しているのは決勝、そこで戦うかもしれない彼女との一戦を酷く求めている。もしかしたら上がってこないかもしれないのに既に彼女との戦いを確信している自分の思いに呆れも出てくるが、それほどまでに願っている。そして5分前となった、発進口へと脚を進めると隔壁が開いていきアリーナへの道が開かれる。

 

『―――行きましょう、カミツレ』

「―――ああ。勝鬨・大将軍、杉山 カミツレ……さあいくぞっ!!」

 

声と共に一気に飛び出していく、通路を通ってアリーナへと飛び出した彼を出迎えたのは大歓声。圧倒的な人数が多い尽くす観客席、そんな中には大はしゃぎをしながら此方に笑顔を向けながら大声援を送っている母の姿もあった。そんな母の声援を受けながらも前を見ていると向こう側からもISが飛び出してきた。

 

「待たせたか兄さん」

「今来たばっかだよ」

 

そんな軽口をぶつけながら向かい合うIS。「蒼銀」とは違い何処か紫に近い蒼と灰色に近い白でカラーリングされた落ち着いた見た目と他のISと比べてると肌の露出が明らかに少ない全身装甲に近いのが目立つ、そして一夏の言っていたように確かに天使のようなウィングバーニアユニットが搭載されている。三対の翼は機械的だが、天使のようなと言った意味が確かに理解出来るような見た目になっている。左手には大型のシールド、右腰にはライフルがマウントされている。あれがマドカの専用機である「カーム・ウェヌス」。

 

「ウェヌス」とはローマ神話に登場する愛と美の女神。英語読みするとヴィーナス。それを冠するに相応しい美しさをしたフォルムをしている。

 

「よくもまあこのタイミングで来たもんだ」

「全くだ。一番驚いているのは私さ、「打鉄」で最後まで行く気だったのにいきなりリヴィングストンがやって来て渡して来たんだ。前もって連絡ぐらいして置けと言いたい物だ」

「それは確かにな」

 

そんな事を話している二人は何処からか

 

『こんなに遅くなったのは凝ってしまった私の責任だ、反省はしている。だが私は後悔は何もしていない!!』

 

と胸を張ってくるくると回っているリオノーラが脳内を過ぎった。尚、実際にVIP用の来賓席で実際に回りながら周囲からの質問を全スルーしている。

 

「さてと兄さん、この「ウェヌス」の全力を引き出すのに付き合ってもらえないかな。可愛い妹からのお願いという奴だ」

「自分で言うなよ、まあいいだろう。妹のわがままを聞くのも兄ちゃんの役目って奴だ」

「早く手伝って役目でしょ」

「殺すぞ」

「冗談だマジな目にならないでくれ」

 

何やら不穏な雰囲気を醸し出しながらも、いよいよ始まろうとしている戦いの火蓋。観客の皆が息を飲む中で愛理だけがカミツレもマドカも頑張れ~♪親バカ全開な応援だけが響く、そんな空間の中心部の二人は―――始まりの合図と同時にブレードを展開して斬りかかった。

 

「やぁぁぁああああ!!!」

「ぜぇぇぇいいいや!!!」

 

互いに繰り出されていく激しい剣が火花を散らしながらもカミツレとマドカの力の大きさを誇示するかのように光って消えていく。鍔迫り合いになると同時にマドカのシールドが向かってくる、それを蹴って後方に飛ぶようにすると周囲に飛ぶ「ディバイダー」を一つ蹴り飛ばす。それを回避しながらもそれを踏み台にして上に跳びながらマウントしていたライフルに手を伸ばそうとしながらその手にマシンガンを展開するとそれを連射してくる。フェイント紛いの攻撃、それを残った「ディバイダー」が防御に入る。「シューティングスター」を展開するとマドカも同じように高速で移動しながら円を描くような軌道、円状制御飛翔(サークルエンド)に入り互いを狙い撃っていく。がカミツレは一発一発を大事にするかのように、マドカはマシンガンによる偏差射撃という差がある。

 

「これならっ!!」

 

暫しの間、それが続くがマドカが流れを変えようとマシンガンからバズーカに切り替えて発射する。瞬間的な入れ替え、マシンガンの弾丸の回避体勢が続いていたカミツレはそれを食らいそうになる―――と思いきや身体を捻ってそれを強引に回避するとライフルを背中に回すようにして背後に行った弾頭を撃ち落とすと、その爆発のエネルギーを取り込み「瞬時加速」を掛けた。

 

「―――ッ!!?」

「あめぇんだよっ!!」

 

急接近したカミツレはブレードでバズーカを両断する。残っていた弾頭ごと斬り裂いた為に大きな爆発が起き、マドカはそれをシールドで防ぐがそれで視界が狭まり爆発の中を突っ込んでくるカミツレに対処が遅れてしまい、そのまま突っ込んできた勢いのままの蹴りをまともに受けてしまう。それを制動で上手く勢いを殺しながら構えを取ってカミツレに備え、此方の動きを伺っている兄にへとブレードを向ける。

 

「まさか、あんな戦法に出るなんて……!!」

「SE温存するだろうと思っただろうが、残念だったな。でかく稼ぐ為には、時にはでかく使わねぇといけねぇのさ」

 

カミツレがライフルの一発一発を大事にするかのように撃って来ていたのは明らかにEパックの消耗を避けるため、それは自分のISの情報を乱から得ている事に他ならない。この「カーム・ウェヌス」は「大将軍」と違い実弾系の武器が多く継続的な戦闘能力に秀でている。それに対抗する為にライフルの残弾とも言えるEパックの温存、持久戦も視野に入れていると思っていた。故に強引な攻めはしないと思っていたのだが……これは完全な誤算だった。

 

「ならば―――私も全力で、貴方を潰す。覚悟は良いな、私は出来ている」

「はん、勝手に言ってろ。簡単に俺を潰せると思うな、俺は雑草魂なもんでな」

「いいだろう、ならばその名と身体に敗北の二文字を刻んでやろう」

「もう沢山刻まれてんだよ、だが敗北で得た経験と力を勝利に変えるのが俺だ」

 

「「いざ、行くぞぉぉぉおお!!!!!」」

 

To be continued……。




私「なんだろう、まだまだ始まりなのに凄い事になってる」

妻「いやご自分で書かれましたよね?」

私「だってしょうがないじゃん、文字を書いたら勝手に続きが浮かぶんだから!!」

妻「そういうのなんて言うのか知ってます?行き当たりバッタリ、無計画って言うんです」

私「はい、存じております……」

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