IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第203話

戦闘開始から約10分が経過している、だが今行われているその濃密さは10分程度ではすまない物を周囲に見せ付けている。

 

「やぁぁぁっっ!!!」

 

元とは言え亡国機業の実働部隊にいただけあって豊富な経験と戦闘の技術が叩き込まれたマドカ、スラスターの出力調整や軌道計算、相手との距離、照準補正などを全てを自らの感覚と直感で管理しながらブレードをその手にしながら激しい攻撃を仕掛けていく。その最中飛び出していく「ウェヌス」のBT兵器「ウィヌス」が二つ翼から飛び出してカミツレへと向かっていく。

 

「なめんなぁっ!!」

 

マドカほどの経験こそないが恵まれた師達によって多くの訓練や激しい模擬戦などで牙を磨き技を積み重ね反復し、物にし身体に刻み込んできたカミツレ。真上と左斜め後ろに周りこんで射撃を行おうとして来るBT兵器を敏感に感じ取って鋭い蹴りを放った。マドカからすれば容易く防御出来るそれは盾によって悠々と防御されるが、彼はそれを予想していた。盾に当たった足の部分に力を入れて、足の力とスラスターの推力を繊細な範囲で調整しながら身体を持ち上げながら回転させて、二方向からの射撃を回避に成功する。

 

「らぁっ!!」

 

直後にスラスターから一気に推力を噴出させてその勢いで盾ごとマドカを吹き飛ばすかのような蹴りを繰り出すが、噴き飛ぶ最中所持していたバズーカを投げつけたマドカ。それを連結している「ディバイダー」で防御するが「ウィヌス」からの攻撃がバズーカを的確に打ち抜くと爆発を起こし、カミツレを同じく吹き飛ばした。

 

「やぁっろぉっ……!!」

『「ストライク・ヴァンガード」展開』

 

吹き飛ぶと同時にカミツレの周囲に彼のBT兵器である「ストライク・ヴァンガード」が展開されていく。それと同じくカミツレの相棒であるカチドキが慣性制御を行い迅速な体勢の建て直しが行われる。一方マドカはやや遅れながらも制御が完了する、この辺りはカミツレとカチドキという二人で共に戦うという特性が色濃く現れている。そして、マドカの体勢が完全に整い切る前に4基の「ヴァンガード」が飛び出して行きマドカへと襲い掛かる。

 

「来るか、なら此方もっ!!」

 

それに対抗するかのように更に2基の「ウィヌス」を射出して向かわせていく、互いが互いを狙いあった激しい光の矢が飛び交う。その最中を突っ込むかのように真正面からカミツレが突撃して行く。それを受けて立つかのようにマドカも突撃しながら剣を構え、そして思い切り振り切った互いの剣が激突する。

 

「らぁぁぁああああ!!!」

「おおおおおっっっ!!!」

 

力強い鍔迫り合いが行われている周囲ではBT兵器同士の激突が行われているが、マドカはやや汗を掻きながらも必死にカチドキ制御のBT兵器を牽制していた。マドカもマドカでセシリアのような並列思考を可能としているがそれを行いながら近接戦闘を行い、加えて向こうは操縦者ではなくコア人格が行う正確でありながらまるで人間が動かしているかのような柔らかすぎる機動を行うBT兵器の牽制をしなければならないという事を強いられている。これはマドカの精神に相当な負荷を掛ける結果になっており、一閃一閃がぶつかり合うたびに集中力が磨り減っているかのような気分がしている。

 

「ゼェリヤァッ!!!」

「グッ!!」

 

此処で一気に盛り上げたのがカミツレだった、いきなり蹴り上げた、それによってマドカの保持していたブレードが大きく弾かれてしまった。それは彼の脚に装備されているようになっている「ソード・ヴァンガード」の姿だった。上げられた脚を今度は勢い良く振り下ろしてブレードを上から弾き飛ばす事で手から零れ、それは地面へと突き刺さってしまった。

 

「グッ!!ならばっ……グゥゥッ……!?」

 

更なる「ウェヌス」を射出して対抗しようとした途端、頭に激しい痛みが走って思わず動きが止まってしまう。それはBT兵器をコントロールしようと意識を伸ばした事によるもの、元々はマドカの為に作られた専用機ではあるが試運転もまとももせずにいきなりの使用、そしてその1、2時間後の全力使用。それによってまだまだ調整が不完全なBTシステムに不具合が生じてしまった。それに加えてマドカのBT適正はセシリアをも上回っている為にマドカの力にシステムが付いていけなくなってしまった。

 

「やぁぁぁあああっッッ!!!」

「がぁっ……!?」

 

動きを止めてしまった事でカミツレの鋭い蹴りに腹部へと直撃する、何とか意識を立て直そうと必死になるが一瞬の隙が致命的になった。周囲から「ヴァンガード」からワイヤーが射出されて機体を拘束して動きを完全に封じてしまっている。そしてカミツレは「個別連続瞬時加速」から「稲妻軌道動作」を併用して一気にスピードを高めていく、それと同時にマドカの周囲を「ディバイダー」が超高速で回転し赤いサークルを形成していく。

 

ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! SPEED ACCEL!!

「っ……ハッ!!」

 

手首をスナップさせるとそのサークル内に飛び込むとマドカを蹴りながらそのまま高速で回転する「ディバイダー」を蹴って再度、マドカに蹴りを炸裂させ再び方向を変えて蹴るという事を超スピードで行っていく。その様子は数人に分身したカミツレがサークル内を飛び周りながら中心にいるマドカに攻撃を行っているかのような様子だった。

 

「セイッヤァァァアアアアアア!!!!」

 

止めの一撃を言わんばかりにトップスピードになったカミツレが全方向から一気にマドカを蹴り砕かん勢いでキックを炸裂させた。同時にワイヤーが切り離され、マドカはそのまま地面へと墜落するように落下していった。

 

「がっ……ま、ったく……兄さんは、何処まで強くなるつもりなんだか……?」

 

思わず呟いたマドカの言葉に隣に降り立ったカミツレが答える。

 

「当然、俺が満足するまでだ」

「―――全く、参ったなぁ……。完敗だよ」

『そういえばカミツレ、今の技の名前どうします?「アクセル・スピードスマッシュ」にします?』

「おい、もう決定してるようなもんじゃねぇかそれ」

「やれやれ、私の兄さんとその相棒は、本当に強いなぁ……」

 

準決勝第一回戦、杉山 カミツレ 対 杉山 マドカ。

 

勝者、杉山 カミツレ。

 

 




妻「それで、何処を逆襲のシャアに参考にしたんですか?その為にこの数日、逆襲のシャアを見てたんでしょう?」

私「そのつもりだったけど、結局普通に逆シャアを楽しんでたから全然参考に出来なかったよ」

妻「えぇ……それじゃあ何の為に見てたんですか?」

私「圧倒的なMS戦の動きの美しさを」

妻「駄目だこりゃ」

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