IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第216話 特別編:その9

「さてとこの試合の行く末にでも賭けるか」

「不謹慎ですわよ千冬、それにどうせツェレが勝つのですから賭けになりませんわよ?」

「全員のオッズが片方に傾いたら掛けは不成立だぜ千冬姉」

 

と間も無く行われようとしているカミツレ対織斑の対決、二人が別々のピットに移動し開始の時間を待っている間に千冬が賭けをしないかと持ちかけるが全員が同一に掛けてしまっては意味がないと言われ確かにと言い直してそれを流したが、それが如何にも気に食わないのか篠ノ之が千冬に迫って言った。

 

「千冬さん貴方は何故自分の弟である一夏が勝つと信じないのですか!?それでもあいつの姉ですか!!?」

「それなら管制室にいる私に言え、私はあれの姉ではなくこれの姉だ」

「だからこれって言うなよ千冬姉まで……」

「まあまあいっ君、こういう場だとそういう言い方の方が区別しやすいんだからさ」

 

千冬にとって織斑は弟と同じ名前を持っている別人でしかない、その程度の認識でそれ以上に上がる事もない。そして同時に自分の旦那になる相手を酷く敵視しているだけではなく侮辱し拒絶している、明確な理由があるのならばそれはいい。他人の評価基準など違って当然なのだから。だがあれは大した理由も無くただカミツレを拒絶し許容しようともしない、愚か者にしか千冬には見えない。

 

「それでも貴方の弟には違いないでしょうに!!何故、其方の一夏を贔屓して私達の一夏に何も言わないのです!!」

「自分の身内を贔屓して当然だろう、そもそも私はあいつの事を何も知らん。どういった毎日を送っていたのか、どのような訓練をしていたのか、どんな風に二次移行したのかも知らない。それなのにどんな言葉を掛けろというのだ、何も知らない他人にどんな言葉をかけろと言うのだ」

 

追い詰めるかのように次々と言葉を吐き出してくる千冬に篠ノ之は押されてしまい口を閉ざす、そんな彼女をフォローするかのように鈴がやってくる。

 

「あいつは本当に頑張ってるんですよ、苦しくて本当に危ない時だってあった!!その末に今のあいつがあるのに、千冬さんはあいつの努力を否定するじゃないですか!!それなのに、なんであの男の事しか見ないんですか!?」

「お前たちだって、俺とカミツレの努力を否定しただろ。お互い様じゃねぇか、自分達が被害者みたいな言い方すんじゃねぇよ。兄貴が研究所送りを避ける為にどんだけ苦労したか聞いたのにもう忘れたのか」

 

と言い返す一夏に鈴は複雑な視線を投げ掛けてくるが、一夏は鋭く睨み付け返す。それにカミツレだって危ない事をしている、自分が愚かだったせいで二次遭難の危険を犯してまで無人機襲来中のアリーナに突入して自分の馬鹿な行動に付き合わせ、結果として無人機撃破に貢献した。それだって十分に危ない事だし、苦しさだってカミツレはその中で努力してきたんだ。同時に自分を許せなくなってきた一夏だったが、そんな彼の頭を千冬が軽くなでるように叩く。

 

「頑張っているあの織斑の事を思っているなら此方の私にそれを言うのだな、それにカミツレがまるで努力しなかったようないい方をするのはやめろ」

「全くですわね。ツェレは一から努力したからこそ今いる場所に立っているのに」

 

師匠でもあるヨランドはそう言いながら鈴を睨み付けると、彼女は借りてきた猫のように小さくなりながら篠ノ之と共に別のモニターへと向かっていく。

 

「さてと千冬、ツェレはどんな風に戦うと思います?」

「さあな……真正面から受けてたつか、それとも相手の長所を皆殺しにするような戦い方をするかだな」

「後者をやりそうなのがなぁ……実際に鈴相手にそれやって、あいつの長所を殺してたもんなぁ……」

「楽しみだなぁ……カー君とカチドキの戦い♪そっちの束さんはもう一杯見てるんでしょ?他の奴も見たいよ、映像データとかないの?」

「あるある、コピーしてあげるよ」

 

それぞれが様々な言葉を投げ掛けあっている中、遂にピットからカミツレと織斑が飛び出して向かい合った。そして篠ノ之達が騒がしくなる中、静かに彼らはモニターに映りこんでいるカミツレへと視線を向けるのであった。

 

 

「んで、お前は俺を認めないとかほざいてたな。俺は別に認められた所で何も得しないんだけどな」

「うるせぇ!!損得勘定の問題じゃねぇんだよ、俺はお前が気に食わないんだよ!!何でお前みたいな奴と千冬姉が婚約なんかするんだ、俺は信じないし認めない!!」

「いや異世界のお前に言われてもぶっちゃけ困る、俺の家族には紹介してるし普通に歓迎されてるし」

「何でお前なんかと千冬姉が……!!」

 

眼前にて此方を睨み付けている織斑が騒いでいるがそれを受け入れるつもりもないし、例えこれで織斑が認めないという事になっても実際に決めるのは当人だからそこに織斑の意思なんて介入する事は出来ない。それに千冬との婚約は千冬から迫られて決まったような物、余計に織斑がしていることが無駄になっている。だがそれを語ったとしても意味なんてないし、耳も傾けないだろう。

 

「絶対に俺が勝つ、それで俺が今まで積み重ねてきた物を千冬姉に見せ付ける。そしてお前の化けの皮をはいでやるっ!!!!」

「おい、人を妖怪扱いすんな」

「うるせぇ行くぞぉ!!!」

 

織斑はいきなり話をぶった切ると一気に加速する。カミツレは一夏との試合を見てはいたが確かに「白式」よりも遥かに優れている速度、「白式」の時点でも十分な速度はあった。それを伸ばすのはブレード一本しかない「白式」にとっては相手に近づくためには必要だろう。でも―――流石に最大出力で迫ってくる必要はないだろうと思いつつもカミツレは自分に迫りながら振りかざして来る「雪片」を連結した「ディバイダー」によって防御する。

 

「流石に速いな」

「当たり前だ……こいつで福音に肉薄したんだっ!!!」

 

そう言いながら切り掛かってくる、直撃する寸前に自らの剣を展開してそれを防ぐ。盾を手放しつつも剣を両手で握りこんで次々と打ち込んでくる織斑のそれに応対する。大幅に上昇している出力は最大の数値で言えば「大将軍」をも超えるかもしれない、それらで打ち込まれて来るそれ。防御し損ねたら一気にSEを持って行かれる事は明白だが、全て防御出来るような打ち込み。偶に千冬との打ち合いをしているカミツレとしては生温い攻撃にしかならないが、防御オンリーな事に自分が追い込んでいると錯覚しているのか織斑は口角を上げながら左手を握ったり開いたりを繰り返しながらも攻撃を続けていく。

 

「俺は色んな人に支えられて、福音を倒した力を手に入れたんだ!!お前みたいに誰かに頭を下げるだけの弱い奴とは違うんだよぉ!!!!」

「下げるだけの弱い奴、ねぇ……」

 

下げてきた頭が多かったのは認めよう。真耶、セシリア、千冬、ヨランド、自分の師匠と言える人達には少なからず頭を下げて教えを請った。だがそれの何が悪いのだ、己の力不足を認めた上で強くなりたいから誰かに教えを請うというのは当たり前の行為だ。基礎、理論、心、応用、それらを教えられ自分の物にしてきた。それの何が悪い。

 

「なら、お前のその力は何だ。自分の力でもぎ取ってとでも言うのか」

「ああそうだよ、支えてくれた人を守るために手に入れたのがこの力だっ!!!」

「そうかそれはご立派な事だ―――なら、確りと使いこなして見せろ」

 

カミツレは一気に力を込めて織斑の剣を弾くとそのまま身体を捻って蹴りを食らわせた、それを受けた織斑は「雪羅」を向けて荷電粒子砲を放つ。大出力のそれが向かってくるがそれを再び「ディバイダー」で受け止めるとそのまま地面へと弾き飛ばした。その光景に織斑は舌打ちをするが、即座にカミツレが持ち替えたトライドロン砲の光弾が飛んでくるのでシールドを展開して防御し勝ち誇ったような笑みを見せる。俺はお前の攻撃なんて利かないと、自分の力を自慢するかのような顔にカミツレは溜息を吐いた。

 

「カチドキ、あれいけるか?」

『既に此方側のコア・ネットワークには接続済みですので行けますよ。あれをやるので?』

「ああそうだ、趣味じゃないけどな」

『ですね』

「さっきから何ブツブツ言ってるんだよ、諦めたのかよ!!」

「いいやちょっとね―――俺の相棒と話してた」

 

何を言っているんだと吐き捨てた織斑は再度突撃して剣を振るうが、それは再び受け止められてしまう―――がカミツレの右腕が先程よりも肥大化しているのを見て驚愕したように後退してしまった。言葉を失ったかのように大口を開けて目を見開く織斑、その視線の先にあったのは―――自分の腕の「雪羅」と全く同じ物を装備しているカミツレの姿だった。

 

『雪羅!!』

「これがあいつ曰く"守る為に手に入れた力"ねぇ……随分アンバランスだな」

 

右腕に装備された物をしげしげと眺めるカミツレは瞳を仕切りに細くしながらそれを見つめた、荷電粒子砲にクローそしてシールドが一つにされている多機能内蔵型腕部型武装『雪羅』。しかしカチドキが同時にデータを表示してくれるがどれもこれも出力が馬鹿高い、確かにこれならば凄まじい勢いでSEを喰らっていくだろう。

 

『クローとシールドに関しては「零落白夜」を転用しているのでそこは実体型の鉤爪、シールドは「ディバイダー」があるので不要と考えてオミットしておきました』

「それが妥当だな」

『後荷電粒子砲はライフルのEパックからエネルギーが行くように設定しておきましたが、一発でパック使い切るのでご注意を』

「どこのビームマグナムだよこれ」

 

カチドキの気遣いとフォローによってあっという間に改良された「雪羅」にカミツレはこの位じゃないと運用は難しいだろうなぁと言葉を零す、そんなやり取りを相棒としていると織斑が叫んできた。

 

「何で、何でお前が、それを付けてるんだよ!!?それは俺の「白式」にしかない筈の力だぞ!!?」

「残念だったな。俺の相棒もお前と同じで二次移行してるんだよ、そして「白式」と同じような力がある」

「ま、まさか……単一仕様能力ッ!?」

「当たり、まあこの位分からなかったらやばいけど。俺の相棒である「勝鬨・大将軍」の単一仕様能力は武器を展開出来る。例え、相手のISの武器だろうとなッ!!!」

 

と言い切った所で一気に加速して右腕のクローで殴りかかるかのように切りかかった、それを咄嗟に剣で受け止めるがギリギリと締められながら迫ってくるそれに徐々に押し込まれていく。

 

「そ、んな能力、卑怯、じゃねぇっ……!!!」

「はっならその卑怯と同じ分類の力を使えばいいじゃねぇか」

「んだとぉっ!!!」

 

とキレながらも自らも「雪羅」のクローを展開して掴み掛ろうとするが咄嗟にカミツレは剣を放しながら蹴りを加えて後退する。

 

「武器の展開と一撃必殺、どっちが卑怯なのかね」

「お前に決まってるだろうがぁぁぁっっ!!!!」

 

と激昂したかのように「瞬時加速」を発動させながら織斑は「零落白夜」を発動させた「雪片」を振りかぶって相手に回避の隙を与えないかの如く斬りかかった。そしてそのまま「零落白夜」が捉えたかと思ったがそこにはカミツレの姿は無かった。

 

「な、何ッ!?あ、あのスピードを避わすなんてありえない!!?」

「―――俺とお前の力、どっちもどっちだ。使う奴が強かったら強いからな」

 

と頭上にカミツレは現れた、彼は織斑の一撃を喰らう前に「個別連続瞬時加速」と「稲妻軌道動作」を発動させてそれから逃れた。そしてハイパーセンサーすら瞬間的に誤認するかのような速度で真上を取った。そして右腕を構えて荷電粒子砲を織斑へと浴びせかけた。

 

「がああああああああっっ!!!!!」

 

荷電粒子砲を喰らった織斑はそのまま地面に叩き付けられてしまった、そして今まで散々出力を高いレベルで使っていたので既に残り少なかったSEは荷電粒子砲を受けた事で一気に尽きてしまった。それを見下ろすカミツレは「雪羅」を展開解除させながら

 

「やっぱり、これは高機動型には不向きだな」

 

と呟いてピットへと戻って行く、それを見ていた千冬達はまあ当然の結果だなと笑うのであった。




雪羅を展開して、それを見ているの一夏はアンクの仕草を参考しました。
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