「……」
「♪」
「ハハハハッ」
「え、えっとぉ……」
突然現れたカミツレの母と兄こと、愛理と一海。ニコニコと笑みを浮かべながら此方を見つめてくる愛理と楽しげに笑っている一海ことかずみん、そしてそんな二人に溜息交じりに呆れているかのように顔に影を作っているカミツレを彼の自室にて見つめている一夏であった。
「なぁおい、なんでいるんだクソ兄貴」
「おいおいカミツレ、母さんがいるのにその言い方はねぇだろ?前みたいに兄貴って呼んでくれよ」
「黙れ雑種、貴様程度が俺に敬われるとでも思っているのか。愚かな者だ」
「ひでぇ!!?っというか何、マジで怒ってんの!?へい一夏君ヘルプミーワンサマー!!」
「いや俺に言われてもなぁ……来るならせめて連絡しておく位が普通なんじゃ……」
「そうよかずみん、やっぱりサプライズなんていけなかったのよ」
「ちょっと連れて来てってお願いしたの母さんでしょうに何で俺だけが悪いみたいな事になってんのぉ!!?うわぁカミツレの目がもっと冷たく冷酷非道な物になって行くぅっ!!?マジですんませんでしたぁぁっ!!!」
一応杉山家の長男だろうに、如何にもヒエラルキー的にはかなり下となっているかずみん。これが本当に今やイギリスでも有名になっている「俺たちの杉山ファーム」の若き主なのだろうかと誰もが思うだろう。そして一夏的には同じ上の兄弟にも関わらず一切敬う事もなく罵声を浴びせられるカミツレに一種の尊敬を向けつつもそれに素直に従っているかずみん、そしてそれを容認している愛理に冷や汗を浮かべるのであった。そしてあからさままでに不機嫌ですと言いたげな溜息を吐きながら、彼が口を開く。
「んでよ、なんでここにいるんだよ本当に」
「三者面談があるって話じゃない?だからその為に来たのよカミツレ」
「そ、そうなんだよ。それで俺もちょっとした用があってさ、それでついでに母さんを連れてきてさ……」
「……あのさ、俺は千冬さんから三者面談の日程を聞いてるけどさ、俺の三者面談は二日後だぞ」
「あらっそうだったの?」
「おいおい母さん……三者面談に関する資料とかが来て、今日がその日だって言うから一緒に来たんだぜ……?」
「えへっつい嬉しくて日時の所見てなかったみたい♪」
とテヘペロ♪と言いたげに笑みを浮かべる愛理だが、思わず深い深い溜息を吐き出したカミツレと勘弁してくれと言いたそうにしているかずみんを目の前に一夏は如何したらいいのだろうかと冷や汗を浮かべるのであった。
「……あのさ、三者面談まで如何する気なんだよ。まだ日にちあるんですけど」
「それならそれまでカミツレの部屋に泊めてさせて♪久しぶりに川の字で寝ましょう!」
「おっそれいいな」
「母さんは百歩譲って許されるとしてクソ兄貴は無理だろ、許しは出るとは思えない」
「別にかずみんとは言ってないわよ?だって普通に考えて無理でしょうし」
「えっ何それ俺だけ省かれんの!?」
「たりめぇだろ、この学園で俺達以外の男なんて面倒な事態にしかならねぇよ」
とハッキリ言われてガックリと肩を落としてしまうかずみんだが、この学園の特性上致し方ないと言うもの。だがそれではカミツレと愛理の二人だけという事になるので川の字にすらならないのではないのだろうかと思う一夏だが、そこにはカミツレの嫁の誰かを加えれば3人にはなるか、と思った。が、隣に愛理が座って笑みを向けてくる。
「という訳よ、一夏君。お母さんたちと仲良く夜を過ごしましょうね♪修学旅行みたいにいっぱいお話とかしましょうよ!!」
「……えっ俺っ!!?」
「ああうん、だと思ったわ。という訳でキリキリ歩けクソ兄貴、このまま千冬さんの所に連行するわ」
「おい待てその言い方だと俺が不法侵入したみたいじゃねぇか!!?待てよっていてててててっっ!!?み、耳を引っ張るなぁぁぁぁっっ!!!!」
「という訳で、この事について説明と許可貰ってくるから母さんは此処にいてくれよ。頼むから」
「は~い、一夏君と母と息子の会話してま~す♪」
と満面の笑みを浮かべて一夏へと笑い掛けている愛理へ動かないように厳命しながら、かずみんの耳を引っ張りながら部屋から出ていく。扉が閉まりきる途中でかずみんが盛大にこけたような音が響いてきたが、続いてカミツレの足蹴りの鈍い音、そしてかずみんの苦しげな声が漏れてきて一夏は色んな意味で大丈夫なのかと不安になって来たのであった。
「さてと、こうして話すのは初めてかしらね」
「そ、そうですね愛理さん……」
義兄の部屋にてその母と二人っきりになってしまった一夏、一度会って話した事もあったが、その時にはカミツレや他にも人達がいたので全く状況が異なっている。身体中に力が入って緊張してしまう、が愛理は笑顔で指を揺らしながらノンノン♪っと口ずさむ。
「貴方は私の息子にもなるのよ、だからお母さん♪って言っていいのよ♪」
「そ、そう言われましても……いきなり難易度高いですよ……」
「まあそうかもしれないけど、気軽でのいいのよ。お母さ~んって♪」
と言われても一夏は今まで母親と言う存在に甘えた事もないし、あったとしても千冬にだけだった。加えて姉にそこまで迷惑を掛けたくないという理由でそれほど甘えても来なかった。故に、母に対する甘え方なんて分からなかった。そんな一夏に対してまずは緊張をほぐしてあげるのが一番だと思ったのか、愛理はお茶を入れるわねっと立ってキッチン周辺の収納スペースなどへと手を伸ばして行く。
「えっちょっと愛理さん!?此処カミツレの部屋ですしまずいですよ!?」
「大丈夫大丈夫、カミツレのことだから此処に入れてると思うし」
「いやでも……」
「ほらあった♪」
「うっそっ!!?」
と愛理が開けた最初の所に茶葉やコーヒー豆を挽いた粉などがたくさん置いてあった。
「な、何で分かったんですか……?」
「ふふんっだってカミツレのお母さんだもの♪」
私の母さんも私が一回中身整理して、入れ直した時に配置とか全部変えたのにお茶とかの場所を最初から知っているように開けてました。やっぱり母親ってすげぇ。