IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第250話

「う、嘘っ……ママが言ってた事って、何なんだったのっ……!!!??」

「さあな。お前を縛り付けてた鎖だったんじゃねぇのか」

「そんなことっ……!!」

「じゃあ、今お前が思った事は何だ」

 

リオノーラに「大将軍」を見せている間、ジラと話すことにしたカミツレは先程から自分が何故悪かったのかを思案して辿り着いた結果として母親に今まで言われてきたことの殆どが間違っているという事に混乱している彼女を見つめながら、緑茶を飲みながら言う。

 

「お前の機動は正直悪くない、相手の攻撃やらをアクロバット飛行である程度回避できているのは寧ろ自分の技量の証明にも繋がる。だけど余りにも隙がでか過ぎる、格下ならまだ良いかもしれないが格上の相手にとってその隙は相手がお前を沈めるには十分すぎる攻撃を叩き込める時間を与える」

「……でも、ママは私の綺麗な機動なら絶対に負けないって……」

「一旦母親の言葉は忘れて自分で判断しろ、自分で判断も出来ないでお前は代表候補の座に居るのかよ」

 

そう言われてジラは深呼吸をしながらカミツレに指摘された事を思いながら、今まで母親に預けていた思考を自分で使って考え始める。自分の目標は現代表であるハマーンのような強く美しい代表になる事、だが今のままでそれが成れるのだろうか。あらゆる事を母親の言うがままに行ってきた自分にそれが可能なのか、いや例え代表になったとしてもそれは母親なのではないのか……?

 

「……」

「なんか考え付いたか?」

「……うん」

「言ってみな」

「……今までの私は、ママの人形でしかなかったって事……」

「そうか、なら一つ聞こう。なんでそこまで母親の言葉を聞いていた」

 

そう尋ねられるとポツリポツリと、ジラは語りだしていく。元々母親ではなく父親の事が大好きだったらしい、将来は父と結婚するとさえ良く言ってたらしい。良く遊んでもらったし勉強なども良く教えてもらっていた、女尊男卑が蔓延っている昨今では珍しく娘に優しくも厳しいタイプだったとの事。それでもジラは父の事が大好きだったが、幼い頃に父が事故死したという。今の父は母が再婚した相手だという。

 

大好きだった父を失ってジラは酷く悲しんだ。そんな娘に母の優しさは染み込んでいき、徐々にそれに感化されていった。そして幼い頃から天才とも言われていた娘に母は様々な事を教え込んで行った、最初こそ彼女が将来にとれる選択肢を増やしてやろうと言う想いだった、しかしそれはどこかで狂い初めていき次第に自分に都合がいい娘にしようという物に変質して行った。そして―――母の為に行動するようになって行く娘とそれを利用する母が完成した。

 

「荒んだ心に入り込んで、心を溶かした毒って所か」

「だろうねぇ……やれやれ嘆かわしい事だ、此処まで愚かな母親というのもそうは居ないだろうな」

 

そして母の野望は遂に娘をIS操縦者に仕立て上げ、イギリスの頂点へと押し上げようとした。だが実際にそれを達成するには凄まじく苦難に溢れている道で母の理想通りにはならない事だろう、それは今のジラを見れば一発で分かると言うものだろう。

 

「……アタシって、全然世の中の事知らなかったんだ……バッカみたい……」

「なら今知ったな」

「……えっ?」

 

思わず顔を上げた先には再び「大将軍」を纏いながら『リミットオーバー・ドライブ』の調整を行っているカミツレが目に入った。

 

「俺だって最初は何も知らなかった、それが今じゃ凄い事になってる。誰だって成長すればどんな自分にもなれる」

「君が言うと本当に説得力あるな」

「本当ですよね、カミツレ君の事を前から知ってる身としては本当に……」

 

カミツレだって最初はISの事を大して知らずにいた一般人だった、それなのに自分で前に進むと決めて一歩を踏み出していった。それが様々な人の助けを借りて行きながら大きく成長していく。それが今では世界中から注目される存在にまでなっている。

 

「でも、アタシは……」

「別に良いんだよ。成長って言うのは強くなるだけじゃなくて視点を変えられるって意味でもあるんだよ」

「えっ……」

「別に踏み出したのが1センチでも良いんだよ。気づいてないのか、吹いてる風はもう変わってる事によ」

 

母親の言葉しか聞かず、他の事になど耳を貸さなかったジラ。そんな彼女が母親の言葉に疑問を持って間違っていると認めて自分の大きさを理解している。十分に一歩を踏み出している、既に足はスタートラインに掛かっている。閉ざされている世界から既に世界は開けている、そこから溢れてくる風は頬を撫でながら手を差し伸べてくる。

 

「でも、でもアタシはどうやって前に進んだら良いのか……」

「分からなかったら誰かを頼れ。一歩一歩確かめながらでも良いんだよ」

「っ……それ、なら……アタシに色々教えて、よっ……!!」

 

と顔を赤くしながら振り絞るかのように発するジラ、彼女にとって誰かに頼るなんて事は酷く久しぶりな事。致し方ないだろう、そんな言葉を受けたカミツレは笑顔を作った、それに思わず応じてくれるのかっと期待を寄せるジラ―――

 

「断る」

「ええええええっっっっ!!!??」

 

だったがカミツレから帰って来たのは拒否の返事であった。まさかの返答にジラは大声で驚愕しリオノーラは腹を抱えての大爆笑で床を叩いている、真耶も堪え切れなかったのか笑いを浮かべている。

 

「いやなんでよっ!!?今の流れはアンタが師匠を引き受けてくれる流れでしょ!!?」

「気のせいだろ」

「んな訳あるかぁぁぁッッ!!?なんでNOなのよ!!?アンタ人の価値観一気に覆しておいて何それ!!?責任取りなさいよ!?」

「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ、お前が簡単にひっくり返させられる価値観持ってる方が悪い」

 

ジラは今まで殆どの思考を母に任せていた事もあって何も言えなくなるが、カミツレが理由はあると答える。

 

「まず俺は誰かを指導出来るほど立派じゃないし強くない」

「アンタそれマジで思ってる訳」

「次に俺は既に真耶さんの弟子だ。俺より真耶さんに弟子入りするのが普通だろ」

「いや、アンタがやるのが道理みたいなもんでしょうが!!」

「そして最後に―――お前さ、学園の生徒じゃないのにどうやって指導受ける気なのよ」

「―――あっ」

 

この後、ジラはイギリスに帰るリオノーラに連れられて学園を去るのだが、その際にも自分は弟子入りを絶対に諦めない、必要なら学園にも入る!!と豪語しながら連れて行かれるのであった。カミツレは深い深い溜息を吐きながら面倒な事になったと思いながら、思わず真耶に聞くのであった。

 

「真耶さん、俺ってまだまだ弱いですよね?」

「ええっ私はそう思いますよ」

「ですよねぇ……やっぱりあいつまでまだまだ踏み出しきれてないんだな」

 

IS操縦暦数年にもなっていないのにISを二次移行させたり「稲妻軌道動作」と「個別連続瞬時加速」という高等技術を使えているのだから十分過ぎる位である。




カミツレは自分の力量を把握出来ない、というよりも自己評価が低い上に比較対象が化け物過ぎる師匠なので自分は弱いと判断付けてしまう。それと師匠がカミツレに影響されて技量やらが上がっているので勝てないのもあって評価が低い。

例えるならば、自身のレベルが50なのに20~30辺り。と自己評価してしまう。
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