イギリスに対するヨーロッパ各国の打診の結果として開催される事となった合同試合、と言っても正確にはカミツレと一夏と戦うのが目的であるのでイギリス以外との試合は余り重視されていない。そんな第一戦で戦う事になっているのは注目の的になっているイギリス代表候補生であるカミツレ対フィンランド代表候補生のヘルヴィ・ミューリュライネン。カミツレはイタリアじゃねぇのかよっと軽く肩透かしを食らったりもしていたが、とりあえず準備をする事にした。
「やぁやぁやぁカミツレ君、私は今日この日という瞬間をただただ待ち続けていたりしたよ。まあそんな事を言った所で普段から愉快に生きている私の言葉に信頼性が無いという事は承知しているけどね、まあミリ単位で信頼してくれているのかもしれないという期待はしているのだがね。それが外れたとしても君を軽蔑するつもりは毛頭ないから安心してくれたまえ、将来の義弟とは仲良くしていたいからね!」
「……今日は一段と喋るっすね」
「おうとも。ドクトルペッパリアンはドクペを飲めばテンションゲージはフルスロットルなのさ!!フゥ~ハハハハハハハハッ!!!」
ピット内にて出撃準備を行っているカミツレの元へとやってきたリオノーラは普段より3割り増しのテンションで語りだした。曰く、ドクターペッパーを摂取したからテンションが高いらしい。最近将来の義姉になると思われる女性のテンションの高さに如何適応していくべきなのか真剣に考えているカミツレ、これについてコア・ネットワークで対応策を募集したら、全員一致で
『激流に身を任せ同化すればいい』
という言葉を送られて頭が痛くなった。要するに慣れろという事である。
「さてと君の対戦相手はフィンランドか……よしカミツレ君、全力で潰せ」
「いきなり物騒ですね!?」
「いやだってあいつの所の機体とかムカつくし、死ねばいいと思ってるから」
「おいおいおい……」
快活、元気、ハイテンション、これらがトレードマークであるリオノーラが珍しく目を濁らせながら低い声でそう吐き捨てるかのように言うのでカミツレは穏やかじゃないと思う。あいつの所、対戦相手の候補生が使っているISを制作した所と何やら因縁があるのだろうか。
「まあ全力で戦うつもりではありますけど……何かあったんですか?そんなリオノーラさんは兄貴だって喜びませんよ、落ち着いてください」
「……すまないカミツレ君、久しぶりに毒を吐いてしまったようだ。ヘルヴィ・ミューリュライネンの専用機を製作した研究所には私を勝手にライバル視して私の発表した論文とか技術にいちゃもんとか、盗作だとか騒ぎやがるドアホが居てね……」
「どこのパクリ大国ですかそれ」
温厚なリオノーラが此処まで荒れるのだから相当深い物らしい。その都度、リオノーラは完璧な理論武装とログや開発経緯やらでそれらを退けてきたのだが、それでもストレスなどは溜まっていく。故にその研究所の事を嫌っているという事らしい。
「フィンランドの研究テーマは有線接続の発展性、そこも関係しているんだろうな」
「有線接続……ああ成程、BT技術を目の敵にしてる的な」
「私は別に有線を馬鹿にしてるつもりは一切ない。無線には無線、有線には有線の優れた物がある。確実性とかあるからね、それにハマーンだって改修するまで有線式の奴を使ってたんだから」
そんな良く分からない一方的な敵視は勘弁してほしいというのはリオノーラの素直な本音であった。そして今回もそれを持ち出してくる可能性は普通にあるので、それに決着をつける形でも全力を出して欲しいらしい。
「それに相手のヘルヴィとやらはちょっと問題があるらしい」
「また女尊男卑思考者とか?」
「いや完全な実力主義らしい、だがISに人格など不要と唱えているらしい」
「……あ"あ"っ?」
ヘルヴィ・ミューリュライネンは軍人家系の出、そんな彼女はISほど素晴らしい物に人格など必要ない。システム、道具に徹しさせるべきだと考えているらしい。使う者ならばいざ知らず、使われる物にそのような物など必要ないと主張しているらしい。ISのコア人格についてはカミツレの周りを除けば、世間ではそれが事実とは捉えてはいない不明な部分であるがゆえに分からなくもない主張だが、カミツレからすれば許せる主張ではない。彼はISの父親だ、全てのISコアを自分の子供として認識し彼なりに愛情を向けている。そんな子供たちを否定しているというのが如何にも許せなかった。
「リオノーラさん、一言良いですか」
「なんだい?」
「そのヘルヴィ……操縦者として再起不能にしても良いんですかね……?」
「ぶっちゃけ私としては興味ないよ。君の自由にすればいいさ、でもまあ政府間の問題になるようなことはやめた方が良いかもね。まあ束の力があるから大丈夫だと思うけど」
「……ISの父親として許せないので全力で潰してきます」
そう言って出撃準備を済ませたカミツレは発進の体勢へと移行する。それを見ながらリオノーラは確かに彼からしたら対戦相手の主張は許せるものではないなと納得する、彼は束と婚約している。ISの人格の否定は束の夢の否定でもあるのだから怒って当然だと、少し外れている認識をする。
「……カチドキ、本気で行くぞ」
『―――分かってます、私たちを否定する輩など一蹴に伏してやります。』
相棒であるカチドキも穏やかな心情ではなかった、母親がそうあるべきと作ってくれた故に自分達がある。ISコアは既に人格を十二分に形成している、これは既に人である。それを否定されたのは兄弟を、家族を全て否定されたに等しい。故にカチドキもキレていた。
「杉山 カミツレ、勝鬨・大将軍……行くぞぉっ!!!!」
普段以上の声を張り上げながらカミツレは出撃していく。アリーナに到達すると同時に凄まじいまでの歓声がある、アリーナの席にいるのは全てが政府関係者であるのにも関わらずにすさまじい熱気に包まれている。だがカミツレにはそれらが全て気にならなかった、激情に駆られそうなほどに怒りを感じているのにも関わらず頭の中はサッーと冴え渡っていた。此処までクールな気持ちになった事は無いかもしれない。そんな状態でいると向かい側からISが出撃してくる。それを操っているのは大人しそうな顔つきをしている少女だった。
「どうもっ貴方がミスター杉山ですよね、初めまして!ヘルヴィ・ミューリュライネンです、本日は宜しくお願い致します!!」
人懐っこそうな笑みを浮かべて挨拶をするヘルヴィ、笑顔を浮かべている彼女にカミツレは鋭い目つきと表情を作ったままそれを一切変化させなかった。例えどんな言葉を語ろうが自分の心は変動しない、決めた事をやり遂げるだけだ。
「俺は宜しくするつもりはない、俺はお前が気に入らないからな」
「ええっ!?私、何か失礼なことしました!?」
「……コア人格は必要ないと思っているらしいな」
「はい、だって必要ないでしょ?ISに意志があるとか気持ち悪いですし」
彼女の感性からすればそのような感覚があるのだろう、平常心であるカミツレであればそれを強く否定する事は無いかもしれない。人によれば驚いたり受け入れにくい人もいる事だろう、だが彼は今日まで父親として子供たちと接してきた。曲がりなりにも父として愛情を持っている、そんな子供たちを気持ち悪いと言う彼女を許せない。そんな考えで頭がいっぱいになっていた。
「―――気持ち悪いだぁ……必要ねぇだぁ……ふざけた事をよくも俺の前で抜かしてくれたなコラァァ……!」
「えっ……えええっ!!?」
「てめぇは俺の心に火を付けた、轟々と燃えあがる業火をな……!!!心火を燃やして、ぶっ潰す!!!」
私「はいカミツレのハザードトリガーのスイッチ入りました」
妻「ハザードフェニックスロボってもうやばい気しかしないんですが」
私「ヤバイネッ!!そこに多分ブリザードも混ざってると思う」
妻「ご冥福をお祈りいたします」
私「それでは皆さんご一緒に」
私&妻「「アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!!ヤベーイ!!!」」