「それじゃあ専用機をどちらにするか選びましょうか」
「はい」
IS学園での生活が始まり二日目の放課後、夜の内にでもセシリアの指導や勉強もあってか数度授業で当てられたカミツレは問題無く答える事が出来て千冬からお褒めの言葉を頂戴していた。一方、一夏は参考書相手に悪戦苦闘しているのか全く答える事が出来ずに出席簿を喰らっていたがそれを見てカミツレは胸がすくような感覚を味わっていた。何度も教えて欲しいと言われたが千冬から怒られたく無いと断固拒否を続けている、一夏からは同じ男子の好だから頼むと言われているが一向に無視。放課後には真耶に呼び出され整備室へとやって来ていた、そこでは自分に貸し出される二種類の訓練機が鎮座しておりこのどちらかを相棒として使う事となる。
一機は日本純国産の第2世代型IS「打鉄」。鎧武者のような容相をしている性能が安定しており使いやすいと評価も高い防御重視型の機体。標準装備は近接用ブレード「葵」とアサルトライフル「焔備」となっているが柔軟な仕様の日本製OSのお陰で第二世代でも最大数の
もう一機はフランス、デュノア社製の第2世代型IS「
「まず私の主観を述べさせて貰いますね、私個人としては杉山君には「打鉄」が良いと思ってます」
「打鉄をですか、やっぱり防御重視だからですか?」
「それもありますがラファールは初心者にはお勧め出来ないんです」
それを聞いてカミツレはやや首を傾げた。自分でも学園で使用されている訓練機については調べてきたがラファールは汎用性だけではなく高い操縦性も魅力でもある。故に初心者が使うのにも向いているのではないかと口にすると、真耶は確かにそうですがそこがある意味落とし穴だと答えた。
「確かにラファールの魅力は高い操縦性と汎用性、そして多数の武器を持っている事にあり「ラファール」の別名が飛翔する武器庫という由来にもなっています。ですがその高すぎる操縦性が逆に仇になるんです」
「仇……?」
「はい此処が重要ですから良く聞いて下さいね!操縦性が高いという事は逆にそれだけ乗り手の技量をダイレクトに反映してしまうんです。国家代表の方々もラファールのように高い操縦性を専用機に求めるのもそこに起因しています。より動こうとすればそれに応えて来る良いISなんですが、余り動けない初心者がラファールを使っても最大限の性能を引き出せないんです。そしてラファールは武器が多すぎて使い切れないのも初心者がラファールのポテンシャルを引き出せない原因でもあるんです」
幅広くあらゆる戦闘スタイルにも対応しきれるラファールの優れた性能、しかしその高すぎる性能は裏を返せばラファールの強さは操縦者の技量に依存してしまうという事になり逆に初心者からすれば足枷になってしまう。車に乗り慣れてない人がスポーツカーに乗って最大限スポーツカーの力を引き出せるかと言う事になる。
「打鉄はそれに比べると最初から防御重視と性能を安定させた上で操縦性を設定してるので初心者でも十分に動かせる機体なんです。武装も基本はブレードとライフルの二つですから使いこなす事も簡単です」
「成程……操縦性って高ければ良いって物だと思ってましたけど違うんですね」
「勘違いしやすい所ですよね操縦性って。操縦性は扱い易さじゃなくてハンドルを切った時にどれだけ車が曲がってくれるかって言った方がいいかも知れませんね」
それらを聞いて考えてみると「ラファール」よりも「打鉄」に惹かれる。性能ではなく実際に自分が使ってみてどれだけ扱えるという事を失念していたかもしれない、それを遠回しに指摘してくれた真耶には感謝しなければならないだろう。
「それじゃあ次は杉山君の経験と素質から考えてみましょうか。杉山君はどちらかに乗った事ありますか?」
「えっと試験の時はラファール、検査の時は打鉄でした」
メモに確りと書きこんで行く真耶、簡単な表を作りそこに適正などを分かり易くするようにしておく。
「何か特技とかありますか?格闘技の経験とか」
「えっと……爺ちゃんに護身術として空手と剣術を習った事があります」
「剣術と空手ですね、それだと近接系に向いているかもしれないという事ですね」
「流石に銃はないですよね」
「あっありますよ」
カミツレの言葉に思わず間抜けな声を発してしまう真耶、銃を撃った事があるというのか。ハワイ辺りで経験でもしたのかと思ったが返答は全く違った物だった。
「実は兄と友人達でよくサバイバルゲームをやってたんですよ、それでまあ本物では無いですけど一応撃った事はあります」
「な、成程サバゲーって奴ですね。でもそれでも十分ですよ構え方とかを知ってる事になるので十分参考になります!」
次々と表へと書きこんで行きカミツレの素質と経験を評価して行く。結果としては実際の武道として近接に長があり射撃は経験としてはある程度の物に留まった。これらを総合して考えるとカミツレに適しているのは―――
「私としては「打鉄」を推したいと思います。ラファールにもブレードはあるんですが
「……分かりました、俺「打鉄」にします!」
「分かりました、それじゃあ早速
真耶に言われたように打鉄を纏ったカミツレはそのままISに自分のデータを読み込ませつつ自分に最適化させる。真耶はISに接続したパソコンでこの「打鉄」をカミツレの専用機になるように細かい設定を改変して行く。
「そうだ名前とか如何します?」
「な、名前ですか?」
「ええ。これから相棒になるんですから名前とか合った方が愛着沸きますよ?」
そう言われてみると悪くないような気がしてきた、しかし名前と言われてもいきなりは思いつかない。それに自分はそう言った方面のセンスは余りないので如何したら良いのか……と思いつつ
「……「勝鬨・黒鋼」……」
「「勝鬨・黒鋼」……良い、凄い良いですね!!カッコ良いですしこれから杉山君と一緒に歩んでくれそうじゃないですか!!よしそれで登録しちゃいますね!」
「えっあっちょっと待ってください今のはなんか浮かんだだけで決めたって訳じゃ!?」
「えっそうなんですか!?も、もう設定しちゃいましたよ!!?」
慌てている真耶の言葉と共に自分の視界にウィンドウが表示された、そこには機体の設定が刻まれている。『杉山 カミツレ専用IS 勝鬨・黒鋼 システムオールグリーン』もう定められた勝利を収めた時の名称、早まったかと思いつつもぞくぞくとこれでいいと思っている自分が確かに其処に居た。
「……いえ先生これでいいです。こいつの名前、それで行きます!」
「そ、そうですか?それじゃあ最終設定完了です!それじゃあ次はいよいよ実技です、私は結構厳しいですから覚悟してくださいね?」
「はい、よろしくお願いします先生!!」
勝鬨と共に始まったISの訓練、基本中の基本から始められたそれは未体験なカミツレにとって驚きの連続且つスパルタなものであった。しかし同時にどこか楽しく思えている自分がおり気付けば
「勝鬨、さあ行くぞ!!」
嬉しそうに相棒の名前を叫びながら真耶の指導を受けていた。