IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第47話

順当に勝ち進んでいくカミツレとセシリア、その一方で一夏とシャルも順調に勝ちあがり先に準決勝まで勝ち上がる事が出来た。相手が訓練機を使用しているとは言え、その実力を感じさせる戦い方に注目集めている中でカミツレは遂に準決勝へと上がる為の相手と戦う事が決まった。その相手は―――ラウラ・ボーデヴィッヒと篠ノ之 箒のペアであった。剣道によって養われた剣のセンスと「打鉄」で安定した戦いをする箒と軍によって訓練を受け様々な状況に臨機応変に高い錬度で対応する事が出来るラウラ。正しく強敵に相応しい相手と言える。

 

「ラウラさんの相手は私がした方が良さそうですわね、奥の手は私なら効果が薄いですし」

「それが妥当だろう。俺が速攻で篠ノ之を落として、二対一の状況を作り出すのが一番ではあるけど」

 

二人が最も警戒しているのはラウラ、箒の安定した戦いも弱いという訳ではないがそれ以上にラウラの存在が厄介すぎる。彼女の専用機である『シュヴァルツェア・レーゲン』は高いレベルで近接から遠距離射撃までこなす万能型、その万能さを活かし箒を援護し勝利をもぎ取ってきている。そしてそのレーゲン最大の武装が停止結界とラウラが呼んでいる物「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー」である。

 

元々ISに搭載されているPICを発展させた物であるが、対象とした物の動きを完全に止めてしまう能力を秘めており一対一の戦いにおいてこれほど厄介な武装はない。しかし、それも無敵という訳でもなく幾つかの欠点を抱えているのが幸いと言える。まず使用にはラウラに凄まじい集中力を要する、加えて複数相手やエネルギー兵器には効果が薄い。タッグマッチでは使いにくいとしか言えないが、二対一になった時には無類の強さを発揮する。

 

カミツレとセシリアの場合、カミツレの「勝鬨」が保有している武装の全ては「AIC」には強くないが、セシリアの「ブルー・ティアーズ」はレーザーを主武装しているので相性としては良い。基本戦法はカミツレが前衛、セシリアが後衛にて援護を務める形になる。当然相手としてはカミツレを一気に落とそうとすると思われるが、元々防御面に秀でている「勝鬨」と絶え間ない援護でそれをさせないようにする。そして、セシリアは並列思考の会得によってティアーズを使用しながらの移動攻撃が可能になっているので、「AIC」に捕捉される可能性も低くなっている。

 

「……良し。それじゃあ行きますか!」

「はい参りましょう!」

 

二人はハイタッチをしてから共にアリーナへと飛び出して行く。同時に向こう側のアリーナへと飛び出してくる二機のIS、ラウラと箒。軍人と侍、その二人の闘気がヒシヒシと伝わってくる。自然と構えを取ってしまうが、まだ試合は始まってはいない……そしてブザーが鳴り響こうとしたその時だった、アリーナ否学園全体を揺るがすかのような凄まじい爆音と衝撃が襲い掛かった。

 

「な、なんだっ!?」

『新たなIS反応を確認』

「新たな反応……!?」

 

衝撃と共に舞いあがった土煙の中で何かが蠢くかのような音が響いていた。非常事態である筈なのに皆がそれの存在に注目してしまっていた、逃げるべき筈なのにそれに釘付けにされていた。そして、土煙が晴れた場所に居たのは……見た事もないISであった。以前学園へ来襲して来たISとはまた違った印象を受けるそれは、ゆっくりと立ち上がった。

 

「おいおいまた乱入者かよ…本格的にどうなってんだよ」

「しかも、このような場面で……!!!」

 

思わずブレードを構えながらボヤいてしまったカミツレ、それに合わせるかのようにライフルで頭部を狙うセシリア。この場合さっさと逃げるのが鉄則だが、あの時と同じくアリーナのシールドを破れるのならば囮をして逃げる時間を稼ぐのが最優先だろう。それはこの場で専用機持ちである自分たちこそ適任、それはラウラも分かっているのか構えを取っている。

 

「杉山にオルコット、それにラウラ……私は後退した方が良いよな!?」

「ああ、状況判断が正しいようで頼もしいな篠ノ之!」

「以前の織斑さんもあの位、賢ければ楽だったのですがね!」

「ぼやくなよセシリア、兎に角やるしかない!!ラウラ、指示出せるか!?」

「ああ、ドイツ軍少佐としてその役目引き受けた!!」

 

この場で指示を出したり纏めたりするのに一番慣れているのは隊を率いる立場であるラウラ、彼女に行動の決定や指示の一任を任せる事にする。が、その時にラウラの「レーゲン」に異変が生じる事となった。

 

「っ!?システムに異常だと!?こんな時に何事だ!?」

「ラウラ如何した!?」

 

突如訪れた「レーゲン」の異常。ラウラはシステムチェックを行うがその時、表示された文字列に眼を疑ってしまった。そこに映し出されているのは世界的に禁止されている筈の物なのだから。その名は―――禁忌のシステムにして最強を降臨させるシステム。

 

【――――VT SYSTEM. START UP……COMPLETE.】

「な、何だとっ!?何故私のレーゲンにこんなシステムが!!?」

 

ラウラの意志を無視して「レーゲン」が動き始めた。操縦者の意志すら完全に無視して行動を開始し始めるIS、それは最早無人機と変わらぬ物であったがその動きは人間が操るISのそれと全く同じ。そしてそれは普段のラウラの動きを完全に上回る圧倒的な機動を持って、乱入して来た敵へと襲い掛かって行く。持てる武器の全てを活用しながら相手の武装を全て潰しながら、動きを抑制し本命の一撃を次々と決めていく。

 

「な、何ですのあれは……」

 

ある意味常軌を逸した光景にセシリアは寒気すら覚えた、ただ相手を倒す事のみに特化している動きをしている。あれは先程まで自分達が何戦もしてきたISのバトルとは全く異なる、相手を殺すための戦い方。それに圧倒されているのは箒も同じであったが、ただ一人違う目で見ている者がいた。それはカミツレであった。

 

「あれって…ヨランドさんの機動に千冬さんの太刀筋……!?」

「とまれっレーゲン……!!!私の言う事を聞け!!如何したというのだ!?」

 

必死に制御を行おうとしているラウラの言葉は届かぬまま相手を蹂躙して行く「レーゲン」にカミツレは既視感を感じている、今自立行動を行っているISの動きは自分に訓練を付けてくれた人の動きのそれと全く同じ。いやそれを複合して行っているので同じとは言えないが、それを切り離して見ると同じ物であると分かった。本人から教えを受けたからこその思考である。

 

「止まれぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」

 

絶叫に近いラウラの声、それと同時に止めをささんとした「レーゲン」が停止し制御がラウラへと戻った。敵は既に動かなくなりエネルギーレベルも0になっていた。完膚なきまでに叩き潰された敵を見ながらラウラは自らの手を見つめた。

 

「VTシステム……何故、そんな物が私の「レーゲン」に……!?」

 

不穏な風を靡かせながら、学年別トーナメントは一時中止となった。国際的に禁止されているシステムの露呈、ドイツへの不信感、様々な物が渦巻いたまま……トーナメントの幕は下ろされた。


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