この日、カミツレは久しぶりにIS学園の制服に袖を通した。夏季休暇中は基本的にラフな私服で居る事が多く洗濯をしてハンガーに掛けっぱなしだった制服は何処か新鮮味がある。空調が利いているので暑いとは感じないがこの時期に長袖を着る、なんとも言えない息苦しさがある。鏡を見ながら確りと決めているのを確認したカミツレは「蒼銀」の待機状態であるバングルを装着する。
「うしっ行くか」
今日、彼が夏休みなのに制服を着たのは今日が登校日という事だからではない。先日訓練が終わった後に真耶からある事を言われたのでそのために着ているのである。
『雑誌の取材って…俺にですか?』
『はい。それでこの日に記者の方がいらっしゃいますから制服で応接室まで来て欲しいんです』
『取材か……俺もそんなのを受ける立場なんだったな…』
カミツレに対しての雑誌取材の申し出があったからであった、今までこんな事がなかったので実感が沸きにくいが彼は全世界が注目する存在なのでこのような取材はあって当たり前な所がある。しかしそこはIS学園、治外法権地域とその特異性の関係か取材陣が入り込めなくなっているのでカミツレは今日までそんな事を受けずに生活を送って来ていた。今日の取材も何ヶ月も前から申し出があったらしいが、許可を出すまでに幾つもの調査や査察がその取材会社に行われたという話である。
「あっ来た来た。カミツレ君こっちですよ~」
「今行きますよ」
応接室前まで来るとそこには真耶が待っていた、真耶も取材には同席する事になっている。万が一という事態に備えての護衛と取材に来る人物に対しての監視という名目で、応接室に居る事になっている。それに彼女はカミツレの師でもある、そういった意味でも共にいるのに問題はない。
「それじゃあ行きますよ」
真耶が扉を開けて中へと入る、そこのソファには一人の女性が座っていた。カミツレを見ると同時に彼女の目が光ったような感じがするのを感じた。
「どうも! 私は雑誌「インフィニット・ストライプス」の副編集長をやっている黛 渚子。今日は取材を受けてくれてどうもありがとう~!!」
「いえまあ…どうも。杉山 カミツレです」
差し出してくる握手に応じつつ真耶と共にソファに座る、雑誌の取材という物はよく分からないカミツレは最初に写真撮影をするのではと思っていたがどうやらインタビューが先らしい。渚子はペン型のレコーダーを起動させながらこちらに向けてくる、少々緊張しながらも僅かに「蒼銀」が震動した。カチドキが取材内容の改ざんや捏造を行った際に抗議が出来るように、録音に入った合図。呼吸を整えながらインタビューに応じる事にする。
「それでは杉山 カミツレ君、インタビューを開始しますね。宜しくね」
「よろしくお願いします」
「Q.それでは早速質問から入らせてもらうね、ズバリ女子校に入学した感想は?」
「……いきなり、随分切り込んだ質問ですね」
取材というのはこういう物なのかと思うが、そこら辺は各社によって違うのだろうかと落ち着く。
「この質問は事前に読者さんからアンケートを取ってみたら多かったのよ、是非ともお願い出来るかしら。簡単な感じでもいいから」
「正直、もう慣れてしまいました。何とも感じませんでしたよ。入学当初はまあ、色々と必死だったので感想を述べられるほど周りを受け入れられていませんでした」
「あ~……やっぱり色々と大変だった系?」
「ええまあ。一体何時どんなハプニングに巻き込まれるのかと、内心では冷や冷やでしたが」
「ふむふむ、では次の質問行ってみようか」
Q.もう一人の男子、織斑 一夏との関係はどんな物だった?
「最初はまあ…印象は良くなかったですよ。俺はあいつのせいで此処に押し込まれたような物ですからね、入学当初は兎に角あいつを避けてましたよ」
「結構意外なコメントね…唯一の男子仲間だから仲良くしてる物とばかり思ってた」
「同じ男子だからって仲良くするとは限りませんよ。俺とあいつは全く別の人間なんですから、人によっては同性よりも異性の方が接しやすい人だっていますからね。まあ最近漸く…友達と言える関係に……なったのかな……?」
「いやそこで私に聞かれてもなぁ……(汗)」
Q.男性IS操縦者には一夫多妻制度が施行されるという話ですが、どんな印象を持っていますか?
「別に何も」
「えっないの?ハーレムとか可能なんだよ?」
「如何でもいいですよ。別に俺が何処の誰と付き合って結婚するかなんて俺の自由ですよ、それが多いとか少ないとか関係無しに俺は俺が好きになった人と一緒になるだけです」
「……不覚にも、男らしくてキュンと来たわね」
「ノーサンキュー」
「何も言ってないのに振られた!?というか何故分かった!?」
「禁則事項です」
Q.噂ではイギリスの代表候補生になるという話がありますが、日本はありえないのでしょうか?
「俺は日本は生まれた国であるという以上の認識を持ててないですね。逆に聞きますけどじゃあどんな感情を日本に持ってます?愛国心を持てと言われても何をもって愛国心というのか分かりません」
「まあ確かに…人の感じ方なんて千差万別だものねぇ……。特にグローバル化が進んでいる最近なら特に愛国心って感じ辛い感情なのかもしれないしね」
「俺は俺を正当に評価して、歩み寄ってくれた国に所属する。イギリスは入学して直ぐに話を持ってきてくれました、俺はそんなイギリスに感謝してます。だからという訳じゃありませんけど、信頼を寄せられるという意味ではかなり大きいですね」
「成程成程…確かにそれは納得が行くわね」
Q.噂の確認ばかりになっているようで申し訳ないのですが、一説には既に恋人がいるという事ですがどうなのでしょうか?
「流石にプライバシーに関わりますのでお答え出来ません」
「ありゃ…それじゃあ女性の好みは良いかな?」
「うーん……思慮深く、俺の傍に居てくれて、優しくて、支え合える人かな」
「おお、中々いいコメント……!」
Q.最後になりますが、ISについてどのような考えを持っていますか?
「ISについて、ですか……。俺は入学するまでISについて深く触れようとして来なかったので何とも言えませんが、最初はISで空を飛べたらきっと気持ち良いんだろうなと思ってました」
「ほうほう、それで今は?」
「今はそうですね…俺の専用機に関して言えば相棒、それ以外のISは相棒の親族って感じですかね」
「面白いコメントをいただけました!本日は態々取材協力有難うございます、雑誌は9月の中旬に発売します。一応前もって此方から完成品はお送りさせていただきます」
「有難うございました」
以上、インフィニット・ストライプス10月号「IS男性操縦者特集、杉山 カミツレ氏に聞く」より一部抜粋。
この時カミツレは知らないが、発売されたので少し興味を持って売り場へと出向いてみた。すると、10月号は何処も完売が相次ぎ転売屋まで出現している事が判明した。興味本位でオークションサイトを見てみると10月号一冊が最低価格5000円で取引されているのを見て、思わず呆然としてしまったのは余談であり未来の話である。
因みに10月号にはカミツレの取った写真を使ったポスターも付属してます。全5種類。
それで余計に売れてます。一部の方々もそれで買い占めてます。